4 教育・研究活動
 
(1) 各講座・分野の教育・研究
 

@ 学習臨床講座
ア 組織
 平成12年に開設された本講座には、教育方法臨床、学習過程臨床、情報教育、総合学習の4つの教育研究の領域からなる分野によって構成されているが、分野ゼミ研究室ごとに、教育研究を通して、個々の独自性を発揮してきた。
 本講座は、教員20名(うち教授定員12名)の定員で構成される。前年度からの懸案事項であった退職者の人事補填による新採用として、今年度は教授1名、助教授1名を補充できた。また、教授昇任2名もあったが、前年度に続き、今年度も副学長を輩出したため、以上の結果、20名の定員のうち、18名が現有で、なお2名の欠員があり、次年度に繰り越した。
イ 教育・研究の特色
 本講座は、従来の実践的な研究をさらに教育現場に密着して、児童・生徒を臨床的に研究し、教育実践に応えられる教育研究を創造することを目指して来た。
 大学院の教育研究活動は、教育方法臨床、学習過程臨床、情報教育、総合学習の4つの教育研究領域の分野で、学習臨床の研究内容とその研究方法を、実践場面分析演習を通して集団的に取り組んでいる。研究室ゼミ単位での演習を通して、院生自身が現場の教育実践に取り組み、課題を明らかにしながら、授業分析をはじめとする研究活動を行っている。また、4分野ごとの組織単位で、修士論文の構想発表と中間発表を公開のかたちで実施し、分野だけの狭さを超えて、隣接分野からの成果と刺激を吸収できるようにした。この結果、論文提出後の修士論文発表会は、各分野単位ではなく、4つの分科会形式で行われ、学習臨床研究の共通基盤の構築を意図して、分野相互の研究動向を確認する場ともなっている。
 学部に関して、本年度は2度目の卒業論文であった。大学院と同様の経過を踏まえ、方向性を模索しながら2会場で発表会を開催したが、4分野相互乗り入れで、学習臨床の成果を確認できた。
ウ 運営・活動の状況
 大学院の院生数はM2が56名、M1が47名で、合計103名であり、この他に学部生も、1学年標準定員20名で、3学年分の約60名が在籍しており、わずか20名の教官が講座開設以来、研究指導に当たっており、すでに限界を超しているが、院入試受験生獲得の努力の結果、17年度の新入生は63名を予定している。
 なお、100名を超える院生については、把握するには余りにも多い人数のため、講座代表と各分野の世話人の5名と院生の代表者10名による「教官・院生協議会」を毎月、開催して、コース・分野の運営や研究環境、院生の研究指導の問題等を、定期的に協議しながら、改善の努力を図ってきた。
エ 今後の検討課題等
 平成17年度はコース開設6年に当たり、法人化の2年目である。5年間を総括して、平成12年度改革の見直し評価をした上で、講座・コース体制の組織修正を考慮する必要がなお一層、高まった感があると思われる。
 また、学部生に関しては、卒業論文発表会における4分野相互乗り入れによる成果等を踏まえ、4分野の垣根を越え、学習臨床コースとして一体化する方向で改革に着手しはじめている。

 


A 幼児教育講座
ア 組織
 平成16年度の幼児育講座のスタッフは、助手より昇任した幼児教育学担当の杉浦講師、幼児心理学担当として新採用となった礪波講師を加え、総勢で6人となり、この6人で幼児教育学、生活科教育学、幼児心理学、保育内容という4領域を担当することになった。
イ 教育・研究の特色
 本学の保育士養成を中心的に担ってきた。具体的には保育実習専門部会に部会長を含む3人のスタッフを送り、特に保育園実習の引率・指導を講座のスタッフ全員で行った。他に、保育園実習の事前指導を部会委員を中心に行っている。
 幼稚園1種免取得希望者(幼児教育専修の4年次生他)を対象とする幼稚園専修教育実習については従来のやり方に加え、講座のスタッフが「事前指導」をローテーションで行うことにした。他には、附属幼稚園に依頼し、直前指導として、幼稚園の特徴や実習に際しての諸注意、等について話をして頂く機会を設けた。
 「実践セミナー」「実践場面分析演習」の、特に「T」では、幼稚園・保育園での観察・参加に加え、実践者の方に来て頂き、各園での保育・教育に関する質疑応答・討議の時間を設けた。関係する学生の成果は従来通り報告集としてまとめた。
 学部2年生全員を対象とした2年次の観察・参加については従来通り講座のスタッフ全員が実習の引率・指導と各園への挨拶回りを行っている。
 なお、幼児教育専修4年生及び幼児教育専攻の2年生の全員がそれぞれ卒業、修了したことを付記しておく。
ウ 運営・活動の状況
 講座運営の要である講座会議は従前通り隔週開催という原則を踏襲し、全20回を全スタッフ参加のもとに行った。なお、このほかに臨時の会議が複数回催されている。今年度は会議運営の効率化を図るべく、条件が許す限り1回の会議を90分以内でまとめるよう努力した。
 附属幼稚園との連携がより整えられた。講座と附属幼稚園との話し合いのもと、幼児教育講座と附属幼稚園との連絡協議会が新しい名称のもとに発足し、その運営方法、参加者、議題、開催日程等について取り決めを交わし、今後は定期的に開催されるこの協議会の討議に従って具体的な連携が進められることとなった。会の実質的な運営は講座代表と附属副園長とが担当することになった。
エ 今後の検討課題等
 文部科学省の指導のもと平成17年度に第1回目の試験が実施される「幼稚園教員資格認定試験」には本学の幼児教育のスタッフが中心となって参加することが決定し、他大学との連携のもと、具体的な作業が進められている。他に、従来の「幼小連携」に加え、幼稚園と保育所との連携を図る「幼・保連携」が「総合施設」という形で話題に上がってきている。早急に講座としての取組が必要とされよう。

 


B 生徒指導総合講座
ア 組織
 本講座の教員構成において,前年度末時点で次の異動があった。すなわち,前年度3月末日で古賀一博教授が辞職され他大学(広島大学大学院)へ配置換になった。また,4月1日付で安藤知子助手が助教授に昇任され,教授3名,助教授7名となった。また,大学院修士課程在籍者は,2年次学生22名,1年次学生24名であった。
イ 教育・研究の特色
 第一に、本講座の内部を次の三つの授業科目群に緩やかに区分して日常の教育・研究活動を展開しつつ,なお講座としての統合性を追求する指導体制を採っている。すなわち,(1)不登校やいじめ等,生徒指導の今日的問題に個別的に対応するだけでなく,チーム・ガイダンスのコーディネータとして総合的に問題解決を図る教員の育成をめざす「生徒指導相談」の科目群,(2)開かれた学校や特色ある学校づくり等,自主的・自律的な学校経営をめぐる現代的課題にスクール・リーダーとして対処しうる教員の育成をめざす「学校経営」の科目群である。そして,(3)社会の変化と学校が置かれている状況を客観的に理解し、保護者や地域の教育への関心やニーズの分析・把握をめざす「教育社会環境」の科目群である。これら三つの科目群それぞれの専門分化を許容しつつ,併せて学校教育の実践的な諸問題に対する総合的かつ臨床的な研究活動を学内研究プロジェクト等の推進を通して展開している。
 第二に,大学院発達臨床コースの「生徒指導相談」「学校経営」「教育社会環境」の3分野それぞれの専門性を活かしつつも、発達臨床コース全体の統合性のある教育活動を展開するために,特に研究セミナーと実践場面分析演習の授業運営に独自的な工夫・配慮をしている。つまり,研究セミナーについては日常の個別教員による指導の発展形態として,5月に大学院2年次学生の「修士論文第2次構想発表会」(1年次学生も全員出席),10月に「修士論文中間発表会」(同),そして12月には1年次学生による「修士論文第1次構想発表会」を開催して,所属教員全員による多面的かつ詳細な指導を実施している。また,実践場面分析演習については,学校教育に関する実践的諸問題への広い視野の習得と分析的考察能力の向上を意図して,ディベートによる追究・討議の機会を設定し,学部3〜4年次学生(「実践セミナー」の授業)を含めた意欲的な学習を促した。なお,この実践場面分析演習の授業記録については,本年度も報告書にまとめ公表した。
 第三に,本講座所属の教員多数が会員となっている日本学校教育学会の運営に力を注ぐとともに,特に現職教員の大学院学生に研究大会での研究発表や機関誌への論文投稿を積極的に行うよう指導し,広くわが国教育学界の発展・向上にも貢献している。
ウ 運営・活動の状況
 毎月第一水曜日を基本に講座会議を開催し,本講座の運営に関する重要事項について協議している。本年度の主要事項としては,大学院定員充足のための方策,学部1年次学生の2年次進学時の発達臨床コース生徒指導総合分野への所属希望者の増加であった。
エ 今後の検討課題等
 講座所属教員が昨年度より1名減となったため(特に助手の職位がなくなったため),講座の運営に関わる事項を分担処理する仕組みを考えざるを得なかった。さらに,効果的で負担が少ない事務処理の推進を課題としたい。また,大学院の「生徒指導相談」分野での研究を希望する学生の数が以前より多い状態が続いており,専門分野としては教育相談(教育学系)専任教員の配置(増員)をできるだけ早く実現したいと考えている。

 


C 心理臨床講座
ア 組織
 心理臨床講座では,田中敏教授が学長補佐特任教授として実質的に講座の業務から離れたが,一方で内田一成教授が学校教育総合研究センターから配置換のため本講座に転入した。したがって,平成16年度の本講座の構成員は, 教授2, 助教授7, 講師2, 助手1の陣容であった。
イ 教育・研究の特色
 本講座の教員は,大学院の臨床心理学コースと発達臨床コースを担当し,各々,大学院の入学試験の方式やカリキュラムが異なっていることから独自に特色ある教育・研究活動を行った。しかし両コースの学生の学習ニーズに対応するため, 臨床心理学を専門とするスタッフは, 学校心理分野学生のためのカウンセリングや教育相談等の講義や演習を開講し, また学校心理を専門とするスタッフは, 臨床心理学コース学生ための基礎的心理学の講義や演習を開講し相互に補完し合った。
 また,大学院で開設されている「実践場面分析演習」においては,臨床心理学コース所属の院生と,発達臨床コース学校心理分野の院生がチームとなり授業に参加した。したがって本講座教員も全員体制でこの授業を担当した。
 学部教育では, 心理臨床分野の専攻生に対して全教員で指導にあたった。特に, 卒論指導では, 基礎的心理学と臨床心理学との連関を理解させるために連携体制をとった。
 研究関連では, 各教員スタッフが心理学に関する研究を積極的に行っており, その成果は内外の心理学系学会誌や本学紀要への掲載にみられている。また, 臨床心理系スタッフは本学心理教育相談室紀要「上越教育大学心理教育相談研究」へも多数の論文を掲載している。
ウ 運営・活動の状況
 本講座では、講座会議を毎月1回開催しており、ここで人事案件、大学院及び学部教育に関する案件が審議された。特に、大学院教育に関しては本講座教員が2コースに別れていることから、予算や教育方法の整合性を保つための工夫が必要であった。
エ 今後の検討課題等
 先に述べたように、本講座では大学院に関わる授業担当や研究指導が2コースに分かれるために、教員間の連携や協働が難しい面がある。しかし、両コースの院生にとっては、基礎心理学と臨床心理学の両面の習得や研究への適用が必要である。したがって、今後も両コースに関わる教員間の連携や協働作業が重要な課題となる。特に、学生のニーズに応えるために、コースの壁を越えたカリキュラムの構築や教員の研究指導体制の工夫が早急に求められる。

 


D 障害児教育講座
ア 組織
 教授4名,助教授2名,講師2名で構成された。また,障害児教育実践センターの教授,助教授,講師,助手の各1名と緊密な連携をとりながら運営がなされた。
イ 教育・研究の特色
 本講座の目標は,障害児教育の現場に直結した高度な専門的知識と実践的技能を備えた教員の養成である。このため,障害児の教育学,心理学,生理・病理学,指導法を専門分野とする教員スタッフを擁し,盲・聾・養護学校に在籍する児童・生徒の他,小・中学校に在籍する軽度発達障害のある子どもに関する教育・研究を展開した。特に,講義による専門的な知識の提供とともに,障害児教育実践センターにおける臨床研究の場を数多く提供した。授業としては,盲・聾・養護学校教諭の各専修免許状,一種免許状の取得に必要な科目を開設し,合わせて新潟県内の盲学校及び養護学校の協力を得て教育実習を実施した。
ウ 運営・活動の状況
 講座と障害児教育実践センターの教員全員による講座会議を30回開催し,両組織の運営について審議した。また,諸課題の解決に向けたワーキング・グループを組織し,院生募集・支援,カリキュラム,予算,人事,障害児教育実践センターの運営,地域連携に関する改善策を検討した。特に,院生募集では,雑誌広告の掲載,パンフレットの作成・配布,私立大学訪問,ホームページにおける情報提供を実施し,院生支援では,修士論文作成にかかわる発表会開催方法の改善,障害学生やハルピン師範大学からの留学生に対する支援体制の整備等を実施した。
 また,カリキュラムに関しては,大学院では特別支援教育論Iを開講し,近年の障害児教育の動向に対応した。また学部では,大学院までの6年一貫教育を念頭に置き,まず1年次学生を対象とした障害児教育概論Iを開講した。
エ 今後の検討課題等
 院生募集に向けて,本講座の活動内容をホームページ等を通して更に広く公開する手だてが必要である。また,現職院生の確保を図るためには,遠隔教育を利用したプログラムの導入可能性についても具体的に検討を進める必要がある。
 一方,入学した院生に対する支援の質的向上も必要であり,特に教育職員免許取得プログラムの履修者に対する支援のあり方を明確にしておく必要がある。
 以上の課題を解決していくためには,障害児教育実践センターとの連携を一層密にするとともに,スタッフの充実が必要不可欠である。

 


E 言語系教育講座(国語)
【講座の概括】
学 会:上越教育大学国語教育学会(国語講座教官・学部学生・大学院生・卒業生・修了生、その他学会の承認にした者で構成)第20回総会・第41回例会を平成16年6月に、また第42回例会を平成17年2月に開催した。6月の例会には渡部洋一郎講師、および卒業生・修了生の研究発表があり、2月の例会では、迎勝彦助手(17年4月講師昇任予定)の研究発表および学部生の卒業論文、大学院生の修士論文の成果が発表された。なお、この学会発表は、教育委員会等、外部に開かれたものである。
刊行物:学会誌『上越教育大学国語研究』第19号(上越教育大学国語教育学会)を平成16年2月に刊行した。執筆者は、渡部洋一郎(本学講師)、鹿嶋実(宇都宮市立城山中学校教諭)、徳永辰通(中部大学国際人間科学研究科言語文化専攻)、栗原直行(平成16年度本学大学院修了)、野村真木夫(本学教授)、趙小鳳(東海大学非常勤講師)・孫敦夫(青山学院大学非常勤講師)の各氏である。
【講座における教育・研究の特色】
○ 当講座では、教育現場における母語としての国語の通汎性に鑑み、その基礎力・応用力にもとづく「教育実践学国語」の構築をめざして、各分野の取り組みの統合をはかっている。座学における理論研究を重んじると同時に、ひろく実践的な教育と研究の展開を心がけるようにした。
○ 「実践場面分析演習T・U」は、各ゼミ(または合同ゼミ)での運営とし、院生・学部生の共同による授業開発、教育実習事前・事後指導、教材開発・授業分析のカンファレンス、実地踏査研究等を実施している。国語分野全体の取り組みとして研究成果をとりまとめるには至っていない。
○ 各分野がそれぞれの分野特性にしたがって専門的な研究・教育に従事しつつ、「国語」としての総合的・統合的な研究・教育のあり方を模索して、本年度は、各ゼミ単位および複数ゼミの融合単位において、院生・学部生の協同による相互啓発を心がけ、現職院生の模範授業を学部生が体験するなどの試みがおこなわれた。文学を専攻する研究室では、実地踏査研究をおこなっており、本年度は、近代文学研究室では東京・横浜を中心とした文学探訪を企画・実行し、古典文学研究室では、「徒然と平家の旅」(京都)と題して文学の舞台実地踏査を、学部・院の共同企画としてとりおこなった。
○ 修士論文作成の階梯として、国語講座全体による2年次中間発表会(平成16年9月)、1年次構想発表会(平成16年11月)を本年度も開催し、全所属教官の指導・助言を受けて完成に至るような指導体制をとった。同趣旨による卒業論文中間発表会は、平成16年10月に開催した。
 学生・院生は、各ゼミの指導教員のもと、この全体的な取り組みを卒論・修論完成へのおおきな里程標としてとらえ、はやくからのとりくみと努力、その成果が問われる舞台と考えている。卒論・修論指導では、ゼミ単位の指導が中心ながら、国語科は、国語科全体で学生・院生を育てるという姿勢を今後も貫いていきたいと考えている。
○ 教育実習の一層の充実のために、国語全教官が国語コース所属学生の実習配当校に出向いて指導・助言にあたり、事後、各ゼミ等に於いて参加学生とともに反省研究会をもった。なお、当講座では、3年次・4年次生の教育実習に、各ゼミの学部生・院生が観察参加する。

 


F 言語系教育講座(外国語)
ア 組織
 外国語分野のスタッフは附属実技教育研究指導センター所属教官と外国人教師を含めて9名であったが,平成16年7月1日付で石濱博之氏が助教授として採用され、平成17年3月31日付けで若山真幸氏が辞職されたことにより,現在は9名(教授5,助教授2,講師1,外国人教師1)である。各教官の教育・研究活動等は第二章の当該項目を参照のこと。
イ 教育・研究の特色
 学校教育学部では,英語の基本的な力を身につけさせるとともに小・中・高等学校及び社会のニーズに対応できる能力の育成を目指して創設された言語系英語コースの4年目にあたり,2年生15名,3年生12名,4年生9名が在籍した。11月に卒業論文中間発表,平成15年2月には卒業論文発表会を開催した。本年度は言語系英語分野として卒業生9名を送り出すことができた。
 大学院言語系英語コースでは,英語教育に関する指導力・教科専門性・実践的技能をあわせもった人材の育成を目指している。平成16年度は,1年生が5名,2年生が8名在籍した。2年生は4月の修士論文構想発表会,10月の修士論文中間発表会,1月末の修士論文審査・試験を経て,3月に巣立っていった。1年生は,前期において様々な授業を履修しつつ9月末には論文指導教官を確定し,次年度の構想発表に向けて本格的な研究活動に入った。大学院は新カリキュラム4年目にあたり,共通科目・実践場面分析演習I・II「英語」が学部の実践セミナーI「英語」とジョイントしたことを受けて,演習の内容・方法ともに一新された。
 「小学校英語教育」担当の石濱博之氏の着任に伴い,「小学校英語教育分野」が開設され,大学院では「小学校英語コミュニケーション演習」の授業が開講された。これにより,本学が近隣の公立小学校における英語活動を支援する拠点校となって,「小学校英語教育」を推進していくことが期待される。
ウ 運営・活動の状況
 平成16年度は分野会議を28回開催した。審議した主な内容は「大学院手員充足策について」,「上越市教育委員会との協力・連携体制確立」,「特別設備費申請」,「現代的教育ニーズ取組支援プログラム申請」等である。このうち,「特別設備費申請」については,学内で希望講座・分野のヒアリングが行われ,外国語分野から提案した「マルチメディア語学教材システム」が採用され,平成17年度予算での設置が決定した。また,「現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)」についても,学内でヒアリングがあり,外国語分野からの取組「英語が使える小学校教員の養成」が採用された。
 「小学校英語教育」に係わる出前講座を実施し,夜間公開講座開催の準備や上越市教育委員会との連携・協力体制確立につとめた。また,糸魚川市の公立小学校から「小学校英語活動」について支援を求められ,石濱助教授が指導・助言を行っている。
 学会に関わる活動では,平成16年7月24日には,言語系外国語講座が事務局となっている「上越英語教育学会」の第8回大会が本学LL教室で開催された。実践報告・研究発表を行うとともに,機関誌『上越英語研究』第5号を刊行して,地域・社会との教育・研究分野での連携を図っている。
エ 今後の検討課題等
 「マルチメディア語学教材システム」の導入に伴い,e-Learningを活用した教材開発や自学型カリキュラムの整備などを進めていく必要があると思われる。また,現代GP「英語が使える小学校教員の養成」で提案した取組についても,「英語コミュニケーション能力向上」,「小学校英語指導力養成」,「異文化理解マインド育成」の3点について重点的に取り組んでいくことが求められる。これらの施策によって大きな成果を上げることは,結果として本学の大学院定員充足にも貢献することにつながると思われる。

 


G 社会系教育講座
ア 組織
 平成16年度4月1日における社会系講座の構成員は教授7人、助教授6人、講師1人、助手1人の計15人であった。志村喬講師は平成17年1月1日をもって助教授に昇任した。また、山縣耕太郎助手は平成17年4月1日をもって助教授に昇任する。安田尚教授は、平成17年4月1日付けで福島大学行政政策学類教授として転出する。
イ 教育・研究の特色
 当講座では、教育内容にかかわる地理学、歴史学、法学、経済学、社会学、倫理学、宗教学などの専門諸科学、その教育方法にかかわる社会科教育学を研究し教育する体制をとっており、学部生や院生は自らの研究課題に基づいて各研究室に所属し、基本的には各指導教員の下で卒論や修論を作成する。しかしながら、当講座では、研究室単位だけではなく、全教員が協力・連携して学生や院生の教育・研究指導にあたるという共通認識が確立されている。院生を例にすれば、放課後の時間帯を用いて、全教員参加の下、修論構想発表会1回と修論中間発表会3回が実施されている。したがって、学生や院生の研究の中には、専門研究、社会科教育実践、専門研究の内容研究を教材化するという視点で再構成したものや、いわゆる学際的・総合的な研究に取り組んだりしたものなど多様でゆたかな成果を生み出している。
 当講座の全教員が会員となっている上越教育大学社会科教育学会では、「学会だより」や学会誌の発行、巡検、例会や研究大会の開催等の研究活動を継続して行っている。本年度の研究大会は10月23日に、当講座の大学院修了生の参加も得て本学で開催され、活発な討議がなされた。
ウ 運営・活動の状況
 本年度、社会系教育講座会議は計16回開催された。ここでは、各種委員会委員と講座代表による議事と報告がなされ、系としての意見がとりまとめられた。学部教育と大学院教育における指導理念と指導体制についても話し合いがなされた。院生の修士論文指導については個別指導のみならず、系全体でも行えるようにするためM1、M2それぞれ年2回の中間発表会を開催した。学部生の卒業研究における指導体制は1教員上限2名とし、また院生の修論指導については原則2名を指導する体制とし、ほぼこのこの線で指導が行われた。実践セミナーT・実践場面分析演習Tについては、学部3年生と大学院1年生が合同で行う体制が定着し、成果をあげている。懸案の学部4年生の学生控室設置に関しては、引き続き申請した。学部生の教員採用試験の結果は、11人受験し一次の合格は7人、二次は4人で合格率は36%であった。大学院生では受験者1人、合格者は0人であった。
 なお平成16本年度の当講座の学部卒業生は16人、大学院修士課程修了者は13人である。
エ 今後の検討課題等
 大学院の定員充足については、定員25人に対し前期、後期、二次入学試験の合格者は27人であり、合格者数では定員を充足している。しかし、現時点(3/20)で3人の辞退者がおり、大学院定員充足は引き続き最重要課題であるといえる。現職教員の受験者が減少している中で、現役(学部出身者)と留学生の比重が増大している。今秋に予定されている学習指導要領等の見直しの影響も予想されるとはいえ、今後一層、定員充足につとめる必要がある。また、学部生の学生控室の設置にこの間取り組んできたが、次年度も粘り強く取り組んでいく事を系会議おいて確認している。さらに、教員採用試験の結果は15年度は二次の合格者が9人と大きな成果を上げたが、16年度は4人にとどまった。また、大学院生は現役の受験率も高まると予想されるので、大学院においても一層の受験指導と援助を強めることが求められている。

 


H 自然系教育講座(数学)
ア 組織
 数学分野の教員スタッフは教授4名,助教授2名,講師1名,助手1名の計8名であり,平成16年度末で退職する教員(教授)が1名である。
イ 教育・研究の特色
 数学分野における教育と研究は,数学を専門とする教員及び数学教育学を専門とする教員によって大きく2つに分けられる。
 数学を専門とする教員の教育・研究の特色は,基礎教育に大きく貢献していることである。特に,理数科離れを引き起こしている現況について,各教員が授業,演習,ゼミ等において学部生,院生に対する魅力ある教育活動に工夫をしている。
 数学教育学を専門とする教員の教育・研究の特色は,フィールドワークを中心とした教育現場との密接なかかわりをもった研究を推進し,これを学部・大学院の教育に生かしていることである。特に,ゼミにおいては,机上での議論だけでなく,教員と院生が(時には学部生も)一緒にフィールド(教室)に入り,教育実践研究過程を共有することを積極的に行っている。また,大学院生の研究活動において,他大学(筑波大学,東京理科大学)他講座(学習臨床講座学習過程臨床分野)との交流,各学会(日本数学教育学会,全国数学教育学会)等における研究交流を積極的に図っている点にも特色がある。
 実践場面分析演習T,U「数学」及び実践セミナーT,U「数学」においては,数学分野のこれら教育・研究の2つのベクトルを有機的に関連づけるべく,日々工夫と改善を図っている。平成16・17年度上越教育大学研究プロジェクト(一般研究)「教室を拠点とした」協同的数学教材開発研究方法論の構築」の採択によって,実践研究レベルにおける両者の有機的関連の探究へとさらに発展させようとしているところである。
ウ 運営・活動の状況
(ア)分野会議の開催状況
 概ね毎月開催した。教授会が全学教員が参加することになり,各種委員会の報告等は著しく少なくなった。
(イ)審議された主な事項
 教員の採用・昇任の際の基準を明確にした。
(ウ)重点的に取り組んだ課題や改善事項
 来年度に採用する教員の人事に,教室の教員が審査の過程に(制限付きであるが)参加することにした。
エ 今後の検討課題等
 今後の課題は,特に,数学を専門とする教員と数学教育学を専門とする教員による共同作業によって実現しうる,地域の小・中学校及び高等学校における教育活動への支援の在り方について具体的に検討し,これを積極的に推進することである。

 


I 自然系教育講座(理科)
ア 組織
 理科分野は「物理学」,「化学」,「生物学」,「地学」,「理科教育」部門と今年度から新設された「理科野外観察指導者養成」部門からなり,新部門の専任教員として4月1日付けで中村雅彦教授が発令された。また,中村教授の昇任に伴う助教授ポストの空ポストを利用して4月1日付けで下村博志講師が発令されたため,理科分野の構成員は教授7名,助教授5名,講師1名,助手1名の計14名となった。
イ 教育・研究の特色
 理科分野は,自然に興味関心をもち,積極的に研究に取り組む意欲を育て,科学研究の体験を踏まえて自分自身を発見し,次世代の教育に活かす人材の育成を目指している。平成13年度より学部および大学院修士課程における教育・研究指導体制を「物質・エネルギー」,「生命・地球」,「理科総合」の3グループとし,学生はいずれかに所属し,講義,演習,実験,実習,ゼミナール等の指導を受けながら,理科の教材研究や指導方法および自然現象の基礎的研究を行っている。特に,今年度開設された「理科野外観察指導者養成」部門における授業や公開講座は,野外観察に秀でた理科を担当する教師を養成するためのものであり,専任教員である中村教員のほか兼担教員6名,非常勤講師1名で実施された。
 本年度理科コース所属の学部学生は2年生9名,3年生10名,4年生8名,大学院修士課程学生は1年生9名,2年生12名,教員研修留学生1名である。学部4年生および大学院修士課程2年生全員が無事卒業・修了した。また,本年度初めて修士論文発表会を公開し,貴重な意見をいただいた。
ウ 運営・活動の状況
 理科分野の全教員が構成員である理科部会は18回開催され,理科分野の学生の教育・研究指導に関する内容や全学の教務や入試業務等の打ち合わせを行ったほか,理科コースの新しいカリキュラムについての議論を行った。理科教授部会は15回開催され,教員の選考基準,将来の教育・研究指導体制,人事案件等について十分に審議した。
 重点的に取り組んだ事柄は主に次の3点である。@新部門に開設された授業や「上越教育大学野外観察指導者認定制度」を支える公開講座および免許法認定公開講座についての広報活動。A大学院説明会や私立大学へのキャラバンなど大学院定員充足に対する広報活動。B新潟地震の被災地である小千谷市立東山小学校の全児童を招いての理科実験授業。@については,初年度で広報活動が十分でなかったにもかかわらず,「理科野外観察指導実習A」〜「理科野外観察指導実習J」の受講者は延べ63名,公開講座の受講者は11名,免許法認定公開講座の受講者は10名であった。Aについては,平成17年度の大学院入学試験における自然系コース(理科)の合格者は22名,うち長期履修学生制度に基づく「教育職員免許プログラム」履修希望者8名である。Bについては,来学は1日ではあったが,準備段階を含め多くの教員と学生が参加して,理科実験授業は成功裏に終わり,地域貢献とともに学生の教育にも役立った。
エ 今後の検討課題等
 来年度は大学院学生数が大幅に増加することになるが,教育・研究指導体制におけるグループの学生数に偏りが生じることが予想される。そのために生じる指導学生数の多い教員の労働力の軽減および研究費の確保をどのような方法で行うのか,また,8名という大量の長期履修生にたいして理科としてどのような教育を行っていくのか,が今後の課題である。さらに,今年度末で退職した中川教授の空ポストを利用してカリキュラムの改善に取り組むことである。

 


J 生活・健康系教育講座(保健体育)
ア 組織
 本分野の教育研究は、教員スタッフ11名でスタートし、10月1日付けで学校保健担当の下村義夫氏を加え、後半12名によって推進された。そして本年度3月31日をもって長澤靖夫氏が定年退職された。その後任人事については、次年度になってから取りかかる予定である。
 また、本分野で学んだ学生は、学部が47名(4年次:14名、3年次:16名、2年次:17名)、大学院が27名(2年次:17名、1年次:10名)であった。
イ 教育・研究の特色
 本分野の教育研究は二つの面から特徴づけることができる。ひとつはカリキュラムの面で、大学院の「実践場面分析演習T・U」と学部の「実践セミナーT・U」の合同授業によって、教育実践及び授業作りをめぐる、院生、学生双方の学習効果が高いということ、そしてもう一つは地域貢献の面で、出前講座を始め、様々なスポーツ教室の開催、あるいは学生たちによる地域スポーツへの支援活動等が積極的になされていることである。
ウ 運営・活動の状況
 本分野では、一体化した統一的運営をモットーに、今年度は、分野学生のほとんどが主軸となって活躍している運動部活動の指導はもとより、平成16年12月17日、22日 および翌年3月1日に新潟県中越地震の被災地小学校に対しての教員と分野学生ボランティアによる学習支援(本学での体育授業および十日町市内スキー場でのアルペンスキー授業)や、文部科学省の依頼による平成16年度体力・運動能力テストの実施、そして長澤靖夫氏の退職に当たっての退職記念事業(記念祝賀会並びに記念誌の発刊)等、積極的な活動を展開した。
エ 今後の検討課題等
 近年の教員スタッフの減少に伴って、体育実技全般の見直し、特に長澤氏の退職による器械運動実技の授業担当者の問題や学部入試の実技内容の、改変か、精選かについての検討などが、分野内でコンセンサスを高めながら、進めることが次年度の中心的な課題となる。その上、今後着手される実技教育研究指導センターの新構想との有機的な連携を模索することも同時に課題となってくる。このように次年度は分野のより充実した活動、運営に向けて、長澤氏の後任ポスト及び平成18年度新設の学校ヘルスケア分野への下村義夫氏の所属替えに伴う後任ポストへの対応など、新しい教員スタッフの配置や人事を適正に図っていく必要がある。

 


K 生活・健康系教育講座(技術)
ア 組織
 技術分野教員4名で,技術教育学,木材加工学,金属加工学,機械工学,電子工学,情報工学を担当した。技術分野には,学部の2年生1名,3年生6名,4年生3名,大学院修士課程の1年生2名,2年生3名,合計15名が所属した。修士課程には,福岡県からの派遣現職教員の2年生1名と,中国人留学生の2年生1名が含まれる。年度末には,学部4年生・大学院2年生は全員卒業・修了した。卒業生の進路は,公立中学校正採用教諭1名2名及び公立小学校正採用教諭1名であり,修了生の進路は,公立中学校臨時採用教諭1名であった。
イ 教育・研究の特色
 ものづくり,エネルギー利用,コンピュータ活用,環境などに関する深い知識と広い視野を持ち,技術教育の発展に貢献できる人材を養成するために,技術科教育,木材加工,金属加工,機械,電気,栽培,情報とコンピュータ分野を中心に教育・研究を行った。これら各分野内容の理論的理解も行うが,実践的・体験的な学習である実習を重視した指導も行う。
ウ 運営・活動の状況
 学部の授業「実践セミナーT,U」,大学院の授業「実践場面分析演習T,U」は,全教員共同で実施するのではなく,各研究室単位で実施し,各教員の個性・特長を発揮しやすいようにした。所属教員の熱心な指導により修士課程院生は全員,全国レベルの学会発表を行っており,外部評価による研究面での質の向上が図られた。2月には修論発表会と卒研発表会を実施したが,修論発表会は上越市教育委員会を含めた一般に対して公開可で行われた。分野内での教員,学生,院生相互の親睦を深めるため,分野全体での親友生歓迎会・送別会の行事を行うが,各研究室単位では,よりきめ細かく生活全般に渡った指導がされている。
 なお,分野会議を1回/月 開催し,その運営を行った。
エ 今後の検討課題等
 技術分野では前述のように指導内容が多岐に渡っているので,各指導内容について適切に教育・研究するには,各実験室・実習室が必要である。また実習を重視しているのでそれらなりの広さが必要である。しかし本技術分野では,元々大学院修士課程のみの構成であったためか,広さが十分とはいえない。このことは,実習を重視する技術教育を行う上で,大きな問題点といえよう。
 また,技術分野所属の学生・院生数をより増やせるよう,検討が必要がある。

 


L 生活・健康系教育講座(家庭)
ア 組織
 平成16年度の家庭分野の構成員は教授4人、助教授3人、助手1名の計8名であった。助手の助教授昇任人事が1件あり、平成17年4月発令が決まった。
 本年度家庭分野所属の学生は学部24名(2年次9名、3年次6名、4年次9名)、大学院修士課程の学生は8名(1年次3名、2年次5名)であった。
イ 教育・研究の特色
 家庭科教育、家庭経営学、児童学、食物学、被服学の教員8名が、次世代を担う教師養成をめざし教育・研究を実施した。人間のライフステージを視野に入れた生活科学・生活経営・生活福祉の視点に立った教科専門研究と教育実践力を養う教科教育実践研究の2つについて授業を展開した。
 本分野の目標を達成するために、学部生・大学院生を指導し、その結果、卒業論文8編、修士論文5編の成果をあげた。研究成果を学内外の人々と 共有し交流するために、修士論文発表会の公開を行った。学外にも案内を出し参加を得た。
ウ 運営・活動の状況
 分野会議は定例11回、臨時20回、合計31回、分野教授会は7回開催され、法人化元年という変化に対応した議題が多く取り上げられた。審議された主な事項は、院生室合併問題、大学院定員充足をめざす私大訪問・雑誌掲載広告、教大協の開催形態、保育園実習・施設実習への対応、教育実習中の問題発生、学生の就学上の問題など多岐にわたる内容であった。
 また、講義支援システムを実践セミナーおよび実践場面分析演習の授業に導入し、全員の教員が利用した。
 私大訪問キャラバンに多く参加し、これらの成果もあり、本年度の応募者は7名と昨年の3名を上回った。大学院案内の郵送を業者委託とし、簡便化した。
エ 今後の検討課題等
 大学院の定員充足のために、時代のニーズに対応した魅力的なカリキュラムの構築が課題である。そこで、平成18年度に向けて分野内にカリキュラム検討会を立ち上げた。また、分野として、大学で提案している遠隔授業についても検討することになった。これについては、年月のかかる問題と認識している。まず、授業担当者が思い描く授業設計が課題であり、大学の条件整備として授業運営を可能とする技術提供、講習会などが求められる。

 


M 芸術系教育講座(音楽)
ア 組織
 芸術系教育講座(音楽分野)は平成16年度4月においては、教授5人(声楽1、器楽1、作曲1、音楽学1、音楽教育1)、助教授5人(器楽2、作曲1、音楽学1、音楽教育1)、助手2人(声楽1、器楽1)という構成であったが、5月に器楽の助手1人、平成17年3月に音楽学の助教授1人が他大学に転任し、現在10人のスタッフとなっている。
イ 教育・研究の特色
 音楽の学習が成果を挙げるためには、指導者による継続的かつきめ細かな指導が必要とされるので、音楽分野の教員はこの点をふまえ、学生、院生の一人一人の能力や特性に応じて丁寧に指導している。また、学校という実践のフィールドを主たる研究領域として、音楽教育の理論と実践をつなぐための研究を進めている。
ウ 運営・活動の状況
(ア) 講座・分野会議等の開催状況
 分野会議は原則として毎月1回、状況に応じて臨時会議を開いた。16年度はのべ18回開催した。
(イ) 審議された主な事項
 大学および分野の仕事(委員会委員等)担当、予算の立案と執行、行事/イベントの計画および承認、カリキュラム運営の事項、人事等を中心に審議した。
(ウ) 重点的に取りくんだ改善事項等
 本年度は特に教育現場と大学とのコミュニケーションを密にし、大学の講義と実践現場とのスムーズな連携を図ることに重点をおいた。その一例として公開講座「現職教員のための音楽ワークショップ」を開講した。またカリキュラムの見直しを行って、ブリッジ科目「音楽」、初等音楽科指導法の改革を来年度に向けて検討した。大学院の定員充足についても積極的に取り組んだ。
エ 今後の検討課題等
 スタッフが減少したことおよび、昨今の教員養成を巡る事情を鑑み、さらに効率的かつ有意義なカリキュラムの再編成が求められており、大学院の定員充足問題と合わせて継続して取り組んでいくことが求められている。

 


N 芸術系教育講座(美術)
ア 組織
 美術分野は、絵画、彫刻、デザイン、工芸、美術理論・美術史、美術科教育の6領域よりなり、実技教員の専門はさらに洋画、版画、日本画、木彫、視覚デザイン、立体デザイン、木工芸、陶芸の多岐にわたる。美術分野は教授6名、助教授3名、講師1名、計10名の教員によって運営された。内2名は実技教育研究指導センタ−の所属である。また、非常勤講師による複合造形研究、造形心理学特論、東洋美術史特論、の授業を開講するなど、広くかつ深い教育研究を行っている。
 教員の異動は昨年度辞職した岡教員に変わり、彫刻担当教員として松尾大介講師が着任した。
 在学生は、大学院修士課程2年次8名(内現職4名)、1年次14名(内現職2名)、学部4年次5名、3年次7名、2年次7名(内2名が休学)であった。
イ 教育・研究の特色
 今日の社会状況とのかかわりを視野にいれ、教科教育、美術理論、実技教育から専門性を持った教師の育成を目指している。教育現場と連携して院生を中心にした実験授業と状況の分析等を行い、その結果は学会の論文発表等にあらわれている。また、修士論文の指導においては、1年次の秋期ゼミ、構想発表、2年次の中間発表等により、研究内容の深化を目指している。さらに修了時には制作による研究発表も行うように指導している。学部生・大学院生の指導においては、事前論議および検討で複数教員による協力的な体制をとっている。
ウ 運営・活動の状況
 大学院では各自の課題研究における教育実践研究を深める努力が積み重ねられ、教育研究現場の協力を得て実験授業の実施などで論文研究に深まりがみられると共に制作研究も多面的に行われた。第43回大学美術教育学会弘前大学で、大学院2年次2名が口頭発表を行った。
 また、以下のような展覧会での成果発表も行われた。
○展覧会入選
新制作展(東京都美術館):1/国画会展(東京都美術館):1/創画会展(東京都美術館):1/二紀展(東京都美術館・奨励賞受賞):1/全国大学版画展(町田市立国際版画美術館):2/フィレンツェ賞展:1/上越市展:市長賞1、奨励賞2/新井市展:市長賞1、奨励賞1
○展覧会開催
 学部4年、大学院2年の共同による卒業修了制作展を上越市図書館と大学構内とで開催し、地域貢献の一助となった。
 また、大学院1、2年有志による院生展を上越市図書館ロビ−にて開催した。
 院生による東京都・銀座や上越市においての個展、(株)新光エンジリアニングロビ−での絵画展示等、地域と結びついたグループ展が多数行われた。
 さらに、美術分野の地域貢献として、中越震災支援プログラムで小千谷市立東山小学校全学年59名から美術コ−スに版画体験授業を行ってほしいという要請があり、12月17日に実施したことは特記すべきことである。
 本年度の日本教育大学全国美術部門総会・協議会(弘前大学、平成16年10月9日、10日)の参加者は山ノ下堅一、西村俊夫、高石次郎、松尾大介である。第43回大学美術教育学会の口頭発表者は西村俊夫、高石次郎である。また、日本教育大学協会美術部門北陸地区会(福井大学,平成16年6月17日、18日)の参加者は山ノ下堅一、西村俊夫である。
 分野会議は、原則として月1回開催され、年度計18回開催。各種委員会委員及び分野主任の発議、提案をもとに、議題、報告については毎回慎重に討議・審議された。
エ 今後の検討課題等
 美術教育講座では、昨年度と同様に小・中学校および高等学校の美術教育が厳しい状況におかれている現状認識に立ち、今日の社会状況との関わりを視野に入れた教育の構築を目指している。教官と大学院生及び学部生との教育研究に関する自由な対話・交流の機会を設けて、さらに共通認識を持ち、教官と学生が共に教員養成における美術教育のあり方を今後も研究していく必要がある。