6 附属施設等
 
(5) 心理教育相談室
 
@ 心理教育相談室
ア 設置の趣旨(目的)及び組織
 上越教育大学心理教育相談室(以下「相談室」)は,心理臨床に関わる相談に対する社会的要請に応じるとともに,本学の大学院生等の心理臨床に関わる相談活動に関する教育訓練を行うことによって,心理臨床における実践的な教育及びその研究の推進に寄与することを目的として平成12年12月に開所した。
 活動の方針としては,次の5項目を中心とした業務を円滑に進めることである。
a) 心理臨床に関わる相談に関すること
b) 心理臨床及びその周辺領域に関わる学術調査・研究及びその成果の発表と刊行に関すること
c) 臨床心理学の実践的活動とそれに基づく理論の体系化に関すること
d) 大学院学校教育研究科学校教育専攻臨床心理学コースの臨床心理実習の指導に関すること
e) 学校及び地域社会などへのコンサルテーションに関すること
 相談室の組織は,相談室長及び相談員7人の計8人で構成されている。なお,相談員は,臨床心理士の資格を有する心理臨床講座の教員をもって充てることとしている。
イ 運営・活動の状況
 平成17年度の運営・活動については,以下のとおり実施した。
a) 心理臨床に関わる相談に関すること
 平成17年4月〜平成18年3月までの相談室の利用状況は次の通りである。まず,新規相談の受理数は80件であった。また,学齢・年齢等の区分による延べ相談件数は,就学前64件,小学生508件,中学生269件,高校生320件,大学生4件,社会人482件,その他55件で,総計1,702件であった。以上のように,相談対象は,小学生を中心とした学齢期が多いが,社会人等の相談も増加している。平成12年12月の相談室の開所以来,相談の申し込みが増加し,8人の相談員が担当する相談業務も増加の一途をたどっている。
 また,相談業務の内容としては,保護者等を対象として行う「心理教育相談面接」(757件)が最も多く,次いで,問題を有している本人に対して行われる継続的な面接である「臨床心理面接」(754件),幼児や児童を対象として行われる継続的な面接である「遊戯面接」(348件),問題を有している人に関わっている人(教員など)への助言等の面接である「教育相談面接」(46件)などが行われた。
 今後も,相談件数の増加が予想されるが,このような地域のニーズに対応するためには,スタッフや相談施設の充実が必要となる。
b) 心理臨床及びその周辺領域に関わる学術調査・研究及びその成果の発表と刊行に関すること
 平成18年3月に,相談室の紀要(「上越教育大学心理教育相談研究」第5巻第1号)を刊行し,相談室スタッフを中心とした執筆者が5編の研究論文を掲載した。また,相談室の概要,平成17年度修士論文題目一覧及び論文概要を掲載した。相談室の紀要は,今後も本相談室の研究成果を公表するとともに,上越地域を中心とした専門機関や施設等との研究交流や連携を深めるための情報誌としても期待される。
c) 大学院学校教育研究科学校教育専攻臨床心理学コースの臨床心理実習の指導に関すること
 平成17年度は,当コースの大学院生(1年19人,2年16人,研究生3人及び修了生等3人 計41人)に対する臨床実習指導を行った。実習の中心は,相談室における臨床心理基礎実習で,学生は「相談研修生」として登録した後に,模擬面接実習,相談場面の観察・陪席,ケースカンファレンスを経て,相談室に来所するケースに対して,スーパーバイザーである相談員の指導のもと,相談業務を行ってきた。また,精神神経科等の専門病院,家庭裁判所,児童相談所,保健所,少年院などでの短期間の実習も行った。
 以上のように,当コースの学生は,2年間の間に,臨床心理基礎実習及び臨床心理実習を中心とした“実務実習”が課せられ,これらに費やす時間は,2年間を通してほぼ恒常的に受講するもので莫大になる。したがって,それらを責任を持って指導する8名の教員が担う,教育研究指導も莫大なものとなっている。
 さらに,修士論文の作成が必修となっており,学生は,2年間にわたりほぼ毎週課せられている臨床心理実習を行いながら臨床心理学研究を進めなければならず,学生及び指導教員にかかる負担が増大していることも事実である。今後,“臨床心理士養成”に特化した専門大学院構想を念頭においた教育指導体制が必要となるだろう。
d) 学校及び地域社会などへの支援業務
 相談室のスタッフは,新潟県教育委員会から委嘱されるスクールカウンセラー業務を始めとして,地域市町村教育委員会や教育センター等が主催する教員研修会講師を担当しており,地域における心理臨床へのニーズの高まりを反映している。今後,相談室を核として,地域の専門職や,教育相談業務等の経験を有する教職員との連携を密にして,“非常勤相談員”なる制度による専門的社会資源の有効活用をめざした計画の策定が急務となろう。
 
A 心理教育相談室運営委員会
ア 設置の趣旨(目的)及び組織
 心理教育相談室運営委員会は,相談室の運営,臨床心理士及びその他の心理臨床の資格取得に必要な臨床心理実習及び相談室における研究成果の報告に関する事項等を審議するため設置されており,相談室長,心理臨床講座から選出された教授又は助教授3人,学校教育総合研究センター長,保健管理センター所長,障害児教育実践センター長,研究連携室長,教育支援課長及びその他学長が指名した者若干人の13人で構成されている。
 また,本委員会の下に,相談研修生の研修認定の実施,臨床心理士の大学院指定制申請及び相談室に関する事項等について対応するため,相談室運営専門部会が置かれている。
イ 運営・活動の状況
 平成17年度においては,委員会を4回開催し,主として「相談室の運営及び予算」,「相談研修生の利用及び種別変更」及び「心理教育相談室の増設」等について審議した。
ウ 今後の検討課題等
 日本臨床心理士資格認定協会から,第1種指定大学院の認定を受けてから,心理教育相談室の業務が増加の一途をたどっている。現在のところ,これらの業務は8名の心理臨床所属の教員と1名の非常勤事務員が担っている。しかし,各教員は授業,研究活動,数々の校務を始め,地域への支援も行っており,業務が過剰となっている。今後,学生への実習指導及び相談業務に特化した心理教育相談室の専任のスタッフの配置が急務である。
 また,一昨年9月に実施された日本臨床心理士資格認定協会の視察においては概ね好評をいただいたが,今後の課題として,施設の拡充や相談員のより一層の臨床心理士養成に特化した教育活動の必要性を指摘された。特に,心理教育相談室の規模や施設設備については,現行の指定大学院の最低基準に甘んじており,早急に施設拡充や設備の充実が必要である。