【芸術系教育講座(美術)】
 

太 田 將 勝(教 授)
<教育活動>
授 業
学部・修士課程
 指導法・教科教育関係の科目については、学校および社会教育の現場の状況を学生・院生に伝え、臨場感をもって、関連の各授業にとり組んでもらえるように工夫した。現職の校長・教諭の関連の授業への参加、教育現場の協力を得て、学生・院生主体による研究授業を実施した〈年間10回〉。教材や授業内容の設定についても、現場経験の豊富な関係者の意見・情報を得つつ、学校・社会教育の現場での実践的意義と効果を重視した。博物館関連の科目では、@従来の芸術史学の調査や方法を伝えるとともに、A在野的・前衛的な内容・方向を含む近現代美術の調査・研究、その成果である展覧会の企画を、学生に行政機関としての公立美術館の状況を想定させ、これに整合させながらいかに推進すべきかをシミュレーションした。その際、モデル(模型)、実物を多用した。
博士課程
 集中方式の授業。10講座、理系から文系にまたがる、20代から50代までの40人の受講者を対象に、美術の意義を講じた。DVD、CDなど機器の使用、英語、漢文等原書の講読、実技の導入によって、美術の予備的素養のない受講者に対し、専門の水準を下げることなく、ほぼ全員の興味・関心をひきつつ、立体的に構成し、一定の成果を得た。
 成績評価については、いずれも出席を重視し、レポート、各種アンケート、ドリル、最終試験などを総合し、厳格に行った。
研究指導
 上越、ニューヨーク両市の公立小学校4校の協力を得て、同一学習指導案、同一授業計画にもとづく、小学校図画工作科授業を計画、本学大学院および学部学生計2名が4校の授業各2回宛を担当した。厳密な意味での比較研究としては成立しがたかったが、当該学生はこの研究授業を通し、言語を超えた視覚芸術・美術による教育実践の可能性を実験でき、一定の実践力を高めたかと思う。
その他の教育活動
 教職講座:過去3年間の全国都道府県の教員採用試験(図画工作科)の問題について、出題傾向を分析、模範解答を提示し、次年度の問題の予想を示した。
<研究活動>
研究成果の発表状況
@平成16年12月:「アフリカの仮面−ケニヤの神々−」(『アフリカの仮面』) その他
@平成16年9月:海上保安庁 第5回未来に残そう青い海 図画コンクール審査
A平成16年11月:青少年育成事業 夢への第一歩−そして輝く未来−第一部「夢に向かって」作文コンクール審査
B平成16年11月:妙高四季彩ジュニア展審査
C平成16年12月:第10回上越こども発明工夫・模型工作展審査
@平成16年8月:「ふるさとの記憶−祈り−」新潟日報
A平成16年10月:「ふるさとの記憶−祈り−時の扉開く玉手箱」新潟日報 その他
国際研究プロジェクトへの参加状況
・上越国際ジュニア美術館準備委員会 事務局 太田 將勝
学会活動への参加状況等
@大学美術教育学会
A美術史学会
B日本理論心理学会
在外研究の状況
@10月20日〜10月29日:アメリカ合衆国ニューヨーク市 ニューヨーク市公立小学校での上越教育大学大学院生による研究授業 ニューヨーク滞在中に上越・ニューヨーク国際児童画展開催準備会を実施
<社会との連携>
社会的活動状況
@日本ジュニア美術協会諮問委員会委員
A国際ジュニア美術館設立準備委員会委員
B海上保安庁図画コンクール審査委員
C東北美術懇話会委員
D新潟県絵画版画コンクール審査員
E上越・ニューヨーク国際児童画展開催実行委員会
F上越市美術品収集委員
G上越こども発明工夫・模型工作展実行委員
H上越芸術総合研究所理事
I妙高四季彩ジュニア展審査員
 

風 巻 孝 男(教 授)
<教育活動>
授 業
 本年度は、心臓等の手術のため、後期の授業は全て未開講もしくは本学他教官による代講によって賄わざるを得なかった。前期の授業については、以下の通りである。
 学部:「表現と鑑賞」の授業は、造形表現の意味について、教育的視座に立って、個性と様式発展(発達段階)をキーワードとして多角的に考察しながら、理解させることを目的としている。ゴッホ、ピカソ、クレー等著名な芸術家の幼・少年期の表現や私自身の幼・少年期の表現をスライド映写によって鑑賞し、造形表現の意味を、身近な問題として問いかけ、実証的な説明を通して理解させるべく努めた。又、時代様式については、個人様式の発展のプロセスとの類似性に触れながら平易に説明し、東洋・日本の美の特性については、西洋美術との比較を通して理解を深めるよう授業内容を工夫した。
 大学院(修士課程):「芸術理論」は、ヴェルフリンの表象形式、ガントナーのプレフィグラツイオーン等の様式論やゲシュタルト心理学、フロイト等を援用しながら、美術様式形成の必然性について理解を深めることを目的としている。
 授業形態については、スライド映写やオリジナル作品を見ながら実証的に説明し、授業の主体を受講者と考え、受講者の意見や解釈を尊重するよう心がけている。又、授業に集中させるべく、板書をできるだけ避け、授業内容の概要を記したコピーを配布した。
 成績評価は鑑賞力テスト及びレポート提出によって行ったが、その際特に重視したのは、受講者が自分自身の言葉で記述していることである。授業中の応答や出欠も成績に反映させた。
 授業内容は、個人様式を取り扱う場合には、芸術家の幼・少年期の活動に着目し、後年の活動との緊密な関連を指摘し、時代様式を扱うにしても、個人の発達段階との類似性に言及すると言ったように、常に教育的観点を念頭に置いている。
研究指導
 大学院(修士課程)に於ける論文指導は「飛騨版画に関する考察」と「北村さゆり研究−北村絵画に見られる日本画の新たな試みについての考察−」の2件であった。
 前者は、飛騨版画の消長の歴史を辿り、飛騨版画の表現の特質や版画教育の意義について考察したものであり、筆者は飛騨版画草創期の学校文集『こまどり』と全国誌『赤い鳥』及び『アトリエ』との関連について、大学美術教育学会で発表し、同学会誌に掲載され、更に『岐阜新聞』に飛騨版画に関する記事を8回にわたって連載した。
 後者は、創画展や個展を活動の場としている現代の日本画家北村さゆりに関する作家研究であり、筆者自身の制作の指針を求めて、北村絵画の特性を分析したものであり、筆者は本学在学中、創画展に初入選を含め2度入選している。
 論文指導は、夏期休業中並びに療養中も自宅で行った。
<研究活動>
 論文「C. D. フリードリヒに帰せられた諸作の真贋に関する論考(4)」を完成させるべく努めたが、心臓病の手術のための入院及び療養等で果たし得なかった。
 

西 村 俊 夫(教 授)
<教育活動>
授 業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
○授業形態、学習(研究)指導法等の教育方法に関する取組状況
 全学共通科目の複数教官による授業においては、授業開始前に会議等を行い授業の内容等の検討を行っている。教科に関する科目の演習や実習の授業では、学習内容について学生の意向を聞くと共に前回のレポートや課題を資料として授業内容を検討している。
○成績評価法に関する取組状況
 実習・演習の授業では提出課題と合わせて制作プロセスでの様々な工夫や発見の状況を加えて総合的に評価している。
【観点2】教育の達成状況
○進学や就職などの卒業(修了)後の進路の状況から判断した取組状況
 ゼミ卒業・修了生の進路は以下の通りである。学部卒業生1名は本学大学院に進学した。修士課程修了生3名(内1名は現職派遣大学院生)は東京都教員1名、兵庫教育大学連合大学院博士課程進学1名である。大学院博士課程を9月修了した学生1名は広島大学教育学部に講師として就職した(平成17年4月就任)。
研究指導
【観点1】学部
 学部2年次の授業では地域の小学校と連携し、造形遊びを内容とする活動を行った。演習授業及び卒業研究では学生一人ひとりの興味・関心を大切にし、それぞれの能力や良さを十分に発揮できるにように指導した。
【観点2】大学院
 修士課程学習臨床科目の授業では、地域の小学校と連携して造形遊びを内容とする研究授業を行った。修士論文作成のセミナーでは、研究発表及び調査研究に注力した。博士課程においては、研究テーマにそった学会誌投稿論文の作成および学会口頭発表の指導を行った。博士課程院生の1名は学位論文を提出し、博士(学校教育学)の学位を9月に取得した。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 美術授業の他に全学共通の相互コミュニケーション科目、学習臨床に関する科目と多様な授業を行っている。大学院の学習臨床に関する科目では、地域の小学校の協力を得て受講生が十分な論議の上で計画した研究授業を行うという実験的授業を行っている。研究室には、博士課程、修士課程、学部それぞれの学生がおり、常に教育・研究に関する交流が行われている。
<研究活動>
研究成果の発表状況
@平成16年7月:『杉のかたち(E)-04』 空間アート展 ユニグラバス銀座館
A平成15年9月:『杉のかたち(F)-04』 第68回新制作展 東京都美術館
@平成16年10月:『教育の基礎としての相互コミュニケーション科目「表現」の実践に関する研究1』 (共)、第43回大学美術教育学会研究発表
A平成16年10月:『教育の基礎としての相互コミュニケーション科目「表現」の実践に関する研究2』 (共)、第43回大学美術教育学会研究発表
学会活動への参加状況等
@10月9日〜10日:第43回大学美術教育学会出席
A3月25日〜27日:第27回美術科教育学会CHIBA大会出席
B3月29日:第8回芸術教育実践学会の企画
C平成16年度芸術教育実践学会会長
◎特色・強調点等
 大学美術教育学会弘前大会では共同で相互コミュニケーション科目「表現」の実践に関する研究発表を行ったが、他大学の研究者・教員から多くの質問が寄せられるなど研究内容が注目された。芸術教育実践学会では会長を務め学会及び芸術教育の発展に努力した。
<社会との連携>
社会的活動状況
@平成17年2月:第45回新潟県児童生徒絵画・版画コンクール審査員
◎社会への寄与等
 新潟県児童生徒絵画・版画コンクールという展覧会の審査を通して県内の美術教育関係者と交流をするとともに県の美術教育の発展を支援している。
 

福 岡 奉 彦(教 授)
<教育活動>
授 業
○教育方法及び成績評価面での取組
 上越教育大学に入学してくる学生の多くは教員養成の学生である。将来を担う教師としての核の教育を、授業の中での実践と理論の往還関係から学生たちが学びとれるように授業を構築している。
 学部2年次の造形基礎の授業では、他コ−スの受講生と美術コ−スの学生が交ざる中、それぞれのイメ−ジ展開の視野を広げ、素材にたいする興味を持たせることを目標とした。また、伝統絵画の重要性と現代における表現のあり方を模索させ、3年次の版画の授業の中で表現の幅を実感させた。
 全ての授業で、表現に対する学習目標をそれぞれの学生に持たせ、表現の多様性を尊重している。
 学部生、大学院生とも、絵画という専門性の意義を様式論だけでなく、教育現場での効用性の面からも学生たちが理解できるように授業を構築している。その後の成績評価基準は、指導教員だけではなく、実技を担当している複数の教員と学生たちが参加した合評会を開き、教員たちと学生たちの自由な対話の中から客観的に評価を経験できる評価方法をとっている。
研究指導
【観点1】学部
 学部では、ものを見る眼、作品を観る眼を通して自分自身を見つめる眼=子どもたちを見る眼を養い、教育という場を通して子どもたちを育てる力がもてるように、基礎的実技を通して個々のイメージの領城を広げられるように行っている。又、卒業研究をとうして制作と制作レポートを課し、その研究が教育実践へ発展できるように配慮した指導をおこなっている。
【観点2】大学院・研究留学生
 大学院生の各授業では、表現の多様性、表象のおもしろさやイメージの拡大表現の分析等を通して、新たな鑑賞教育と制作表現の往還を具体化し、そこから生まれる新しい教材開発も生みだせるように行っている。また、美術という專門性にとっての制作の意味性を考察しつつ、実技の指導を行った。
その他の教育活動
 学部4年生1人と科目履修生の1人、計2名が町田市立国際版画美術館で開催された第29回全国大学版画展(町田市立国際版画美術館・大学版画学会主催)へ1版多色刷り作品と腐刻銅版画作品、計2点を出品させた。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 将来、教育を預かる現場の教師として、子どもたちの多様化が進むなか、美術という教育で培ったイメージの拡大を持つことにより、いろいろな場面での子どもたちの個性、特色を見極め、現場での教育機能の充実をはかれるように、また、与えられた役割りを担っていけるように行っている。そして、作品の発表では、社会と美術館と大学の一体化を図る意義を体験させ、今日の教育状況における新しい学習の意味を知らせている。
 また、小・中学校及び高等学校の美術教育が厳しい状況におかれている現状認識に立ち、今日の社会状況との関わりを視野に入れ、大学院生および学部生との教育研究に関する自由な対話・交流の機会を設けて共通認識を持ち、共に教員養成における美術教育のあり方を今後さらに研究していく必要がある。
<研究活動>
研究成果の発表状況
平成16年
・5月 油彩画『La seine』116.7×45.5p、油彩画『アスパラガスと林檎』P10号、油彩画『胡桃』サムホール、油彩画『胡桃』F0号の計4点を「第8回Présent−時−展」へ出品する。
(京都・ギャラリーヒルゲート企画)
・6月 油彩画『群』F200号を「彩象2004展」へ出品する。
(埼玉県立近代美術館・後援 埼玉教育委員会、テレビ埼玉、埼玉新聞社)
・8月 油彩画『La seine』116.7×45.5p、銅版画『魚』18×24pの計2点を「第2回新地ビエンナーレ展」へ出品する。
(わくわくランド・新地教育委員会企画)
油彩画『アスパラガス』F4号、『アネモネ』F3号、油彩画『胡桃』Fサムホール、油彩画『胡桃』F0号の計4点を「100周年記念特別企画1000万人の洋画小品展」へ出品する。
(日本橋・三越ギャラリー企画)
・10月 油彩画『時光』F200号を「第72回独立美術協会展」へ会員として出品する。
(東京都美術館)
平成17年
・1月 油彩画『La seine−U』F100号、油彩画『アネモネ』S4号、油彩画『菊』19×64pの計3点を「第3回EVOLUTION16展」へ出品する。
(日本橋・高島屋ギャラリー企画、JR名古屋・高島屋、大阪・高島屋へ巡回する)
審査平成16年
・4月 第7回新潟国際ジュニアビエンナーレ展審査(新潟県民会館・新潟県文花振興財団)
・10月 第72回独立美術協会展審査(全国公募・東京都美術館)
第37回手紙作文コンクール信越地方審査(信越郵政局)
平成17年
・1月 第2回全日本年賀状大賞コンクール信越地方審査(信越郵政局)
在外研究の状況
 平成16年12月23日から平成17年1月8日までの海外研修で、10,rue de Didot-75014 Parisにある Atelier CONTRE POINTへ通い、エクトール・ソニエル氏に銅版画の1版多色刷りの研究を学ぶ。
◎特色・強調点等
 全国公募団体でもある独立美術協会・会員として会の運営、審査等に携わり、会期中、24室・新人室で一般入選者の作品前で作品批評を行う。また、機関誌・独立クロニクルに独立展示場・12室の一般入選者の作品批評を担当執筆する。
 また、全国各地での展覧会会場の「ギャラリー・トーク」という場をとうして絵の表現に関わりをもっている。他に中越震災被災地の小千谷東山小学校の児童57名の版画体験授業を院生2名と行い地域教育の一助となる。
<社会との連携>
社会的活動状況
・平成17年1月 新潟県立近代美術館収集委員会
平成16年度美術品収集の候補作品の閲覧・討議等行う。
尾崎 正明(東京国立近代美術館副館長)、幸福 輝(国立西洋美術館学芸課長)、宮田 亮平(東京芸術大学美術副学長)ほか4名による委員会である。
 

増 谷 直 樹(教 授) ※実技教育研究指導センター
<教育活動>
授 業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
○授業形態、学習(研究)指導法等の教育方法に関する取組状況
 学生達の視野を広げかつ新たな興味を持たせることを目標として、伝統的な絵画技法の解説と制作を行う授業を2年次に開講している。伝統絵画技法の授業は学生達の興味と創造力を引き出し、新しい教育実践力を育む大きな効果があったと考える。
 3年次の絵画表現Aの内容については油彩画のみでなく日本画、版画も受講できるようにし広がりを持ったカリキュラムに変更した。
○成績評価法に関する取組状況
 どの授業においても授業の冒頭にオリエンテーションを行い、またシラバスにおいて学習目標や授業計画を解説し、最終日に各授業で制作した作品を教室内に展示し、複数の教官および学生達が参加して合評会を開き、討論をしながら作品を評価しその後教官が協議し成績を決定している。この方法は学生が自分の作品を他者と比較しながら客観的に評価する経験を持つことが出来る優れた評価方法と考えている。
研究指導
【観点1】学部
 自分自身が美術に真剣に向き合い創作活動することによりはじめて教育にかかわる臨床的な実践ができるとの考えの基に、動機付けや創造性に留意して指導を行った。どの授業についても学生は指導の理念を良く理解し積極的にかつ意欲的に制作に取り組んでいる。
【観点2】大学院・研究留学生
 院生2年2名と1年1名の修士論文の指導を行なった。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 自分が美術に向き合い、創作活動をおこなうことによってはじめて教育にかかわる臨床的な実践ができるとの考えを基に実技教育を行っている。中でも大学院の西洋画研究および学部の伝統絵画表現の授業で行うテンペラ、フレスコ等の古典技法の実習は絵画教育の実践に新しい広がりを加えるものと考えフランス、イタリーでの研修の成果を生かし内容の一層の充実を計っている。
<研究活動>
研究成果の発表状況
@平成16年9月:『カサレス』F100、『プレイサス』F50、『Bufon』F30等6点 グループプシケ展 シロタ画廊 (銀座)
A平成16年10月:『トレド』F100、『棚田』F30、『ゴルド』F20等30点 増谷直樹個展 アトリエスズキ(銀座)
B平成16年11月:『トレド』F130、『トレド』F20 牛島教室卒業生展 府中市美術館
C平成16年12月:『カルカッソンヌの教会』F8 ノエルの宿り木展 アトリエスズキ
D平成17年3月:『棚田』F4 プリマヴェーラ展 アトリエスズキ
在外研究の状況
・平成16年3月〜4月 フランス パリ、シャンパーニュ、ブルゴーニュ地方、においてロマネスク美術研究及び制作活動を行った。
◎特色・強調点等
 海外研修などの研究活動を積極的に行い、絵画制作および西洋画技法、組成に関する研究を継続して行っている。中でも西洋の古典絵画技法の研究に関してはイタリー、フランスなどにおいて長期間の現地研修を行っており、その積み重ねによる研究の蓄積と先進性があり、我が国の絵画教育実践の新しい展開に寄与するものと考えている。
<社会との連携>
社会的活動状況
@上越市展運営委員
A新潟県展委員
B妙高四季彩美術展審査員
◎社会への寄与等
 美術を自己表現の手段の一つとして、それを生きがいとしている人が数多くおり、社会教育、生涯教育の果たす役割は大きい。市展、県展の委員、妙高四季彩美術展審査員として、また美術クラブなどの講師として市民の作品の指導などを行うことにより、地域の生涯教育、社会教育におおきく寄与している。
 

山ノ下 堅 一(教 授)
<教育活動>
授 業
 ブリッジ科目「図画工作」では,分担担当テーマを「見ること、伝えること」として、視覚伝達デザインについて実習をおこなった。昨年度授業開始時学生にデザインについて記述させたところ、学生のデザイン概念が「つくる」ことに偏っていたことから、デザイン作成以前の構想段階の重要性を示唆することを念頭に授業を進めた。特に、デザインされたメディアを共有する「見る人」への眼差しの重要性を要点としてデザインの意味を講義し、実習した。
 「図画工作」、「デザインワーク1」では、ティーチング・アシスタントを採用したことにより指導が行き届いたと思っている。「デザインワーク1」では、コンピュータによる画像制作の能力の向上がみられた。
研究指導
 学部「デザインワーク1」「デザインセミナー」において、コンピュータによるデザイン制作方法を取り入れ、情報の収集、選択、加工を実習し、視覚的情報発信・受信の意味を検討しながら作品制作を行った。
 外国人留学生を受け入れている。留学生は中国内モンゴル師範大学美術コース卒でデザイン教育研究を志していることから、デザイン教育について、実習と文献研究を主に行っている。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 「デザインワーク1」では、教師のコンピュータ画面をプロジェクターで投影しながら画像制作方法を教授して効果を上げていると考えられるので、ブリッジ科目「図画工作」においても、より理解を深めるようプロジェクターによる提示を取り入れるべく準備している。
<研究活動>
学会活動への参加状況等
@平成16年度大学美術教育学会理事
A7月24日:平成16年度第1回大学美術教育学会理事会出席
B10月8日〜10日:第43回大学美術教育学会「弘前大会」、第2回理事会出席
C3月19日:第3回大学美術教育学会理事会出席
<社会との連携>
社会的活動状況
@上越市美術展覧会運営委員(上越市)
Aにいがたデジコングランプリ実行委員・審査委員
B上越美術教育研究会講演、6月24日、上越教育会館
 

阿 部 靖 子(助教授)
<教育活動>
授 業
 本年度は、平成16年3月から17年1月まで約10ヶ月間、文部科学省在学研究員として、ドイツ、イギリスでの研究活動を行っていたため、授業に関しては帰国後の2ヶ月間、他の教員と共同で行っている授業を担当した。大学院と学部の連携授業である「実践場面分析演習U」においては、実験研究授業とその協議会及び授業分析などを行い、在外研究で学んだ諸外国の美術教育のあり方を紹介し、今までとは異なる方向からの指導・助言を行うことができたと考える。
研究指導
 美術科教育研究セミナーで他教員の補助的指導を担当した大学院学生1名に対し、在外研究先で美術教育を中心とした資料収集を行い、学生の論文指導に協力した。また、在外研究先のローハンプトン・サリー大学において、美術コース在籍大学院学生の研究指導に協力した。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 今年度は10ヶ月に渡る在外研究を行うことができ、その間、今までの自分自身の教育活動、研究活動を振り返る大きな機会を得たと考える。特に、大学の民営化を先進的に行い、教育改革を進めているイギリスの現状を直接見てきたこと、そしてヨーロッパが1つになりつつある歴史的時期に滞在できたこと、など、日本の教育の方向と世界の教育の動きとを重ね、教員養成の使命を再確認し、大学という場での教育・研究のあり方について考えることができた。また、イギリスでの派遣先であるローハンプトン・サリー大学は、教員養成において優れた実績を持つ大学であり、大学の授業やゼミに参加したことによって得たものを、今後の自分自身の教育活動の向上のために役立てていくことができると考える。
<研究活動>
研究成果の発表状況
@平成16年10月:「日本の美術教育について−小学校の授業内容と近年の問題を中心に−」 PGCEコース学生を対象とした講演(ローハンプトン・サリー大学)
A平成16年12月:「環境をテーマにした私の作品」 写真とメッセージによるプレゼンテーション(3m×2m)(ローハンプトン・サリー大学)
学会活動への参加状況等
@平成16年11月:Galleries creating learning engage international conference テイト・モダン及びロンドン美術館 (ロンドン)
A平成16年12月:Roehampton Education Research Conference ローハンプトン・サリー大学 (ロンドン)
在外研究の状況
 平成16年3月より8月まで、ドイツ、ハンブルクのハンブルク美術工芸博物館において、@美術館と学校のパートナーシップによる美術教育について、A生活に根ざした美術教育のあり方について、の研究を行った。ハンブルク美術工芸博物館は、充実した東洋美術品の収蔵を行っている美術館であり、その収蔵品を基にした鑑賞教育の実際は、ドイツの美術教育の歴史の深さを感じさせる興味深いものであった。
 次に、イギリス、ロンドンにあるローハンプトン・サリー大学を受け入れ機関とし、平成17年1月まで、ナショナル・カリキュラムの内容検討や実際の学校視察を通して、環境造形教育のあり方についての研究を行ってきた。環境教育についての研究が様々な方法でなされているイギリスの教育の中で、環境造形についての教育は学校、美術館、地域の各種センターなどの協力により進められていた。その理論的背景、方法、課題など、多くの資料を収集でき、今後の日本の美術教育の方向を考える貴重な研修となった。
<社会との連携>
社会的活動状況
@新潟県森林審議会委員(新潟県)
A都市計画審議会委員(上越市)
B景観審議会委員(上越市)
C環境審議会委員(上越市)
D環境影響評価検討委員会委員(上越市)
E景観アドバイザー(上越市)  など。
 

 石 次 郎(助教授)
<教育活動>
授 業
●「体験学習(人間教育学関連科目)」(学部1年次)----陶芸のプロセスを経験する他に、地域の春日小学校子ども祭で1,000人規模の造形活動「花いっぱい」を企画運営した。1年次学生に対して陶芸の専門性と学校や地域での活動を関連させることによって、2年次になって各教科の専門へ進級していく際の専門性の捉え方について考える機会とした。また、最後にレポートを提出させた。
●「表現・状況的教育方法演習(相互コミュニケーション科目)」(学部1年次)----専門や所属の異なる4人の教員(美術、音楽、数学、理科)が連携をとりながら表現を中心として教育やコミュニケーションについて学生にビデオ作品制作・パフォーマンス・プレゼンテーションを行わせ、学びの中での表現の理解を促す授業を展開させた。各教員がレポートを課し最後の授業で授業内容と自分たちを関連させた発表をさせた。
●「図画工作(ブリッジ科目)」(学部1年次)----粘土で様々な形を作ったり机上に延ばしたり上方に伸ばしたりし、美術や陶芸の専門性の根源的な部分が粘土を媒体としながら人との関係へそして学校教育場面へ繋がることを学習した。また、最後にレポートを提出させた。
●「造形基礎B/D」----3人の教員が担当し、それぞれが造形に対する講義と実習を行った。その後3グループ(3教員)に分かれ作品制作を行い、最後にレポートと作品についての発表を行った。その際、単に結果としての作品が中心になるのではなく作品を作る際に生じる様々な出来事性を大切にするように指導した。何故ならば、そのことに学校教育現場での美術の重要性があるからである。
●「工芸表現B」----陶芸のプロセスにある発見や工夫・技術を実際に粘土、道具、焼成などの素材などに触れながら体験し、ガラスや陶芸の作品を制作した。
●「陶芸研究(大学院)」----粘土から陶芸作品までの過程を追いながら、「素材・プロセス・技術」と「作ること・人(子ども)」との関係について学習した。また、美術コース以外の現職派遣学生の受講が多いために、陶芸をベースとしながらも学校教育の話題が多く活発な授業が展開できた。また、最後に毎回の授業での出来事や内容を基にしながらそれぞれの考えをレポートにして提出させた。(「工芸表現B」「陶芸研究」----ガラス工房を訪問し、吹きガラスの体験を行った。)
●「意味生成表現特論」----3人の教員がそれぞれに意味生成をテーマにした講義を行った後に、受講生による発表を行った。また、最後にレポートを提出させた。
●「造形表現カリキュラム開発特論」----子ども・学び・遊び・造形・意味生成をキーワードとして、毎回協議を積み重ねた後に、地域の春日小学校2年4組で共同研究授業(造形活動)を行った。
研究指導
 学部生は工芸表現セミナーT.Uを、大学院生は工芸基礎.応用セミナーを中心に、ゼミ形式で学校教育や陶芸制作及び論理について発表及びディスカッションを行った。また、地域の小学校での造形活動や地域住民との造形活動の企画・運営を中心的に行うことで子ども・保護者・教諭・住民の実際に触れた。これらの活動への参加や教員の授業の補助をしながら、そこでの出来事によって美術や造形活動が状況的にどのように学習として成り立つか、すなわち臨床的な実践力について学んだ。単に陶芸作品を作るのでなく、陶芸の専門性を有効かつ柔軟に援用しながら学校教育現場で「作る」ことをキーワードとすることによって現場でのさまざま子どもの問題に対応できる実践力の修得に努めている。
その他の教育活動
●学部及び大学院生のゼミ学生の教育実習の指導を行った。
●学部1年次「人間教育学セミナー」を担当し、教育実習の指導を行った。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 特色としては、陶芸関係の授業では、技術の伝達や作品主義に傾倒しすぎないようにしながら、陶芸文化と人間との関係に目を向け、陶芸を通して教育や社会へと繋がっていくことを大切にした点が挙げられる。
 今後の検討課題としては、大学の授業でありながら教える側と教えられる側の区別・乖離が学生の側に高校までの授業のあり方の延長として見受けられ、そのことによって、授業が双方向のものにならず従って活性化しない点が挙げられる。
<研究活動>
研究成果の発表状況
●平成16年4月:個展 風の座(新潟県柏崎市)&ギャラリーレクチャア
●平成16年4月:4人展 ギャラリー シルバーシェル(東京都 京橋)&ギャラリーレクチャア
●平成16年5月:2人展 赤坂・乾ギャラリー(東京都 赤坂)
●平成16年8月:個展 柏崎市史跡「飯塚邸」(新潟県柏崎市)&ギャラリーレクチャア
●平成16年10月:研究発表T‘教育の基礎としての相互コミュニケーション科目「表現」の実践に関する研究1―上越教育大学における相互コミュニケーション科目「表現」の特質―’(西村俊夫・高石次郎・松本健義)、研究発表U(高石次郎・西村俊夫) 第43回大学美術教育学会研究発表大会(青森県 弘前市)
●平成16年10月:研究発表U‘教育の基礎としての相互コミュニケーション科目「表現」の実践に関する研究2―上越教育大学における相互コミュニケーション科目「表現・状況的教育方法演習」の実践―’(高石次郎・西村俊夫) 第43回大学美術教育学会研究発表大会(青森県 弘前市)
共同研究の実施状況
●平成16年11月:造形活動企画運営 春日小学校「花いっぱい」
●『相互コミュニケーション科目「表現」の授業評価システムの構築に基づく教育内容及び方法の研究開発』代表者:西村俊夫 学内研究プロジェクト
●平成17年2月:春日小学校2年4組共同研究授業(「造形表現カリキュラム開発特論」)
学会活動への参加状況等
●平成16年10月:第43回大学美術教育学会及び研究発表大会出席(青森県 弘前市)
●平成16年11月:第8回美術教育実践学会シンポジウム企画運営(上越教育大学)
●美術教育実践学会事務局長
◎特色・強調点等
 大学の授業と地域の小学校を連携させた共同研究授業のあり方が、より学生や小学校の教諭が積極的に深い考察を伴って参加する実践的な研究として展開することを目指している。また、そこで陶芸や美術が学習の中でどのような役割を担えるか・位置づけになるかを研究している。
<社会との連携>
社会的活動状況
●春日小学校評議員
●上越市美術展覧会運営委員
●くびきの陶芸展審査委員
●燕市展審査委員
●新潟市南中野小学校PTA主催講演会講師
●春日中学校1年生対象「職業講話」講師
◎社会への寄与等
●地域の小学校・中学校の企画・行事に関わり大学研究の成果を学校教育現場に活かすよう心掛けている。
●地域の展覧会の審査員を行い地域文化の高揚に寄与している。
 

洞 谷 亜里佐(助教授) ※実技教育研究指導センター
<教育活動>
授 業
 「ものを見ること、対象と対話することからの写生描写」に重点をおき、写生による発見の楽しさや表現することの神髄に迫ることで自分らしさとは何か、という主観的な表現方法を模索していく授業の展開に心がけた。ブリッジ科目「図画工作」では、自然を観ることから、感じることから自分を探ることを試み、描く行為から絵画表現の可能性についての作品作りをしてみた。
 「表現・<子ども>の活動」は80人授業という大人数のためグループに分かれた指導を行い、学生同志での研究チェックを行うと共に、ティーチングアシスタントの協力により、個々の表現への助言に気を配ることができた。ここでは言葉以外のコミュニケーションの授業として様々な角度から身体を開放して自分を表現する活動を行った。
 「絵画表現」「伝統絵画と鑑賞」では、日本画、東洋絵画を精神性、表現技法、素材などの多方面からの分析を文献や作品を通して研究し、模写などで追体験をすることで、古典絵画を読み取ることを試みた。
 「日本画研究」では、日本画の素材研究と表現の可能性について自由制作の上で展開していった。
研究指導
 授業以外の積極的な研究活動の成果として、平成16年10月上越市展入選(1名・市展賞受賞)、新井市展入選(1名・奨励賞受賞)、現代童画展入選(東京都美術館)平成16年9月創画会展入選(1名)の学生指導を行う。
その他の教育活動
@課外クラブアートワーク謙信公祭のワークショップ
A課外クラブ茶道部越秋祭お茶会
B小林古径邸美術講座「日本画制作」
<研究活動>
研究成果の発表状況
@平成16年4月:『家路』(変60号)第60回春の院展 名古屋松坂屋美術館
A平成16年5月:『プリマベーラ』(F30号)第5回雄雄会 銀座松坂屋(名古屋)
B平成16年9月:『日本海』(変150号)再興第88回院展 東京都美術館 各地巡回
C平成16年9月:『薔薇』(F4号)『ミモザ』(F4号)東武宇都宮百貨店
D平成16年9月:『三っの柘榴』、『人のかたち』他 DOYA展 ギャラリーレイ(名古屋)
E平成17年1月:『秋果』(F50号)2004長湫会 日本橋高島屋 名古屋巡回
F平成17年2月:『春風』(M30号)うづら会 日本橋三越
G平成17年3月:『入港』(変60号)第61回春の院展 日本橋三越
<社会との連携>
社会的活動状況
@平成16年10月:上越市展日本画鑑賞会
A平成16年10月:花ロード審査員
B平成17年2月:第45回新潟県児童生徒絵画コンクール審査員
C上越市美術展覧会運営副委員長
D小林古径邸記念美術館運営委員
 

松 尾 大 介(講 師)
<教育活動>
授 業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
○授業形態、学習(研究)指導法等の教育方法に関する取組状況
 授業の導入として,各学生の意図にもとづく動機を持たせたうえで実制作に取り組めるようレクチャーしている。また,実制作で得た経験が彫刻分野だけにとどまらず,様々な表現の場で生かされるよう留意している。
○成績評価法に関する取組状況
 制作過程における試行錯誤を重要視している。また最終日には作品を展示し,合評会を開くことで教員と学生が互いの多様な考えに触れると同時に,客観的な評価が得られるよう留意している。
【観点2】教育の達成状況
○進学や就職などの卒業(修了)後の進路の状況から判断した取組状況
 研究室在籍の大学院1年次の学生1名(現職派遣)が来年度修了に向け研究を進めている。
研究指導
【観点2】大学院・研究留学生
 研究室の院生は彫刻ワークショップ活動などの企画,運営を10年間続けており,美術を媒介とした地域と教育のかかわりについて関心が高い。教員と共に行政やNPO主催の体験型シンポジウムなどを現地取材し,意見交換を重ねることで,具体的な構想について検討した。また本学生は,実制作で二紀展(全国公募,東京都美術館)にて受賞した。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 信州大学との研究協力として学生による合同展覧会「カタチノマワリ カタチノワ」を開催した。単なる作品発表の場ではなく,歴史ある町の酒蔵に展示するなど,地域にいかに表現を参与させていくかをテーマにしている。来年度より互いの地域で交互に展覧会を開催することになっており,より生活する地域を通した美術のかかわりが持てるよう努力したい。
<研究活動>
研究成果の発表状況
@平成16年4月:木彫『漏洩畜』H176×W216×D84cmを「第78回国展」へ会員として出品する(東京都美術館)
A平成16年9月:木彫『飼育』H202×W24×D19cmを「第28回国画会彫刻部秋季展」へ会員として出品する(東京銀座 洋協アートホール)
学会活動への参加状況等
@10月9日〜10日:第43回大学美術教育学会出席
A11月13日:第8回美術教育実践学会出席
◎特色・強調点等
 第78回国展で実施された国画会彫刻部トークイン(東京都美術館 東京都教育委員会後援)は,造形作品を通じて社会に機能していく美術のあり方を模索する場として企画,運営されている。平成16年度は「時の手ざわり かたちをつくる・かたちを感じる」をテーマに子供たちを招き,鑑賞者と出品者が会場を巡った。発想の原点,制作の過程,使われる道具等について解説し,直に手で触れて感じながら自由に対話することで,コミュニティー空間となるよう取り組んでいる。