平成29年度上越教育大学 教職大学院案内
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研究内容及び指導内容私が一貫して関心があるのは、「よい教員とは、どんな教員か」「どうしたらよい教員になれるのか」という、いわゆる「教師論」の分野です。その中でもこだわっているのが小学校教員。学級担任をし、全教科領域を指導する小学校教員には、中学校・高校教員とはまた別の複雑さや困難さがあり、これが私にとって大きな魅力になっているのです。これまで、我が国の教員免許法成立過程を追い、その中で目指された教員像について考えたり、戦前の教員人事研究を通して、各都道府県が資質能力の高い教員集団をどのように実現しようとしてきたのかなどについて取り組んできました。これらは、教育行政や教育経営の分野の研究です。しかし、これだけでは本当のことはわからない。つまり、例えば初任者がどのような道筋を通って一人前の教員となっているのかは見えないのです。そこで最近では、東京や富山の小学校に研究協力をお願いし、十数人の若手教員に定期的に授業支援をさせていただきながら、授業力向上の軌跡を丹念に記録し続けています。このような研究のきっかけをつくってくださったのが、水原克敏先生(早稲田大学)です。彼は「理論を考える研究者は、たくさんいる。そうではなく、その研究者の手が届かない『実践』を踏まえた研究が、君に似合う」と言ってくださったのです。そして、「理論研究が第一層ならば、実践を踏まえた実証研究は『第二層』」とも。だから、「第二層研究」は、私のゼミの根幹をなす言葉の一つです。私のゼミには、もう一つ大切にしている言葉があります。それは「も」。「あれもこれも」の「も」です。教職大学院では貪欲に視野を広げながら、深く学んでほしいのです。一人一人の興味関心の違いを出し合いながら「あれもこれも」と学び、一人で学ぶより数倍のものを手に入れる。そしてそれは、全て「よい教員」につながっているとも考えているのです。「も」の例に、私のゼミで学んだ人たち数人の研究キーワードを示しておきます。・特別支援教育の校内体制の構築・校内研修の活性化・自立を促すキャリア教育・若手教員の授業がもつ特徴・地域素材を生かす社会科教材開発その他・平成20~21年度 東京都杉並区第三者学校診断委員・平成22~23年度 富山県小学校教育研究会学力向上アドバイザー(社会科)・平成23年度 氷見市教育委員会 教育振興基本計画策定委員(長)・平成24年度~現在 氷見市教育委員会 教育振興基本計画評価委員(長)【担当コース】・教育臨床コース・教育経営コース【担当講義】・小学校社会科授業の基礎技法・体で学ぶ一斉指導の基礎技法【プロジェクトテーマ例】・授業改善と授業技術の共有化-小学校を中心に【包含できる研究テーマ】・学校のグランドデザインづくり・専門家評価(第三者評価)による学校運営改善・若手教員の授業力向上策・基礎技法としての一斉指導法教授(実務家教員)瀬せ戸と 健けん研究内容及び指導内容【研究の柱】学校現場において授業や学校などを対象にしたエスノグラフィーやアクションリサーチなどの質的な研究を中心に取り組んでいます。具体的には(ア)授業や教師・生徒関係等の社会学的研究、(イ)新しい学校カリキュラムの開発、総合的な学習の時間の研究等のカリキュラム研究、(ウ)教員のライフコースやスクールリーダーシップ、学校組織文化等の教育経営研究です。また、実践者として(エ)社会科授業づくりや総合的な学習の時間のカリキュラムづくり、学校運営改善等の課題の解決に取り組んできました。【最近の関心】〔人口減少社会における学校経営〕地方のみならず、都市部においても人口減少や高齢化が進展し、学校統廃合、学校規模の縮小が不可避です。こうした状況においては新たな発想での学校づくりが必要です。学校の使命や実態に基づいて、具体的なビジョンを構築し、家庭・地域との齟齬や葛藤を乗り越える創造的な学校づくりに関心があります。【研究の方向性】〔学校や地域というフィールドを重視し、そこから立ち上がっていく研究への挑戦〕学校現場の問題解決に資する研究とともに、最前線の学校現場の教職員の実践や学校の実践の集積を「知」として生成し、学校の内から外に向かう改革を進めるバックワード・マッピング(backward mapping)やボトムアップアプローチが重要だと考えています。その他【主な職歴】宮城県の公立学校等に34年間勤務。公立中学校・宮城教育大学附属中学校教諭、公立中学校・県立高等学校教頭、公立小学校・中学校長等を経験し、平成28年4月本学着任。【主な著作・論文】□「社会的世界としての授業(9章)」『学習社会としての学校-「教育する学校」を超えて(シリーズ子どもと教育の社会学1)』所収、教育出版(平成9年)□「校務の適正な分担と負担の均一化」『教務主任の仕事術-ミドルリーダー実践マニュアル』所収、教育開発研究所(平成24年)□「総合的な学習のカリキュラム開発の動向と課題-中学校(第1部第4章)」『カリキュラム開発の促進条件に関する研究』所収、教育開発研究所(平成24年)□「東日本大震災後の学校教育の方向性-『生きる力』をはぐくむ『学校像』」『グローバル時代の学校教育』所収、三恵社(平成25年)□「学校組織文化の類型化の試み-コンフリクト処理様式の視点から」『学校教育研究』(日本学校教育学会(以下同じ))第4号(平成元年)□「統合型カリキュラムの実践的研究」『学校教育研究』第12号(平成9年)□「中学校における『学校時間の弾力化』の試み-教育課程開発の方向性」『学校経営』第45巻9号,第一法規(平成12年)□「学校カリキュラムのデザインを再考する」『学校教育研究』第23号(平成20年)□「学校教育の『淀み』を超える教職員の『実践的意識』と勤務環境・条件」『学校教育研究』第26号(平成23年)ほか。【包含できる研究テーマ】・スクールリーダーの育成・地域との結び付きを生かした学校づくり・社会参画意識を高める授業づくり菅すが原わら 至いたる 教授(実務家教員)教職大学院教員スタッフプロフィール30Joetsu University of Education

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