６ 附属施設等
(10) 附属中学校
① 設置の趣旨（目的）及び組織
ア 設置の趣旨（目的）
(ア) 義務教育の学校として，教育基本法等の教育関係法規に基づき，生徒の心身の発達に応じた中等普通教育を行う。
(イ) 上越教育大学学校教育学部学生の教育実習（参観・参加・実習）の場として学生の指導に当たる。
(ウ) 大学と一体となり，教育理論及び実践に関する研究を行う。さらに，中学校独自の立場から研究と実践を行い，地域の教育現場に寄与できる資料を提供する。
イ 組織
校長，副校長，教頭，教諭14名，養護教諭１名, 講師６名
② 運営・活動の状況
ア 附属中学校の教育研究・管理運営の状況
(ア) 教育研究の状況
ａ 研究の概要
(ａ) 研究主題 「総合的な学習の時間と教科の枠組みを再編した新たな教育課程の研究開発」
(ｂ) 研究内容
生徒が学ぶことに対して，より切実感を感じることができる教育課程を実施したいと考え，現実と向き合って，自ら学ぶことを重視する総合的な学習の時間のねらいが全体を貫く教育課程を編成すべく，総合的な学習の時間と既存の教科の枠組みを再編した教育課程の研究開発を行った。この研究は，平成16年度から18年度までの３年間，文部科学省の研究開発学校の指定を受けている。
ｂ 教育研究協議会の開催
今年度の研究協議会を10月13日に，次のような日程で実施した。当日の参加者数は約450人であった。
ｏ 全体会（全体発表，全体指導，歓迎合唱） 9:00～10:00
ｏ 公開授業Ⅰ・Ⅱ（再編八教科の公開） 10:15～12:10
ｏ 協議会（共通協議題「生徒がより強く学びたいと感じることができる学習の在り方について」） 13:00～14:45
ｏ 講演会（「確かな学力を育む教育評価のあり方」 講師；京都大学大学院教授 田中耕治 様） 15:00～16:30
全体発表では，研究主題設定から第３年次に至る研究開発の経緯，再編した８教科の実践紹介，研究の成果を中心に，当校が取り組んだ研究開発の概要について発表した。
全体発表を受け，全体指導では上越教育大学副学長の戸北凱惟様から，当校が行った研究開発の意義や有効性を指摘していただくとともに，新たな価値を生み出す今後のカリキュラム開発の方向について，旧学力観と新学力観の違いや日本を取り巻く時代認識や教育改革の動向などの視点から御指導をいただいた。
公開授業では，既存の教科を再編した８教科で計12の授業を公開した。その後の協議会では，既存の教科と総合的な学習の時間を一体とすることや生徒がより強く学びたいと感じることのできる学習の在り方などについて，公開授業を基に参会者から数多くの意見や提言を寄せられた。
田中先生の講演会では，目標準拠評価は生徒の学力だけでなく，教育活動そのものを評価するものでなくてはならないことや評価改革は授業改革を伴わなくてはならないことを，具体例を通して，実感することができた。
(イ) 管理運営の状況
ａ 研究推進のための体制づくり
(ａ) 週１回の研究委員会と研究会議の実施
開発指定３年間の３年次の研究を，５人の教諭からなる研究委員会を中心に全教員で推進している。研究内容を毎週月曜日に研究委員会で検討し，それを木曜日の全教員出席の研究会議に諮る体制を取っている。
(ｂ) 大学教員からの指導の場の設定
当校の研究については，日ごろから本学教員に指導を仰いでいるが，特に研究協議会開催に向け，指導をいただく場を設定している。本年度は，４月に１回目の打合せ会を行い，その後，随時指導を受けるようにした。
(ｃ) 研究協力体制の整備
当校の研究推進に当たり，澁澤文隆信州大学教授と二谷貞夫前上越教育大学教授の２人の学外委員を含めた運営指導委員（他はすべて本学教員）から，中間検討会，研究協議会，年次の研究報告書に関して指導をいただいている。
また，教育事務所の指導主事，公立学校の教員からも指導を受ける機会を設けている。
ｂ 情報教育環境の整備
生徒は，総合社会科，科学技術科，表現創造科などの再編８教科や選択教科の授業で，インターネットを通じて検索や資料収集を行っている。また，情報活用科の授業では，電子メールの送信や，ホームページの作成を取り入れている。
イ 附属中学校の活性化・充実のための取組
附属中学校の伝統をふまえ，教育活動のキャッチコピーを「確かな学力，響く歌声，あふれる探求心」と定め，以下に述べる取組を行った。
(ア) 潤いと達成感のある学校運営の工夫
生徒にとって潤いのない学校生活にならないように，当校では時間割の工夫等で授業時数を確保し，学校行事を減らさないように努めている。伝統となっている年２回の校内合唱コンクールや体育祭，文化祭，スキー合宿等を実施し，生徒の活力を引き出し，達成感を味わわせることができた。
(イ) 大学教員の支援を受けた「附属中学校，わくわく大学ウィーク」の実施
生徒の知的好奇心や進路意識を高めることをねらって，夏季休業日中に，大学教員から専門研究に触れる「特別授業」を行ってもらった。平成14年度から取り組まれている事業であるが，平成15年度より期間を１週間に延長し，大学挙げての支援を受けている。本年度の延べ受講生徒数は208人で，受講生徒の多くは新鮮な感動をもち，所期の目的を達成することができた。
(ウ) 総合的な学習と関連を強くした修学旅行
当校の修学旅行は，総合社会科の学習の一環として計画・実施されている。２学期後半から始まった平和・人権学習の総仕上げとして，沖縄への修学旅行を実施した。事前学習，現地学習の中で生徒一人一人が自分の課題を追究する姿は，まさに「あふれる探求心」を具現していた。
(エ) 国際理解教育の推進
今年度は，７月19日（水）～23日（日）の４泊５日の日程で，韓国ソウル市の水洛中学校から生徒30人，引率３人の計33人が当校を訪問し，交流を深めた。交流プログラムは県立歴史博物館，ナウマン象博物館などの見学，折り紙や着物着付け体験，当校での授業体験などであった。この交流を通して当校生徒は，文化やものの見方・考え方などの共通点や相違点を確認することができた。
(オ) 家庭・地域との連携の強化
ＰＴＡが企画した「ＰＴＡ親子講演会」，「親子での学校整備活動」は，家庭と学校の連携の強さを物語っている。
総合社会科の「あなたは人を裁けますか？」をテーマとした学習など，複数の再編教科の学習において，積極的に近くの市立図書館を始めとする施設設備の利用や市役所・高田地方裁判所などへの訪問取材を行っている。また，地域の人材を活用した講演会や授業を実施している。
(カ) 確かな学力の定着
放課後の自主学習（木曜）に，数学と英語の基礎学力向上策として，放課後自主学習を行っている。上越教育大学の院生・学生から募った８名の学習支援ボランティアが，自主学習を希望する生徒の相談役に当たった。生徒自身の基礎学力の定着に向けた取組に対する支援になればと期待している。
各学年とも希望者を対象に，英語・数学の２教科について「夏休み学習講座」をそれぞれ４回ずつ行っている。より確かな学力の定着の一助になればと考えている。
ウ 教育実習の実施
学部４年生及び当校卒業生の合わせて39名の実習生を迎え，５月15日（月）～６月２日（金）の３週間実施した。また，９月12日（火），14日（木）の２日間，学部１年生174名が半々に分かれて，実習生の配属学級の授業，終学活等を参観した。
エ 職員会議及び学校評議員会の開催
校長の意思決定に基づく学校運営が円滑に実施されるよう，定期的に年18回職員会議を開催し，共通理解を図ってきた。
また，教育に関する識見を有する方から，国立教員養成系大学の附属校としての使命を果たす学校運営の在り方について意見を聞く学校評議員会を９月と３月に開催した。
③ 優れた点及び今後の検討課題等
ア 大学の理念に沿った附属中学校の目的の視点から
(ア) 大学との連携
当校の研究の面でも大学の講座の面からも，大学の各研究室と当校との間に緊密な連携が図られている。また，当校教諭が中心となって活動している地元の研究サークルの指導者として，大学教員からも積極的に月例会等に参加してもらっている。
大学の附属学校として，大学教員による中学校における授業や大学院生の研究授業の受入を実施している。また，学部生や院生の卒論・修論にかかわるアンケート等の資料取りに協力している。
本年度は，昨年度に引き続き，数学科で共同研究（学内研究プロジェクト）が行われたほか，学校教育総合研究センターの各分野の研究プロジェクトにも当校教諭が参加している。さらに，多くの教科で共同研究が行われるよう努める。
(イ) 教育実習
教科によって実習生の人数にばらつきがあることと，当校教諭数との兼ね合いから，実習生によって担当時数の片寄りが予想されたので，実習生同士のティーム・ティーチングによる実習を取り入れた。
イ 附属中学校の教育研究・管理運営の視点から
再編した各教科で実践した単元，題材において，設定した大事にしたい学力のほとんどが身に付いており，確かな学力が身に付いてきている。一方，社会の防犯意識が高まる中，緊急時の学校の対応として，災害用伝言ダイヤル，緊急ｗｅｂページ及び希望者への緊急用のメーリングリストという３つの手段で，生徒が学校にいる時間帯の安否情報を提供できるようにした。
一方，今後の課題として以下の点がある。
(ア) 学習者の負担を考慮した体験活動の年間指導計画への位置付けと調整を図るとともに，担当教諭の負担を考慮した効率的な打合せの在り方を工夫する。
(イ) 校内研修の場での大学教員の積極的な活用を図っていく。
(ウ) 職員及び生徒の防犯意識の維持・高揚を図っていく。
ウ 生徒募集に関する学校説明会の実施等による定員充足に向けた取組の視点から
附属中学校への入学を希望する児童が少しでも早い時期からその準備ができるようにと，昨年度に続き学校説明会を７月初旬に開催した。そこでは，当校教諭による模擬授業を体験したり，事前に作成した学校紹介用パンフレットを配付したりして当校のよさを強調することで，参加した児童が附属中学校への受検の意志が固まるように努めた。また，市の校長会や上越管内の小学校へ直接訪問してのＰＲ，生徒募集用ポスターの作成，管内の小学校・公共機関・塾への掲示依頼の取組を行った。さらに今年度は，平成19年４月に開校する市内の中等教育学校の生徒募集が始まることから，要請があれば出向いて学校説明を行うように計画したところ，10か校の小学校等から要請があり，これを受けて説明を行った。その結果，150名（うち，84名が公立小学校）に及ぶ出願があり，定員を充足することができた。
市内の中等教育学校の人気が高まれば，当校への入学希望者数への影響も予想されることから，今後はさらに魅力あふれる学校づくりに努めるとともに，そのよさを伝える情宣活動にも一層の強化を図っていく必要がある。