6 附属施設等
 
(11) 附属幼稚園
 
@ 設置の趣旨(目的)及び組織
ア 本園の任務
(ア) 教育基本法,学校教育法等に基づき幼児を保育し,適当な環境を与えてその心身の発達を助長するとともに,保育に関する研究を行う。
(イ) 学部学生および大学院生の実地教育,実地研究に協力し指導に当たる。
(ウ) 大学および附属小・中学校と連携し,教育理論および実践に関する研究を行う。
(エ) 地域社会における幼児教育の振興に寄与する。
イ 平成16年度の活動方針
(ア) 教育目標
a 元気な子ども  (体)
b やさしい子ども (徳)
c 考える子ども  (知)
(イ) 年度の重点目標とその方策
a のびのびと体を動かし精いっぱい遊ぶ子ども
・子どもの興味関心に基づく自由感ある遊びを保障する。
・遊びを誘発し,高める環境構成を工夫する。
・安全に配慮した環境づくりに留意する。
b 自然に親しみ友達と仲よく遊ぶ子ども
・園裏手に広がる里山に続く「緑の小道」の積極的な活用を図る。
・異年齢交流を促進する。
・年齢に応じた飼育栽培活動を工夫し実践する。
c 感じたことや考えたことを自分なりに表現する子ども
・「賞賛」「激励」「見守り」「共感」を大事にした援助に努める。
・帰りの会等で,歌ったり話したりする経験を積ませる。
・保護者や地域の人との触れ合いの場を積極的に設け,人とかかわる楽しさや喜びを味わわせる。
ウ 教員の配置状況
(ア) 園長,副園長,教諭3名,養護教諭1名,非常勤講師2名の8名である。
(イ) 学級に担任1名と副担任1名を配置。ティ−ム保育を行っている。
 
A 運営・活動の状況
ア 教育課程改善研究の推進
 平成12年度より15年度まで幼小連携における教育課程・指導方法等の研究開発を行ってきた。平成16年度からは研究主題を「幼児の生活と仲間関係」とし,6年計画で研究を積み重ねていくことにした。第1年次の本年度は研究副題を「個の育ち合いをみつめる」として、各年齢児における仲間関係についての事例収集を中心に研究を進め,10月8日の第12回幼児教育研究会でその研究の一端を発表した。また,平成17年3月に研究のまとめとして『平成16年度研究紀要』を刊行した。
イ 保育の質の向上を目指した職員研修の推進
 毎日の終礼時における子どもの様子についての情報交換,実践レポ−トを持ち寄り子どもの様子や保育の在り方について話し合う週1回の「保育を語る会」などを通して,学級の保育を見直し改善を図ってきている。今年度は,2名の幼児教育講座教員からも話し合いに参加してもらい,より広い視野から実践的な指導力を身に付ける研修を実施した。
ウ 家庭と連携し,同一歩調で進める保育の実現
 保護者との連携を密にするため,登降園時における明るい挨拶の励行と言葉掛けを基本に,連絡帳や学級だより等の活用に努めた。
 保育参観日と教育相談日を毎月1回設定しているが,保育参観日には8割以上の参加がある。今年度も祖父母参観日(11月26日実施)を計画し,祖父母から伝承遊びを教わったりもちつき会を行ったりした。祖父母が幼稚園を知るよい機会となった。
 PTAとの共催による「ふぞくフォーラム」(子育て学習会)を年間2回実施している。今年度1回目は,須藤里美養護教諭による講演会『健やかな心と体』(5月26日開催)。第2回目は,環境教育事務所Lifetime主宰 小菅江美氏を招き,緑の小道の素材を用いた親子活動『緑の小道のあきまつり』と講演(10月26日実施)。講演会の後,保護者同士で活発な意見交換が行われた。附属小学校,附属中学校にも案内をし参加を呼びかけたところ,少数ではあったが参加をいただくことができた。
エ 大学との連携・協力
 学部2年生の教育実習(春と秋の2回)と学部4年生(幼児教育専修)の教育実習を受け入れるとともに,専修教育実習の事前指導の1コマを本園教員が担当している。
 法人化に伴う中期目標・中期計画達成のための協議を幼児教育講座教員との間で行った。(6月2日,11月5日,12月21日実施)
 園行事等の引率補助や担任不在時の保育補助に学生のボランティアを取り入れた。園職員の手の届かない部分を補ってもらうことができたとともに,学生と職員・園児との友好的な関係が構築されつつある。
オ 近隣の幼稚園・保育所との連携
 第12回幼児教育研究会での意見交流のほかに,本学心理臨床講座教授 加藤哲文氏を囲んだ『保育について語る会』(1月21日実施。参加者78名)で,日頃の保育の問題点やこれからの幼児教育の方向などについて協議を深めた。『保育について語る会』では,比較的少人数でじっくり話し合うことを大事にしたため,上越地方の幼稚園・保育所を対象に案内状を配布した。
カ 安全管理の徹底
 子どもたちが安全にのびのびと過ごせるよう,日々の保育前・後の安全点検,月2回の安全点検を実施している。また,PTAの交通安全委員と協力して,登降園時の安全指導を行っている。
 年6回の避難訓練を実施している。そのうちの1回は,学内の協力を得て不審者対応の訓練を行った。訓練後,警備員を講師にした職員研修を実施した。
 
B 今後の検討課題等
ア 幼稚園教育の機能の見直しと将来の構想
(ア) 学校教育法第77条の幼稚園教育の目的を十分果たすとともに,保育に関する研究に鋭意取り組んだ。この両者が調和のとれた運営は相乗効果をもたらしているが,研究だけが先行しないよう配慮している。研究発表の回数は,1年に1回でも2回でもよいと柔軟に受け止め、検討しながら実施している。
 今年度は,10月に幼児教育研究会を,1月に「保育について語る会」で講演会を行った。昨年度より始めた「保育について語る会」は好評であったので,次年度以降も開催していく。
(イ) 教育実習の受け入れは附属としての本務の一つであると認識しているが,受け入れ数については,子どもへの影響や教師への過重負担にならないように配慮しなければならない。
 2年次教育実習については,現状では特に問題はない。専修教育実習については,質の高い実習になるよう人数・期間・内容について,幼児教育講座教員と共に検討してきた。
(ウ) 本学及び他大学の学生や院生の調査研究に協力しているが,結果の報告を義務づけている。調査研究依頼状等の形式をホ−ムペ−ジに掲載している。
イ 附属幼稚園の教育・管理運営の状況
(ア) 平成16年度の教育研究の実際
a 第12回幼児教育研究会(10月8日開催) 研究主題「幼児の生活と仲間関係〜個の育ち合いをみつめる〜」
 当日は,公開保育,全体発表,分科会(年齢別),明星大学教授 諏訪きぬ氏の講演会を行った。参加者は約180 名。小学校からも多数の参加があり,幼小連携について協議するよい機会ともなった。
b 例年,研究紀要は秋の研究会の折に刊行しているが,本年度は,幼児の育ちを1年間にわたって捉えることを主眼にしたため,3月に刊行した。そのため,研究会当日の分科会記録や講演会記録・研究協力者の3名の大学教員からの寄稿を掲載することができた。
(イ) 管理運営の状況
a 研究推進のための体制
(a) 幼児教育研究会に向けた年4回の研究保育の実施(園外の指導者招聘)
 第1回は6月に園の環境や研究の全体計画,研究の方向等について。第2回は9月に全国公開に向けての協議題や運営方式について。第3回は10月に全国公開し約180 名参加。第4回は11月に研究会の反省・研究のまとめについて協議を行った。
(b) 週5回ある終礼に,その日の幼児の様子を報告し合い,園全体の幼児理解を図り明日の保育計画の参考にしてきた。職員室では,子どものことがよく話題になった。
(c) 週1回,研究主任を中心に全員で研究推進会を実施
 研究主任を中心に計画的・継続的に研究を進めている。また,小規模・少人数の特性を生かして,柔軟な対応を心がけている。
(d) 定期的に「保育を語る会」を開き,保育のVTR,実践レポートや遊びの履歴を持ち寄りながら保育にかかわるカンファレンス,情報交換を行った。会を通して,一人一人の子どもの発達特性を見る目が養われ,実践的指導力が身に付いている。
(e) 一人一人の指導過程や発達特性が分かるカルテファイル(遊びの履歴)の作成
 身体的発達や日々の指導の記録のみならず,保育を語る会や参観者等の多角的な情報をファイルし,保護者との教育相談や指導計画作成の参考資料としている。
b 安全管理の徹底を図る体制
(a) 非常時に迅速・的確に対応できるよう,避難訓練の内容と方法を工夫している。昨年度に引き続いて,避難後の子どもたちを保護者に引き渡す訓練を行った。事前に保護者に周知しておいたため,混乱もなくスム−ズに実施できたが,突然の訓練も今後必要になると考えている。
(b) 保育中の警備については,警備員と十分連絡をとりながら対応している。登降園時の送迎者が変更になる場合は予め保護者に「変更届」を提出してもらうようにしている。
(c) 不審者やクマの目撃情報は,迅速に保護者に提供するよう努めた。地震の対応については,災害用伝言ダイヤルの利用等できる限り具体的に保護者に示し,理解と協力を求めた。想定される危機や予想外の危機にも的確に対応できるよう,日頃から職員の危機管理意識を高める努力を怠らないようにする。
ウ 附属幼稚園の活性化・充実のためのこれまでの取組
(ア) 教職員と保護者による学校評価
 保育方針や管理運営方針を簡潔に示したグランドデザインを作成し,それに基づき教職員と保護者による学校評価を行った。(教職員は2学期末に,保護者は1月に実施)
 第2回学校評議員会では,学校評価の結果を踏まえた意見交換を行った。また,保護者による学校評価の結果については,3月のPTA総会で公表した。
(イ) 教育環境の見直しと充実
a 子どもの情操を高める視聴覚教材の充実(図書の購入充実,パネルシアタ−の購入など)
b 子どもとのかかわりを深める小動物の飼育と飼育環境の整備
(ウ) 自然体験を重視し,年間を通した園裏手に広がる里山に続く「緑の小道」の活用と学年に応じた活用方法についての検討
(エ) 地域の教育力の活用
 園行事に地域や大学の人材を活用することにより,子どもの興味関心の幅を広めることができた。
(オ) 園内異年齢交流の促進
 春と秋の遠足,豆まき会などの園行事と関連づけて意図的に交流の場を多く設定してきた。年少中児は年長児の行動様式をモデルとして学び,遊びの面でよい刺激を受けている。また,年長児はリ−ダ−性を発揮する機会となり,年少中児に思いやりの気持ちをもって接することもでき,互いに好ましい関係を築いている。普段の遊びの中にも異年齢のかかわりが広がっている。
(カ) 確かな連続性を図った附属小学校との連携
a 互いの研究会への参加を通した相互理解と連続した研究推進
b 連絡入学についての綿密な打ち合わせと入学後の対応の仕方についての検討
(キ) 幼小の滑らかな連続を目指す附属小学校との交流活動の推進
a 年間3〜4回の実施を目途にしている。今年度は,幼稚園の5歳児と附属小学校1年生の交流を行った。
b 交流を通し,幼児・児童及び職員の意識改革を期待している。
(ク) 実践と理論とのかかわりを重視した大学との連携
 年間を通して,幼児教育講座教員から指導助言をいただくことができた。
(ケ) 学校評議員会の開催
 5名の学校評議員より年2回にわたり学校運営の基本方針及び活動に対する意見等を伺った。
・第1回会議 平成16年7月21日 「附属幼稚園の安全管理について」
・第2回会議 平成17年1月27日 「幼稚園の安全管理(不審者対応の面から)と平成16年度学校評価について」
(コ) 食教育の一環として,平成14年12月より大学学生食堂から給食を提供してもらっている(ハッピ−ランチ)。今年度は正善寺工房からも給食を取り寄せ,週1回のハッピ−ランチを実施した。子どもたちにも保護者にも好評であり,回数を増やしてほしいとの要望が出ている。