6 附属施設等
 
(7) 障害児教育実践センター
@ センター
ア 設置の趣旨(目的)及び組織
 本センターは、障害児教育に関わる教育臨床や教材開発を通して、院生の実践的指導力の育成と向上を図るとともに、教育相談や指導者研修により、地域の教育・福祉に資することを目的として昭和62年に設置され、平成4年4月に建物が竣工した。センター籍教員は4名であるが、センターの運営・活動に際しては障害児教育講座教員が一体となって参加している。
イ 運営・活動の状況
 本センターは上記の設置目的に照らして、臨床部門(教育相談、教育臨床)、研究部門、研修部門の3つの柱立てからなる事業を実施し、それらを通じて地域に貢献する活動を展開している。以下、本年度の活動状況をまとめる。
(ア) 教育相談活動
 年間相談件数は5858件であった。新規相談の件数は16件、継続相談は42件で合計58件であった。平成15年度は61件、平成16年度は66件、平成17年度は51件であるから、今年度は昨年度に比べると増加している。障害種別でみると知的障害・ダウン症が17件、肢体不自由・重症心身障害が10件と多く、昨年度と同様である。
 延べ指導回数は全部で673回であった。平成15年度は637回、平成16年度は717回、平成17年度は543回であるから、今年度の年間相談・指導回数は昨年度に比べて増加している。
 年間延べ指導時間は合計で889.5時間であった。その内、検査関係が初期・定期50.0時間、継続指導は839.5時間であった。延べ指導時間数について平成15年度は1027.5時間、平成16年度は1029.5時間であり、平成17年度は792.0時間であるから、今年度の年間相談・指導時間は昨年度に比べて増加している。延べ指導時間を延べ指導回数で割ると1.32時間となり、一回の相談・指導時間は1時間半程度である。
 なお、これらには、障害児教育講座の臨床実習として実施した教育相談、授業とは別に障害児教育講座及び障害児教育実践センターの教員による個別の教育相談、障害児教育講座、障害児教育実践センターの教員、及び障害児教育専攻の院生が研究のために実施した教育相談が含まれている。
(イ) 教育臨床活動
 障害児教育講座の授業科目「障害児教育臨床実習」及び「障害児応用教育臨床実習」は、その多くを前述の教育相談活動を関連づけて当センターで実施されている。上記の科目は、盲、聾、養護学校免許に関して、それぞれの分野で実施するため、週あたり合計12コマ:「障害児教育臨床実習・A、・B、・C」、「障害児教育臨床実習・A、・B、・C」、「障害児応用尾教育臨床実習・A、・B、・C」、「障害児応用教育臨床実習・A、・B、・C」の教育臨床実習の授業に加えて、「実践場面分析演習:障害児教育・A、・B、・C」、「実践場面分析演習:障害児教育・A、・B、・C」が組まれている。 さらに、「障害児心理・生理検査法」では、当センターにある教材や検査用具、施設設備を活用して、多様な検査法や心理学的実験を実施している。障害児研究法、情緒障害児指導法、重複障害児指導法、言語障害児指導法等の講義に関しても当センター研修室で実施した。
(ウ) 研究活動及び研究刊行物
 当センターが取り組む研究活動の成果は個々の教員によって著書の刊行、学会誌、紀要等への掲載及び学会発表によって報告されているが、成果の一部に関しては、上越教育大学障害児教育実践センター紀要13巻として平成19年3月に刊行した。
(エ) 研修活動
a センターセミナーの開催
 第74回センターセミナー(日時:平成19年2月17日(土)13:30〜16:30、講演者:山梨大学教育学部助教授・玉井邦夫、演題:障害のある子どもの子育てと教育支援、参加者:114名)
b 各種研究会・講習会
 平成18年度に本センターを会場に開催された研究会・講習会等は、以下の通りである。
 上越地区特殊教育懇談会、新潟県認定講習会、平成18年度附属学校初任者研修会、上越青年の休日を充実させる会(月1回)、上越自立活動研究会(隔月)、通級担当者学習会(隔月)
 また、上越教育大学を会場にして平成19年3月10日に開催された「特別支援教育フォーラム2007」(上越教育大学地域連携推進室主催)に関して、上越教育大学心理教育相談室との共同企画により、コーディネーターを務めた。
(オ) 地域貢献活動
a 研究生の受け入れ
 新潟県(2名、期間1年)、埼玉県(1名、期間1年)、鳥取県(2名、期間6か月)から研究生を受け入れた。研究生にはそれぞれ指導教員がつき、それぞれの研修テーマにもとづいて指導を受けるとともに、障害児教育講座の授業の聴講、臨床指導への参加などを行った。
b 地域支援活動
 新潟県立長岡聾学校評議員、新潟県立柏崎養護学校評議員、新潟県立はまなす養護学校評議員、新潟県立月ヶ丘養護学校評議員、新潟県特別支援教育体制推進事業中越地区専門家チーム構成員、新潟県教育職員認定講習会講師、新潟県初任者研修講師、新潟県12年研修講師、新潟県内特別支援学校教職員研修会講師、新潟県内特別支援学級教職員研修会講師、上越市就学指導委員会委員、上越市立東本町小学校評議員、上越市こども発達相談室講師及び保育所巡回指導講師、上越特別支援教育研究会顧問・講師、上越障害者福祉推進連携協議会(会長、部会長、委員)、上越市障害程度区分等審査会委員、妙高市障害児通園事業「ひばり園」職員研修講師、魚沼市子育て支援センター専門相談員、長野県教育職員認定講習会講師、川崎市教育委員会専門員、川崎市総合教育センター専門員
(カ) 特別教育研究経費(教育改革)事業
 障害児教育講座と一体となって、平成18年度特別教育研究経費(教育改革)による「特別支援教育のための大学院における教員養成・研修システムの開発ー障害児教育実践センター及び附属学校の活用を通してー」(事業実施責任者:大庭重治障害児教育講座教授・代表)を実施した。この事業は障害児教育実践センター及び附属学校を活用して、臨床教育に重点をおいた特別支援教育に係る教員養成・研修システムを開発することを目的として、平成18年度〜20年度の3年改革で実施するもので、今年度はその初年度にあたる。
 本事業を推進するために、事業初年度の平成18年度は、1)障害児行動解析設備等をセンター内に設置して教育研究環境を整備するとともに、2)本事業を推進するコーディネーター(特別支援教育事業推進コーディネーター)を3名配置し、3)附属幼稚園、小学校、中学校、地域の小学校等との連携を図った。また、4)特別支援教育に係る地域の諸機関との連携体制としてのネットワーク構築を進めた。さらに本事業においては、国内外の特別支援教育に関連する取り組み状況に関する調査を実施するとともに、関連資料を収集している
(キ) その他
a 国立大学障害児教育関連施設・センター連絡協議会への参加
 平成18年9月に群馬大学で開催された日本特殊教育学会第44回大会の折りに、同大学において上記連絡協議会が開催され、当センターから土谷良巳教授・センター長が参加した。各大学の施設・センターの活動状況について、様々な情報・意見の交換が行われた。
b 広報活動
 本センターの概要を、本学のホームページに掲載し、適宜更新している。
c センター名称の変更
 本センターは特別支援教育への移行に的確に対応するために、平成19年4月1日から、センター名を「特別支援教育実践研究センター」と改称し、本センターの機能をいっそう高めるとともにセンターの諸事業をさらに推進していく。
A 運営委員会
ア 設置の趣旨
 障害児教育実践センター運営委員会は、主にセンターの管理運営の方針に関する事項、障害児教育における教育実践のあり方の研究及び具体的指導技術の開発に関する事項、障害児教育における教育実践の企画及び運営に関する事項、学生の実践指導に関する事項を審議する目的で設置されている。構成員は本センター長(委員長)の外に、本センター教員1名、障害児教育講座教員1名、第一部から第五部までの教員1名、研究連携室長、教育支援課長の計10名である。
イ 運営・活動の状況
 平成18年度第1回障害児教育実践センター運営委員会が平成18年6月12日(月)に開催され、平成17年度事業報告、同決算が協議され、引き続いて平成17年度事業計画、同予算等について協議した。運営委員会の後平成18年度第1回障害児教育実践センター紀要編集委員会が開催され、障害児教育実践センター紀要第13巻、及び同編集幹事等について協議した。
ウ 優れた点及び今後の検討課題等
 平成19年4月の特別支援教育の本格実施によって、障害のある子どもの家庭、就学前通園施設や学校等の諸機関、教育委員会など、当センターへの社会的な期待が増大している。このような新たな動向に適切に対応するためにセンター機能を充実拡大すること、及びIT化や個人情報の保護に適切に対応できるセンター業務に関するシステムの整備について検討することが喫緊の課題である。また特別支援教育への移行を踏まえて、障害児教育講座が取り組む臨床教育(障害児教育専攻の院生の実践的指導力の向上)に資するために、障害児教育講座及び附属学校、地域の学校との連携・協働が新たな課題となっている。