【心理臨床講座】
 

 
内 田 一 成(教 授)
 
<教育活動>
授 業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
○授業形態、学習(研究)指導法等の教育方法に関する取組状況
 全科目ともスライドの配布資料(2単位科目で約25頁)を配り,スライドショウやVTRを中心に講義している。受講生の成績評価はもちろんであるが,その前提である教育の質,授業の質に注意を払うようにしている。臨床心理士試験の合格者数,質の高さが世間から問われることを認識した責任ある教育を日々心がけている。授業評価によれば,どの科目の授業方法についても内容についても総じて高い評価であったが,シラバスの確認や授業中以外の努力については評価が低いことから,能動的,かつ課題解決的な態度で授業に臨むことができるような配慮・工夫を行う必要がある。
○成績評価法に関する取組状況
 特に講義科目においては安易に論述形式やレポートにするのではなく,大学・大学院の社会的責任,あるいは学生・院生の質の向上に応えるため,あらかじめ各授業の学習目標,授業計画,並びに成績評価基準を明示し,各授業のユニットごとの達成度の観点で厳正に評価する必要性を感じており,特に必修科目から開始していくことを考えている。
【観点2】教育の達成状況
○進学や就職などの卒業(修了)後の進路の状況から判断した取組状況
 赴任して,初の大学院修了生を出したが,担当した大学院2年次生4名全員が教員派遣生であり,修了後それぞれ学校現場へ復帰している。そのうち2名が平成17年度臨床心理士認定試験を受け,両名とも合格し,臨床心理士資格を取得している。
研究指導
【観点1】学部
 教育に関わる臨床的な実践力の修得を促進するため,教員派遣生の大学院生とともに研究指導を行っている。
【観点2】大学院
 修士課程の臨床心理学コースにおいては「practitioner-scientist model」並びに「実践即研究」の観点から,基礎研究はもとより,日常の臨床活動を科学的研究に高められる研究指導を行っており,今年度は半数のゼミ生が学会発表や学会誌・紀要関係の掲載を達成したが,順次,全員がそれを達成できるように努力したい。博士課程については赴任2年経過し今年度10月1日付けで研究指導担当(マル合教授)となったので,指導生の受け入れと研究指導内容の充実を期したい。
その他の教育活動
 福岡教育大学で集中講義
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
@平成17年11月:『第14版 ヒルガードの心理学』(監訳) ブレーン出版(全1100頁)(Smith,E.E.Nolen-Hoeksema, S., Fredrickson, B., & Loftus, G.R.:Atkinson & Hilgard’s Introduction to Psychology, 14th.Ed.. Wadsworth/Thomson Learning:Belmont.2003)
A平成17年11月:第1章「心理学の特徴」(共訳)内田一成監訳『第14版 ヒルガードの心理学』 ブレーン出版 pp.3-40
B平成17年11月:第7章「学習と条件づけ」(共訳)内田一成監訳『第14版 ヒルガードの心理学』ブレーン出版 pp.301-343
C平成17年11月:「用語解説」(共訳)内田一成監訳『第14版 ヒルガードの心理学』ブレーン出版 pp.899-940
@平成17年4月:『広汎性発達障害の症状形成メカニズムに関する比較研究』(単著)心理臨床学研究,23(1) pp.108-117
A平成18年3月:『個別指導プログラムの作成支援を目的とした親訓練の臨床効果−発達障害児をもつ母親を対象として−』(共著)上越教育大学心理教育相談室紀要,5 ,1-14.
B平成18年3月:『学級全体への社会的スキル訓練の実施が特別な教育的支援を要する児童に及ぼす臨床効果』(共著)上越教育大学心理教育相談室紀要,5 ,15-25.
C平成18年3月:『児童虐待のスクリーニング法としてのバウムテストの臨床的有用性−判別分析による検討−』(共著)上越教育大学心理教育相談室紀要,5 ,27-36.
学会活動への参加状況等
@平成17年度日本福祉心理学会常任理事
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@独立行政法人国立病院機構さいがた病院倫理委員会委員
A平成17年度高田教区真宗カウンセリング講座 講演「セルフの発達とカウンセリング」 (平成17年4月15日),講演「ストレスの自己管理法」(平成17年10月21日) 高田別院会館
B新潟県カウンセラー学校派遣事業(糸魚川東中学校,下早川小学校)(平成17.4.25〜平成18.3.31)
C健康シティ上越・2010事業<こころの健康づくり講座>(上越市役所健康づくり課主催,講演「ゆらぐ若者たち:心の理解と家族の役割−ひきこもり・摂食障害」(平成17年7月9日,上越市民プラザ)
D教職12年経験者研修コース別研修(小学校・中学校・特殊教育諸学校)コース別研修「教育相談主コース」新潟県教育センター主催,講演「授業に生かすカウンセリング」(平成17年7月27日,ユートピアくびき希望館)
E家庭教育支援総合推進事業 家庭教育サポーター養成研修会(新潟県地域家庭推進協議会主催),講演「幼児期・児童期の子どもの心と理解」(平成17年9月30日,上越市民プラザ)
F平成17年度JCVテレビ公開講座ストレスとのつきあい方「ストレスのメカニズムと精神的健康」(平成17年11月2日,上越ケーブルビジョン)
 

 
加 藤 哲 文(教 授)
 
<教育活動>
授 業
 大学院担当授業の「心理アセスメント演習U」では, 臨床心理学コース学生を対象に心理検査法の演習を行った。特に学校教育場面で必要とされている知能検査法,や性格検査法を中心に, 実際の検査機器を用いた実習指導を行い, その後に検査結果の見たて方について, 実際のデータをもとに小グループによる実地指導を行った。また「臨床心理基礎実習」及び「臨床心理実習」では, 実際の心理臨床業務に準拠した実習を, 心理教育相談室及び外部実習機関(病院や教育センター等)で行い, 1年間に渡り, 毎週3〜4時間をかけてケース担当実習時の指導とケース担当前後の打ち合わせやケースカンファレンス及びスーパービジョンを行った。「応用行動分析学特論」では, 臨床心理学コースの院生だけではなく, 障害児教育コースや発達臨床コースの学生も多数受講する中で, 教育相談, カウンセリング, 障害児教育, 学級経営等に役に立つ指導・訓練方法の実際について多数の事例を取り上げながら「応用行動分析」の最新知見や技法の実際を講義した。また, 「発達障害学特論」では, 最近の学校現場で大きな問題として関心が高まっていることもあり, 多数の受講生のもとで開講された。ここでもできるだけ最新の話題(新聞等で頻繁に報道されている話題も含めて)を取り上げ, 発達障害に関する誤解や偏見を解き正しい理解を促進することと, 学校での教育的支援の具体的な方法論について講義を中心に授業を進めた。以上の各授業では, 毎回の印刷資料の配布, パワーポイントやビデオ教材の使用を通して, 知識や技術を実践的にリアルに再現できるよう工夫をした。
 学部の「養護内容」では, 保育士にとって必要な養護における専門的な支援の実際について, 多数の事例を取り上げながら, 演習形式をとって授業を進めた。
研究指導
 修士課程2年次生3名及び1年次生3名について,発達障害や特別な教育的ニーズのある児童生徒への臨床心理学的な支援方法について研究指導を行った。その結果2年次生は, 発達障害のある児童生徒を担任する教師へのコンサルテーション方法に関する臨床実践的な研究, 軽度発達障害のある児童への社会的技能訓練に関する臨床研究, 及び特別支援教育に関する校内支援組織への組織コンサルテーションに関する実践的研究といった3つの修士論文を完成させた。これらはいずれも平成18年度に開催される各種学会で発表される予定である。
 また修士課程1年次生は, 思春期の発達障害のある人たちへの小集団社会的技能訓練プロジェクトを立ち上げ, ほぼ1年間にわたる訓練によって地域の障害児親の会への貢献を果たし, 同時に学術的にも多くの知見を得て学会発表を行うことになっている。
 また学部学生は4年次生2名と3年次生1名への指導を行った。4年次生は卒業研究として調査研究を行った。
その他の教育活動
@富山大学(教職課程)で「生徒指導論T」の講義を行った。
A新潟県立看護大学で「心理学」の講義を行った。
B横浜国立大学教育人間科学部で「行動情緒障害の心理」の講義を行った。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 臨床心理学及び学校心理学を基礎として、学校現場で役に立つ、教育相談やカウンセリング、及びコンサルテーションの方法論ついて教育研究指導を進めてきた。特に, 最近では小中学校の通常学級に在籍している軽度発達障害のある児童生徒の支援や, 彼らを担当する教員への支援に関わる方法論の提供が求められていることから, これらの指導や研究方法の提供は、学校教育現場を指向した学生や研究生に寄与できたと思われる。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
@平成17年9月:『特別支援教育をどう進め、どう取り組むか』(共著)ぎょうせい
A平成18年3月:『発達臨床教育相談マニュアル』(共著)川島書店
@平成18年3月:『特別支援教育における発達テストとアセスメント』(共著)教育心理学年報(日本教育心理学会) 第45集 pp.7-9
@平成17年7月:『大規模中学校における不登校対策会議の機能化促進を目的とした行動コンサルテーションが不登校者数の減少に及ぼす効果』(単)日本行動分析学会第23回大会発表論文集 p.42
A平成17年7月:『教育現場に生かす行動コンサルテーションのシステム・技法の課題』(共)日本行動分析学会第23回大会発表論文集 pp.28-29
B平成17年8月:『多層ベースライン法を用いた集団社会的スキル訓練の効果の検証』(共)日本カウンセリング学会第38回大会発表論文集 pp.257-258
C平成17年9月:『特別支援教育における発達テストとアセスメント』(共)日本教育心理学会第47回総会発表論文集
D平成17年10月:『学校現場を支援する行動コンサルテーションの実際と課題』(共)日本LD学会第14回大会発表論文集 pp.156-157
E平成17年10月:『通常学級における担任教師への行動コンサルテーション』(共)日本LD学会第14回大会発表論文集 pp.268-269
F平成17年10月:『個別の指導計画作成を主体とした研修プログラムが特別支援教育コーディネーターの行動に及ぼす効果』(共)日本LD学会第14回大会発表論文集 pp.282-283
G平成17年10月:『基礎研究・アナログ研究の現状と臨床への応用』(共)日本行動療法学会第31回大会発表論文集 p.66
H平成17年10月:『小学生の登校しぶり行動に対するトークンエコノミー法の検討』(共)日本行動療法学会第31回大会発表論文集 pp.122-123
@平成17年3月:『学校現場を支援する行動コンサルテーションの実際と課題』(単著) 日本LD学会会報 第56号 p.4
学会活動への参加状況等
@7月29日〜31日:日本行動分析学会第23回大会出席・発表
A8月18日〜19日:日本カウンセリング学会第38回大会出席・発表
B9月17日〜19日:日本教育心理学会第47回総会出席・発表
C10月1日〜2日:日本LD学会第14回大会出席・発表
C10月8日〜10日:日本行動療法学会第31回大会出席・発表
D日本行動療法学会編集委員
E日本発達障害学会評議員
F日本行動科学学会運営委員
◎特色・強調点等
 我が国における通常の学級における特別な教育ニーズのある児童生徒への支援方法について、集中的に研究を進めてきた。そして教育相談室等での児童生徒への直接的な指導や訓練のみならず、学校や家庭における教師や親を対象とした行動コンサルテーションの方法論の研究を進めており、その成果は、本年度の2つの学会で開催したシンポジウムで公表した。また、不登校や集団不適応の児童生徒を対象とした研究発表を行い、この領域の研究成果の蓄積や研究レベル向上に貢献したといえる。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@平成17年4月〜18年3月:新潟県スクールカウンセラー派遣事業における非常勤職員(上越市雄志中学校)
A4月〜3月:上越市教育委員会就学指導委員会委員
B4月〜3月:新潟県特別支援教育推進体制事業委員
C4月〜3月:新潟県教育委員会学校派遣カウンセラー
D4月〜3月:新潟県立高田養護学校学校評議員
E4月〜3月:上越市特別支援教育巡回相談事業全体会委員長
F新潟県臨床心理士会副会長
G6月,9月:新潟県特別支援教育推進員養成研修会講師
H10月:新潟県立総合教育センター発達障害児教育講座講師
I5月,8月:八戸市総合教育センター特別支援教育特別支援教育研修会講師
J7月:新潟県教育委員会12年教員研修会講師
K8月:新潟県保育士会障害児保育講座講師
L8月:日本発達心理学会・臨床発達心理士研修会講師
M9月:石川県教育センター特殊教育初任者研修会講師
N11月:兵庫県障害児教育センター講師
O12月:鳥取県中部特別支援教育研究会講師
P1月:さいたま市特別支援教育推進協議会講師
Q2月:群馬県総合教育センター講師
◎社会への寄与等
 学内においては、1年間にわたって、心理教育相談室室長及び相談員として、外来ケースへのカウンセリングや教育相談、学校の教師等へのコンサルテーションを行ってきた。また、学外での寄与としては、主として、スクールカウンセラー等の巡回指導・相談業務、学校、教育センター、教育委員会、保育関連施設で開催される教職員研修会での講師を担当した。特に、不登校や非行、発達障害に関わる問題をテーマとした講演や、指導助言が大半を占め、現在の学校現場でのニーズに多大な貢献をしたといえる。
 

 
阿 部   勲(助教授)
 
<教育活動>
授 業
 受講者が,講議した内容の一つひとつをただ単に暗記したり,理解するだけでなく,その内容をめぐって,自分なりに考え,問題を発見するよう努力してきた。
研究指導
 学部,大学院ともに自分で問題意識をもち,自分で研課題を設定し,自分でその解明に努力するよう,こちらからの指示を極力さけて,学習支援に努めた。
その他の教育活動
@上越保健医療福祉専門学校「発達心理学」
<社会との連携>
社会的活動状況
@新潟労災病院倫理委員会委員
 

 
五十嵐 透 子(助教授)
 
<教育活動>
授 業
学 部:カウンセリング基礎実習・演習では、コミュニケーション・スキルの基礎的なスキルの向上に加え、地域の教育や医療領域での精神保健福祉活動での体験学習を通し、自分自身の精神障害に対する偏見や誤解などを見つめ、今後の教育における精神障害に対する的確な理解を促す教育につながるような指導を行った。
大学院:心理臨床の専門家としての、自他ともの理解を深めると同時に“あるがまま”の状態を受容することとに関し研究指導を行った。
その他の教育活動
@金沢大学大学院医学系研究科 非常勤講師
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
@平成17年9月:『精神看護エクスペール13:精神看護と関連技法』(共著) 中山書店
@平成17年12月:ストッキングが主なフェティッシュ対象の男性とのサイコセラピー 心理臨床学研究,第23巻5号,pp. 521-532
@平成17年4月:『糖尿病と抑うつ状態や不安』(単著) 糖尿病ケア 第2巻4号,pp.427-430
A平成17年5月:『糖尿病への認知行動変容療法1』(単著) 糖尿病ケア 第2巻5号,pp.540-544
B平成17年6月:『糖尿病への認知行動変容療法2:論理療法』(単著) 糖尿病ケア 第2巻6号,pp.644-648
C平成17年7月:『糖尿病への認知行動変容療法3:認知療法』(単著)糖尿病ケア 第2巻7号,pp.775-781
D平成17年8月:『糖尿病への認知行動変容療法4:その他のアプローチ』(単著)糖尿病ケア 第2巻8号,pp.889-893
E平成17年9月:『糖尿病と子どもたち』(単著)糖尿病ケア 第2巻9号,pp.979-983
F平成17年10月:『ピア・グループ、家族などの周囲からのサポート』(単著)糖尿病ケア 第2巻10号,pp.1096-1101
G平成17年11月:『リラクセーション』(単著)糖尿病ケア 第2巻11号,pp.1195-1199
H平成17年12月:『クライエントと営むコミュニケーションの中で』(単著)糖尿病ケア 第2巻12号,pp.1296-1299
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@教員や看護職を含むヘルスケア・ワーカーのメンタルヘルスに関する研修講師(上越市・新潟県・愛知県・仙台市・長野県)
A中越地震に関する児童・生徒・教職員の“心のケア”事業でのカウンセラー
B乳幼児から高齢者、精神障害をもつ人々への支援者の支援の質向上のための研修講師など
C附属中学校での、保護者対象の講演会
 

 
越   良 子(助教授)
 
<教育活動>
授 業
 大学院の学級集団心理学特論と社会心理学特論においては,現場での児童生徒理解や学級づくりに有用な理論や知見について,内容が体系的になることを念頭において講義を組み立てた。レポートのいくつかを全体に向けてフィードバックすることで,知識・理解の促進と共有を図った。学部の学級経営の心理学においては,児童生徒理解における教師の基本的態度および知識を中心として,心理学の基礎知識が身に付くよう授業を組み立てた。特に院生についてはその性質が多様化し,心理学の基礎知識や社会心理学の修得状況が様々であるため,基礎的事項からより専門的事項までの両方を盛り込んだ授業構成が難しく,引き続き今後の課題としたい。
研究指導
 修論指導において,既定の方法論にこだわることなく各自の問題意識を深化させ,現場における今後の実践的研究につながるような研究になることを重視した。ゼミの際に,院生同士の活発な議論がなされたことによって,研究への動機付けを高められた。
その他の教育活動
@附属中学校教育相談員
A上越保健福祉医療専門学校非常勤講師
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
@平成17年8月:『自己高揚過程における能力の自己査定に関する研究』(単著)北大路書房
A平成17年8月:『学校心理学−社会心理学的パースペクティブ−』(共編訳)北大路書房
 

 
内 藤 美 加(助教授)
 
<教育活動>
授 業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
○授業形態、学習(研究)指導法等の教育方法に関する取組状況
 大学院の講義では,自閉症を中心とする発達障害や社会性の発達に関する最近の認知発達心理学の研究成果を取り込んで内容構成を行い,子どもの発達についての心理学的理解を促すよう工夫した。大学院及び学部の実験では,実験レポートの添削およびその解説を行って心理学的データの分析方法と研究報告書の作成方法を習得させた。学部の概論講義では,心理学の面白さを体験させることを目標とし講義内容の理解に重点を置いた。講義3回に一度の割合で学生に質問票を提出させ,質問の解説に十分な時間をあてた。学部専門科目は,認知現象を実体験させる模擬実験と,その理論的背景について解説する講義を週ごとに交互に実施した。
○成績評価法に関する取組状況
 教育心理学特論および概論では,試験によって講義内容の理解度を評価した。認知心理学では,模擬実験と講義のセットからなるトピック2つごとに1回,合計3回のレポートによって評価することを初回の授業でシラバスとともに明示し,各レポートの成績ならびに実験への出席を総合的に評価した。心理学実験および特殊実験では,基準点に達しない場合には再提出を課し心理学のレポートとして最低限の形式と内容を備えたものを評価対象とした。
【観点2】教育の達成状況
○進学や就職などの卒業(修了)後の進路の状況から判断した取組状況
 学部1名の卒業生は,他大学大学院修士課程に進学するため研究生となった。
 大学院1名の修了生は沖縄県内の小学校に復職した。
その他の教育活動
@平成17年11月〜:放送大学講師「感情の心理学」
研究指導
【観点1】学部
 3年生1名に対して,週1回定期的に書籍購読を行い,当該学生の関心領域である認知発達の研究方法とその知見を理解させた。4年生1名に対しては年間を通じて卒論研究(2歳児8名の家庭訪問観察)を実施させ,卒業論文を執筆させた。
【観点2】大学院
 2年生1名に対して不定期にゼミを行い,修士論文の研究及び論文執筆指導を行った。特に実験データの収集と分析,結果の解釈について助言を与え,原稿に丁寧に朱を入れて論文の向上を図った。1年生2名に対しては,1月末まで定期的に国内外の心理学雑誌論文を講読させることにより,心理学論文の読み方とその内容把握の技能を修得させた。2,3月には関連論文をさらに集中的に読ませてその知見と問題点を把握させ,研究テーマの絞り込みと研究計画を策定する助言を与えた。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 以上の教育活動には次のような特色がある。講義では模擬実験を頻繁に導入して心理現象の面白さを実感させ,それを理解するための心理学的な捉え方を修得させた。実験実習では,レポートを詳しく添削して解説することにより,心理学の方法論を理解,修得させた。さらに研究指導では,各学生が抱いている問題意識を具体的な研究のレベルに落とし,実証的に検証するための方法を考えさせ,同時に関連する先行研究の知見を批判的に再考させて,検証すべき問題をより具体的かつ客観的に捉える能力を養った。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
@平成17年11月:The development of false belief understanding in Japanese children: Delay and difference? International Journal of Behavioral Development 受理
@平成17年6月:第35回Jean Piaget Societyシンポジウム話題提供『The development of false belief understanding in Japanese children: Delay and difference?』
学会活動への参加状況等
@論文審査(Child Development誌)
◎特色・強調点等
 論文および学会シンポジウムでは,心の理論(人の信念や知識の由来を理解する能力)の発達が普遍的で単一の能力とはいえないことを日本の子どものデータをもとに論じた。従来一括りにされてきた心の理論は文化や言語によって発達の様相が異なるということを指摘した点で先進的である。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@平成17年6月17日:文部科学省「情動の科学的解明と教育等への応用に関する検討会」第6回臨時委員
A平成17年7月28日〜:上越市子どもの権利条例(仮称)検討委員会委員
◎社会への寄与等
 文部科学省検討会では子どもの社会性の発達について発表し,文部科学省政策形成に寄与した。
 上越市条例制定委員会では子どもの権利に関して発達と教育から捉える視点を提供した。
 

 
中 山 勘次郎(助教授)
 
<教育活動>
授 業
大学院:「学習心理学特論」では,動機づけに関する最新の研究成果をとり入れながら,教育実践への適用事例をあげながら講義した。また,過去のレポートの例とコメントをWeb上に掲載し,発展学習やレポート作成の参考にできるよう配慮した。
学 部:「学習心理学」では,学習領域に限らず教育心理学全般にわたる基礎概念について講義を行い,さらに,最新の研究成果にもとづいて実際の授業のありかたを考える「授業の心理学」を開講して,体系的な学習を支援している。
研究指導
 学校現場の実践的な問題意識や発想をできるだけ活かしながら,それを心理学の視点から理論的に裏づけ,実際の学習指導や生徒指導に適用していく,という方針で指導にあたっており,本年度は「中学生の自己開示に対する部活動の影響」「小学生のストレス対処方略の選択理由」「重要な他者が高校生の自己受容・自我同一性に及ぼす影響」に関する修士論文が生み出された。
その他の教育活動
 附属中学校教育相談体制に基づく相談員
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 学校現場での実践という視点を常に意識しながら,内容を構成している。また,受講生の質問を積極的に汲み上げ,フォローしたり授業改善に役立てるよう努力している。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
@平成18年3月:『発達臨床教育相談マニュアル −アセスメントと支援の実際−』(共著)川島書店
A平成18年3月:『教育心理学・新版 −教職を目指す人への入門書−』(共著)川島書店
学会活動への参加状況等
@9月17日〜19日:日本教育心理学会第47回総会(浅井学園大学)出席
A日本教育心理学会理事
B日本教育心理学会『教育心理学研究』常任編集委員
C日本教育心理学会学校心理学実行委員会委員
D日本学校心理士会新潟支部副支部長
◎特色・強調点等
 児童の学習への動機づけの予測因としての学習目的の影響性を中心に,個々の学習意欲の特徴をとらえようとする研究を継続して進めている。また,学習指導に関する教育的カウンセリングやコンサルテーションに対して,動機づけ理論にもとづいて提言を試みている。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@カウンセラー学校派遣事業に基づく派遣カウンセラー(柏崎市立荒浜小学校・柏崎市立新道小学校・柏崎市立野田小学校)
A平成17年度新潟県看護職員臨地実習指導者養成講習会講師(教育心理)
◎社会への寄与等
 前年度に引き続き,派遣カウンセラーとして臨床的な面での地域への支援を行うとともに,カウンセリング活動の学習指導への拡大についても,積極的な提言を行った。
 

 
藤 生 英 行(助教授)
 
<教育活動>
授 業
 「学校臨床心理学特論」においては,学校現場で出会う,不登校,行為障害などを取り上げ,その発症,最新の対応方法などをわかりやすく説明する工夫を行った。学卒者には最新の文献をレポートさせるともに,現職のものには自分の経験してきた事例をレポートさせ,一方通行とならない授業を心がけ相互交流に勤めた。
 「家族・集団心理学特論」においては,集団心理療法から集団作業までをグループアプローチとして位置づけ,その心理メカニズムを概説すると共に,課題を課し適宜グループ経験を受講者に心がけた。
 「臨床心理基礎実習1」は,藤生が中心となってカリキュラム整理をしカウンセリングの基礎となる,コミュニケーションスキルについて,ロールプレイを交えながら実施し,定着をはかった。不足しているカウンセリング手法の演習も含め,臨床心理学に関する事柄をわかりやすく説明した。体得しやすいように,適宜実践を取り入れて現職教員に理解しやすい形態に工夫した。
 また,全学選択必修授業「臨床実践援助法」のオーガナイズし授業を体系立てるとともに,授業運営を担当し,実際に一コマ担当した。全学選択必修授業「学校心理解析法」の一コマを担当した。そのほか,共同担当授業も多く行った。シラバスへの授業内容の明記は,すべての担当授業科目において実践した。成績基準もシラバスに掲載した上,授業での説明を行い実施した。現職教員と学卒から大学院生が構成されているので,それぞれに有益であるよう,目的意識を持たせ指導を行った。
 それぞれの,成績評価基準についてはシラバスに明確化し,それに基づいて評価した。
 学部卒業生1名は,長野県小学校教員に採用された。また,修士課程修了生2名について,1名は現職の栃木県中学校教員に復帰し,もう1名は兵庫教育大学連合大学院研究科に合格し,研究を続けることとなった。
研究指導
 平成17年度は学部3,4年生各1名の計2名おり,卒論テーマに関わる専門文献の購読を行った。先行研究の確認,実際の調査のプランニング,結果をまとめなどを通して卒論指導を行った。臨床的な実践力を修得させるために,適宜学校教育相談事例などの検討もおこなった。
 また,大学院においては修士1年4名,2年2名の研究指導を行った。それぞれの関心領域の文献購読などを行った。1年生は,多彩な関心があったがそれぞれについての,文献購読,予備調査などを指導した。2年生にはそれぞれの関心領域である先行研究の確認,実際の調査のプランニング,結果をまとめなどを指導した。また,大学院生については,相談室において受理した相談事例への実際の対応を通して,相談の進め方,見立て方,介入の仕方,症状への知識の獲得などを,サブゼミで行った。また,カリキュラム外で,サブゼミとして大学院生および学部生に対して「うつへの認知行動療法」に関わる3つの基礎文献の英文購読を行った。このほか,富山県からの現職派遣内地留学生2名(1名は3ヶ月,もう1名は半年)に対して,論文指導を行った。また,県内のスクールカウンセラーに採用された修了生を交えてのグループスーパーバイズを行い,臨床実践上でも最新の知見などを取り入れることを援助した。
 大学院修了生1名と大学院在学生1名が,日本カウンセリング学会において連名で発表し,大学院在学者2名が日本健康心理学会にて連名で発表した。大学院修了生1名の修士論文の内容を加筆修正したものが学術雑誌カウンセリング研究に掲載された。
その他の教育活動
 浦川原村立浦川原中学校において,学外実習としての位置付けで大学院生を同伴し,10回にわたる教員対象のコンサルテーションを行い,その一部として,ピアカウンセリング導入基礎として,全校生徒対象のカウンセリングスキル訓練の講義を大学院生とともに2回に分けて実施した。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 授業,研究指導以外に,相談室事例を通した実際の介入方法などを中心に指導を行うことで,現場で役立つ知識・技能を獲得させることができたと考えられる。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
@平成18年3月:発達臨床教育相談マニュアル−アセスメントと支援の実際』(共編) 川島書店 全278ページ
A平成18年3月:平成14年度〜平成17年度科学研究費補助金(基盤研究(C)(2))研究成果報告書(14591001)『行為障害傾向を持つ子どもへの介入プログラム開発のための基礎研究』
@平成17年6月:『臨床実習前後の看護技術に対する自己効力感の変化と関連要因』(共著) カウンセリング研究,38,98-108.
A平成17年6月:『シャイな教師がシャイネスを喚起される学校場面に関する研究』(共著) カウンセリング研究,38,109-118.
B平成17年6月:『友人関係のあり方と学校ストレッサー,ストレス反応との関係』(共著) カウンセリング研究,38,128-140.
@平成17年8月:『中学生の抑うつに関連する要因の検討−中学校における抑うつ一次予防プログラム作成のための予備研究−』(共著) 日本カウンセリング学会第38回大会 栃木県カウンセリングセンター
A平成17年8月:『仲間はずれ経験と場面認知との関連』(共著) 日本カウンセリング学会第38回大会 栃木県カウンセリングセンター
B平成17年9月:『うつのリスク要因としての反応スタイルおよび怒りの表出抑制の検討』 日本健康心理学会第18回大会 神戸女学院大学
C平成17年9月:『健康不安を測定する尺度の開発と認知発達モデルの検討』 日本健康心理学会第18回大会 神戸女学院大学
共同研究の実施状況
@行為障害傾向を持つ子どもへの介入プログラム開発のための基礎研究 代表者:藤生英行(上越教育大学助教授)科学研究費補助金
A危険行動の予防 代表者:勝野伸吾(兵庫教育大学教授)連合大学院研究プロジェクト
学会活動への参加状況等
@5月:日本学生相談学会出席
A8月:日本カウンセリング学会出席
B9月:日本教育心理学会出席
C9月:日本健康心理学会出席
D学会誌カウンセリング研究の編集
E学会誌健康心理学研究の編集
F学会誌教育実践学研究の査読
G学会誌教育心理学研究の編集
◎特色・強調点等
 大学院生に強調しているように,心理学における臨床実践は,実践のみならず,研究・教育も必要であるという観点から,研究での成果もあげる必要がある。研究的観点から絶えずその実践が有益であるかどうかを客観的に評価するためである。そのような趣旨から,特に実践上役に立つことに焦点を当て,それについて研究を行った。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@4月から3月:新潟県学校派遣スクールカウンセラー(浦川原村立浦川原中学校)
A上越教育大学心理教育相談室相談員として,地域の教育・心理相談
B独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)実用化開発助成事業ピアレビュー者(7件)
C妙高市立妙高中学校子育て講演会講師
D総務省「自殺予防に関する調査」の対応
E上越ケーブルテレビジョンにて,市民講座「ストレス:うつとの関連」を撮影,市内で放映された。
◎社会への寄与等
 地域への知識普及の拠点として,上越教育大学があるとの観点から,業務上差し支えない範囲で知識普及に勢力を注いだ。また,現場のニーズとして,こころの問題についての知識や技能への要望が高い。しかしながら,今後このような多忙な状態が続くと,研究上差し支えると考えられ,今後は対応を減らさざるを得ない状況である。教育相談への要望も高く,そちらへの対応でも地域貢献ができたと考えられる。しかしながら,当相談室へ来談するケースの多くは,この地域での相談機関を転々としてくるものが多く,地域全体での臨床専門家の臨床技能や知識の向上が必要であると考えられる。このための,活動も今後大学として対応する必要があろう。
 

 
宮 下 敏 恵(助教授)
 
<教育活動>
授 業
 「教育実地研究X(教育相談、カウンセリング論)」では、不登校、いじめ、発達障害をはじめ、学校現場において生じる様々な病理の問題などを幅広く理解し、援助をおこなえる実践力を身につけるために、各教員の専門性を生かしたティームティーチングにより、講義を行った。「心理アセスメント演習T」では、学校現場、医療現場などで用いられているパーソナリティ検査を中心に、実際に心理検査用紙を用いて演習を行った。「臨床心理学特論U」では、分析的心理学、イメージ療法、遊戯療法などについて講義を行い、リラクセイション技法や風景構成法など臨床現場で役立つ方法の実践を行った。
 授業内容については、シラバスに明記し、より効果的な教育相談、カウンセリングの実践を行えるために、実習をおこなったり、教育現場で生かせるための体験的授業を行った。
研究指導
 平成17年度は学部3年生1人、4年生2人、大学院1年生3人、大学院2年生4人の計10人にゼミ指導を行った。学部3年生については、それぞれの関心領域について臨床心理学の基礎研究の文献購読を行った。学部4年生については、二重否定形暗示文が気分に及ぼす影響に関する実験研究と筆圧に関連する諸要因の検討という実験研究の指導を行った。大学院1年生については、中学校教師のメンタルヘルスについて、バウムテストを用いた児童理解の試み、青年期の自立についての文献購読を行い、研究指導を行った。大学院2年生については、小学校におけるピアサポートプログラムの実施、中学校における教育相談体制活性化尺度および研修会の検討、青年期における共感性の自己感情理解との関連、S-HTPテストを用いた児童理解の試みなどの研究に関する指導を行った。
 また、学校現場における教育相談の実践力を習得させるために、カウンセリング技術をはじめ、様々な臨床技法の実習を行った。さらに、心理教育相談室において受理した事例への関わりを通して、事例の見立て、面接の進め方、面接技術、介入方法、さまざまな病理や症状の知識について指導を行った。
その他の教育活動
 放送大学教養学部非常勤講師(「臨床心理学実習T」を担当)
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 主に、教育相談を中心とした実践力を習得させるために、授業、研究指導等をおこなった。学校現場で役立つ知識、技術の指導をおこない、児童、生徒への関わり方について実習を中心に指導を行った。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
@平成18年3月:『小学生の対人不安傾向軽減に関する研究−自己意識特性の観点から−』(共著) 上越教育大学心理教育相談研究,5(1),37-52.
@平成17年9月5日〜7日:『語彙分析を用いたイメージ報告内容の分析−気分との関係において−』(共) 日本心理臨床学会第24会大会発表
学会活動への参加状況等
@9月5日〜7日:日本心理臨床学会出席
◎特色・強調点等
 研究としては、感情面に及ぼす否定文の影響に関する研究、面接場面における発話内容の質的研究、さらには教師のメンタルヘルスについても研究をすすめている。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@平成17年4月〜平成18年3月:新潟県スクールカウンセラー活用事業によるスクールカウンセラー(上越市立城西中学校、上越市立南本町小学校)
A平成17年6月、8月、12月:新潟県カウンセラー学校派遣事業による派遣カウンセラー(上越市立上下浜小学校)
B平成17年8月、10月:新潟県カウンセラー学校派遣事業による派遣カウンセラー(上越市立保倉小学校)
C平成17年7月:新潟県小・中・特殊教育諸学校教職12年経験者研修コース別研修生徒指導講師「カウンセリングテクニックを生かした生徒指導のコツ」
D平成17年8月:新潟県小・中・特殊教育諸学校教職12年経験者研修地区別全体研修「いじめ問題の基本的認識と学校の説明責任」講師
E平成17年8月、12月:上越市立教育センター主催カウンセリング研修会講師「ことばにならないことばを聴くテクニック」
F平成17年11月:家庭教育サポーター養成研修会講師
G平成17年5月、7月、9月、10月、11月、2月、3月:「新潟県中越地震に係わる児童生徒の心のケア」カウンセリング派遣(北魚沼郡川口町立川口小学校、北魚沼郡川口町立田麦山小学校、小千谷市立吉谷小学校、小千谷市立塩殿小学校、小千谷市立池ヶ原小学校、魚沼市立入広瀬小学校、魚沼市立守門中学校、上越市立大島小学校、十日町市立松代小学校)
H平成18年3月:思春期精神保健研修会講師「思春期における心の悩みとのつきあい方」(新潟県立松代高校)
◎社会への寄与等
 主として上越地域の学校にスクールカウンセラー、学校訪問カウンセラーとして直接訪問し、教職員の研修に関わった。不登校をはじめとする事例検討会のありかた等について研修を行い、より効果的な教育相談体制づくりについてコンサルテーションを行った。また上越地区を中心として、心理的悩みを抱えて心理教育相談室に来談する児童、生徒、成人に対して、心理療法を行い、地域のメンタルヘルスのために寄与した。
 

 
井 沢 功一朗(講 師)
 
<教育活動>
授 業
学部:個性の心理学
 パーソナリティ心理学について,その研究の歴史を追い,さらに心理的ストレスの生理学的メカニズムについても説明した。受講者の教育実習期間と重なるため、授業を夏期の集中講義とし、開講内容のすべてを学習できるようにした。また、代表的なパーソナリティ判定のための質問紙のサンプルを提示し、その項目内容の吟味を行った。現代のパーソナリティ心理学が対象とする領域は幅広く多様性を増してきているので,それらを概略的に説明しながら,人の個性をとらえる観点を柔軟にすることを目的としたところが特色である。
学部:青年心理学
 青年期の発達課題を概説するとともに、官公庁データをもとにしながら、現代の青年をとりまく生活環境と、それにより青年が受ける心理的な影響について概説した。その中で特に、経済不況が青年の生活環境に及ぼした影響について焦点を当て、生活面の格差が青年の心理にどのような影響を及ぼすのかについて考察を促した。単に青年の内面的問題だけではなく、そうしたものに影響を及ぼす社会的要因についても取り上げ、今後教師として社会に出て行く受講者の視野を広げることを目的とした点が特色である。また同時に、統計的データからは明らかになりにくい青年の内面の問題(自己意識、アイデンティティ感覚など)について、臨床心理学的視点から論じたことも特色として挙げられる。
大学院:臨床的パーソナリティ発達論
 まず,パーソナリティ心理学の基礎知識について講義した後,特に臨床心理の領域で問題となるパーソナリティ障害について,系統的な授業を行った。この領域については,精神医学的知識から分子生物学の知識まで,きわめて幅広い見識が要求されるが,カバーできる範囲でそれらの最先端の研究の導入を行った。
大学院:投影法特論
 被験者の精神状態を測定するための最も伝統的かつ信頼性の高い方法として特にロールシャッハ・テストを取り上げ,施行の仕方,採点方法,一般的な所見の書き方などの基礎的技法について実習をまじえた講義を行った。特に,実際の事例についてそれを分析するという課題を一貫して行った点が本講義の特色である。また,問題点としては,グループ単位での実習では個別的理解があまり深まらないということが考えられたため,そうした問題点を解消すべく,次年度の講義・実習形態についていくぶん修正を加える予定である。
その他の教育活動
 国際基督教大学教育学研究科非常勤講師(担当:心理学研究法)
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
@危機介入の理論と方法:「心のケア大事典」所収,p531-538.培風館
@BSQ(ボーダーライン・スキーマ質問紙)の作成:心理臨床学研究第23巻第3号,273-282.
@産業領域における自己愛パーソナリティ障害の臨床と研究:日本心理学会第69回大会ワークショップ話題提供者
学会活動への参加状況等
@日本パーソナリティ心理学会機関誌『パーソナリティ研究』編集委員
◎特色・強調点等
 ボーダーライン・パーソナリティ問題の悪化を予防するという観点で研究活動を行ったところに特色がある。まず、そうした問題を抱えそうな人の早期発見のために簡便な質問紙を試作した。また、災害などにより心理的ダメージを受けた人たちに対するケアを迅速に行うためのCISM(Clitical Incident Stress Management)の一部をまとめ、発表した。さらに、産業領域も含む組織の中において、自己愛パーソナリティの人が周囲に及ぼす影響、並びにそれに対する組織マネジメントに関する研究グループの一員として、学会でワークショップを開催した。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@新潟県立出雲崎高校教員研修講師(2004年7月26日)
A文部科学省スポーツ・青少年局災害時特別対策カウンセラー
B上越市立教育センター教員研修講師(2005年1月6日)
C中越大地震被災者電話相談員(心のケア・ホットライン)
D洗足ストレス・サポート・コーピンクオフィスNPDプロジェクトメンバー
◎社会への寄与等
 書籍、雑誌、論文等の編集・出版
 

 
米 山 直 樹(講 師)
 
<教育活動>
授 業
 授業参加者の意欲を引き出させるため,演習を多く導入し,学校現場に即応した形で臨床心理に関する事例を用いて説明するなどの工夫を行った。また,授業中に講師の説明に集中させるため,毎回授業内容をまとめたレジュメを配布し,それに従って授業を進めた。成績評価も出席点とレポートにより行い,客観性を保つ形で行った。修了生は学校現場に戻ってから教育相談や生徒指導等の臨床的業務の役割を担うことが期待されている。また、卒業生は臨時採用職員という立場を経た後に、教員採用試験を合格し教職に就くことが期待されている。
研究指導
 学部における研究指導については,教師として学校現場に入った時に,児童生徒の問題へ即応的に取り組める教育実践力を修得させるため,学級現場で問題となっている事象に関する教育研究に取り組ませた。
 大学院における研究指導では,現場で生じている様々な問題に対して具体的対応法を習得させるために,即効性の高い内容の臨床研究を進めさせた。特に臨床心理学という学問の特殊性から,単に机上の理論だけでなく,臨床実践を重視した。
その他の教育活動
 大学院臨床心理学コース学生に対する学内(心理教育相談室)及び学外(県立精神医療センター)臨床指導
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 臨床心理学という観点から,学校現場で生じている様々な問題への対応法を学部,大学院,及び学校現場の教師に対し伝達した。特にその際,心理学に関する理論を伝えるだけでなく,実際の臨床事例に即応できる具体的かつ効果的な講義・実習内容になるように留意した。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
@平成18年3月:『国内のコラージュ技法・療法に関する研究の動向』(共著)上越教育大学心理教育相談研究 第5巻第1号 pp.53-61.
@平成17年7月:『教育現場に活かす行動コンサルテーションのシステム・技法の課題』 日本行動分析学会第23回大会シンポジウム(シンポジスト)
A平成17年10月:『行動療法の専門家の役割と連携 その2』 日本行動療法学会第31回大会シンポジウム(指定討論者)
@平成17年7月:『特定の場所に対する恐怖反応を示す女子高生に対する行動療法的アプローチ』(単著) ストレスニュース No.164,ヘルスケアカウンセリング ケース研究 Case Study 83,財団法人パブリックヘルスリサーチセンターストレス科学研究所
A平成17年11月:『ヒルガードの心理学 第14版』翻訳(共著) ブレーン出版
共同研究の実施状況
@公立中学校における軽度発達障害をもつ生徒への特別支援教育システムの開発 代表者:米山直樹(上越教育大学講師) 科学研究費補助金
学会活動への参加状況等
@7月29日〜31日:日本行動分析学会出席
A9月30日〜10月2日:日本LD学会出席
B10月8日〜10日:日本行動療法学会出席
◎特色・強調点等
 特別支援教育に関する研究を軸に,それに関連した学校教育相談システムの構築や,軽度発達障害に関する研究を二次障害まで網羅する包括的な研究を行ったことは,従来の枠組みを脱却した非常に先進的な試みだと思われる。いずれの項目においてもその中心概念は「学校支援」であり,この観点から教育臨床活動を進めている点が特色といえる。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@「スクールカウンセラー活用事業」に基づくスクールカウンセラー(糸魚川市立能生中学校・糸魚川市立能生小学校:文部科学省及び新潟県1/2事業)
A「カウンセラー学校派遣事業」に基づく派遣カウンセラー(上越市立柿崎中学校:新潟県教育委員会)
B「災害時における児童生徒の心のケア特別対策事業」に基づく被災した児童生徒の心のケアのためのカウンセラー(小千谷市立和泉小学校・小千谷市立吉谷小学校:文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課)
C本学心理教育相談室相談員
D新井市1歳6ヶ月児健診心理相談員(新井市健康福祉課)
Eテレビ公開講座講師(『ストレスの受け取り方、とらえ方』を講義:上越教育大学・上越ケーブルビジョン共催)
F上越市立教育センターカウンセリング研修会講師(『カウンセリング面接の基本と演習』を講義:上越市)
G新潟県教職12年研修会講師(『いじめ問題の基本的認識と学校の説明責任』を講演:新潟県教育委員会)
H上越市立柿崎中学校校内研修会講師(『思春期に見られる精神疾患について』を講演)
I糸魚川市立上早川小学校PTA講演会(『小学校時代における子育てのあり方』を講演)
J糸魚川市立能生中学校校内研修会講師(『軽度発達障害の理解と支援のあり方について』を講演)
K上越市立柿崎中学校PTA講演会講師(『親と子の関係づくりに役立つカウンセリングテクニック』を講演)
L新潟県教職12年研修会講師(『カウンセリング面接の基本と演習』を講義:新潟県)
M長岡教育相談研究会講師(『ストレスとつきあう』を講演)
◎社会への寄与等
・平成16年新潟県中越地震で被災した地域の小学校に対する支援を行い,災害復興に寄与した。
・スクールカウンセラー活動を通じて,学校現場が抱えている問題に積極的に関わった。
・本学心理教育相談室相談員として,上越近郊に在住する方達の精神衛生向上に寄与した。
・児童生徒の保護者に対し,子育て支援に関する講演会を開催し,上越地域の子育て支援向上に寄与した。
 

 
吉 田 真 弓(助 手)
 
<教育活動>
授 業
 大学院授業「臨床心理基礎実習T,U」,「臨床心理実習T,U」では,インテイク・カンファレンスおよびケース・カンファレンスにおいて,心理教育相談室における臨床実践にかかる助言と指導を行ったほか,「臨床心理基礎実習T」における心理臨床的面接技法の指導補助,「臨床心理基礎実習U」における学外見学実習の引率指導,「臨床心理実習U」における学外臨床実習の実習指導を行った。また,「臨床心理演習」,「臨床心理学研究法特論」,「臨床心理学特論T」,「臨床実践援助法」,「実践場面分析演習T『臨床心理』」,「実践場面分析演習U『臨床心理』」の指導補助を行った。
研究指導
 卒業論文,および修士論文について,ゼミ,発表会,審査会等での助言と指導を行った。また,適宜,学生のニーズに応じて研究にかかる助言と指導を行った。
その他の教育活動
 放送大学「臨床心理学実習U」の非常勤講師として,臨床心理学の実践にかかる実習授業を行った。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 心理臨床の基礎となる面接技法の習得を援助するとともに,さまざまな活動領域における臨床心理士の役割や機能,他職種や他機関との連携の在り方について見学実習,学外臨床実習を通じて指導を行った。それらは,臨床的なオリエンテーションを超えて,心理臨床の実践に共通する重要な習得事項である。加えて,精神分析的観点から,防衛機制や精神病理,家族力動などによる葛藤・衝動の扱われ方に留意した臨床的助言と指導を行い,多様な観点からのケース理解の獲得を援助した。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
@平成17年5月:子どもの心理臨床−関係性を育む(共著) 第9章 心理臨床者の資質養成 p.165-185 建帛社
学会活動への参加状況等
@平成17年9月5〜8日:日本心理臨床学会第24回大会出席
A平成17年10月21〜23日:第51回日本精神分析学会出席
◎特色・強調点等
 「子どもの心理臨床−関係性を育む」の第9章「心理臨床者の資質養成」では,カウンセラーや臨床心理士に求められる資質を挙げ,その上で,技能の研鑽に不可欠なコンサルテーションやスーパーヴィジョンの意義,臨床実践と研究の互恵的連関のための臨床心理学的研究の意義と研究法の概要を述べた。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@本学心理教育相談室相談員
A新潟県立高田高等学校 心理相談員(月2回,2時間),教師対象の心理相談研修会講師
B糸魚川市健康増進課 育児支援事業「3歳児健診」,「1.5ヶ月児健診」
C医療法人社団うえくさ小児科 心理相談員(月3回,7時間)
D新潟県カウンセラー学校派遣事業 春日小学校(年2回),八千浦中学校(年2回),針小学校(年1回)
E8月 上越市立教育センター主催カウンセリング研修会講師 『思春期の心の揺れ』
F11月 糸魚川市健康増進課 すくすく赤ちゃんひろば講師 『乳幼児期のこころの成長のために』
G11月 新潟県家庭教育支援総合推進事業 家庭教育サポーター養成研修会講師 『児童虐待の増加に対応するために』
H11月 上越教育大学・上越ケーブルビジョン共催 テレビ公開講座講師 『ストレスと子どものSOSサイン』
I12月 上越地域振興局健康福祉環境部主催,上越市,妙高市,(社)上越医師会,新潟県立看護大学,上越教育大学共催 「子どもの生と性を考えるつどい」 講師 『よりよい関係を築くために〜家庭・地域でのコミュニケーション〜』
◎社会への寄与等
 学内外での心理相談やコンサルテーション活動,および,乳幼児から青年期の心理や養育に関する講演を通じて,地域の健康福祉の増進に寄与した。