ホーム  >  注目情報  >  2012年度  >  「子どもだけが感じている?幼児における空想の存在についての認識」の研究成果を発表しました。

注目情報

「子どもだけが感じている?幼児における空想の存在についての認識」の研究成果を発表しました。

2012年9月8日
本学の教員が研究成果をプレスリリースしました。
注目情報写真

発表者

森口佑介(上越教育大学大学院学校教育研究科 講師,独立行政法人科学技術振興機構 研究者)
篠原郁子(愛知淑徳大学心理学部 講師)

発表概要

科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業さきがけ研究の一環として,我々は,幼児が「自分が空想した存在」に対して生物らしさや人間らしさを感じている可能性を示しました。これは,今までの研究をくつがえす発見です。
『となりのトトロ』などにみられるように,子どもは(大人の)目には見えない存在を報告し,まるで現実の他者と交流するかのようにそれらの他者と話したり,遊んだりします。このような子どもが空想する他者は「イマジナリーコンパニオン(空想のお友達)」(IC)と呼ばれています。これまでの学説では,ICは一種の遊びであり,子どもがICの存在をリアリティを伴って「感じる」ことはないと考えられてきました。
我々は,幼児の心にはICなどのように自分が空想した存在に生物らしさや人間らしさを感知するシステムがあると考えて,この可能性を発達心理学の実験によって検証しました。その結果,幼児は実験者から「目に見えない他者」を紹介された際に,その他者に対して生物らしさや人間らしさを感じていることを示しました。
この研究成果は,現実や空想というものとのかかわり方が子どもと大人とでは全く異なる可能性や,幼児は大人とは異なる特有の認識システムを持つ可能性を示しました。さらに,空想や想像が子どもの発達に与える影響および空想や想像が不得手な子どもたちの理解につながる可能性があります。
本研究成果は,2012年9月8日(日本時間AM5時解禁)発行の米科学誌「PloS One」電子版に掲載されます。

発表内容

研究の背景と経緯

『となりのトトロ』に見られるように,子どもにしか見えないもの,感じられないことがあるというテーマは,文学や民俗学などでは繰り返し扱われています。このような子どもが空想する他者は「イマジナリーコンパニオン」(IC)と呼ばれています。子どもはICと遊んだり,話したりすることが知られており,米国では,20-40%の幼児がICを持つという調査もあります。このICは,かつては子どもが何らかの問題を抱えている兆候だと考えられていましたが,現在はどの子どもに起こりうる普通の現象であることが示されています。
現在の乳幼児研究では,子どもはICと遊ぶふりをしているに過ぎないと考えられています。しかしながら,子どもたちのICの描写が非常に具体的かつ鮮明であることや,近年の脳科学や認知科学などの他者認識(他者の認識に特化した認知システムがある。例えば,脳内には,ヒトらしさや生物らしさなどを選択的に処理するシステムが存在する)に関する知見を考慮すると,幼児は実際にICの存在をリアリティを伴って「感じている」可能性があります。より具体的には,幼児の心にはICのように自分が想像した存在に生物らしさやヒトらしさを感じるシステムがある可能性が考えられたので,この点を検証しました。

研究の内容

本研究では,この問題を,発達心理学の手法を用いて検討しました。幼児は,「現実の他者」,「目に見えない他者」,「ボール」を実験者によって紹介され,それらの対象が心理学的・生物学的な特性を持つかを質問されました。「目に見えない他者」は,図1のように,実験者によって紹介されました。幼児はここで目に見えない他者を自分自身で想像したことになります。その結果,幼児は,「現実の他者」および「目に見えない他者」は生物らしさやヒトらしさを持つと反応したのですが,比較のためにボールについて質問すると,ボールはそのような特性を持たないと反応しました。さらに,行動観察から,幼児は,「目に見えない他者」に抱き着いて自発的に相互作用したり,目に見えない他者の行動について実験者に説明したりすることも示しました(図2参照)。さらに,日常的にICを持つ子どもは,持たない子どもに比べて,このような傾向が強いことも明らかになりました。
これらの結果は,幽霊のような目に見えない存在が実在することを意味するのではありません。そうではなく,幼児には,自分自身で想像した存在に生物らしさやヒトらしさを感じるシステムが存在する可能性を示したのです。

今後の展開

今回の研究は子どもに質問するなどの発達心理学的手法を用いたため,今後は視線計測や脳機能計測などの手法を用いて,より科学的に子どもにとってのICについて検証していきたいと考えています。さらに,このようにICにリアリティを感じることが,子どもの発達にとってどのような意味があるのかについて検証していきたいと考えています。また,発達に問題を抱える子どもの中には,空想や想像が不得手な子どもがいるので,それらの子どもを対象にした研究も進めていきたいと考えます。

発表雑誌

PloS One電子版 9月8日5時(日本時間)に出版,報道解禁
“My neighbour: Children's perception of agency in interaction with an imaginary agent”
(私の隣にいるもの:子どもは空想の他者との相互作用にヒトらしさを感じる)

お問合せ

窓口 電話 メール
上越教育大学大学大学院学校教育研究科 025-521-3415 (研究室) アドレス
講師 森口佑介(もりぐち ゆうすけ)

用語解説

イマジナリーコンパニオン:子どもが作り出す,想像上の友達のこと。日常生活の中に現れ,子どもはICと遊んだり,話したりする。米国では,20-40%の幼児がICを持つ。わが国では調査が少ないが,10%-20%程度の子どもが持つとされている。

添付資料

添付資料1

図1 子どもへの実験場面

目に見えない「ヒカル君」を子どもに紹介している様子。


添付資料

図2 空想の他者と相互作用する幼児

幼児が目に見えない「ヒカル君」の存在を自ら想像し,自発的に抱きついてやりとりを展開している様子。



このページは上越教育大学/広報室が管理しています。(最終更新:2012年09月08日)

このページの先頭へ戻る