【言語系教育講座(外国語)】
 

加 藤 雅 啓(教 授)
<教育活動>
授 業
・学 部
 「コミュニケーション英語」では,リスニングとスピーキング能力の育成を重点目標とし,英語によるスピーチと質疑応答,及びペアワークやグループワークを通して積極的にコミュニケーションを図る態度の養成に工夫を凝らした。また,英語によるコミュニケーションが得意でない学生に対しては,本人の能力と興味に応じた補助教材を準備して学習への動機を高めると同時に,基礎的な英語の知識の習得,及び理解力の向上に意を尽くした。「英語学概論」では英語学の全体像を概説した上で,談話文法理論,機能文法理論の観点から英語を理解するための基本的な知識の体系である英文法をとらえなおし,「覚える文法」から「考える文法」,「コミュニケーションに役立つ英文法」への橋渡しを行った。「英文法」の授業では英字新聞や洋画などの生きた英語教材を活用しながら「母語話者の言語直感に迫る文法」の構築を目指した。
・大学院修士課程
 「談話文法特論」の授業では,教育現場における英文法指導について,談話文法理論における最近の研究成果を織り込んで内容を構成した。従来の記憶中心の学校英文法を脱却し,生徒にとって身近な話題を英字新聞やWWWの中に求め,コミュニケーションを重視した実践的な英文法指導への取り組み方を工夫した。「英語学演習」の授業では,語用論,特に関連性理論における最新の言語理論を取り込み,認知とコミュニケーションの観点から発話の理解,とくに橋渡し指示に関する理解を高める工夫を行った。これらの知見を応用し,談話における指示詞に関する実践的な教材開発を行った。
・大学院博士課程
 「英語表現・構造特別研究」(岡山大学駐中講義)では,談話文法理論の講義,及び関連性理論の文献研究を行った。
 学部生の成績評価については,積極的にコミュニケーションを図る態度という観点からスピーチ内容・プレゼンテーション,質疑応答,およびレポートを重点的に評価した。大学院生については,教室で実践できる内容を盛り込んでいるかという観点から期末レポートを評価した。
研究指導
 学部では従来の記憶中心の英文法指導の不備を指摘しながら,「英語ではなぜ同じ意味内容を伝えるのに複数の言い方が存在するのか(第3文型と第4文型,能動文と受動文)」などの「生徒のなぜに答えることができるような英文法指導」を実践し,大量の生きた英文データを与えて臨床的実践力の養成を行った。
 修士課程では,教育現場において最新の言語理論がどのように応用できるかという観点により,「関連性理論の枠組みによる実践的コミュニケーション能力の育成」,「認知言語学による未来表現の分析と応用」等のテーマで実践研究を指導し,中学校・高校の英語教育現場におけるより高度な臨床的実践力の養成を行った。
 博士課程では,副指導教官として高度な教育実践学を念頭に置いて博士論文指導を行った。
その他の教育活動
 平成16年5月31日〜6月4日にわたって教育実習における学生指導を行った。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 英語によるスピーチ,ペアワークやグループワークを通して,積極的にコミュニケーションを図る態度の養成に工夫を凝らした。また,「覚える文法」から「考える文法」,「コミュニケーションに役立つ英文法」への橋渡しを行い,英字新聞や洋画などの生きた英語教材を活用しながら「母語話者の言語直感に迫る文法」の構築を目指した。
<研究活動>
共同研究の実施状況
・平成17年3月:『公立小学校への英語科導入に関する包括的開発研究』 (代表者:斎藤九一 科学研究費補助金(基盤研究(B))
学会活動への参加状況等
@平成16年7月:上越英語教育学会の企画・運営(事務局長)
A平成16年10月:日本プラグマティックス学会出席(理事,評議員,編集委員)
B平成16年11月:日本英語学会出席(評議員)
C平成16年12月:日本語用論学会出席
D学会誌International Journal of Pragmaticsの編集
◎特色・強調点等
 最新の言語理論である関連性理論を取り上げ,この理論が学校教育における英語学習にどのような形で応用できるかという観点から中学校英語教諭と共同研究を行い,定名詞句の解釈についてこれまでに例を見ない中学校英語教材を開発した。
<社会との連携>
社会的活動状況
◎社会への寄与等
 「小学校英語教育」に関して上越市教育委員会との協力・連携体制の整備を図った。
 日本英語検定協会面接委員として地域における中学校・高等学校・大学の生徒・学生の英語コミュニケーション能力向上に寄与した。
 

齋 藤 九 一(教 授)
<教育活動>
授 業
 学部の異文化理解科目「コミュニケーション英語」では、時事的な内容のテキストを採用し、今日的話題の英文を読む訓練を行った。授業形態は、毎回受講生を指名して英文の音読・内容把握・設問回答の作業を行わせるものであった。発音や読解の間違いを直すのはもちろんだが、いわゆる頭ごなしに訂正するのではなく、なぜそのような発想になったかを共に考え、学生の年齢に相応しい一般常識を踏まえながら、より正確な読みに至るように進めた。
 また、学部の言語系英語コース専門科目では、『イギリス小説入門』(英文学概論)と、チャールズ・ラムとメアリー・ラムの『シェイクスピア物語』原文(英文学演習)をテキストにして講義・演習を行った。また、「英米文学基礎セミナー」では、オスカー・ワイルドおよび現代イギリス児童文学のフィリパ・ピアスの短編を読んだ後、さらに、ピアスの長編『まぼろしの犬』と『サティン入江への道』の原文による精読を指導した。
 成績評価は、いずれの場合も、当該学期で学んだ教材のほぼ全体を範囲とする期末試験と、普段の出席状況を総合的に判断して行った。
 大学院では、実践場面分析演習において、英国伝承童謡マザーグースの教材化に関する院生の発表・討議の指導を担当した。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 学部の「コミュニケーション英語」では、時事的な話題を取り上げるのに加えて、断片的な英字新聞の抜粋では扱うことができない歴史的な背景を記述したテキストを使用するように配慮した。具体的には、世界の民族の視点から時事問題を見るテキストと、「国境なき医師団」を含む様々なNGOの歴史、活動状況、今後の課題などを平易な英語で記述したテキストを読むことに加え、日々発生するニュースを伝える英語記事のコピーを頻繁に配付して講読した。このような教材の併用によって学生の興味を引き出し、彼らが自学自習する動機づけになればと思う。また、将来、小学校等で総合学習・国際理解教育を担当する可能性のある本学学生にとって意義あるものと考えている。
 学部の「英文学概論」では、イギリス小説の流れと著名な作家・作品に関して、具体的なテキストの抜粋の読解も含めて、学生の調べ学習とその発表を中心に進めた。また、「英文学演習」ではラムによる児童読み物の傑作『シェイクスピア物語』の原文を読み通した経験は学生にとって意義があったと考える。典雅な英文に触れただけでなく、日本国内で子ども向けから大人向けまで様々な形態で絶えず上演されるシェイクスピアの劇作品に対して食わず嫌いになることもなくなるであろう。「英米文学基礎セミナー」はイギリス児童文学の定評あるテキストを丁寧に味わうことを指導した。
 大学院の実践場面分析演習においては、マザーグースを使った子どもの英語活動についてほんの僅かではあるが院生とコラボレーションを試みた。
<研究活動>
研究成果の発表状況
@平成16年4月にチャールズ・ディケンズ『マーティン・チャズルウィット』に関する詳しい解題(単著)を近刊予定の『ディケンズ鑑賞大事典』のために寄稿した。
共同研究の実施状況
@公立小学校の英語科導入に関する包括的開発研究 代表者:齋藤九一 科学研究費補助金
学会活動への参加状況等
・参加状況
@6月4日:ディケンズ・フェロウシップ日本支部春季大会(在日英国大使館)出席
A7月24日:上越英語教育学会第8回大会(上越教育大学)出席
B8月11日〜21日:開発教育協会主催ヨーク・セミナー(英国ヨーク市セントジョン・カレッジ)出席
C10月3日:ディケンズ・フェロウシップ日本支部総会(大手前大学)出席
D11月20日:ヴィクトリア朝文化研究学会大会(甲南大学)出席
E3月26日:教育改革国際シンポジウム「持続可能な開発と21世紀の教育」(一橋記念講堂)出席
F3月27日:日本教育学会緊急シンポジウム「教職プロフェッショナル・スクールの可能性と危険性」(東京大学)出席
・学会役職
@ディケンズ・フェロウシップ日本支部理事
◎特色・強調点等
 ディケンズを中心とする19世紀ヴィクトリア朝のイギリス文学を専門とし、近年、ディケンズとトロロプという同時代の二人の小説家のいわゆるインターテクスチュアルな関係、および、伝記的な相互関係に関心を寄せて研究している。先行研究がほとんどない分野ゆえの苦労と喜びの伴う作業である。また、ディケンズ鑑賞大事典への寄稿はディケンズ・フェロウシップ日本支部の要請によるものである。
 

平 野 絹 枝(教 授)
<教育活動>
授 業
 学部の授業では最近の研究成果を取り込んだ形で、効果的な英文読解方略を指導し、異なった読解問題形式にふれさせて学生の多様な読解能力を引き出すことを心がけた。音読、黙読を練習させ、繰り返し読みの効果を強調した。このような英文の読解力向上のほかに、最近のアウトプット理論や方略使用によるコミュニケーション能力の育成に努めた。動機付けにビデオ、CDを使用して、英語の歌に親しませた。時々、日本人にとって、容易でない発音の指導も心がけた。ペア・ワークで、与えられた課題の相互評価をさせ、クラスの前で発表させることで、学生同士のフィードバックを保障した。アウトプットを強いることで、言語習得の育成をめざし、時には課題文の暗唱テストを課しインプットの重要性を理解させるよう配慮した。「中等英語科指導法」の授業では、限られた授業時間で教授法理論などを中心に理解させることに腐心した。また英語力の向上のため、教授法理論に関する英文を読ませたり発音の指導も行った。
 大学院では、ESL/EFL及び応用言語学の理論と指導、多角的な視点にもとずいた教材分析に焦点をあてた。英語教育学に関する諸理論をわかりやすく解説することに腐心した。理解の確認のチェックのため、時々小テストを行い、その後グループやペアワークで、問題点を討議させて、インタラクションをはかった。
研究指導
 第2言語習得理論,読解理論、方略、テスティングに関する文献の指導、データの収集、分析法,論文の構成,展開,考察の仕方について日本語と英文の指導を行った。
 修士課程1年次生には、単独指導も時にあったが、主にグループ指導で、修士課程2年次生には一人一人単独に密な研究指導を行うよう心がけた。
 兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科3年次生についても、指導のコメントを行い、研究指導した。
その他の教育活動
・平成16年4月〜17年3月:新潟大学(学部)非常勤講師として「英語1」を担当した。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 最近の英語教育学の理論を取り入れ、英語の理解と産出のバランスを様々な、一斉指導、ペア、グループワーク活動のなかで考慮することによって、学生が効果的に相互的に、英語力の向上や専門知識の獲得をめざせるよう、自主的に課題に取り組んだり、研究する力を培うことができたと考える。今後、限られた授業時間内で個に対応した指導をどのようにしたらよいかが検討課題である。
<研究活動>
研究成果の発表状況
@平成16年6月:『読解力とリコールテスト方略−自由記述分析による読解方略、記憶方略、メモ方略を中心にして−』(共著)Language Education & Technology No.41 pp.57-76.
A平成17年3月:『英語教材分析−会話教材におけるコミュニケーション方略を中心にして−』(共著)教育実践研究 第15集 pp.1-10.
@平成16年6月:『読解テストの方略に関する一考察』(単)第34回中部地区英語教育学会富山大会研究発表
学会活動への参加状況等
@6月26日〜27日:第34回中部地区英語教育学会富山大会出席
A7月28日〜30日:外国語教育メデイア学会全国研究大会
B8月7日〜8日:全国英語教育学会長野研究大会出席
C9月3日〜5日: 第43回2004年度大学英語教育学会全国大会出席
D中部地区英語教育学会運営委員
E大学英語教育学会評議員
◎特色・強調点等
 読解テストの妥当性の検証があまりなされていないリコールテストに関する研究で、目標言語学習経験年数、性差、読解力、学力、の諸要因がリコールテストのパフォーマンスとその妥当性に及ぼす影響や方略との関係について継続的な研究を行っているが、これまでの先行研究では例がほとんどなく、独創的であると思われる。
<社会との連携>
社会的活動状況
・英語スピーチコンテスト審査員
 

平 野 七 濤(教 授) ※実技教育研究指導センター
<教育活動>
授 業
ドイツ語コミュニケーション基礎T&U
 ドイツ語初学者に対して、ドイツ語特有の音声に注意を喚起させながら、ある程度きめ細かい指導が出来たと思う。今年度は、音楽コースの茂手木教授の下に来日していたバンベルク大学の民族音楽研究会の学生グループBaumannschaftのメンバーに教室に来てもらい、ドイツのことやドイツの音楽の話をし、また実際にドイツの民謡を演奏してもらった。短時間ではあったが、このことにより学生のドイツ語, 及びドイツに対する関心をさらに掻きたてることが出来たと思われる。
比較文化A&B
 A,Bとも,ヨーロッパの美術について学ぶことを中心的な課題としているが、今年度は学生が内容により直接的に近づき得るようにとの配慮から、昨年度までとは別のテキストを用いた(A:Manet,Monet and Degas, Living in Modern Times, B:Looking at Pictures)。 学生たちは、絵を見る面白さがどのようなものであり、そのポイントがどこにあるかをおおむね感じてくれたと思われる。特に、Bのテキストはかなり専門的な細かい記述も多くあったが、最後まで粘り強く熱心に学んでくれた。画集、ビデオなどで、なるべく数多くの絵を提示するように心がけた。
<研究活動>
研究成果の発表状況
@平成16年9月:『「さすらい」について−ヘルダーリンにおけるギリシャと故郷−』(単著)上越教育大学研究紀要第24巻1号 pp.123-135
A平成17年3月:『ヘルダーリン小論−対話としての詩−』(単著)上越教育大学研究紀要第24巻第2号 pp.381-391
学会活動への参加状況等
@6月5日〜6日:日本独文学会第58回総会・春季研究発表会出席
<社会との連携>
社会的活動状況
@上越市地域産業再生大綱策定委員会委員(上越市)
Aテレビ公開講座講師(JCV)
B9月〜11月:本学公開講座講師「中級ドイツ語」
 

前 川 利 広(教 授)
<教育活動>
授 業
学 部
 大きく分けて二通りの方針で英語教育を実施した。
1)20人のクラスにおいて、基本的な英語力をつける指導をした。4技能のうち特に発音と会話および英作文を指導して、表現力の向上を狙った。4月初めから5月中旬までは、提携校であるブランドン大学からカナダ人学生一名が教育実習のために滞在していた時期であり、私が指導教員であったことからその実習生に週一回授業を担当させた。そして、@その学生の実習状態を私が指導教員として評価し、各回ごとに英文による報告書を作成した。また、Aカナダ人による英語教育の方法をつぶさに観察した。後者は今後の私自身の教育方法向上に資するところがあるに違いないと考えたからである。その学生が帰国した後、私が若干のゲームを取り入れつつ会話と作文の指導をした。
2)40人強のクラスにおいては、アメリカ合衆国の歴史、地理、文化に関する資料を使用し、アメリカ文化の理解を促すとともに、英語を読む力の涵養、そして「自分でテーマを見つけ、文献を探し出してまとめる」という活動の基礎を指導した。既存のテキストでは適当なものがみつからなかったため、毎回プリントを作成し、配布した。
大学院
(前期):@英文を読む力をつけること、A異文化理解として上質の文化論を読み、アメリカ社会についての洞察を得ること、の二点を主たる目的とした。使用したテキストは、Ted Morgan, A Shovel of Stars (Simon and Schuster)である。
(後期):比較的英語読解力のある院生ばかりが受講してくれたため、質の高い、そしてスピードある授業になった。使用した教材はアメリカ現代小説家の中から比較的読みやすい短編小説を、毎回1編ないしは2回で1編を読んだ。
 原文は前期・後期ともに読みやすいものを選択したつもりだったが、前期に関しては受講生にとって難易度が高すぎたようである。しかし学生が極めて真剣であったので、学生にとってはいい試練となった。後期は受講生がとても愉しんで受講してくれた。読了した分量も少なくなかったので、充実感を覚えた旨の感想を漏らしていた。
研究指導
 学部英語コースができ、その2期生が4年生として一年を送った16年4月から17年3月までに指導した内容は、次の通り。
1)3人のゼミ生のうち一人は3年次にカナダに一年間の予定で留学・休学したため、4年生は2名となった。二人とも卒業研究の対象に長編小説Daddy-Long-Legsを選んだ。英文はさほど難しいものではないが、ところどころ彼らには容易に理解しがたい部分もある。読了した後、テーマをどのように見つけ、どのように論理を積み上げ、どのように傍証を加えて論文にするかということを指導した。
2)3年ゼミ生は5人である。そのうち一人は留学帰りであり、英語力が抜きん出ていた。扱った小説は Montana 1948 というアメリカの地方を舞台にした良質の物語である。感受性豊かな少年が主人公の優れた読み物であるため、最後まで熱の入ったゼミが続いた。
その他の教育活動
 3月14日より提携校であるカナダ・ブランドン大学から教育実習生が来て、その実習・生活すべてにおいて世話をした。その過程で小学校・中学校・高校の訪問を繰り返し、上越の児童・生徒との橋渡しをした。またそれぞれの学校での教育実習の様子を観察し、それぞれについて評価を英文で書いてブランドン大学への報告とした。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 3年4年ゼミ生に、カナダ人教育実習生による特別授業を実施した。ゼミ生の表現力訓練が必要であると判断し、4月の正規授業開始以前の1週間、毎日3時間実施した。これによってゼミ生にネイティヴ・スピーカーと話す際のためらいや恥じらいがだいぶ薄れ、意識が変わったことは顕著な効果といえる。間違いだらけではあってもなんとか英語を話すようになった。
 4年生は2人のうち一人が教員志望であり、予定通り正規教員として採用された。もう一人は海外での留学を望み、平成17年4月にニュージーランドに移って勉強を続けている。今年まで、ゼミ生教員採用試験合格率は100パーセントを維持している。
<研究活動>
研究成果の発表状況
@平成16年9月:「ニック・アダムズの自然との共鳴」(単著)『上越教育大学研究紀要』 pp.137-47.
A平成16年12月:「心の地誌−デイヴィッド・バーゲンの小説を読む」(単著)『カナダ文学研究』 pp.77-88.
学会活動への参加状況等
5月:日本ヘミングウェイ協会
10月:日本アメリカ文学会
12月:「シンポジウム:公立小学校での英語教育をめぐって」(慶応大学21世紀COEプログラム)
◎特色・強調点等
 ネイチャー・ライティング研究の一環としてアメリカ・カナダ国境近辺、特にノース・ダコタ、モンタナ、マニトバの小説を集中的に読み始めた成果の一つとして、「心の地誌−デイヴィッド・バーゲンの小説を読む」ができた。この作家についての研究論文は私の書いたものが日本で最初のものであると思われる。『カナダ文学研究』選考の評でそのことを評価された。
 平成17年1月にカナダ大使館より案内が来たので、Anita Rau Badami および Shyam Selvadurai という新進の作家と会う催しに参加した。近頃、インド系、バングラデッシュ系、スリランカ系のアメリカ作家、カナダ作家、イギリス作家が誕生し、世界の文学地図を大きく塗り替えようとしている。その傾向の把握に努めている。
 

大 場 浩 正(助教授)
<教育活動>
授 業
(学 部)
 「コミュニケーション英語」においては,大きいクラスではリスニング,リーディング,ライティングの3技能に,少人数クラスではこれらにスピーキングを加えた4技能に焦点をあてた授業を展開した。授業全体の目的・目標,学習内容,成績評価方法を詳細に解説し,毎回の授業では個々の活動に関して何のために行なうのか(何に役立つのか),どのように行うのかを明確にし,学習への動機付けを促した。また,毎回の授業後,(プリントのチェックなどを通して)形成的評価としてその日の活動成果を確認した。
 「中等英語科指導法(授業論)」でも同様に,学習内容や個々の活動の意義を明確にした。授業者が高等学校で行なった授業のビデオを見せたり,中学生向けの模擬授業を行なったりして,学生がその後に行なった模擬授業に対する具体的な指導を行った。又,中学校現場の教員による講義を組み込むことにより,学生への動機付けを行った。教育実習や現場に出てから役に立つ英語の授業の基礎技術を獲得させることに焦点をあてた。
(大学院)
 「英語科学習方法演習」と「英語科教育学習特論」では,目的・目標,学習内容,成績評価方法を明確にし,より高度な,そして,専門的な知識を獲得できるようにグループディスカッション等を通して指導を行った。英語指導の際に,直接的・間接的に役に立つ背景知識の獲得と自己の英語教育に対する考え方を形成させることに焦点をあてた。
研究指導
(学 部)
 国内外の専門誌に掲載された論文や専門書の講読を通した専門的知識の獲得(文献研究),及び小学校の教育現場における英語指導のビデオ撮りとその授業の分析や考察(実験研究)を通して英語教育に関する洞察や臨床的な実践力を深めさせた。
(大学院)
 より高度な専門的な知識,および臨床的な実践力を修得させるために,国内外の専門誌に掲載された論文および専門書の内容を報告させ(文献研究),それに基づいて議論等を行い,設定した研究課題に取り組むための実験研究を通して修士論文を完成させるための指導を行なった。
その他の教育活動
・上越教育大学附属中学校における研究会実施に係わる指導・助言を行った。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 学部では,英語を専攻していない学生の指導において,将来,(主に)小学校の教員として子供たちに英語を教える機会もあることを踏まえ,英語に対して肯定的な態度が育つように心がけると同時に,小学校の英語指導で用いられる活動を紹介した。また,英語コースの授業では,最低限,教育実習における実践に役立つような基礎知識や活動を積極的に指導した。卒業論文の指導においては,理論的な側面にのみならず,授業分析を通して実践力の修得に焦点をあてた。
 大学院においては,教授法や指導技術の基礎となる第二言語習得研究に関する理論的な背景や実験研究の成果を正確に理解させることに勤めた。また,修士論文の指導においては,心理学の理論を英語教育に応用させる新しい試みを支援し,これまでにない研究成果をあげることができた。
<研究活動>
研究成果の発表状況
@平成16年9月:「第二言語習得研究」(単著)『英語教育』 9月号 pp. 8-11
A平成16年9月:Preliminary analysis of grammatical judgement test: Dative constructions and their passive forms.(共著)Proceedings of the 8th Conference of Pan-Pacfic Association of Applied Linguistics. pp. 253-303
B平成17年3月:The development of grammatical competence of Japanese EFL learners of English: focusing on dative alternation.(共著)Proceedings of the 9th Conference of Pan-Pacfic Association of Applied Linguistics. pp. 322-331
C平成17年3月:An analysis of grammatical judgement test: dative constructions, their passive forms, unaccusative and unergative constructions.(共著)Proceedings of the 9th Conference of Pan-Pacfic Association of Applied Linguistics. pp. 386-394
D平成17年3月:「日本人英語学習者による非対格・非能格動詞の習得」(共著)『大学英語教育学会中国・四国支部研究紀要』第2号 pp. 91-110
@平成16年8月:「差異項目機能分析を用いた英文法テストの妥当性の検討と第二言語習得過程の考察」(共) 第30回全国英語教育学会長野研究大会研究発表
A平成16年8月:「The development of grammatical competence of Japanese EFL learners: Focusing dative alternation」(共) The 9th Conference of Pan-Pacific Association of Applied Linguistics研究発表
B平成16年8月:「Acquisition of English verbs by Japanese adult EFL learners: Focusing on the relationship between dative alternation and unaccusative/unergative distinction」(共) The 9th Conference of Pan-Pacific Association of Applied Linguistics研究発表
C平成16年10月:「日本人英語学習者による非対格・非能格動詞の習得」(共) 2004年度第1回JACET中国四国支部研究会研究発表
@平成17年3月:『日本人英語学習者の文法能力発達メカニズムの解明に関する研究』(単) 科学研究費補助金研究成果報告書
共同研究の実施状況
・「項目応答理論・差異項目機能分析を用いた英語文法能力発達過程の研究」代表者:山川健一(安田女子大学助教授)科学研究費補助金
学会活動への参加状況等
@平成16年度北海道英語教育学会研究紀要の編集
A平成16年度日本第二言語習得学会の運営及び学会誌の編集
B平成16年6月5日〜6日:日本第二言語習得学会出席
C平成16年8月7日〜8日:第31回全国英語教育学会出席
D平成16年8月19日〜21日:The 9th Conference of Pan-Pacific Association of Applied Linguistics出席
E平成16年9月3日〜5日:大学英語教育学会出席
F平成16年3月18日〜19日:Tokyo Conference on Psycholinguistics 学会出席
◎特色・強調点等
 日本人英語学習者の関係節構文とwh疑問構文におけるwh移動の習得に関する実証的な研究のまとめを行い,科学研究費報告書の形で発表した。この研究は言語理論を基に第二言語の発達過程を調査したものであり,この分野における最新の研究成果を提示できた点で優れたものといえる。又,共同研究の第二言語習得とテスティングの融合に関する研究が,継続研究として再度科学研究費補助金の助成を受けてスタートしたことは,この研究の価値が高いことを示しているといえる。
<社会との連携>
社会的活動状況
・上越市立城西中学校学力向上フロンティアの指導者(英語)
◎社会への寄与等
 日本英語検定協会による英語検定の二次試験に面接委員として参加した。
 

石 M 博 之(助教授)
<教育活動>
授 業
 学部の「コミュニケーション英語」の授業では、多人数と少人数のクラス・サイズであるために、おのおの異なった指導内容で実施した。多人数の「コミュニケーション英語」では、使える英語に向けて、基本的な英語力の養成を目指すテキストを採用した。リスニングやリーディングの技能に焦点をあてた授業を展開した。予習プリントを配布したりオーバー・ラッピングの手法を取り入れたりして、簡単な言い回し(フレーズ)を表現できるまで指導した。また、ペア・ワークを取り入れて発表させることに努めた。少人数の「コミュニケーション英語」の授業では、ポピュラーな最新の歌(グラミー賞受賞曲)等を扱ったテキストを使用して、英語に親しませながらリスニングやリーディングの技能に焦点をあてた授業を展開した。また、背景的知識を使いながら最新の英字新聞の一面記事や出来事を読解できるようにした。
 大学院で担当した2つの授業では、専門的な知識を身につけることと、その知識を応用して実際に想定した場面で実践的に小学校英語教育(英語活動)を支援・指導できる力を育成するように努めた。
 定期テスト、小テスト、レポート、授業での取組(授業での発表、及び態度)、出席等を総合的に評価した。
研究指導
 大学院では、論文の構成、展開、考察について日本語と英文の指導を実施した。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 学部では、英語を使えるようにするために具体的な学習方法を提示した。また、英字新聞の内容に関しては、教育やスポーツに関する記事を取り上げて、受講生が学習に取り組みやすいように工夫した。
 大学院では、具体的に小学校英語教育(英語活動)に関する支援・指導体系の中で、アクティビティー(ゲームや歌の活動など)を重視したテクニックを提示した。それらのアクティビィティーが将来の教育実践活動で役立つことができるように配慮した。
 今後、小学校英語教育(英語活動)の内容に関して、包括的に研究を推進して教育活動に還元していきたい。
<研究活動>
研究成果の発表状況
@平成16年7月:『中学校入学以前の英語学習経験と聴解力との関係に関する調査報告』(単)上越教育大学英語教育学会第8回大会
A平成16年8月:『小学校英語に望まれる教材・教具』(共)第4回小学校英語教育学会全国大会インタラクション
共同研究の実施状況
・小学校英語教育における教材・教具の開発・提供とその運用に関する研究−地域ネットワーク構築の中での英語活動の実践をとおして− 代表者:石M博之 平成16年度上越教育大学研究プロジェクト
学会活動への参加状況等
@7月24日:上越教育学会英語教育学会第8回大会出席
A8月21日〜22日:平成16年度小学校英語教育学会(JES)東京大会出席
B9月18日:愛知教育大学英語英文学会第11回研究発表会出席
C12月19日:マザーグース研究会第8回全国大会出席
D平成16年度小学校英語教育学会紀要編集・査読委員
◎特色・強調点等
 アクティビティーとの関連で小学校英語に望まれる教材・教具の工夫について発表した。多様な教育実践の場面で応用できるような教材・教具を具体的に開発した点、及び即教育実践で活用できるという点で優れているといえる。
<社会との連携>
社会的活動状況
@10月:長野県小学生英語指導力認定協議会講師「小学校英語活動の進め方−ゲームの活動と歌の活動についての事例−」
A1月〜2月:上越市立南本町小学校(計1回)、新井市立新井南小学校(計2回)、及び糸魚川市立北西海小学校(計1回)で「出前授業」の実施
B10月〜2月:上越教育委員会との連携による英語教育・英語活動支援事業講師「英語活動の流れの作り方」等合計4回
◎社会への寄与等
 長野県小学生英語指導力認定協議会の講習については、信濃毎日新聞(平成16年10月4日発行)に記事として取り上げられた。
 小学校の学級担任とのティーム・ティーチングによる出前授業は、英語活動のこれからの1つの方向性を示すことができ、有意義な授業であったと評価を得た。
 英語教育・英語活動支援事業の講習内容は、小学校現職教員から「わかりやすく」「ためになる」内容であったと評価を得た。
 

野 地 美 幸(講 師)
<教育活動>
授 業
学 部:「コミュニケーション英語」の授業では、LL 等を活用し、リスニングとスピーキングを中心にコミュニケーション能力の育成に努めた。「英語音声学」では、英語の音を体系的に学ぶと共に、小学校での英語活動に使える教材を通して英語らしい音の産出の練習をくり返し行えるようにした。「英語学演習」と「英語基礎研究」では英語の文の形成にどのような原理が関わっているかを解き明かし、英文読解力の養成を図った。
大学院:「英語学特論」においては生成文法理論の入門の授業を行った。「生成文法特論」においては、本年度は教員志望の院生が対象だったこともあり、生成文法に基づく第二言語獲得研究に関する論文を読みとく形式で授業を行った。また、「実践場面分析演習」では、コミュニケーションの手段としての言語について改めて検討してもらうよう最近の言語学の知見を盛り込んだ授業を行った。
 学部・大学院共に、各授業の目標、展開、評価について初回の授業でシラバスに言及して説明し、説明通り遂行した。また、適宜予習・復習事項について指示を出し、授業時には小テストを行うなどして各授業のねらいが達成されるよう努めた。
研究指導
学 部:英語学の基礎的知識の養成を図る一方、将来小学校の英語活動を行う際に重要となってくる英語力の向上がはかれるよう意識して指導を行った。
大学院:進学希望の院生を対象としていたことから、論文をなるべく多く丁寧に読み、各論文が何を意図し、どのような根拠を基にどのような主張を行ったか、そして最終的にその意図はどの程度達成されたのか、について検討していく形式で授業を進め、修士論文等の執筆ができるよう研究をサポートした。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 学部の授業については教員志望の学生が受けていることを考慮し、また大学院の授業に関しては受講生に現役院生もいることを考慮し、英語学(生成文法理論)から英語教育にアプローチすることを意識した授業を心掛けた。
<研究活動>
共同研究の実施状況
・「公立小学校への英語教育導入に伴う諸問題とその対策」代表者:齋藤九一(上越教育大学教授)科学研究費補助金
学会活動への参加状況等
@平成16年6月6日:第二言語習得学会出席
A平成16年11月13日〜14日:日本英語学会出席
在外研究の状況
・平成17年3月15日〜18日:シンガポール 日本人学校視察および小学校英語に関する資料収集
◎特色・強調点等
 小学校英語指導者研修セミナーへの参加(平成8月29日、於日本外国語専門学校)、海外視察等を通して小学校英語について見識を深めることができたこと、そしてまたTPL(東京心理言語学研究会)を通して自らの言語獲得研究を発展させることができたことが大きな成果であった。
<社会との連携>
社会的活動状況
・8月25日:上越市英語教師の会にて講師を務めた。
 

若 山 真 幸(講 師)