平成28年 教職大学院案内
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研究内容及び指導内容あいさつ指導から犯罪対策までと、日本の学校が担う領域は極めて広いものです。授業、生徒指導、部活動担当など、一見当たり前のように思われている教員の仕事は、国際比較によれば驚くほど広範であることが分かります。また、それだけに学校の役割や教員の専門性の内実が曖昧になりがちな現状もあります。「教育は人なり」と言われますが、現実の学校には人(教員)の力ではどうにもできない要素も多く存在します。むしろ、ヒト(教員人事)・モノ(教育内容)・カネ(学校予算)を、およそ中央・地方の教育行政によって規定されているのが日本の特徴でもあります。こうした中で、子どもの発達を支える学校をどのようにつくっていけば良いのでしょうか。その課題は決して学校のみにとどまらないでしょう。学校にできることとできないこととを峻別した上で、学校づくりについて考える必要があるでしょう。その際、学校づくりとは「改革」ばかりを意味するのではなく、学校が積み重ねてきた伝統を継承することも大切です。また、学校づくりの方向性は、「学力向上」や「いじめゼロ」といった全国共通のスローガンとして外部から与えられるものではなく、その学校に通う子ども(やその保護者)の状況、地域社会の特質などをふまえる必要があります。世界に目を向ければ、いずれの国の教育にもさまざまな課題があり、また強みもあるものです。しかし、一般に強みの部分は見えにくく、教育を「課題」としてばかり語りがちになります。これも各国共通の特徴と言えるでしょう。たとえば、各種国際調査で日本の教育が世界的に高水準を維持していても、日本国内では「学力低下」が強調されるようにです。私たちにとって日常自明視していることを問い直すことは最初の一歩と言えます。目まぐるしく変化する社会の中で、どのような学校づくりが求められるのでしょうか。このことを考えるためには、教員個々人のレベルを超えて、学校組織や教育行政へも目を向けていかねばなりません。また、子どもが生きていく将来社会を見据えた教育を行うためには、国際的な視野を持とうとする姿勢も必要になります。以上のような観点から、大学院の授業や学校支援プロジェクトでは、学校の内と外の両面に目を向けて教育を捉えることを意識しています。また、授業外の研究会や自主ゼミなどの場でも自由に議論を交わし相互研鑽できればと願っています。その他【経歴】京都府立大学大学院福祉社会学研究科博士後期課程単位取得満期退学。神戸学院大学非常勤講師、大阪市立大学特任講師を経て、2010年4月より現職。専門は比較教育学、教育経営学。【主著】『「考える教師」―省察、創造、実践する教師―』(学文社より共著)、『学校改善マネジメント』(ミネルヴァ書房より共著)。『教育のための法学』(ミネルヴァ書房より共著)【所属学会】日本教師教育学会/日本比較教育学会/日本教育行政学会/日本教育経営学会/ISfTE(国際教師教育学会)/DGBV(ドイツ教育行政学会)など【担当コース】・教育実践リーダーコース・学校運営リーダーコース【担当講義】・学校教育の制度と理念・教育における権利と責任【プロジェクトテーマ例】・学校づくり・学校と地域・コミュニティ・スクール【包含できる研究テーマ】・学校経営(と教員・子ども・保護者・地域)・教育行政(と学校)・教育の国際比較研究内容及び指導内容私が一貫して関心があるのは、「よい教員とは、どんな教員か」「どうしたらよい教員になれるのか」という、いわゆる「教師論」の分野です。その中でもこだわっているのが小学校教員。学級担任をし、全教科領域を指導する小学校教員には、中学校・高校教員とはまた別の複雑さや困難さがあり、これが私にとって大きな魅力になっているのです。これまで、我が国の教員免許法成立過程を追い、その中で目指された教員像について考えたり、戦前の教員人事研究を通して、各都道府県が資質能力の高い教員集団をどのように実現しようとしてきたのかなどについて取り組んできました。これらは、教育行政や教育経営の分野の研究です。しかし、これだけでは本当のことはわからない。つまり、例えば初任者がどのような道筋を通って一人前の教員となっているのかは見えないのです。そこで最近では、東京や富山の小学校に研究協力をお願いし、十数人の若手教員に定期的に授業支援をさせていただきながら、授業力向上の軌跡を丹念に記録し続けています。このような研究のきっかけをつくってくださったのが、水原克敏先生(早稲田大学)です。彼は「理論を考える研究者は、たくさんいる。そうではなく、その研究者の手が届かない『実践』を踏まえた研究が、君に似合う」と言ってくださったのです。そして、「理論研究が第一層ならば、実践を踏まえた実証研究は『第二層』」とも。だから、「第二層研究」は、私のゼミの根幹をなす言葉の一つです。私のゼミには、もう一つ大切にしている言葉があります。それは「も」。「あれもこれも」の「も」です。教職大学院では貪欲に視野を広げながら、深く学んでほしいのです。一人一人の興味関心の違いを出し合いながら「あれもこれも」と学び、一人で学ぶより数倍のものを手に入れる。そしてそれは、全て「よい教員」につながっているとも考えているのです。「も」の例に、私のゼミで学んだ人たち数人の研究キーワードを示しておきます。・特別支援教育の校内体制の構築・校内研修の活性化・自立を促すキャリア教育・若手教員の授業がもつ特徴・地域素材を生かす社会科教材開発その他・平成20~21年度 東京都杉並区第三者学校診断委員・平成22~23年度 富山県小学校教育研究会学力向上アドバイザー(社会科)・平成23年度 氷見市教育委員会 教育振興基本計画策定委員(長)・平成24~26年度 氷見市教育委員会 教育振興基本計画評価委員(長)【担当コース】・教育実践リーダーコース・学校運営リーダーコース【担当講義】・小学校社会科授業の基礎技法・体で学ぶ一斉指導の基礎技法【プロジェクトテーマ例】・授業改善と授業技術の共有化-小学校を中心に【包含できる研究テーマ】・学校のグランドデザインづくり・専門家評価(第三者評価)による学校運営改善・若手教員の授業力向上策・基礎技法としての一斉指導法准教授辻つじ野の けんま教授(実務家教員)瀬せ戸と 健けん教職大学院教員スタッフプロフィールJoetsu University of Education30

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