4 教育・研究活動
(1) 各講座・分野の教育・研究
 

 
@ 学習臨床講座
ア 組織
 平成12年に開設された本講座は、教員20名(うち教授定員12名)の定員で構成されている。年度途中に中村光一教授の東京学芸大学への転出があり、年度末には大悟法滋教授の定年退職があった。このため、本年度末における教員の現有数は16名である。また、平成18年4月1日付で北條礼子助教授が教授に昇任した。さらに、布川和彦助教授の教授昇任のための準備を進めた。
イ 教育・研究の特色
 本講座は、従来の実践的な教育研究を踏まえ、より一層教育現場に密着して、児童・生徒の学習を臨床的に研究し、教育実践上の様々な課題に応えられる教育研究を創造することを目指して来た。
 大学院の教育研究活動は、教育方法臨床、学習過程臨床、情報教育、総合学習の四分野に分かれて行われているが、実践場面分析演習を通して、各分野の特質を生かしながら、学習臨床の研究内容や方法の開発に取り組んでいる。また、研究室単位での演習を通して、大学院生自身が教育実践に取り組み、課題を明らかにしながら、授業分析をはじめとする研究活動を行っている。修士論文の構想発表と中間発表は四分野ごとに組織・運営されるが、これを公開のかたちで実施することにより、隣接分野における研究成果と刺激を相互に吸収できるようにしている。論文提出後の修士論文発表会は、各分野単位ではなく、四つの分科会形式で行われ、学習臨床研究の共通基盤の構築を意図して、分野相互の研究動向を確認する場ともなっている。
 学部の教育研究活動に関しては、四分野の解消を前提として、前期に「学習臨床入門」、後期に「学習臨床概論A」と「学習臨床概論B」の授業を実施した。本年度は卒業研究としての論文作成の3回目の年であったが、大学院と同様の経過を踏まえ、今後の方向性を模索しながら2会場で発表会を開催した。四分野の相互乗り入れとすることにより、学習臨床研究の成果を幅広く共有化することができた。
ウ 運営・活動の状況
(ア) 講座・分野会議等の開催状況
本年度は、昨年度と同様、毎月1回のペースで講座会議を開催し、臨時のものを含めると合計17回の講座会議を開催した。なお、講座会議の議題票は講座会議前日までに講座代表が作成し、議事録は次回講座会議までに講座庶務係が作成した。また、講座会議に欠席した教員には、当日中に議題票・附属資料・前回の議事録をまとめて送付し、諸情報の周知を図った。一方、分野会議は、各分野の必要に応じて適宜開催した。
(イ) 審議された主な事項
本年度も様々な事項について審議したが、それらのうちの主なものは、以下に示す通りである。
・平成18年度競争的教育研究資金の配分基準
・大学院入学定員の恒常的な充足に関する基礎調査
・大学院修士課程の修了要件の見直しに係る意向調査
・アドミッションポリシーの策定
・学長団から要請された教員人事や授業科目の設置
(ウ) 重点的に取り組んだ課題や改善事項及び前年度の検討課題への取組状況
平成18年度は本講座が開設されてから7年目に当たり、大学が法人化されて3年目に当たる。本年度は、平成12年度改革の成果と課題を整理する一方、平成20年度に予定されている教職大学院の設置を見通して、講座組織等の見直しに着手した。この点については、次年度に向け、講座として以下のような確認をした。
【平成19年度中に本講座が検討すべき課題】
・平成12年度に開設された本講座は本年度で7年目を迎えている。この間に講座に所属する教員の新旧交代が進む一方、大学全体としては教職大学院の開設に伴って既存の講座等の再編成等が検討されてきている。教職大学院が開設されるのは平成20年度からであるが、講座としてはその前年度に当たる平成19年度中に、本講座の開設の理念やその後の足跡を確認しつつ、検討しておくべき課題が幾つかあるように思われる。
・検討しておくべき課題の項目としては、例えば以下のようなものが考えられる。本講座の教育研究活動をより一層充実していくため、現時点で先生方がお気づきになっている課題やその解決に向けてのアイデアなどを出し合い、講座として共有化を図っていきたい。
@教育目標やアドミッション・ポリシー
A学生募集や入学試験
B授業科目やカリキュラム
C現職の院生と免Pの院生、学部生の指導
D分野間や教員間の連携・協力
E他講座・分野との連携・協力
F地域連携や国際交流等の事業への取組
G研究室、院生室、演習室等の配置等
H教員人事
I講座の運営
J学長団への要望等
Kその他
・当面は、月に1度くらいのペースで講座会議とは別に、適宜学習会のようなものを開催し、これらの項目に関わる課題ついて、これまでの歩みや現状を確認しながら話し合っていきたい。
上記の検討項目のうち、「G研究室、院生室、演習室の配置等」については、教員の新旧交代が進む中でアンバランスが生じ、早急な対応が求められたため、講座独自に「演習室の配分等に関する基礎調査」を実施して次年度の対応に備えた。また、「J学長団への要望」については、上記の(イ)に記した事項ごとに講座の意見を集約し、必要に応じて提出した。
エ 優れた点及び検討課題等
 大学院生数は、1学年標準定員60名であるが、本年度はM2が62名、M1が53名、合計115名が在籍している。一方、学部学生数は、1学年標準定員20名であるが、3学年分の約60名が在籍している。講座開設以来、定員である20名に満たない数の教員が、これらの学生たちの研究指導に当たっており、実態としては既に限界を超えているが、大学院定員充足のための努力の結果、平成19年度の入学生も58名を予定している。
 これら100名を超える大学院生については、その実情を直接的に把握するにはあまりにも人数が多いため、講座代表、庶務係2名、各分野の連絡係4名及び大学院生の代表者10名による「教員・院生協議会」を毎月開催して、コース・分野の運営、研究環境の問題等について定期的に協議しながら改善の努力を図っている。
 また、本講座は、常に学校教育総合研究センターと連絡を取り合いながら、附属学校をはじめとする教育現場との連携、国際交流事業への参画、各種シンポジウムの開催、『総合学習研究年報』の発行など、多様な教育研究活動に積極的に取り組んでいる。
 講座としての今後の検討課題は、上記ウの(ウ)に示した通りであるが、平成20年以降に見込まれる大学改革の中で、本講座がこれまでに創造・蓄積してきた臨床的教育研究の成果や講座組織の民主的な運営などが大学全体の財産として広く認知され、共有化されることが望まれる。
 

 
A 幼児教育講座
ア 組織
 幼児教育講座は教授2名,助教授2名,講師2名の総勢6名の教員で構成され,この6名で幼児教育学,幼児心理学,保育内容の研究,生活科教育学の4つの専門領域を担当した。講座運営は前年度に引き続き,大山教授が講座代表として執り行った。
イ 教育・研究の特色
 各専門領域の立場から,幼稚園教諭及び保育士の養成を中心としたこれまでの実践的研究を,各専門分野の有機的な関連を図りながら保育実践現場と密着させて教育研究を行った。具体的には保育実習専門部会に部会長を含む3名のスタッフを送り,本学の幼稚園実習と保育所実習の引率並びに実習の事前事後の指導を,講座の全スタッフが中心となって行った。幼稚園1種免許取得希望者を対象とする幼稚園専修実習についても,講座のスタッフが事前指導をローテーションで行い,その指導の過程で研究の成果を教育に活かす努力を行った。
 「実践セミナー」「実践場面分析演習」の「1」では専門の講義と幼稚園・保育所での観察を通して各自がテーマ設定・資料収集・分析・検討,そして発表を行い,討論を通して研究の方法について学ばせた。「U」では附属幼稚園の協力のもとに,「1」で行った内容について再度確認する形を取りながら,保育場面を通して幼児理解の方法について学ばせた。その成果については従来通り報告書にまとめた。
ウ 運営・活動の状況
 講座運営の中心となる講座会議は,従来通り隔週開催というこれまでの原則を踏襲し,全スタッフ参加のもと23回開催した。このほかに臨時の会議を複数回開き,情報に関するスタッフへの周知徹底に努力した。また時間的な効率化も図った。
 審議された主な事項は,@大学院の定員充足についての方策、A学生・院生(特に長期履修学生制度に基づく者)の授業履修と課題研究の指導について、B附属幼稚園との連携の在り方について、C幼児教育講座の今後の課題と問題点について等,今年度も重要な課題が山積し,スタッフ一同熱心に討議を行った。昨年度に引き続き重点的に取り組んだ課題は大学院の定員充足であり,専門雑誌への広告や学会等の機会を捉えて積極的な広報活動を行った。今年度から,附属幼稚園の幼稚園教育研究会をはじめとする講座の幼稚園に対する協力体制のより効率的な方法についての検討も始めている。また,今年度は文部省幼稚園教員資格認定試験の実施において参画した。
エ 今後の検討課題等
 今年度は,本学で保育士資格を取得した初の学生19名を送り出した年であった。その中で70%近い13名の学生が公立保育所試験に合格した。また公立幼稚園1名,小学校2名,中学校1名と就職率が非常に高い結果となった。現在,公立保育所・幼稚園の就職の状況は全国的に大変厳しい状況下にあるが,この結果は大いに評価できるものである。今後の検討課題は引き続き大学院の定員充足が最重要課題と考える。
 

 
B 生徒指導総合講座
ア 組織
 本講座の教員構成において、前年度末時点で次の異動があった。すなわち、前年度3月末日で石田美清助教授が他大学へ転出されるため退職された。その結果、平成18年4月1日以降の本講座構成員は9名であったが、そのうち荻原克男助教授が10月1日付で教授に昇任され、教授3名、助教授5名、講師1名となった。また、大学院修士課程在籍者(発達臨床コース全体として)は、2年次学生34名、1年次学生38名であった。
イ 教育・研究の特色 
 第一に、本講座の内部を次の三つの授業科目群に緩やかに区分して日常の教育・研究活動を展開しつつ、なお講座としての統合性を追求する指導体制を採っている。すなわち、(1)不登校やいじめ等、生徒指導の今日的問題に個別的に対応するだけでなく、チーム・ガイダンスのコーディネータとして総合的に問題解決を図る教員の育成をめざす「生徒指導」の科目群、(2)開かれた学校や特色ある学校づくり等、自主的・自律的な学校経営をめぐる現代的課題にスクール・リーダーとして対処しうる教員の育成をめざす「学校経営」の科目群である。そして、(3)社会の変化と学校が置かれている状況を客観的に理解し、保護者や地域の教育への関心やニーズの分析・把握をめざす「教育社会環境」の科目群である。これら三つの科目群それぞれの専門分化を許容しつつ、併せて学校教育の実践的な諸問題に対する総合的かつ臨床的な研究活動を展開している。
 第二に、大学院発達臨床コースの「生徒指導相談」「学校経営」「教育社会環境」の3分野それぞれの専門性を活かしつつも、発達臨床コース全体の統合性のある教育活動を展開するために、特に研究セミナーと実践場面分析演習の授業運営に独自的な工夫・配慮をしている。つまり、研究セミナーについては日常の個別教員による指導の発展形態として、5月に大学院2年次学生の「修士論文第2次構想発表会」(1年次学生も全員出席)、10月に「修士論文中間発表会」(同)、そして12月には1年次学生による「修士論文第1次構想発表会」を開催して、所属教員全員による多面的かつ詳細な指導を実施している。また、実践場面分析演習については、学校教育に関する実践的諸問題への広い視野の習得と分析的考察能力の向上を意図して、ディベートによる追究・討議の機会を設定し、学部3〜4年次学生(「実践セミナー」の授業)を含めた意欲的な学習を促した。なお、この実践場面分析演習の授業記録については、本年度も報告書にまとめ公表した。
 第三に、本講座所属の教員多数が会員となっている日本学校教育学会の運営に力を注ぐとともに、特に現職教員の大学院学生に研究大会での研究発表や機関誌への論文投稿を積極的に行うよう指導し、広くわが国教育学界の発展・向上にも貢献している。
ウ 運営・活動の状況
 毎月第一水曜日を基本に講座会議を開催し、本講座の運営に関する重要事項について協議している。本年度の主要事項としては、大学院学生定員充足のための方策、大学院長期履修コース在学者への修士論文指導の工夫等であった。
エ 今後の検討課題等
 大学院の「生徒指導相談」分野での研究を希望する学生の数が近年増しており、また「特別活動」を専門分野とする教員が欠員となっているため、専門分野としては「教育相談(教育学系)」と「特別活動」の専任教員の配置をできるだけ早く実現できるよう強く望んでいるところである。
 

 
C 心理臨床講座
ア 組織
 講座の構成は,教授3名(うち1名は学長特別補佐として出向中),助教授8名,講師1名,助手1名の陣容であった。昨年度末に米山直樹講師が他大学に転出し,その後任として公募により角田京子助教授が本年度4月1日付で本学に着任した。また,吉田真弓助手が本年度の3月31日付で退職するため,後任の助教人事の作業を進めている最中である。本講座教員が指導を担当した学部生は3年次12 名,4年次生12名であった。
 大学院については,臨床心理学分野がコースとして独立したため,臨床心理学コースと発達臨床コース学校心理学分野となり,大学院生は修士課程臨床心理学コース1年次生18名,2年次生19名であった。
 また,博士課程1年次生1名,2年次生1名であった。
イ 教育・研究の特色
 学部教育は,心理臨床分野の専攻学生に対して全教員で指導にあたり,特に卒論や実践場面分析演習では,基礎心理学と臨床心理学の連携を重視した指導体制をとっている。大学院教育は組織上分離しているが,授業科目は臨床心理系の教員が学校心理分野の院生に臨床心理関係科目を,そして学校心理系の教員が臨床心理学コースの院生に基礎心理学関係科目を開講し相互に補完し合っている。両者ともそれぞれ修論中間発表会や修論発表会を行いレベルの向上に努めている。研究面では著書,学術論文が多数出されている。
ウ 運営・活動の状況
 講座会議は月1回開催し,年度当初には心理臨床講座のいっそうの活性化に向けて昇任人事に向けての積極的対応を促すとともに,折りに触れてその触発を行った。中期目標・競争的教育研究資金の配分基準をはじめとする全学的な検討事項等についての議論はもとより,平成19年度以降の施行となる次の諸点について検討した。a)現行の学部における発達臨床コース心理臨床分野は学校心理と臨床心理の2つからなっているが,平成19年度から臨床心理がコースとして独立し,そのためのカリキュラム編成を行った。b)日本臨床心理士認定協会の平成18年度指定継続申請に関する直接面談に,戸北凱惟副学長,心理臨床講座代表内田一成教授,心理教育相談室室長加藤哲文教授らが参加し,それを受けて,指定科目中,必修科目とE群の科目の履修条件を,平成19年度から臨床心理学コースの学生に限定するようにした。c)平成20年度から同上の必修科目中,実習を除く16単位を本学必修科目(修了要件に含めること)として位置付ける案を講座として作成し提出した。d)臨床心理士養成コースの学内実習施設である心理教育相談室の独立棟への移転も完了し,新年度から相談料が有料になるため,質の高い臨床サービスと臨床指導体制のよりいっそうの充実が望まれる。
 本年度は,本学が日本教育大学協会北陸地区会の研究協議会の当番校であり,心理臨床講座から講座代表の内田一成教授,内藤美加助教授,越良子助教授が参加し,各大学の今日的課題について意見交換を行った。
 大学院は臨床心理学コースと発達臨床コース学校心理分野と分かれているが,今年度まで院生研究室は発達臨床コースが4部屋,臨床心理学コースが2部屋に分散していたが,新年度より念願が叶い発達臨床コースが2部屋,臨床心理学コースが1部屋になり,M1とM2のよりいっそうの切磋琢磨が期待される。
エ 今後の検討課題等
 平成19年度から,学部も大学院も臨床心理学コースと発達臨床コース学校心理分野と分離することになったことから,教育組織としてのそれぞれの独自を尊重し合いながら,心理学としての共通性を大切にした効果的な指導体制づくり,並びに教員組織としての協力体制の在り方などが今後の課題と思われる。また,臨床心理学コースにおける心理教育相談室の来談ケース担当院生への臨床指導にかかわる加重負担の解消方法,並びにより効果的な指導体制づくりは最重要検討課題の1つである。
 

 
D 障害児教育講座
ア 組織
 障害児教育講座は従来と同様に障害児教育実践センターの組織と一体となって運営された。講座の中では,齋藤一雄助教授が4月1日に教授に昇任し,藤原義博教授が9月1日に筑波大学に転出した。これにより,3月31日現在,教授3名,助教授1名,講師2名となった。なお,平成19年4月1日からは笠原芳隆講師が助教授に昇任し,長野大学より葉石光一氏が助教授として着任するため,教授3名,助教授3名,講師1名となる予定である。
イ 教育・研究の特色
 本講座は,特別支援教育に関する高度な専門的知識と実践的指導力を修得させることにより,障害のある幼児児童生徒の教育的ニーズに応じて適切な指導と必要な支援を行うことができる教員を養成することを目的としている。このため,教員の専門分野は障害児に関する教育学,心理学,生理学,指導法など多岐にわたっている。講座の授業としては,盲・聾・養護学校教諭の専修免許状,一種免許状の取得に必要な科目を開設した。特に,講義による専門的な知識の提供とともに,障害児教育実践センターにおける臨床研究の場を数多く設定し,特別支援教育に関する幅広い教育・研究を展開した。
ウ 運営・活動の状況
 講座及び障害児教育実践センターの教員全員による講座会議を28回開催した。講座では,院生募集・支援,カリキュラム,予算,人事,障害児教育実践センターの構想・地域連携の5つのワーキング・グループを組織し,まず各グループの中でそれぞれのテーマに関連する課題とその改善策を検討した。その後,講座会議において全教員により具体的な方策について議論した。特に,今年度は文部科学省より予算措置された3か年にわたる特別教育研究経費(教育改革)による事業の初年度であったため,その内容に沿ってカリキュラムの全面的な改定作業を行った。合わせて平成19年度からの特別支援学校教員免許状の課程を5領域全てにわたって申請し,認定を受けた。また,平成19年度より,講座の名称を特別支援教育講座に改めることとした。
エ 優れた点及び今後の検討課題等
 平成19年度からの特別支援教育の本格的な実施を控え,障害児教育講座は障害児教育実践センターとの緊密な連携の下,院生の様々なニーズに迅速に対応できる体制を整えてきた。今後は,特に小・中学校等において喫緊の課題となっている軽度発達障害に関する教育・研究を担当できる教員の充実を早急に進めていく必要がある。また,平成19年度は教育改革事業の2年目にあたることから,障害児教育実践センターにおける臨床教育・研究をさらに充実させるとともに,附属学校園,地域の特別支援学校,小・中学校等における実習を積極的に取り入れたカリキュラムを実現させていくことにより,事業の一層の推進を図ることが必要である。
 

 
E 言語系教育講座(国語分野)
ア 組織
 平成18年4月1日現在の構成員は,実技教育研究指導センター所属の教員を含めて9名である。教授3名,助教授5名,講師1名であり,このうち小埜裕二助教授が平成19年4月1日をもって教授に昇任する。
イ 教育・研究の特色
 本分野は,国語学,国文学,国語科教育,書写・書道の4領域で組織されており,学部学生,大学院学生ともにその各領域に帰属している。指導の具体はそれら領域における実施を中核とするが,「実践場面分析演習」は複数の領域によって多重的に開講される例がある。卒業論文と修士論文の指導に係る構想発表会・中間発表会は全領域合同で行い,領域にかかわらず議論が展開されている。
 また「上越教育大学国語教育学会」を組織しており,年2回の例会では,卒業・修了生の実践または研究の発表,卒業論文・修士論文の発表および教員の研究発表が行われており,平成18年度末で52回をむかえ,小中高教員を中心とした学外からの参加者も少なくない。学会誌として年1回『上越教育大学国語研究』を刊行し,平成18年度で21号を数える。
 なお,漢文学を専攻する教員を欠くため,大学院(隔年)・学部ともに非常勤講師を招いて充実をはかっている。
ウ 運営・活動の状況
 本年度,国語分野会議は18回開催された。主たる審議内容は,カリキュラムの具体的な内容の検討と担当者,修士論文・卒業論文の指導方法,附属学校(国語科関係)との連携,分野の人事基準の明確化,分野の広報活動,大学院定員充足の方策,「上越教育大学国語教育学会」の運営方針・同学会誌の編集,退職記念祝賀会の企画等である。本年は,カリキュラムと学生指導の方法,附属学校との連携など教育課程とその周辺の事項,及び学生の定員充足に係る方策に係る議論が中核を占めた。特に昨年度来問題となっている,大学院学生指導上の問題が具体的に検討された。
エ 優れた点及び今後の検討課題等
 学生の教育・研究指導において分野内の領域を横断した体勢が組織されている点が優れている。このため卒業・修士論文の指導・評価ともに広い視野で実施することが可能になっている。これと連動して,学会の運営も活発である。
 大学院は一定の学生数を確保しえているが,その属性は現職研修教員,留学生を含む新卒の進学者,長期履修学生および免許プログラム学生のごとく複雑化している。このため単一の方法では有効に指導しがたい状況が現実に生じている。修士論文の質的水準の維持をはかるのみならず,修了時の状況を予測し,学生の指向に応じたきめの細かい対応が要求される。学部については,基礎学力を養成しつつ採用試験の合格率を上昇させることが求められる。
 大学院,学部ともにこれまでのように総合的・統合的な指導・展開方針を基盤とするが,また部分的な差異化を可能とすべく,カリキュラムの再編を検討することが当面の課題となる。
 

 
F 言語系教育講座(外国語分野)
ア 組織
 外国語分野のスタッフは附属実技教育研究指導センター所属教員と外国人教師を含めて9名であったが、斎藤九一教授が平成19年3月31日付けで東洋大学文学部へ転出したことにより現在は8名(教授4,助教授2,講師1,外国人教師1)である。
イ 教育・研究の特色
 学校教育学部では,英語の基本的な力を身につけさせるとともに小・中・高等学校及び社会のニーズに対応できる能力の育成を目指して創設された言語系英語コースの6年目にあたり,言語系英語分野として卒業生16名を送り出すことができた。11月に卒業論文中間発表,平成19年2月には卒業論文発表会を開催した。
 大学院言語系英語コースでは,英語教育に関する指導力,教科専門性,実践的技能をあわせもった人材の育成を目指している。平成18年度は1年生が19名(うち免許プログラム7名、退学1名),2年生が10名在籍した。2年生は4月の修士論文構想発表会,10月の修士論文中間発表会,1月末の修士論文審査・試験を経て,3月に巣立っていった。1年生は,前期において様々な授業を履修しつつ7月上旬には論文指導教員を確定し,次年度の構想発表に向けて本格的な研究活動に入った。
ウ 運営・活動の状況
 平成17年度に採用されたマルチメディア語学教材システムのマルチメディア教室を利用した。
 「小学校英語教育」に関わって,糸魚川市の公立小学校「小学校英語活動」についての支援は石濱助教授が継続して指導・助言に当たっている。「公開講座」については2名の教員が開講した。
 学会に関わる活動では,平成18年7月には,言語系外国語講座が事務局となっている「上越英語教育学会」の第10回大会が本学LL教室で開催された。実践報告・研究発表を行うとともに,機関誌『上越英語研究』第7号を刊行して,地域・社会との教育・研究分野での連携を図っている。
エ 今後の検討課題等
 免許プログラムによる大学院への入学者が増加しており,その対応について試行錯誤の面がある。大学院入学者のなかには英語力に問題のある学生が次第に増えており、その研究指導のあり方が問われており、今後の検討課題である。
 

 
G 社会系教育講座
ア 組織
 平成18年4月1日における社会系講座の構成員は教授6人、助教授8人の計14人であった。従来、教員配置のあった哲学、社会学等については、依然として補充ができていない。そのため当該科目は、非常勤講師により開講している。なお、年度末に日本史及び法律学担当教員各1名の転出が決まった。
イ 教育・研究の特色
 当講座では、教育内容にかかわる地理学、歴史学、法学、経済学、倫理学、宗教学などの専門諸科学、その教育方法にかかわる社会科教育学を研究し教育する体制をとっており、学部学生や大学院生は自らの研究課題に基づいて各研究室に所属し、基本的には各指導教員の下で卒論や修論を作成する。しかしながら、当講座では、研究室単位だけではなく、全教員が協力・連携して学生や院生の教育・研究指導にあたるという共通認識が確立されており、大学院においては全教員参加の下、修論構想発表会1回と修論中間発表会3回が実施されている。したがって、学部生や院生の研究は、教科専門、社会科教育、教科専門の内容を教材化するという視点で再構成したものなど多岐にわたり、学際的・総合的な研究に取り組んだものなども多くみられる。
 当講座の修了生と在校大学院生が主となり、大学教員や公立学校の教員などで構成される上越教育大学社会科教育学会では、「学会だより」及び学会誌の発行、巡検、例会、研究大会の開催等の研究活動を継続して行っている。本年度の研究大会は10月21日に、本学学校教育総合研究センターで開催され、県内外から多数の現職教員が参加し活発な討議が行われた。
ウ 運営・活動の状況
 本年度、社会系教育講座会議は計16回開催された。ここでは、各種委員会委員と講座代表による議事と報告がなされ、系としての意見がとりまとめられた。学部教育と大学院教育における指導理念と指導体制についても話し合いがなされた。院生の修士論文指導については個別指導のみならず、系全体でも行えるようにしている。学部生の卒業研究における指導体制は1教員上限2名とし、また院生の修論指導については原則2名を指導する体制とし、ほぼこのこの線で指導が行われた。実践セミナーT・実践場面分析演習Tについては、学部3年生と大学院1年生が合同で行う体制が定着し、成果をあげている。講座内の共通資料室等の使用については、人501を借用して公民資料室に当てた。人501は資料室仕様であり、開学以来社会系で使用していたものなので、今後継続してその使用を願い出ていく。また、同室は全学共通印刷室としても共同利用している。
 平成18年度の当講座の学部卒業生は19名、大学院修士課程修了者は22名であった。
エ 今後の検討課題等
 大学院の定員充足については、定員25人に対しM2が25名(うち3名は免P受講者のため引き続き在籍)、M1が22名(うち1名は休学中)であり、ほぼ定員を満たしていた。なお、定員を超える合格者を出しているので、今後は入学辞退者を減少させることが大きな課題である。また、論文指導及び教育課程の充実のために、教員の欠員補充と有資格者の昇任が急務である。
 

 
H 自然系教育講座(数学分野)
ア 組織
 4月から新たに数学教育学分野で岡崎氏が助教授に昇格した。
この結果、スタッフは代数学教授2名,幾何学教授2名,解析学助教授1名,数学教育学助教授3名である。また、3月末日をもって黒木教授が定年退職した。
イ 教育・研究の特色
 数学分野では,代数学,幾何学,解析学の数学の研究と数学教育学の研究がそれぞれにおいて活発になされた。
ウ 運営・活動の状況
 年間,数学教室会議として20回を開催し,それぞれルーティンな問題から学部,大学院の教育上の諸問題,または全般的教室運営を協議した。 情報基盤センターからの依頼により,高校数学の復習用eラーニングコンテンツを作成した。修士課程の入試合格者に修士在学生からのメッセージや所属ゼミ決定の仕方について説明などの案内を送付した。
エ 今後の検討課題等
 修士課程の院生の充足率を上げると同時に派生してくる,院生の質の低下への対応をどうするか,または免P等の院生の多様性にどう対処すべきか等の検討を行った。
 

 
I 自然系教育講座(理科分野)
ア 組織
 組織は,物理学,化学,生物学,地学,理科教育学及び理科野外観察指導者養成部門の6部門で構成されている。教員数は物理学3名(教授2名,助教授1名),化学3名(教授2名,講師1名),生物学2名(助教授1名,助手1名),理科教育学2名(教授1名,助教授1名),理科野外観察指導者養成部門1名(教授1名)の合計13名である。
イ 教育・研究の特色
 理科分野は,自然に興味関心を持ち,積極的に研究に取り組む意欲を育て,科学研究の体験を踏まえて自分自身を発見し,次世代の教育に生かす人材の育成を目指している。平成13年度より学部および大学院修士課程における教育・研究指導体制を「物質・エネルギー」,「生命・地球」,「理科総合」の3グループとし,学生はいずれかに所属し,講義,演習,実験,ゼミナール等の指導を受けながら,理科の教材研究やその指導方法及び自然事象の基礎的研究を行っている。
 平成16年度に創設した理科野外観察指導者養成部門は,既存の5部門(物理学,化学,生物学,地学,理科教育学)と連携しつつ,講義・実験を通して,野外観察のあり方や指導方法など実践を重視した指導を行っている。本部門の実習「理科野外観察指導実習」は,本学大学院学校教育研究科で開設している授業科目であり,地域の教員に対して専修免許状取得に関わる学習の場となっており,特筆すべき点である。
ウ 運営・活動の状況
 定例の理科部会を毎月1回開催し,教育・研究や分野運営等に関する計画立案や情報の共有をはかっている。特に,卒業研究・修士論文の研究指導については,年度初めに綿密な年間指導計画を立て,学生への周知をはかるとともに,教員が連携して指導に当たっている。
 修士課程の広報活動としては平成18年10月号の「教職課程」表紙裏に理科野外観察指導者養成部門を初めとする理科分野の概要や入試の日程等の広告を掲載した。また,理科のホームページのデザインを一新した。理科野外観察指導実習の受講者数をさらに増やすために,実習のパンフレットを作成し,地域連携係と共同して新潟県内にある約1,600の教育機関に郵送した。
 平成18年度の修士課程入学者は20名となり,前年度の21名とほぼ同数であった。平成18年度の理科全体の院生数のうち長期履修生と教育職員免許取得プログラム受講者は計8名で、前年度の7名より1名増えた。
 修士論文の研究成果を地域に公開するために,平成19年2月10日(土)に修士論文発表会を本学202教室で開催した。発表会の案内はホームページに掲載した。
エ 今後の検討課題等
 学部・修士課程ともに,理科の実践的指導力を確実に習得させるためカリキュラムをスリム化と効率化の観点から検討する必要がある。新部門創設の効果により大学院は一定の学生数を確保したが、その内容は現職派遣教師、新卒進学者、教育職員免許取得プログラム受講者と多様である。とくに教育職員免許取得プログラム受講者は大学院生のおよそ3分の1を占め、従来の方法では有効に指導しがたい状況が生じつつある。
 

 
J 生活・健康系教育講座(保健体育)
ア 組織
 平成18年3月31日付けで青木眞教授が辞職され, 同年4月1日付けで下村義夫教授が学校ヘルスケア分野に異動されたため, 本年度は昨年度より2名少ない8名(10月1日以降, 教授4名, 助教授3名, 講師1名)の構成員によって分野の運営が行なわれた。懸案であった昇任人事については大きな進展がみられ, 市川真澄助教授が平成18年4月1日付けで, また直原幹助教授が同年10月1日付けでそれぞれ教授に昇任した。しかし退職者の補充の問題が未解決のままであり,これらの問題を克服するために分野の将来構想について議論を重ねる年度となった。なお, 在籍した学生数は, 学部生が45名, 大学院生が41名であった。
イ 教育・研究の特色
 保健体育分野は,体育科教育学,体育学,運動学,学校保健学の4つの柱からなるが, これらの基礎的理論と実践・体験とを有機的に融合させた指導プログラムのもとで, (1)教育実践力に富む教員の養成と(2)地域の体育・スポーツ活動の支援を目指している。(1)については, 大学院の「実践場面分析演習T・U」と学部の「実践セミナーT・U」を融合させた授業において,近隣の小・中学校との連携をこれまで以上に強化し,授業参観の機会を増やすことにより,実践力を高める努力をするとともに, 新しい教員養成カリキュラム開発の可能性を追求した。(2)については, 出前講座11件, 公開講座3件, JCV公開講座4件を実施し, 地域貢献の充実を図った。
ウ 運営・活動の状況
 本年度は, 分野教員会議を15回, 分野教授会を6回開催した。主たる検討事項は, 教員人事について, 「実践的人間理解科目」の中の「スポーツ実践」科目の見直しについて, 大学院の定員確保, についてであった。その結果, 教員人事については, 直原幹助教授の教授昇任が実現するとともに,体育科教育学の後任を公募により求め,平成19年4月1日付けで周東和好氏を講師として迎えることとなった。「スポーツ実践」科目の見直しについては, これまでの「スポーツ実践」,「ウォータースポーツ」,「マリンスポーツ」, 「スノースポーツ」に加えて「フィールドスポーツ」を新設し,体験的な学びの機会の充実を図ることとした。
 大学院の定員確保については,在学生を対象にアンケートを実施し, 大学院合格者に対して, 入学までの間に, どのような事前指導を行うべきかについての手がかりを得る努力をした。
エ 今後の検討課題等
 保健体育分野は過去20年以上にわたって, 生活・健康系教育講座の学部・大学院の定員の大半を確保してきた実績を持つ。しかしながら,他の講座・分野がそうであるように,本分野でも現職教員の派遣が激減しており,これまでの実績を維持することは容易なことではない。これらの問題に対処するため,分野同窓会の充実,市場の開拓,合格者に対する入学前指導等について積極的な議論を展開しているところである。
 

 
K 生活・健康系教育講座(技術)
ア 組織
 平成18年度の組織は,専任教員が黎子椰助教授と山崎教授の2名,併任として川崎直哉副学長が教授併任,情報基盤センター専任教員の大森康正助教授が助教授併任であった。平成18年度は,技術とものづくり教育の中核を担う材料加工担当の公募人事が行われ,平成19年4月1日付けで准教授を採用する予定である。
イ 教育・研究の特色
 修士論文研究では,技術分野全体の構想発表会を行ったが,中間発表会は行わず学会発表を推奨し,外部評価による質の向上を図ってきた。中学校技術教育実習,学部卒業研究,修士論文研究ともに,附属中学校や公立中学校との連携を重視した教育・研究を行った。進路は,学部4年生1名のうち教職1名,修士大学院生3名は,派遣教員2名,教職1名であった。
ウ 運営・活動の状況
 分野会議は,毎月1回定例の分野会議と臨時の分野会議2回の計14回開催した。重点的に取り組んだ課題の第1点は,技術コースを専攻する大学院生の充足率向上である。ここ数年,技術コースの大学院生は少なかったが,他大学の教育学部技術科や私立大学工学部4年生に対する院生募集方法の改善を行った。
エ 優れた点及び今後の検討課題等
 優れた点として,平成19年度は修士大学院生が8名合格し,入学辞退率がゼロで,定員充足率の向上に寄与した。また,大学院修士論文最終発表会を公開とし,平成19年2月10日(土),上越市高陽荘にて,上越技術・家庭科研究会及び技術分野同窓会の共催により,技術分野が主催した。検討課題の第1は,分野の専任教員が少ないために,人事配置の検討である。第2点は,学部の技術コース専攻生の増加対策が喫緊の課題である。平成18年度4年次生が1名,3年次生ゼロ名,2年次生はゼロである。第3点は,技術コースを専攻する大学院生の充足率向上である。
 

 
L 生活・健康系教育講座(家庭)
ア 組織
 家庭分野は、家庭科教育、家庭経営学、児童学、食物学、被服学を専門領域とする7名の教員で教育・研究を行っている。平成18年度に教授ポストの教員が他分野に移動したため家庭科教育の教員が教授に、助手が助教授に昇任し、教授4、助教授3の教員により分野運営がなされている。助教授昇任の教員(藤木教員)が、非常勤講師担当の「家庭電気・機械・情報」と新たに「環境教育」に関する授業内容を担当することで、本分野の授業内容の充実を図った。教授1名(得丸教員)が、平成18年度大学教育の国際化推進プログラム(海外先進研究実践支援)の採択を受け、米国マサチューセッツ州、マウント・アイダ大学・国立死の教育センターで研修を行った(8月20日―12月21日)。
イ 教育・研究の特色
 「家庭(ブリッジ科目T)」の授業内容の充実と当該分野の教員が家庭科の教員養成に共通の価値観を持ち携わることを意図し、教員全員による授業構築を目指したカリキュラム検討委員会を持ち(21回)、教員の専門領域を有機的に結合した新しい教育内容を開発し、平成19年度から開講することにした。なお、本講義の各授業時に授業評価などを行い、授業改善を恒常的に図る体制を確立した。
ウ 運営・活動の状況
(ア)分野会議の開催状況
 本年度は19回の分野会議を開催した。分野会議の日程は、毎月第2水曜日の午後に設定されており、必要がある場合は臨時会議を開催し対処した。
(イ)審議された主な事項
 主な議題は、カリキュラム・学生の教育及び研究指導・不適応状態を抱えた学生のサポート・分野所属学生確保対策・各種委員会からの審議事項等であった。
(ウ)重点的に取り組んだ課題や改善事項及び前年度の検討課題への取り組み状況
 教員を希望する学生が、教科としての家庭科の重要性及び魅力ある授業実践力をつけるような教員養成カリキュラムの開発に積極的に取り組んだ。
エ 今後の検討課題等
 実践セミナー及び場面分析演習の授業構築にあたって全教員で授業計画を検討するとともに、毎授業終了時に授業評価を行い学生に家庭科の授業実践力を育む授業実践を目指してきた。今年度、ほぼ完成モデルを構築することができた。このような実績を踏まえ、「家庭(ブリッジ科目T)」の授業を魅力ある授業にするための検討会をもった。分野の全教員が、魅力ある授業実践を創りだすことを共通の目的とすることができる教員組織を優れた点と評価している。来年度行う「家庭(ブリッジ科目T)」に関する授業評価項目を設定し、よりよい授業実践を目指すことが来年度の課題である。
 

 
M 生活・健康系教育講座(学校ヘルスケア)
ア 組織
 学校ヘルスケア分野は,養護及び健康教育に関する教育研究体制を充実することによって,主に高度の専門的能力と実践的指導力をもった養護教諭並びに栄養教諭の養成を図り,教育実践研究の拠点としての役割を一層充実させ社会的な要請に応えるものとして,平成18年4月に設置された。本分野の教員スタッフは学校健康教育学,食科学,精神保健,医科学,看護学を専門とする教授4名,助教授1名の計5名である。
イ 教育・研究の特色
本分野では,学校教育の円滑な実施とその成果を確保していく上で最も基盤となる児童生徒の健康に寄与する理論や方法を追求し,ヘルスコーディネーターとしての役割を担いうる人材を養成することを目的としている。したがって,児童生徒の健康をめぐる現代的課題に関して,学校健康教育学,食科学,精神保健をはじめとする医科学・看護学などの学問基盤に立脚した多様な授業科目を開講している。本年度は学部からの進学者をはじめ心理,栄養など多様な領域で学んだ大学院1期生計5名が入学した。
ウ 運営・活動の状況
(ア)分野会議等の開催状況
 月1回の定例の分野会議をはじめ,4回実施した入試などに関連した臨時の分野会議を開催した。
(イ)審議された主な事項
 新設年度であるため学生指導など教育面の課題について協議した。特に,実践場面分析演習などの授業内容や進め方について検討した。
(ウ)重点的に取り組んだ課題
 本分野の特質等を広く社会に知らせて入学希望者を増やす手立てについて検討し,リーフレットやホームページの作成や大学訪問などの広報活動を行った。
エ 今後の検討課題等
 大学院の開設に伴い,本学での養護教諭の養成についての強い要望があるため,学部における養成が可能かを審議し,一定の方向性を得たので学長に進言し,さらに,実現に向けて継続して検討していくこととした。研究面では,佐光恵子助教授が保健学博士(女子栄養大学)を取得した。
 

 
N 芸術系教育講座(音楽)
ア 組織
 前年度、教授1名(小川昌文氏)の転出があり、今年度は教授4名、助教授5名の計9名で運営された。そのうち、2名が実技教育研究指導センターの所属となっている。
イ 教育・研究の特色
 本分野の研究は様々な演奏・作曲活動など実技を伴うところに特色があり、教育・研究活動においてこの点が活かされるよう留意されている。具体的には大学院修士論文には論文のみのAタイプと論文に演奏録音あるいは作品添付ができるBタイプの2種類が用意されている。論文発表会は1年次には6月:「学位論文発表会」、11月:「学位論文研究発表会」、2年次には6月:「学位論文中間発表会」、2月:「学位論発表会」の計4回があり、分野の全教員が学生の論文を把握、指導、助言できる機会を設けている、演奏分野では10月に院生研究演奏会として恒例となっている「アウトゥンナーレ」が開催された。また、1月にはBタイプの論文との連携による修了演奏会が開催された。学部生には卒業研究として論文と実技の両方を義務づけている。本年度も卒業演奏会が4年生全員出演により1月に開催され、また、恒例となっている自作の音楽劇が2月に上演された。
ウ 運営・活動の状況
(ア)分野会議は原則として月1回開かれるが、緊急を要する場合は臨時会議もその都度開催され、また、その合間を縫うようにメールによる意見聴取や協議も行われた。
(イ)審議された主な事項 
・音楽分野の教育系の教授の急な転出に伴い学生指導、授業などに支障が出ないよう後任が決まるまでのきめ細かな検討を行った。
・音楽分野の特質として演奏会が年に何回か開催される。それに伴う諸経費の捻出方法について協議した。
(ウ)重点的に取り組んだ課題や改善事項及び前年度の検討課題への取り組み状況
・教室の古くなった机の入れ替えや、授業にも支障をきたしていたオーディオ機器の入れ替え等が行われたことは改善された点である。
・これまで毎回プリントを作成し学生に配布して授業を行ってきたブリッジ科目「音楽」であるが、前年度、音楽分野の全5領域(声楽、器楽、作曲、音楽学、音楽科教育)の教員がそれぞれの分野を担当して教科書を作成し、今年度はその教科書で授業を行った。本分野の音楽指導内容がまとめられ、指導しやすくなった。また,年度末には次年度に向け改訂版を作成した。
エ 今後の検討課題等
・特筆すべき点
 ブリッジ「音楽」においてピアノの指導が非常に重要かつ多くの課題を含んでいる。徹底的な個人指導が望めない現状において、これまでの指導教員の他に2名の非常勤教員が指導に加わるようになったことは、指導体制の充実という点で特筆すべきことである。
・今後の検討課題
 音楽分野に所属する学生数が近年減少傾向にある。音楽を専門として指導できる学生を教育現場に多く送り出すことができるよう、この点について対策が必要である。また、大学院定員充足のため分野の取り組みを今後も継続して検討する必要がある。
 

 
O 芸術系教育講座(美術)
ア 組織
 教授5名、助教授3名(内、実技教育研究指導センター所属教員1名)、講師1名 計9名である。
イ 教育・研究の特色
 教員全員が協力し合い、院生・学生の美術各専門分野における、特色・魅力を十分理解し、実感できるよう、工夫・配慮した。院生・学生との話合いを重視し、全員が意欲的に、作品制作・研究等に取り組めるよう、留意した。
 修士論文の作成に係る指導の徹底を図るべく、修士1年次11月に研修会、翌年2月に構想発表会、修士2年次10月に中間発表会、翌年2月に修士論文発表会を行った。修士論文指導に関連し、平成18年9月開催の第44回大学美術教育学会(新潟大学)において、院生10名が研究発表をした。
 院生・学生の作品発表については、平成19年2月に卒業・修了制作展を雁木通り美術館と大学を会場に開催し、3月には大学院1年生による院生展を市民プラザで行った。また、全国的規模の展覧会での入選も多く、国展(東京都美術館)、新制作展(東京都美術館)、妙高四季彩展、全国大学版画展(町田市立国際版画美術館)などで作品が発表された。他には、上越市展、妙高市展等での入選、受賞があった。
 平成18年10月信州大学、須坂小学校との連携で「立体造形合同展覧会」(須坂市クラシック美術館他)、同月ワークショップ「花ロード」、「お馬出しアート遊市」(上越市本町2・3丁目商店街)を院生・学生が開催、または、企画に協力・参画した。以上の3企画について、延べ20名ほどの院生・学生が広報印刷物のデザイン制作、作品出品等について参加した。
ウ 運営・活動の状況
(ア)分野会議の開催状況
 定例12回、臨時1回、計13回開催した。
(イ)主たる審議事項
 大学院および学部の定員充足に係る対策
 教員人事計画と公募
エ 今後の検討課題等
 近年、大学院および学部の定員がかならずしも充足されていないので、広報活動を中心に、修了・卒業生との連携、他大学との情報交換・協力体制等により、現状を改善することが緊急の課題である。特に、多角的なメデイア・媒体を駆使しての、重層的且つ高度な広報・宣伝活動を積極的に検討する時期ではないかとの案も出された。
 平成2年当時14名であった美術コース教員は、現在9名となっている。充実した教育スタッフで知られ、教育・研究の成果でも評価されていた本学美術コースの水準を今後いかに維持していくか。少数スタッフのもと、魅力ある教育内容を授業にいかに反映させ、定員充足にいかに結びつけていくかが今後の課題である。