平成28年 教職大学院案内
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研究内容及び指導内容日本の学校教育に何が起こっているのか。この問いに答えるために、日本・イギリス・シンガポールで質問紙調査やインタビュー調査を行い、学校や教育委員会の取り組みや、教師や子どもの実態に迫ってきました。調査をもとに分析してきたテーマは多岐にわたります。たとえば、子どもたちの学力や学習意欲の格差、子どもの自己肯定感、学校教育のガバナンス(統治の仕組み)、教育の公共性、ジェンダー/セクシュアリティ、教師のキャリアと自己能力観などです。研究スタイルは、よりよい教育実践の方法を開発したり、教育のあるべき姿を議論したりするというものではありません。それらの意義を尊重しながらも、教育に関する実態の把握を重視しています。学校や子どもたちに何が起こっているのか、それはどのようなメカニズムで生じているのか。たとえば、このような問いに取り組むのです。このように実態把握を重視する理由は、病気を治すためには、身体の様子を診断したり、身体・病気のメカニズムを把握したりすることが欠かせないのと同じです。とりわけこの10数年の日本をふりかえってみてください。学校教育には、打ち上げ花火のような華々しいスローガンとともに、さまざまな取り組みが導入されてきました。しかし、想定どおりのよい結果だけが得られているでしょうか。こう考えてみるだけで、教育現実の把握がどれだけ大切であるかに思い至ることでしょう。教職大学院で担当する授業では、教育現実を観察する方法(調査分析法)や、教育現実を様々な観点から理解する方法(理論的枠組み)を提供します。学校支援プロジェクトでは、連携協力校からの要望を手がかりにしながら、実態把握とそれにもとづいた提言に取り組みます。これらの担当授業と学校支援プロジェクトとを有機的にリンクさせることで、否応なく複雑化する教育現実と切り結んでいく上で不可欠な、粘り強く思考する技術の習得にかかわりたいと考えています。その他東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。日本学術振興会特別研究員、東京大学大学院特任研究員、東京理科大学助教を経て、2011年に着任。専門は教育社会学。共著に『現代高校生の学習と進路』(学事出版)、『学力の社会学』(岩波書店)など、共編著に『教育改革の社会学』、『「復興」と学校』(いずれも岩波書店)がある。上越市では、地域青少年育成会議協議会のアドバイザーや講師として協力しています。【担当コース】・教育実践リーダーコース・学校運営リーダーコース【担当講義】・授業と学校の改善に向けた教育調査の理論と実際・学校文化改革の課題と視点【プロジェクトテーマ例】・社会学的調査研究にもとづく指導改善・学校改善【包含できる研究テーマ】・子どもの友人関係・学校・家族・地域社会の連関・地方分権/地域主権改革と学校教育・ジェンダー/セクシュアリティと教育・学校から職業への移行・学校教育のガバナンス改革等准教授堀ほり 健たけ志し研究内容及び指導内容上越地域の小学校に勤務する中で総合的な学習に魅力を感じ、子どもが切実感をもって学び、自分の考えをつくっていくための授業づくりや単元開発に取り組んできました。また、総合的な学習では、学習対象、学習事項、育てようとする資質や能力及び態度などを各学校で考える必要があることから、カリキュラム編成の大切さについても考えるようになりました。同時に、カリキュラムは動的なものであることから、教師がマネジメントしていく必要を感じ、教師のカリキュラムマネジメント力の重要性についても考えるようになりました。今は、総合的な学習のカリキュラムマネジメントの方法とそれを教師のカリキュラムマネジメント力の向上にどのように結び付けるかを追究しています。「平成25年度全国学力・学習状況調査報告書クロス集計(文部科学省・国立教育政策研究所)」には、「総合的な学習の時間における探究活動を積極的に行った学校の方が、記述式問題の平均正答率が高い傾向が見られた」とあります。教師が探究的な学習を指導できる力を高めていくことが、子どもたちの資質・能力の育成や学力向上に結び付くと考えています。その他新潟県の小学校教諭、県教育委員会との交流人事による上越教育大学での教育実習指導、小学校教頭、県教育委員会義務教育課指導主事を経て、平成22年に本学に着任。この間、上越教育大学大学院に派遣されたときの修士論文が「『総合的な学習』の長期的教育効果―J市内4小学校卒業生への学習・意識に関する調査より―」(平成13年)主な著書・論文に、「総合的な学習の時間の構想と実践を核にした研修が教師の力量を高める」(『教職研修』平成17年8月号増刊)、「実践場面における質的研究法」(共著、『上越教育大学研究紀要』第25巻第2号、平成18年)、『教員養成は今変わる』(共著、教育出版、平成19年)、「総合的な学習の時間における教師の力量形成に関する研究」(『臨床教科教育学会誌』第13巻第1号、臨床教科教育学会、平成25年)、「総合的な学習の時間を重視するA小学校における教師の力量形成に関する事例的研究」(『上越教育大学教職大学院研究紀要』第1巻、平成26年)、「総合的な学習の時間の教育的効果を考える―体験者への意識調査と学力との関係の検討から―」(『教育創造』第177、高田教育研究会、平成26年)などがあります。【担当コース】・教育実践リーダーコース・学校運営リーダーコース【担当講義】・総合的な学習を中心とした教育課程論【プロジェクトテーマ例】・探究的な学習を促す総合的な学習の時間の構想と展開・総合的な学習の時間を中核にした教育課程の編成と実施・総合的な学習の時間の授業づくり【包含できる研究テーマ】・参画意識を高める校内研修の運営方法・キャリア教育の進め方・アクティブ・ラーニングの進め方・「上越カリキュラム」の実施と改善准教授(実務家教員)松まつ井い 千ち鶴づ子こ教職大学院教員スタッフプロフィールJoetsu University of Education33

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