第一章 組織の運営状況と自己点検・評価
 
2 平成16年度の大学運営
 
 平成16年度は,国立大学法人上越教育大学が設置され,第一期中期目標期間の第一事業年度として,様々な業務の改善を実施した。
 まず,学長が全学的な視野に立ち,これまで各講座等において発議してきた教員の人事案件を学長発議とし,教育研究組織の編成・見直しを戦略的・弾力的に行うことができるようにした。これにより,学長を中心とした意志決定システムを確立した。また,学長補佐体制を充実するため,法人化前は2名だった副学長を3名に増員する一方,学長特別補佐3名(うち2名は民間から登用)を配置した。さらに,各副学長を室長とする総合企画室、知的財産本部,地域連携推進室などを設置し,企画立案部門の充実を図った。また,大学院及び学部における修学指導に資するため,平成17年度から新潟県現職教員等を学校教育総合研究センターの助教授として,任期付き(原則3年)で採用することを決定した。
 財務面では,戦略的な法人内の資源配分を推進するため,全学施策経費の予算枠を新設し,年度計画に基づく事業の円滑実施を目的とする重点施策経費と全学的視点からの教育研究の充実発展を目的とする学長裁量経費に区分し,予算を重点的に確保する一方,運営費交付金,授業料等の自己収入及び雇用計画を見通した人件費等の支出についてシミュレーションを実施した。さらに,学内公募型の研究プロジェクトについて,若手教員等の育成のための募集区分を設け,新鮮な発想に基づく教育実践研究の掘り起こしを図った。
 教育面では,社会ニーズにあった改革を行い,大学院学校教育研究科の長期履修学生制度に基づく教育職員免許取得プログラムの導入,並びに理科野外観察指導者養成部門及び小学校英語教育部門の開設を平成17年度から行うこととし,学長,副学長等が各都道府県の教育委員会,私立大学を訪問するなど,精力的な広報活動を展開した。その結果,平成17年度大学院入学者選抜試験は,創立以来最大の受験者数372名となった。
 また,大学キャンパス中央の講義棟1階を改装し,教育支援課,学生支援課,及び就職支援室を1箇所に集中配置し,学生サービスの向上を図った。
 成果が数字で表れる大きな目標のひとつである教員採用試験の受験者比率では,トータルな教職講座を実施した結果,学部で昨年度比0.9%増,大学院で昨年度比3.1%増の結果となり僅かであるが改善された。また,中期計画で掲げた学部学生の教員就職率を65%に高めること,及びベスト10以内の維持に努めるという点についても,教員採用情報等をこれまで以上に学生へ提供した結果,教員就職率及びベスト10以内の維持の基礎固めを行うことができたと考えている。今後も,立案した「学生就職支援プロジェクト」計画等を基に目標の達成を目指していく。
 平成16年度は,新潟県にとって度重なる自然災害(7.13新潟豪雨災害や10.23新潟県中越地震)に見舞われた年となったが,直ちに被災地周辺の小・中学校等へ教員養成系大学としての特色を活かした支援活動を学生と教職員が一体となって積極的に取り組んだ。
 業務運営の改善を推進するためには自己点検・評価体制の確立が重要となるため,点検・評価及びそのための情報分析を担当する大学評価委員会と作業グループを組織し,事務局に置いた企画室との連携により,外部評価にも対応できる新たな自己点検・評価基準と観点・指標を作成するとともに,各事業年度の自己点検・評価方法を作成し実施した。その結果,全体としては,法人化元年度として,計画の導入作業に相当する部分が多いが,年度当初に計画した事項は,ほぼ順調に達成できたと判断している。