【生徒指導総合講座】
 

杵 淵 俊 夫(教 授)
 

西   穰 司(教 授)
<教育活動>
授 業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
○授業形態、学習(研究)指導法等の教育方法に関する取組状況
 シラバスに担当授業科目の目標・内容を可能な限り明確に記述するとともに,実際の授業では授業内容の理解に有益と思われる資料を,各授業科目ごとにB4判15〜20枚程度配付して学習効果を高めるよう努めた。また,一方的な講義にならないよう,授業内容に関わる学生の疑問や意見を表明できる機会を適宜設定して,対話・討議を織り込んだ授業展開に努めた。
○成績評価法に関する取組状況
 各担当授業科目のねらいが,単に基本的な認識を的確にするだけではなく、受講学生自身が当該授業科目の主要事項についての学問的反省の加わった認識に到達することを重視しているため,成績評価の主たる基準として2回のリポート提出を課した。リポートの課題・作成上の留意点・採点基準について提出の約1ヶ月前までに文書で提示し,十分な準備をして力作を仕上げるよう求めた。また、採点結果については,個別にコメントを付して返却し,広く言えば文章表現力の向上にも資するよう配慮した。
【観点2】教育の達成状況
○進学や就職などの卒業(修了)後の進路の状況から判断した取組状況
 卒業研究(論文)及び修士論文の作成に関わる授業を担当した学部4年次学生2名,修士課程2年次学生(学部卒直後進学者)1名は,平成17年度公立学校教員採用試験を受験していずれも合格し,平成17年4月より新任の正規教員に採用された。もともと,素質に恵まれしかも本人たちがよく努力した故の結果ではあるが,担当者として誠にうれしい成果と考える。
研究指導
【観点1】学部
 担当した4年次学生2名は,それぞれ生活科の指導内容・方法と小学校の学級経営をテーマとする卒業研究の指導において,適切な具体的実践事例についての丁寧な参与観察を実施して,その調査結果に基づいて説得力のある論文を仕上げるよう指導した。幸い,これらの担当した2名の学生とも,事例調査に協力いただいた学校の教職員からは卒業論文としては極めて高い水準の出来映えとの評価をいただいた。
【観点2】大学院・研究留学生
 研究テーマを明確に絞り込んだ上で,実態調査を緻密に実施し,その結果を冷静に分析・考察した説得力のある修士論文を仕上げるよう指導した。担当した修士課程2年次学生3名のうち,2名は質問紙調査,1名は参与観察法を中心とするエスノグラフィーの手法による事例調査を実施し,ほぼ満足できる水準の成果を収めたと考える。
その他の教育活動
@平成16年8月:学校図書館司書教諭講習のうちの「学校経営と学校図書館」を担当した。
A平成16年9月:富山大学教育学部非常勤講師として「学校経営」(文系)を担当した。
B平成16年9月:山形大学農学部非常勤講師として「教育経営学」を担当した。
C平成17年3月:富山大学教育学部非常勤講師として「学校経営」(理系)を担当した。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 一般的・抽象的な学校経営論に陥らないよう,日頃から意識的に努力して具体的実践事例を収集し,受講学生が明快に理解でき,しかも学校組織の一員としての貢献意欲を高め得るよう授業内容・方法を工夫している。また、研究指導においては、本学において重視している教育に関する臨床研究推進に資するよう、具体的実践事例についての「実践知」を発掘ししかもそれを一定程度普遍化する可能性を積極的に追求している。しかしながら,この「実践知」の発掘・普及をいっそう深化することは容易ではなく、本学の学内のみか、全国の関係機関・関係者との共同研究等を通して優れた成果を収められるよう努めなければならないと考えている。
<研究活動>
研究成果の発表状況
@平成16年4月:「教員に求められるこれからの研修の在り方」『兵庫教育』第56巻第1号,pp.8-12
A平成16年5月:「自殺予防教育担当教師に求められる専門性とその向上課題」,得丸定子(研究代表者)編『(平成15年度日本教育大学協会研究助成研究成果報告書)学校教育における自殺予防教育の取り組みについて』上越教育大学生活・健康系教育講座,pp.1-9
B平成16年9月:「危機管理−リスクマネジメントの基礎基本とは−」『学校マネジメント』(学校運営研究改 題)第43巻第9号,pp.10-13
C平成17年1月:「学校経営における教務主任の位置」北神正行編『新編 教務主任読本』教育開発研究所,pp.14-17
D平成17年3月:「幼・小・中12年間の『つながり』に深く配慮した学校教育の課題」,『教育展望』 第51巻第2号,pp.4-11
E「スクールリーダーの養成・研修と大学院プログラムの課題」上越教育経営研究会編『教育経営研究』第11号,pp.54-57
@平成16年7月18日:日本教師教育学会・中国高等教育学会師範教育分会(共催)の第6回日中教師教育研究国際シンポジウム(7月16日〜19日,於:香港大学)において,基調提案「現職教師の職能発達のための大学院カリキュラムの現状と課題−『研究知』と『実践知』の関係性に焦点を当てて−」を担当。
(なお,この提案内容は,日本教師教育学会・中国高等教育学会師範教育分会『第6回 日中教師教育研究国際シンポジウム記録集』(平成16年12月)pp.32-34に収録されている。)
共同研究の実施状況
・日本教育経営学会・スクールリーダーの資格・任用に関する特別委員会 委員長:小島弘道(筑波大学教授)
学会活動への参加状況等
@6月4日〜6日:日本教育経営学会第44回大会(於:上越教育大学)出席
A7月3日〜4日:日本カリキュラム学会第15回大会(於:愛知教育大学)出席
B7月16日〜19日:日本教師教育学会・中国高等教育学会師範教育分会(共催)第6回日中教師教育研究国際シンポジウム(於:香港大学)出席
C8月2日〜3日:日本学校教育学会第19回研究大会(於:目白大学)出席
D日本教師教育学会第14回研究大会(於:立教大学)出席
E平成16年度日本教育経営学会理事(常任)
F平成16年度日本学校教育学会理事(常任)
G平成16年度日本教師教育学会理事
◎特色・強調点等
 わが国の学校改革の諸施策が多様に展開されるなかで,とくに各学校での教育課程の開発的取組と,個々の教師の職能発達の促進に力点を置いた研究を特色としている。
<社会との連携>
社会的活動状況
@5月12日:福井県教育研究センター主催リーダーシップT・U研修講座−校長・教頭の学校経営リーダーシップの向上−講師(「これからの学校経営と教職員の育成」を講義)
A6月9日:氷見市教育研究所主催教育講演会講師(「学級経営の課題と展望」を講演)
B11月10日:福島県教育センター主催県立学校経験者研修V講師(「これからのスクールリーダーに求められるもの」を講義)
C11月17日:石川県教育センター主催継続研修講座「学校経営」講師(「教職員の人間関係づくり」を講義)
D2月11日:新潟大学と上越教育大学との教員養成・現職教員研修の在り方に関する連絡協議会(第4部会)主催16年度スクールリーダー養成・研修講座のワークショップ(4) 「新潟県における学校評価の動向と課題」講師
 

若 井 彌 一(教 授)
 

安 藤 知 子(助教授)
<教育活動>
授 業
 担当するすべての授業科目において、院生・学部生自身が主体的に学び、自ら課題を捉え他者へ向けて発信する力を身につけられるように、グループ活動やディスカッションを多く取り入れ、毎回の授業評価も行い受講者の要望を把握するよう試みた。
研究指導
 多様な関心をもつ院生に対して、素朴な実践的関心を実践的研究へとつなげていくための思考訓練に重点をおいて指導を行った。特に先行研究論文を丁寧に読解しつつ、自らの主張を組み立てていく作業について、院生間の議論も生かされるよう配慮した。また、ゼミ生や発達臨床コースの院生に限らず、学級経営研究や職能発達研究に関心を持っている院生からの個別の相談に応じるなど、広く論文作成への支援を行った。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 教育活動、研究指導いずれについても、個々の院生・学生の主体的な取り組みへのモチベーションが高まるように工夫し、また把握できた要望についてはできるだけ早くフィードバックするよう配慮した。
<研究活動>
研究成果の発表状況
@平成17年2月:『教師の葛藤対処様式に関する研究』(単著) 多賀出版
@平成16年8月:「地方自治体単位での改革動向における教職員の位置と課題」(単著) 学校教育研究第19号 pp.36-49.
@平成16年9月:「10年経験者研修の特質と研修体系」 教職研修 第33巻第1号 pp.126-129.他
共同研究の実施状況
@学校指導職の養成・研修システムとカリキュラム開発に関する比較研究 代表者:西穣司(上越教育大学教授) 平成15〜17年度上越教育大学研究プロジェクト
A学校の自律的な取り組みを促進する要因と学校支援のあり方に関する臨床社会学的研究 代表者:藤田武志(上越教育大学助教授) 平成16〜17年度上越教育大学研究プロジェクト
学会活動への参加状況等
@6月4日〜6日:日本教育経営学会第44回大会出席(開催校)
A8月7日〜8日:日本学校教育学会第19回研究大会出席
B9月18日〜19日:日本教師教育学会第14回大会出席
C日本学校教育学会理事・機関誌編集委員会副委員長
D日本教育経営学会研究推進委員会委員
◎特色・強調点等
 S県S市立M中学校における長期観察調査を継続し、教育改革下にある学校の主体的・自律的な教育活動への取り組みの実態を探究した。学校現場での具体的な場面に即して緻密に課題を捉えた点に研究の意義と独自性がある。また、同時に10年経験者研修や学校組織マネジメントなどの新たな課題と照らして教員の専門性がどのように変容するかについて検討したことは、必要かつ重要な着眼であるといえる。
<社会との連携>
社会的活動状況
@埼玉県志木市立宗岡中学校学校評議員(埼玉県志木市)
A5月:本学公開講座講師「スクールリーダーのための学校改善講座」
B8月:東京都10年次経験者研修・大学等が開設する講座講師(学級経営)
C1月:新潟県教職12年経験者研修講師(学校経営に参画する中堅教員の在り方)
 

石 田 美 清(助教授)
<教育活動>
授 業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
○授業形態、学習(研究)指導法等の教育方法に関する取組状況
 学部「教育実地研究W(特別活動の指導法)」は、学生参画型(14年度)、学生参画・契約型(15年度)を改め、学生自己責任型とした。学生の遅刻、中途退出、無断欠席について、口頭によるもののほか、昨年度までのより積極的な指導は行わなかった。毎回の小テスト、学習到達チェックリスト、学生自己評価表の配布は中止し、成績評価も最終の試験1回とした。新たな授業改善の取組として、講義支援システムにより資料を配布し、現職教員大学院生等に毎回の授業観察と講義終了後の補充授業を依頼した。毎回、講義終了後に質問、意見、提案等の有無について尋ねたほかに、6月に講義アンケートを実施して個々の学生に対して回答を行った。試験終了後、習熟度の程度に応じてグループ編成による追加講義を行い、今後の授業改善のためのデータを収集した。また授業観察を担当した現職教員大学院生等5名と授業検討会を実施した。結果として、受講生の約3割が遅刻、無断欠席、講義室徘徊を繰り返しており、日常の基本的行動に関わる指導や、講義とは別に特別な指導援助が必要であることが明らかになった。講義の総準備時間は約48時間(加えて試験問題作成と採点は約28時間)であった。昨年と同様に、教室の学習環境の改善、特に提示用のディスプレイの更新、受講生数の制限、ティーチングアシスタントの配置などを関係者に強く要望することによってさらに授業の質を高めていきたい。
 大学院「特別活動特論」では、特別活動に関する理論を講義したのち、「上越教育大学版学習指導要領(特別活動)」を作成した。また「特別活動演習」では、長野県有明寮、富山県富山学園の施設見学などの演習も行った。また、平成14年度・15年度上越教育大学研究プロジェクトセミナーを実施した。
○成績評価法に関する取組状況
 これまでも成績評価基準の明示、厳格な評価、多元的な評価機会の設定に心がけてきたが、本学の場合、学年暦に試験期間があり、また履修規定第10条〜12条により追試験、再試験等が定まっている。昨年度まで実施してきた多元的な評価機会を設定することは本学の教育方針にそぐわないと判断し、試験期間中に実施する試験1回のみに改めた。過去3年の小テストや試験問題を事前に公表し、約6割を過去と同じ内容で実施した。結果として、受講生202名のうちA取得者5.0%、B取得者15.8%、C取得者29.2%、D取得者46.0%、その他4.0%となった。(平成15年度はA=54.5%,B=23.0%,C=13.9.0%,D=5.9%,その他=2.7%)なお、講義では5名の卒業年次の受講生が不合格となり、別に再試験実施委員会が実施した試験により4名が合格となった。平成10年の旧大学審議会答申や平成17年中央教育審議会で述べられている「出口管理」の強化や、指導と評価の一体化という観点から、全学的に、教育方針(ディプロマ・ポリシー、カリキュラム・ポリシー)を早急に検討していく必要がある。
【観点2】教育の達成状況
○進学や就職などの卒業(修了)後の進路の状況から判断した取組状況
 国民の税金による運営交付金で運営されている大学の責務として、国民の負託に応えるべく「確かな学力」を身につけた義務教育諸学校の教員を養成するよう心がけている。また各年次卒業者の5割が教員採用試験に正規合格することを努力目標として、担当する科目の教育内容・方法を設定して、学生に対して教育指導を行っている。(平成8年〜平成16年の本学全卒業者に対する累計の正規合格者は約39%である)卒業生の質を確保するため、標準的な教育内容を選択し、かつ当然のことながら大学設置基準に基づき、教室における授業と事前・事後の準備学習・復習を合わせて1単位あたり45時間の学修が必要な教育内容で、公正、公平かつ厳格な成績評価を実施している。
研究指導
【観点1】学部
 平成16年度研究指導学生なし。なお、平成16年度に全国の指導主事、国立大学附属小中学校教諭を対象とした調査では、特別活動の指導に必要な資質能力として、教員養成段階では、理論的な内容をしっかり指導して欲しいという回答が大半であった。
【観点2】大学院
 大学院生は、データ等に基づいて教育実践の事実を再認識させ、公教育としての学校の意味を問うことを基本として、教育課題の解決に向けて各人の研究テーマについて指導を行っている。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 現職教員大学院生による授業観察のデータ、習熟度の程度に応じたグループ編成による追加講義、授業検討会の内容を総合すると、約5割の受講生はさらに高度な教育内容による教育が可能であり、学習内容の習熟の程度に応じたクラス編成による講義の実施が急務の課題であると考えられる。(平成17年度は時間割編成上無理であると教育支援課より回答があった。)
<研究活動>
研究成果の発表状況
@平成16年8月:「小学校生徒指導の新展開」(単) 悠 第21巻9号 pp.96-97。
A平成16年10月:「生徒指導への配慮事項」 pp.46-48 「高校入試の調査書は3年の2学期を使うところがあります。進路指導の配慮事項を教えてください。」 pp.190-191 葉養正明編『2学期制の工夫と効果的な運用』ぎょうせい。
@平成16年6月:「上越教育大学のスクールリーダー養成の試み(ラウンドテーブルU)」日本教育経営学会第44回大会。
A平成16年8月:「課題研究2 特別活動における指導力の育成−その場と機会−教育実習生・新任教員の教科以外の活動に必要な資質能力に関する調査」を手がかりとして」(単) 日本特別活動学会第13回大会。
B平成16年11月:「課題研究U;カリキュラム開発と生徒指導」(単)日本生徒指導学会第5回大会。
C平成17年3月:「特別活動に必要な指導力の育成」(単) 平成16年度日本特別指導学会第2回研究会。
学会活動への参加状況等
@日本教育経営学会(6月:於上越教育大学)
A日本特別活動学会(8月)
B日本生徒指導学会(11月)
C日本特別活動学会研究会(3月:於上越教育大学)
◎特色・強調点等
 国立教育政策研究所「学級運営等の在り方についての調査研究」の協力者として、小学校生徒指導の報告書の作成に関わった。日本特別活動学会第2回研究大会の企画運営を行った。
<社会との連携>
社会的活動状況
@文部科学省初等中等教育局「教育課程の改善のための教育研究開発に関する教育研究開発企画評価会議」協力者
A新潟県教育庁義務教育課「自立支援教室事業運営委員会」委員長
B独立行政法人教員研修センター「生徒指導上の諸課題に対応するための指導者の養成を目的とした研修(生徒指導総合研修講座)」講師
C東京都教職員研修センター「10年経験者研修大学等講座」講師
D金沢市教育センター「教職員研修講座」講師
E新潟県教育職員免許法認定講習講師
F国立教育政策研究所「学級運営等の在り方についての調査研究」協力者
G新潟県少年自然の家「不登校児童生徒体験活動推進事業チャレンジキャンプグループカウンセリング」講師
H三重県立四日市北高等学校文部科学省研究開発学校研究発表会講評者
◎社会への寄与等
 いずれの委員、講師においても、事前に最新の資料を準備するようにしている。教育行政等に関わる最新の情報に接する機会が多く、資料等を含め、大学院の講義、修士論文の指導にフィードバックしている。
 

大 前 敦 巳(助教授)
<教育活動>
授 業
 教育社会学特論(大学院)では、学校・家庭・地域・職場にわたる生活環境の変化に対応した、社会の中の人間発達と子ども支援について議論した。小テーマ毎に3回分の時間を割り当て、最初2回を講義に充て、3回目をディスカッション中心とし、双方向的な理解の深化を図った。授業終了時にリアクション用紙を配布し、質問、意見、感想などを記入してもらい、授業改善とディスカッションの参考資料に使用した。成績評価は、討論への積極的参加を重視した平常点と、「個人化」と教育実践にかかわるレポートによるものとし、レポートの内容を最終回のディスカッションに取り上げて学生へのフィードバックを行った。
 教育実地調査分析演習T(大学院)では、発達臨床コースの修士論文作成にむけて、質問紙調査、観察、インタビュー、プログラム開発、授業参画などによる現地調査の基本的な技法について概説した。後期の同演習Uにおいて、質問紙調査(大前敦巳担当)と観察・インタビュー調査(藤田武志担当)の2班に分かれて、実際の教育実地調査の過程を実習形式で体験的に学習する授業を行い、年度末に調査結果報告書を作成した。
 比較教育学(学部)では、「今日の人間発達の観点からみたフランスと日本の教育」を主題に、幼少時から成人へと発達していくあり方に着目して日仏の教育を比較した。フランスの教育について概説した後、日本との差異や類似点について無作為に学生に質問し、発言を求めた。リアクション用紙でも質問、意見、感想などを記入してもらい、学生との双方向の対話を重視した。最終回にフランス式の論述試験を行い、授業の理解度と教育実践への展開にかかわる思考力を問い、発言とリアクション用紙による授業への積極的参加度と合わせて評価の材料とした。
 生涯学習概論A(学部)では、現代社会の変化に柔軟に対応することのできる生涯学習の施策および支援体制作りについて、レジュメ・プリント・パソコン・プロジェクタ等の複数のメディア教材を利用して講義した。比較教育学と同様に無作為に学生に発言をさせ、それを平常点とすることで授業の緊張感を高めた。加えて論述試験による評価を行い、生涯学習の具体的取り組みに対する考えを展開してもらうことで問題への理解度を評価した。
研究指導
 @学部3年と修士1年、A学部4年と修士2年の組み合わせによる、2つのゼミを開講した。
 前者@のゼミでは、教育社会学に関するテキスト講読を行った後、卒業論文・修士論文のテーマを確立し、自ら課題を見つけ問題解決を図るためのディスカッションを行った。現職院生の問題意識を学部学生に話してもらい、現場で生起する諸問題をめぐって意見交換をすることにより、論文作成に向けた内発的モチベーションの向上に努めた。また、レジュメの作成、聞き方・話し方、プレゼンテーションなどの技法を習得する機会を複数回設けた。
 後者Aのゼミでは、各学生の研究テーマにそくして論文を作成するための指導と助言を行った。特に、現地調査によるデータ収集・分析の指導に十分な時間を費やし、教育現場との関わりを重視した臨床的・実践的な研究を推進した。夏と春にはゼミ生全員による発表会を行い、大学院・学部の学年をこえた知識伝達と研究交流を行った。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 教育を取り巻く社会環境の変容と人間発達支援のあり方に関して、ステレオタイプ的な理解にとどまらず、データや資料を用いながら自分で問題を吟味し判断する力をつけることに、教育の重点を置いている。学生自身の教育現場での経験に基づいて、社会学的な理論と方法を適切に用いることにより、自らの研究テーマについて考え深め、事実に根ざした問題解決や対応策を導き出すことを目指した。修士論文の作成にあたっては、教育実地調査分析演習を通じて修得した、現地でのデータ収集と分析の技法に基づく指導を行った。また、ディスカッションを通じて双方向的なコミュニケーションができるよう指導の工夫をした。さらに、公開ゼミ、ティームティーチングなどを行うことにより、教育内容の公開性を高め、ゼミ外の多くの方々に意見やアイデアを求めることで授業改善に努めた。
<研究活動>
研究成果の発表状況
@平成16年9月:「キャンパスの人間形成機能からみた現代の学生生活−上越教育大学と関西私立大学・短大の調査結果から−」(単著) 上越教育大学研究紀要 第24巻第1号 pp.45-58
A平成16年9月:「金沢大学文学部生の学生生活の状況−過去の学習経験との関わり,および他大学との比較から−」(単著) 金沢大学文学部におけるFD活動 2001年度〜2003年度 pp.85-100
@平成16年7月:「大学教育の文化習得効果−地方と女性の学生に着目して−」(共) 日本高等教育学会第7回大会
A平成16年12月:「今日の大学生における文化資本へのアクセス−フランスと日本の異同を視野に入れて−」(単) 北陸社会学研究会
B平成16年12月:「日本型マス高等教育における文化資本へのアクセス−関西と北陸の大学・短大生を対象とする調査結果から−」(単) 筑波大学大学研究センターRcusセミナー
@平成17年2月:「大学・短大生の生活と文化についての調査2004年 調査結果報告書−上越教育大学と関西の私立大学・短期大学の2年生の比較−」(単著) 平成15〜17年科学研究費補助金若手研究(B)自主出版報告書
共同研究の実施状況
@アレゼール日本(高等教育と研究の現在を考える会)事務局会員 代表者:岡山茂(早稲田大学助教授)
学会活動への参加状況等
@7月24日:日本高等教育学会出席
A10月9日:日仏教育学会出席(大会開催委員長)
◎特色・強調点等
 2003〜2005年度科学研究費補助金若手研究(B)「日本型高等教育における学生の文化習得過程とその社会的支援に関する研究」(代表者:大前敦巳)の計画に基づき、上越教育大学と関西私立大学・短大の2年次生を対象に第2回パネル調査を実施して、結果を学会・研究会で報告し、年度末に報告書にまとめた。フランスとは異なる日本の学習経験の特質を分析するとともに、それに基づく文化習得過程についての経時的な調査分析を行っている。
<社会との連携>
社会的活動状況
@日仏教育学会理事、年報編集委員長 2004年度研究大会開催委員長
◎社会への寄与等
 上記学会理事・編集委員長の活動を通じて、他大学の研究者との連絡交流を図っている。10月9日に上越教育大学で2004年度研究大会を開催し、フランス人パネリストを招いた公開シンポジウム「学校教育と宗教」を含め、その企画と準備の統括にあたった。
 

荻 原 克 男(助教授)
<教育活動>
授 業
 現代社会と学校(学部)では,大きく変動する現代社会のなかでの公立学校改革をめぐる議論・取り組みについて検討した。教育政策特論(大学院)では,学校現場にとっては疎遠なものと考えられがちな教育政策が,実際には各学校レベルの教育実践を様々に方向付け・規定していることを,具体的な教育政策課題を通して検討した。現代教育改革特論(大学院)では,1990年代以降活発化し,現在も進行中の教育改革の動きについて,その背景・ねらい・特徴について,具体的な改革テーマに即して検討した。いずれも,シラバスでの概要予告,オリエンテーション時に成績評価基準・方法の説明を行った。授業形態としては,講義と受講者による報告・討議とをほぼ半分ずつ行った。どの科目においても,検討文献資料の予告・提供,受講者の報告準備過程での相談・アドバイスを適宜実施した。
 学校教育と社会環境がともに大きく変動しているなかで,従来自明とされてきたことが次々と再審に付され,新たな方向が様々に検討・模索されている。このような時期にあって教育に携わろうとする者にとって,教育問題を広い視野から捉え,政策課題や制度的問題についても基本的知見を持ち,自分なりの視点でそれらを評価する力を身につけることが一層重要になっている。上記授業を通してこうした力量を養うことをねらいとしている。
研究指導
 大学院修士課程学生(現職院生)と,現場における素朴で直感的な問題関心を研究課題へと絞り込むための種々のアプローチについて検討・討議を行った。本年度はとくに,1)分権化・市町村合併などの諸改革が進むなかでの,僻地・中山間地における教育機会保障をめぐる問題,2)青少年の問題行動についての社会的対応(施設・組織ネットワーク)をめぐる問題状況とその課題,3)地域づくりと学校づくりとの関係(教育コミュニティの構想と実践)について内外の先行研究を検討した。2年生については,調査研究過程での随時の検討・討議を密に行うとともに,実際の論文作成を指導した。
その他の教育活動
・筑波大学大学院教育研究科「教育行財政特講」(集中講義)2005年3月3日〜4日
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 いずれの教育活動においても,各自が主体的に課題をみつけ,それについて調査・考察し,その結果を他者に対して分かりやすく提示し,互いに討論する経験をもつことを重視した。実際に,これらの学習機会,経験機会を多角的に設ける工夫を行った。それらを通じて,立場や意見を異にする他者と適切にコミュニケーションできる力を身につけることが目標である。
<研究活動>
研究成果の発表状況
@「官房−原局関係からみた文部省の政策立案過程の分析」(青木栄一との共著)日本教育行政学会編『日本教育行政学会年報』No.30,2004年10月,80-92。
A「文部省の官房機能−機構面と人事面からの分析−」(青木栄一との共著)日本教育制度学会編『教育制度学研究』11号,2004年11月,144-158。
@「公立学校の設置・運営管理をめぐる制度改革動向」日本教育学会第63回大会,課題研究「公立学校を『つくる』自由とその公的認証をめぐる理論問題・制度課題」の3本の報告のうちの一つ。2004年8月26日,於:北海学園大学
A「日本の公教育と宗教をめぐる問題−フランスを合わせ鏡として考える」日仏教育学会2004年度研究大会,公開シンポジウム「学校教育と宗教」での報告。2004年10月9日,於:上越教育大学
B「日本型教育行財政システムの模索−『創造的適応』期としての1950年代再考−」(高野良一,青木栄一,本多正人との共同研究報告)日本教育行政学会第39回大会,自由研究発表,2004年10月10日,於:帝京大学
共同研究の実施状況
@国立教育政策研究所,共同研究プロジェクト「戦後教育法制の形成過程に関する実証的調査研究」研究委員
A日本教育学会課題研究プロジェクト「『学校選択問題』の理論・比較・実証研究」研究委員
学会活動への参加状況等
参加状況
@日本学校教育学会第19回研究大会:2004年8月2日〜3日(目白大学)
A日本教育行政学会第39回大会:2004年10月10日(帝京大学)
役職等
・日本学校教育学会理事(機関誌編集委員会副委員長)
◎特色・強調点等
 現代日本の教育改革政策の展開過程についての検討作業を継続して行った。戦後の日本型福祉国家の下での公教育の組織化・提供形態が大きく変容しつつあるなか,その変化が何を意味するのかを明らかにすることで今後を展望する意義をもつものである。刻々と変動する教育改革動向を追跡するために,下手をすると単なる現象の後追いに陥りかねない。そのため独自の理論枠組みの提案・検証作業を通して研究を進めている。当分,現実追跡と理論の(再)構築との往復作業を繰り返す必要がある。
<社会との連携>
社会的活動状況
@上越教育大学公開講座「スクール・リーダーのための学校改善講座」2004年5月15日,5月22日,於:上越教育大学
A新潟大学・上越教育大学連携協議会「スクール・リーダー養成・研修講座」2005年2月11日,於:新潟大学教育人間科学部附属長岡小学校
B新潟県公立小・中・養護学校事務職員研究会,スタッフ会議。2005年3月17日,於:上越ホテルハイマート
 

林   泰 成(助教授)
<教育活動>
授 業
 学部・大学院ともに,講義では,ビデオ視聴や討議の時間を取り入れ,実践的な内容になるように工夫した。また,演習では,実践的なエクササイズを取り入れて,実践力を身につけられるように工夫した。評価に関しては,事前に評価基準を明示した。
研究指導
 学部生に対しては,卒業論文作成の指導と合わせて,臨床的な実践力を身につけられるように個別に対人関係の技法などを指導した。大学院生については,修論作成の指導と合わせて,プログラム開発の方法について指導した。
その他の教育活動
@富山大学非常勤講師として「道徳教育論」を担当した。
A放送大学客員助教授として「道徳教育論」の番組を制作した。
B教職講座「道徳教育・同和教育」を担当した。
C附属小学校において「心の活動」の研究協力者として指導助言を行った。
D附属中学校において「道徳教育」の研究協力者として指導助言を行った。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 学部・大学院ともにワークショップ型の演習を取り入れている点が特色である。ゼミ生の数が多く,一人一人に対して十分な指導ができていないのではないかとの危惧がある。今後、道徳教育担当者の増員を求めていきたい。
<研究活動>
研究成果の発表状況
@平成17年3月:『道徳・倫理の未来へ〜道徳学習の個性的な展開〜』(共著)清水書院
A平成17年3月:『道徳教育論』(共著)放送大学教育振興会
@平成16年8月:上廣倫理財団主催「道徳教育シンポジウム」コーディネーター
A平成16年8月:日本道徳性発達実践学会第4回大会ワークショップ講師
B平成17年3月:大学コンソーシアム京都主催「FDフォーラム」シンポジスト
共同研究の実施状況
 道徳教育番組とインターネット掲示板を利用した道徳教育の研究(NHKとの共同研究)
学会活動への参加状況等
@6月12日・13日:日本道徳教育方法学会出席
A6月26日・27日:日本道徳教育学会出席
B8月6日・7日:日本道徳性発達実践学会出席
C8月27日・28日:日本道徳性心理学研究会出席
D10月16日・17日:教育哲学会出席
E11月6日:アメリカ教育学会出席
◎特色・強調点等
 さまざまな機会に,新しい道徳教育の方法であるモラル・スキル・トレーニングの提案を行っている。
<社会との連携>
社会的活動状況
@新潟県同和教育推進協議会委員(副委員長)
ANHK「さわやか3組」番組委員
B上越市立城北中学校学校評議員
C新潟県学校派遣カウンセラー
D本学出前講座講師(新潟市立寄居中学校ほか6校)
E柏崎市立鏡が沖中学校研修会講師
F長岡市立深沢小学校人権教育研修会講師
G新潟県立教育センター講師(「高校12年研修」,「いじめの基本的認識と説明責任」,「生徒指導の理論と実践」など)
H福井県三国町小中学校道徳教育研修会講師
I福島県郡山市中学校教育研究会講師    など
◎社会への寄与等
 本学出前講座の講師として,県内の小中学校の校内研修会に積極的にかかわった。
 

藤 田 武 志(助教授)
<教育活動>
授 業
 学部における教育方法として、学習への動機づけを高めたり、学習内容のより深い理解を促進したりするために、次の8つの工夫をしている。@講義の初回に講義の目標や各回の講義内容、評価の方法などを記したシラバスを配布すること、A内容をより深く理解するための参考文献を適宜紹介すること、B身近な題材や、教育現場において必ずかかわる題材を通して、学問的な概念や理論、方法論を理解させること、C図表などの資料、ビデオなどの視聴覚教材を多く用い、具体的な理解をはかること、D毎回の講義の終了時に、質問や疑問、自分の意見や感想などを「リアクション・ペーパー」として書かせ、その一部を、次回の講義の初めに紹介してコメントをしたり、講義内容に反映させたりすること、Eホームページ上に作った受講者のページに、毎回の講義の概要、リアクション・ペーパーの紹介とコメントなどを掲載すること、Fレポートによって評価をする講義の場合、添削・採点済みのレポートを返却すること、G受講者の多い講義の最終回には、無記名の授業評価アンケートを行い、次年度以降の教育方法の改善をはかること、である。
 大学院における教育方法として工夫しているのは、次の4点である。@講義への参加意欲を高め、多様な意見の存在に気づくことによって理解を深めるため、ディスカッションを多く取り入れること、Aディスカッションの成立に不可欠な共通の知識基盤を参加者に持たせると同時に、講義時間以外における学習を促進させるため、複数の論文を課題として講読させること、B毎回の講義の終了時に、質問や疑問、意見や感想などをリアクション・ペーパーに書かせること、Cホームページ上の受講者のページに講義の概要や、リアクション・ペーパーの紹介とコメントを掲載すること、である。
 学部と大学院の共通授業として行われている実践セミナーと実践場面分析演習を企画・運営し、自ら学び考える教員を養成・再教育するために以下のような6つの工夫をした。@学部生と大学院生の混成チームで活動を行うことによって、世代や立場の違いを意識しながらコミュニケーションをはかること、A教員として必ず直面する切実な問題を題材に、チームとして広範なリサーチをすること、Bリサーチに基づき、他のチームとディベートを行うことによって、論理の組み立て方や議論のしかたを体験的に学ぶこと、Cリサーチやディベートに先立ち、リサーチの方法、論理的思考法、議論の組み立て方などに関する講義を行うこと、D講義の際には、エクササイズを取り入れることによって理解しやすいようにすること、Eこれらの活動を通して、さまざまな意見の存在に気づき、それらを論理的に組み立てながらコミュニケーションをはかる力を育成すること、である。
研究指導
 学部3年生に修士1年のゼミに参加させ、現職の院生とのディスカッションを通して、現職の院生の問題意識や、現場で生起する諸問題などに関する理解を促すようにした。また、自分の考えを筋道立てて分かりやすく提示したり、他人の意見に耳を傾ける態度を育成するため、ゼミにおけるプレゼンテーションの機会を複数設けた。さらに、自らの問題関心を自発的に深め、広げていくことができるような指導・助言に努めた。
 大学院では、修士1年の入門期には理論と方法論に関する基礎的な文献を題材に、それぞれの院生の課題と関わらせた発表とディスカッションを行うことによって、理解を深めるとともに、それぞれの問題関心も掘り下げていくことができるよう配慮した。また、修士1年の後半では、院生それぞれの問題関心に基づいた発表とディスカッションを行うことで、多様な現職院生の見解も取り込めるようにした。さらに、修士2年においては、修士1年までの指導法を踏襲しつつ、それぞれの課題を実践と関わらせながら自ら追究していくことができるよう、方法論や論理構成、先行文献などに関する指導・助言に努めた。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 講義やゼミについて、次の4点を特色として挙げることができる。
@ 双方向性:講義においてリアクション・ペーパー方式を採用することにより、一方的ではなく、学生・院生の意見や疑問などを取り入れた双方向的な講義を行っている点。
A 公開性:学生・院生のリアクションを講義やインターネットで公開することを通して、さまざまな意見の存在に気づかせ、自らの考えを相対化・深化させられるように工夫するとともに、講義概要の公開によってアカウンタビリティに応えようとしている点。
B 日常性:リアクションの公開やディスカッションを日常的に行うことよって、自分の意見の公表、他人の意見への傾聴に対する前向きな態度を育成するようにしている点。
C 自主・自発性:研究指導においては、教え込みや押しつけの指導を廃し、自ら考え、学ぶ姿勢を育成するようにしている点。
<研究活動>
研究成果の発表状況
@平成16年4月:「書評:志水宏吉『学校文化の比較社会学』」(単著)『部落解放研究』第157号、pp.88-91
A平成17年3月:「高等学校における「総合的な学習の時間」の実践状況の規定因」(単著)『上越教育大学研究紀要』第24巻第2号、pp.741-750
@平成16年8月:「高校総合学習の実践状況と初期評価に関する総合的研究」(共同)日本学校教育学会第19回研究大会
A平成16年10月:「「分権化」時代の教育改革(2)―X県における「総合的な学習の時間」の定着過程―」(共同)日本教育社会学会第56回大会
共同研究(幼,小,中,高等学校及び特殊教育諸学校教員との共同研究を含む)の実施状況
@「中等教育における部活動の実態と機能に関する実証的研究」代表者:西島央(東京大学助手)科学研究費補助金
A「代替システム評価ユニット」代表者:苅谷剛彦(東京大学教授)東京大学基礎学力研究開発センター(文部科学省21世紀COE)
学会活動への参加状況等
@8月7〜8日:日本学校教育学会出席
A9月11〜12日:日本教育社会学会出席
◎特色・強調点等
 部活動をめぐる一連の研究は、部活動を単なるスポーツ・文化的活動の場としてだけ見るのではなく、学校の活動として部活動がどのような機能を果たしているのか、社会的不平等という問題との関係で部活動はどのような意味を持っているのか、といった新しい観点から研究したものであり、部活動研究のみならず、学校社会学的な研究にも新たな地平を拓くものである。また、代替システム評価ユニットにおける共同研究は、進行しつつある教育改革の動向が学校にどのような影響を与えうるのかを考察する一方で、学校現場に対する研究者の貢献や学校現場との協働のありかたを模索しており、新しい臨床研究のスタイルを実践的に案出しようとする点において優れたものといえる。
<社会との連携>
社会的活動状況
@平成16年度新潟県新任社会教育委員研修会講師(「社会教育委員に期待する」を講演)
A東京都教職員研修センター平成16年度10年経験者研修講師(「子どもの成長を支援する学校文化」を講演)
B上越教育大学公開講座(スクールリーダー研修)講師(「今日の児童・生徒理解と発達支援のあり方」を講演)
C新潟大学との連携事業(スクールリーダー研修)講師(「社会学の視点から見た学力問題の現状と課題」を講演)
D上越教育大学出前講座(新潟県立三条東高等学校にて「社会の常識は非常識? ―社会について調べよう」を講演)
E新潟県生涯学習審議会委員
◎社会への寄与等
 大学の地域貢献事業の一環として行われている出前講座を担当し、高校生の総合的な学習の時間における出前講座、および、東京都の現職教員研修(10年研修)の講師を担当することにより、地域の教育ニーズに寄与した。
 また、大学の公開講座、新潟大学との連携事業による講座の講師を担当することにより、大学の社会貢献に寄与した。
 さらに、社会教育に関わる研修会の講師や、生涯学習審議会の委員を務めるなどの社会的活動を行い、新潟県における教育課題や政策形成に寄与した。
 

三 村 隆 男(助教授)
<教育活動>
授 業
 大人数授業では座席指定制により授業秩序を保つ努力をした。授業内容は、シラバスに明記した進度で進め、毎回授業レポートを提出による学生のニーズ把握を行い、授業で質問への回答を行うなど双方向型の授業創造を試み効果を上げた。授業形態としては、カウンセリング実習、グループワーク実習など体験的な活動を取り入れながら進路指導・キャリア教育の理解を深める努力を行い一定の理解を得られた。評価は毎回の授業レポート、発表状況、遅刻を正確に把握した出席状況をもとに学生が納得のいく評価方法採用した。
研究指導
 修士論文4名指導。研究対象領域の焦点化までのプロセスとし、関心領域のブックレポート及び調査研究方法の検討を中心に行った。ゼミにおいては、学部生と院生との合同研究指導を行い、それぞれの研究領域への理解を示しながら各自の研究を進めるように配慮した。進路指導実践研究資料が少ない中、日本進路指導協会の指定校資料の分析、文部科学省の推進するキャリア教育を最初に取り入れた小学校の導入過程の研究とそれぞれ新たな課題を創出して意義深い研究を行うことができた。
その他の教育活動
@新潟県カウンセラー活用事業として上越市立城北中学校及び飯小学校スクール・カウンセラー
A新潟県カウンセラー学校派遣事業として、上越市立城東中学校及び上越市立春日小学校に派遣される。
B東京都10年経験者研修「大学等公開講座」「進路指導」「特別活動」講師
C新潟大学工学部非常勤講師(職業指導)
D茨城大学工学部非常勤講師(職業指導)
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 職業観、勤労観の欠如、フリーターの急増のなかで学校教育における進路指導・キャリア教育が強く求められている。そこで、こうした状況下、進路指導・キャリア教育を積極的に推進するため理論と実践双方において力量のある教師の育成に念頭を置き研究及び教育活動を行っている。平成16年度から文部科学省によって本格的に着手されたキャリア教育を先導的に推進できる力量を身につけた教師の養成および研修に力を入れている。一方、進路指導・キャリア教育の教育書への執筆を通し、全国の教師の教育実践力を高めることができた。
<研究活動>
研究成果の発表状況
@平成16年10月:『キャリア教育入門−その理論と実践のために−』(単著) 実業之日本社
A平成16年11月:『図解はじめる小学校キャリア教育』(編著) 実業之日本社
@平成16年11月:『キャリア教育の導入と進路指導における社会的体験』(単著)生徒指導学研究第3号、pp. 16-27
A平成15年3月:『自己効力を指標とした体験的活動を取り入れた進路授業の効果に関する研究(2)−職業レディネス・テスト後の進路自己効力の変化に焦点をあてて−』(共著) 上越教育大学大学院研究紀要 第24巻第2号、pp. 727-740
@平成16年5月:「小学校におけるキャリア教育−静岡県沼津市立原東小学校のキャリア教育実践に携わって−」『進路指導第77巻第5号』日本進路指導協会、pp.38-46
A平成15年7月:「全体研究協議〜テーマ『今求められているキャリア教育を推進する教師の実践力』について〜『進路指導第77巻第7号』日本進路指導協会 pp.13-16
B平成15年10月:「今求められているキャリア教育を推進する教師の実践力」『進路指導第77巻第10号』日本進路指導協会 pp.16-19
C平成17年1月:「キャリア教育導入と高等学校進路指導」『進路第42号』埼玉県高等学校進路指導研究会 pp.3-10
D平成17年1月:「今、進路指導に求められているもの−キャリア教育導入にあたって」『学校の経営37』群馬県総合教育センター pp.22-31
@平成16年8月:日本進路指導学会第22回進路指導研究セミナーシンポジウム「進路指導(キャリア教育)における理論と実践」コーディネーター
A平成16年8月:日本進路指導学会第26回研究大会、大会実行委員会企画シンポジウム「若年者のキャリア発達と産・学・官の連携」シンポジスト「若年者のキャリア発達と産・学・官の連携における教師の実践力」
B平成16年10月:「特OHBYによる職業調べ学習における自己効力の変化と質的手法」(共著)日本進路指導学会第25回研究大会
C平成16年10月:「日米職業指導の生成背景に関する考察」(単著)日本進路指導学会第25回研究大会
D平成17年3月:労働政策フォーラム「日本のキャリア教育に求められるもの」(日本労働政策研究・研修機構)シンポジスト
@平成16年10月:「小学校からのキャリア教育:1.生き方に関わる教育の再構築‐新しいことを始める必要はない」『教育新聞』(10月28日付け)教育新聞社
A平成16年11月:「小学校からのキャリア教育:2. 勤労観・職業観の二層構造で‐児童には勤労観の育成から‐」『教育新聞』(11月25日付け)教育新聞社
B平成16年12月:「小学校からのキャリア教育:3. 先進校の教育実践に学ぶ‐教師にとってそのもつ意味は何か‐」『教育新聞』(12月23日付け)教育新聞社
共同研究の実施状況
 学長裁量経費によりアイオワ大学教授デイビッド・A・ジェップセン教授を招聘し、小・中・高等学校、一般企業、研究者とキャリア・カウンセリング研究を行った。
学会活動への参加状況等
@日本進路指導学会常任理事
A日本進路指導学会研究推進委員長
B日本進路指導学会名称選定委員
C日本特別活動学会紀要編集常任委員
D平成16年7月:進路指導研究協議全国大会全体研究協議パネルディスカッションの企画
E平成16年8月:日本進路指導学会第22回進路指導研究セミナーシンポジウムの企画
F平成16年10月:日本進路指導学会第26回研究大会
G17年3月:日本労働政策研究・研修機構主催労働フォーラムのシンポジストとして学校教育におけるキャリア教育について意見を述べた。
◎特色・強調点等
 研究活動全般を通し、各学校で導入が進んでいるキャリア教育の普及や研究の進展を意図した。主に著書では、実践者や研究者がわが国の教育活動へのキャリア教育を導入を円滑移行できるような、その理論的背景や歴史的な検討を行った。特に、職業観、勤労観形成における二層構造論は、多くのキャリア教育推進地域で受け入れられ、キャリア教育の推進に貢献した。一方、わが国における職業指導の成立過程を職業観、勤労観形成について歴史的に研究することでこうした考え方の裏づけを行った。
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)日本学校教育相談学会埼玉支部講演会(「今、キャリア教育が求められているわけ」を講演)
(2)群馬県総合教育センター(「今、進路指導に求められていること」を講演)
(3)神奈川県公立中学校教育研究会進路指導部会(「キャリア教育元年を迎えた今、学校進路指導に何が求められているか」を講演)
(4)北海道教育研究所(「今求められている進路指導の在り方」を講演)
(5)富山県キャリア教育推進地域指定事業 第1回実践カリキュラム委員会(「キャリア教育に関する基礎的理解とその展開」を講演)
(6)東京都10年経験者研修(「進路指導」を担当)
(7)東京都10年経験者研修(「特別活動」を担当)
(8)第53回進路指導研究協議全国大会 全体研究協議(「今求められているキャリア教育を推進する教師の実践力」の企画及びコーティネーターを務める)
(9)教育カウンセラー入門講座(「キャリア教育とキャリア・カウンセリング」を講演)
(10)埼玉県中学校進路指導研究会夏季研修会(「中学校におけるキャリア教育の推進」を講演)
(11)新潟県教育委員会進路指導講座(「進路指導の意義と必要性」を講演)
(12)鹿児島県中学校進路指導研究協議会 第7回鹿児島県進路学習セミナー(「小中高12年間のキャリア教育における中高連携を考える」を講演)
(13)千葉県教育研究会進路指導部会夏季研修会(「小中連携を通したキャリア教育の推進」を講演)
(14)島根県中学校進路指導研究会(「キャリア教育元年、いま求められる教師の実践力」を講演)
(15)柏崎刈羽小中学校進路指導合同研修(「キャリア・カウンセリングの基礎的理解と実習」を講演)
(16)日本進路指導協会キャリア教育研修講座(「小・中・高校におけるキャリア教育の連携」を講演)
(17)神奈川県厚木愛甲地区中学校教育研究会・進路指導研究部講演(「『生きる力』」を高める進路指導のあり方〜社会の変化に対応し、主体的に進路選択が出来る生徒の育成〜」を講演)
(18)埼玉県中期研修会(「進路指導の新展開」を講演)
(19)埼玉県狭山地区キャリア教育推進地域講演会(「中学校におけるキャリア教育の推進」を講演)
(20)石川県中学校進路指導推進会議(「キャリア教育の推進について」を講演)
(21)平成16年度群馬県中学校進路指導部会研修会(「中学校におけるキャリア教育の進め方」を講演)
(22)上越市生徒指導研究会(「キャリア教育と生徒指導」を講演)
(23)NPO日本教育カウンセラー協会主催教育カウンセラー養成講座(「学校におけるキャリア教育」を講演)
(24)埼玉県高等学校進路指導研究会(「キャリア教育が高等学校進路指導を変える〜大学進学も視野に入れて〜」を講演)
(25)富山県キャリア教育推進地域研修会(「小学校におけるキャリア教育について」を講演)
(26)福岡県教育庁京筑教育事務所(「学校教育におけるキャリア教育の在り方」(午前)、「キャリア教育推進上の具体的方策」(午後)を講演)
◎社会への寄与等
 学校教育にキャリア教育が推進される中、諸学校はキャリア教育の導入・実践に多くの課題を抱えており、教育実践へのニーズに応えるべく進路指導・キャリア教育理論や実践方法についての研修会や講演会を通じて、こうした疑問に積極的に対応していった。同一教育委員会から継続した講演要請を受けており、研修や講演内容に一定の評価を受けたと判断できる。
 また、学長裁量経費によって招聘が実現したアイオワ大学デイビッド・A・ジェップセン教授と同行し全国の実践者や研究者と交流を重ねることにより、わが国学校教育が直面している課題解決に大きく貢献し、教育大学としての使命を果たした。