平成29年度上越教育大学 教職大学院案内
32/40

研究内容及び指導内容私は、年少者日本語教育において、多言語多文化共生の立場から主に学齢期に日本の小中学校に編入してきた言語少数派の児童生徒の言語学習と教科学習を支えるための研究に取り組んできました。日本に在住する児童生徒が抱える学業面の課題には、移民を多く受け入れてきた諸外国で指摘されてきた課題と同様に、教科学習と教科学習のための日本語習得の不振、第一言語(母語)衰退・喪失があります。まず、私はこれらの課題に対して個別に解決を図るのではなく、言語能力と教科学習、第一言語と第二言語の習得を統合的に捉え、教科学習に第一言語と第二言語で取り組むことによって相互育成を図る学習モデルの検証を進めてきました。そして、特に韓国や中国出身の子どもたちが在住国である日本の歴史や日本の教科書で出身国の歴史を学ぶ際に葛藤を抱え苦しむ様子がみられたことをきっかけに、小中学校の社会科の歴史学習の教授法の開発に着手しました。出身国と日本の双方を背景に持つ児童生徒にとって出身国の歴史と日本の歴史を関連付けて学ぶことができ、さらに認知的負荷の高い領域での第一言語と第二言語の言語使用を活発にする方法を探究してきました。現在は、中国史と日本史を関連付けた歴史学習のためのカリキュラム開発に関する研究、言語少数派の児童生徒の主体的な言語活動を促す教師の問いかけに関する研究、多言語多文化共生の理念に基づく言語少数派の児童生徒への指導経験による教師教育への意義に関する研究を行っています。外国語活動では、米国の小学校の児童に対する日本語学習活動に従事し、日本語学習カリキュラムの策定、教材作成、授業実施を行ってきました。今後は日本の児童への可能性を追求したいと考えています。また、現在上越市内の小学校において国際理解教育の授業に本学の留学生を派遣して日本と親交の深いアジア圏など多様な国々や人々への理解や交流を図っています。今後は外国語活動としても留学生と英語で話すことによって様々な言語・文化背景を持つ人々と外国語を使ってコミュニケーションを図ることの楽しさを得られるような活動を試みたいと考えています。教職大学院では、いずれの領域においても皆さんと実践の背景となる多言語多文化共生の理論や先行研究を踏まえた上で子どもたちの学習を支える方法を考えていきたいです。その他所属学会:日本語教育学会/母語・継承語・バイリンガル教育(MHB)研究会(理事)/日本国際理解教育学会/お茶の水女子大学日本言語文化学研究会/全国社会科教育学会/日本教科教育学会【担当コース】・教育臨床コース【担当講義】・国際理解教育と外国語活動【プロジェクトテーマ例】・多言語多文化を認め合う教育【包含できる研究テーマ】・国際理解教育、外国語活動、日本語教育、バイリンガル教育・多言語多文化を認め合う教師教育、教材開発、教師と児童生徒とのコミュニケーション・参加型学習、問題提起型学習准教授原はら 瑞みず穂ほ研究内容及び指導内容人は、問題が生じない限り、習慣化した役割行動を反復するだけで、それを変えようとはしません。人間関係も、道徳的な価値についても、知っている「つもり」でいることが少なくありません。しかし、そのことに気づかないでいることは、怖いことでもあります。例えば、人間関係の固定化(クラス内での序列化)や、いじめの問題等も、役割行動の反復、すなわち、自分の役割に疑問を持てないところに問題の根本があると言っても、過言ではないと言えるのではないでしょうか。道徳授業は、そんな知っている「つもり」になっている自分の姿を映し出す鏡の役割もあるのだと思います。一方で、その大切な道徳授業の効果を実感できない、指導方法が分からない…などの声が先生方に多いのも、事実かと思います。私は今まで、役割演技による道徳授業の効果として、子どもたちが道徳的価値を「実感的に」自覚することを明らかにしてきました(例えば、「役割演技を道徳授業に」明治図書)。役割演技は、単に資料にある台詞をそのまま表現することに終始することではありません。今までの役割では解決できない問題に直面し、主体的な問を体験的に解決する過程を通して新たな役割を創造する…、驚き、苦しみ、悩みながら、しかし、新たな役割の実現には感動を伴って、価値のよさや意味をを「実感的に」理解するのです。それは、学習構造の主体的変容の実現でもあります。このように、「質の高い多様な指導方法」による道徳授業の創造や学習構造の主体的変容による道徳授業の充実の探究をテーマに、実践と理論を往還しながら、道徳科(特別の教科 道徳)を要とする道徳教育の拡充を、展望していきたいと思っています。その他私は、千葉県の公立小学校の教員として過ごした26年間のうち、4年間は児童相談所の児童福祉司として、児童福祉の最前線で勤務しました。その中で、子どもたちや子どもたちを取り巻く様々な課題を、まさに、表裏から実感的に味わってきました。前述した学習者である子どもの学習構造の主体的変容の実現は、教師や学校がいかに変容しうるかとの問いでもあると思います。そこで求められるのは、子どもや子どもを取り巻く環境が発信する社会的課題を受けとめながら、持続可能な教育社会の形成を担う実践力だと考えます。そこで、児童福祉のケースワークで培った発想も取り入れながら、学習構造の主体的変容の実現や、持続可能な教育社会の形成を担う実践力の構築を、皆さんと共に探究していきたいと考えております。【担当コース】・教育臨床コース・教育経営コース【担当講義】・道徳教育の理論と実際【プロジェクトテーマ例】・道徳教育を核とした教育経営論・道徳教育を通した、新たな人間関係の基盤づくり(新たな役割関係の創造)・児童生徒の道徳性を高める、道徳教育プログラム・友情や思いやりの心を育てる道徳教育プログラム・内面的な資質・能力を育成する「道徳」の授業づくり・役割演技を取り入れた、道徳授業づくり【包含できる研究テーマ】・道徳の授業研究を軸とした研修・(児童虐待等で傷ついた子どもたちを中心にした)「心の教育」プログラム・特別の教科 道徳の授業改善への支援教授(実務家教員)早はや川かわ 裕ひろ隆たか教職大学院教員スタッフプロフィール32Joetsu University of Education

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です