【言語系教育講座(国語)】
 

 
有 澤 俊太郎(教 授)
 
<教育活動>
授 業
 学部では基礎的・基本的な事項を精選して指導し、大学院では今日的な話題を意識して、講義、演習、実地指導を行った。以上の取り組みについては、おおむね達成されたが、国語科においては、取り上げる題材の選定、講義・演習・実地研究のバランスについて慎重な配慮が必要である。
研究指導
 学部では1名の卒業論文を指導し、大学院(修士)では4名の修士論文の指導をした。
 連合大学院(博士)では1名の学位(学校教育学)の審査に関与した。
その他の教育活動
平成18年7月:学校図書館司書教諭講習講師
平成18年8月:富山大学人間発達学部講師(非常勤)、上越国語教育連絡協議会出席
平成18年10月〜2月:富山大学人間発達学部講師(非常勤)
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
著】@平成19年3月:『国語科実践学の研究(X)』(共編著、有澤研究室、92頁)
論】@平成18年9月:『教科教育実践学の展開モデル:モデル論文の分析』(単著)教育実践学の構築 東京書籍 pp.147−159
業】@平成18年5月:「つながり・広がる・ことば」実践国語研究 別冊275号 明治図書
A平成18年9月:解説・解題「レトリック認識」朝倉国語教育講座6 朝倉書店
B平成19年3月:検証「学習記録」月刊国語教育研究 日本国語教育学会
C平成19年3月:「学力調査を学校はどう活用するか(中学校国語)」「学力調査」対応法・活用法 教育開発研究所
発】@平成18年6月:「総合学習における言語的教授学習方略」上越教育大学国語教育学会
学会活動への参加状況等
@平成18年5月26日〜28日、9月29日〜10月1日:全国大学国語教育学会
A平成18年8月21日:日本読書学会
B平成18年9月18日:日本国語教育学会新潟支部研究大会に出席。いずれの学会においても、会長(日本読書学会)、支部長(日本国語教育学会)、常任理事、編集委員(全国大学国語教育学会)として学会の運営に携わった。
在外研究の状況
@平成18年8月6日〜14日:ブダペスト World Congress on Reading に参加
A平成18年11月2日〜6日:台北 IDAC(International Development Asia Committee)大会に参加
◎特色・強調点等
 18年度末までに国語(言語)教育関係の諸論考をまとめ上げた。国際学会への参加は、19年8月、東京における Asian Reading Conference を主催する必要があるためである。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@中央教育審議会専門委員(文部科学省高等教育局)
A「魅力ある大学院教育」イニシアチィブ委員会専門委員(日本学術振興会)
B小川未明文学館運営委員会(委員長)
C上越市図書館協議会(委員長、県協議会副委員長)
D上越市子ども読書活動推進委員会(委員長)
◎社会への寄与等
 国、県、市の教育、文化的な事業の政策の立案と遂行に関与した。
 

 
下 西 善三郎(教 授)
 
<教育活動>
授 業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
○授業形態、学習(研究)指導法等の教育方法に関する取組状況
 参加型の授業運営を心がけ、受講者には、その旨、講義・演習等の初回ガイダンスにおいて周知をはかった。とくに、人に聴かせてわかる話し方、発表態度等、プレゼンテーションの訓練として毎回の授業に臨むことを要求し、将来的な臨床場面(学校における教室現場、また、諸種の会議等人前で発表すること)へのたしかな対応力、基礎力を培う事をめざした。講義科目では、一つのテーマを通時的に眺めわたす工夫をし、最近の研究成果を盛り込んで内容構成を図った。講読・演習の科目では、各人に事前に発表の指針を与え、レジュメの作成の仕方、読んでおくべき文献等について指示し、個人の事前学習における効果や内容の理解を深める工夫を行った。
○成績評価法に関する取組状況
 成績評価については、授業出席、積極的な発言、取り組みの態度、試験・レポート等を総合的に判定して評価することを伝え、各回の授業への積極的参加を促した。
【観点2】教育の達成状況
 受講学生による「授業評価」によれば、単独開講授業に関しては、おおむね95%以上の学生が有益感をもっていることがわかった。所期の目的は、ほぼ達成されているものと考えられるが、なおいっそうの工夫を重ねるべきところがある。
研究指導
【観点1・2】学部・大学院
 学部・大学院の有効的な連携をはかり、教育・研究成果をあげるために、学部・大学院合同ゼミをおこなっている。学部学生および大学院学生自身の興味・関心に基づく分野から、問題・課題の発見と解決の方法を自主的・主体的に身につけさせることを心がけ、日本古典文学領域における、読んでおくべき基礎文献の探索、先行論文の理解、テクスト本文の読解、課題発見・解決の手続き、発表、等を通じて基礎力の涵養につとめ、臨床的応用場面への対応力を育成できるように日本古典文学の領域から基礎研究の指導をおこなった。学部学生と大学院学生の合同ゼミでは、発表の仕方、レジュメの作成の仕方を学部学生が学ぶ場とした。発表についての互いの意見交換があり、相互啓発の有効な場となった。大学院生が指導的立場に立つことによって院生自身の研究への自覚をうながすこととなり、学部学生は、院生の発表を通じて、多くのものを学んだ。また、現職員生の活用という観点から模範授業を試みた。本年度の学部ゼミ指導は、2年生3名、3年生3名、4年生1名。大学院ゼミ指導は、院2年生1名、院1年生1名であった。
 連合大学院では、博士課程学生の副指導教授として2名の研究指導に当たり、また、1名の者の課程博士論文審査にあたった。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】@『徒然草と本居宣長 ー青年期の受容と晩年の批判ー」(『教育実践学論集』第8号、2007.3、兵庫教育大学連合大学院学校教育学研究科)
学会活動への参加状況等
@6月および2月:上越教育大学国語教育学会
A3月:北陸古典文学研究会
 
<社会との連携>
社会的活動状況
4月:高田文化協会伊東汎賞選考委員会。
5月:伊東汎賞選評を『文藝たかだ』に掲載。
 

 
野 村 眞木夫(教 授)
 
<教育活動>
授 業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
○授業形態、学習(研究)指導法等の教育方法に関する取組状況
 学部の講義科目では昨年度までの「質問書方式」に換えて「ピアレスポンス」方式を導入し,これに,いわゆるKJ法とブレーンストーミングを交差させた活動を加味して,日本語の表現に関する理論と実践を兼ね備えた授業を実施した。評価も活動への参加状況,随時提出するワークシートと最終的に提出するレポートを総合して実施した。学校教育の現場と実社会にも有効な知識と実践知を供給することができた。演習科目では談話の録画資料の分析を行わせた。これは,学校教育現場でのプロトコル分析,授業分析等の基礎的な知見と技術を習得させることが目的である。他に,アイヌ語とアイヌ民族に係る講義をオムニバス科目の一部として展開している。
 大学院では,講義科目において現代日本語のテクストにおける機能と関係にも着目して検討を行った。言語学の基礎的な理論を中核としつつ,教室での授業分析の言語学的,かつ社会文化的な側面に言及している。機能主義的な方法,エスノメソドロジー,社会言語学などの交差において講義を展開するものである。演習科目では,録画資料につき一定の方法の適用による理解の可能性を検討した。これは言語学的な談話分析の具体的な手法の習得を目的とすると同時に,教室談話分析の基礎的な運用と技法への応用を可能とするものであり,毎年,現職教員または教職志望の学生の参加を得ている。
【観点2】教育の達成状況
 学部・大学院ともに実践に有効な理論と知見を講義科目であたえ,演習科目でその実践を展開する,という構成が一定の成果をもたらした。特に大学院では,講義科目での専門的・理論的な知見が,教科教育における授業分析に有効であることが現職教員による修士論文の成果において実証された。筆者の専門は教科教育ではないが,その講義・演習の内容が,授業実践,授業分析や学習材開発に極めて有用性の高いものであることが聴講学生の反応と修士論文において明らかになった。
研究指導
【観点1】学部
 必ずしも学校教育での教職を目的としない学生の指導が中核を占めたが,理論をいかに実証的または実践的な事態や客観的なデータに結びつけるかについて教授し,特に卒業論文において高い成果を得ることができた。
【観点2】大学院
 他研究室の学生を含め,教室談話分析・談話分析・作文教育などについて学界の理論的な現在の到達点を提示し,その水準を超える研究指導上の成果を得ることができた。すなわち,理論知は有効に実践知に結びつくのである。安易に実践知のみを追求すべきではなく,理論の基盤を修得した上で,相互にシステム化をはかる必要があるということが具体的な指導の事例として証明された。また,教職を前提としない大学院学生に対しては,理論のみならず,具体的なコミュニケーションの観察が常に要求されることについて自覚をうながしている。なお,今後は教育実践を指向しない学生が増加することが予測されるので,方針の転換が必要になるかと思われる。
その他の教育活動
 教育実習において,事前・事後に理論的な補足指導を行った。ただし,これについても学部と大学院を教育実習の観点で連携させておこなう実践場面演習の展開は,今後,参加学生の指向性から考えて極めて困難になることが予測される。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 講義・演習は,学習材開発と分析,談話(プロトコル)分析の基礎研究,方法的実践としての機能をはたすように方向付けている。専門領域は日本語学だが,応用言語学である言語教育学への展開を指向している。受講生の言語直観と内省的な疑問を学習材やデータとする方法により,参与の度合いを高めている。「ピアレスポンス」方式に対する学生の評価は好評であり,活動と理論の結びつきが理解できる,他の参加者の意見が参考になるなどのメリットが指摘されているが,改善の余地も少なくない。今後の検討を要する。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】@平成19年2月:「テクストのタイプと人称のタイプ −願望表現と二人称小説を視座として−」 『上越教育大学研究紀要』26 pp.15-29
発】@平成19年2月:「コミュニケーションの組織とテクストにおける人称 −人称の様相についての問題提起−」上越教育大学国語教育学会第52回例会(上越教育大学)
学会活動への参加状況等
【参加状況】
@平成18年5月13〜14日:日本語学会(東京学芸大学)シンポジウムで発言
A平成18年6月3〜4日:表現学会全国大会(高崎経済大学),その他
【役職等】
@表現学会理事
A表現学会ウェブページ担当運営委員
B日本語文法学会学会誌委員
C北海道大学国語国文学会評議員
D北海道大学国語国文学会編集委員
◎特色・強調点等
@今年度の発表論文口頭発表は,テクスト言語学のうち文体論・談話論の領域における問題提起をはたすものである。これまで焦点化されることの少なかったジャンルをとりあげ,一定の観点から分析したもの。
Aこれまでの発表論文やシンポジウム等での発言が他の研究者の著書・論文でしばしば言及され,筆者の主張に対する賛否両論が展開されている。今後,さらに主張を明確なものにする必要がある。
B所属学会の公式ウェブページを作成し,学会活動と学会誌の情報を中心に運営中である。
C個人のウェブページでは,研究領域の普及と研究情報の公開を継続して行っている。
 

 
小 埜 裕 二(助教授)
 
<教育活動>
授 業
 担当全授業において具体的なシラバスを作成し、ほぼシラバスどおりに授業を行った。成績評価についても、シラバス及び授業初回時に示した方針に基づき行った。教員養成を目的とする本学の学生に、小・中・高等学校の国語を担当する上での十分な能力・技能を身につけてもらうことを念頭におき、授業を展開した。また、読書に対する興味・関心を抱き、学校現場で児童・生徒に豊かな読書生活の習慣を授けることのできる力を身につけてもらうことにも配慮した。
研究指導
 学部学生には小・中・高等学校における国語の実践的能力を修得させるため、文学作品の解釈を中心とした共同討議を課外活動として毎週(金曜5限)行った。これは、担当の学生が毎回、資料を作成し、それに基づき、話す・聞くの活動を重視して展開したものである。この討議には大学院学生にも参加してもらい、学部学生への指導を通じ、より高度な読みの実践力と指導力を身につけてもらうことを図った。さらに大学院学生には、個々の研究テーマに即した個別指導を定期的に行った。また学部・大学院学生連携の国文学実地踏査研究を10月に行った。行き先は東京。
その他の教育指導
 北海道教育大学非常勤講師(集中講義「近代文学特論U」8月8日〜11日)
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 学部の授業では系統性に配慮したカリキュラムを組み、教員養成大学に相応しい文学テクストの基礎的な読解技能が段階を追ってマスターできるよう工夫した。大学院の授業ではテクスト読解のための専門的技能を身につけることが出来るよう様々なアプローチの方法を提示した。本年はとくに授業及びゼミを通じて、文学研究に関するテクスト理論の実践化に力を注いだ。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】@平成19年2月「義勇と犠牲−宮沢賢治「烏の北斗七星」論―」(単著)上越教育大学国語研究 第21号 pp.1-11
A平成19年3月:「川端康成「化粧」の解釈学」(単著)上越教育大学研究紀要 第26巻 pp.1-11 
発】@平成18年9月:金沢近代文芸研究会発表「三島由紀夫「憂国」について」
A平成17年10月:日本近代文学会新潟支部研究発表「川端康成「化粧」の解釈学」
学会活動への参加状況等
@平成17年5月20日,10月14日,12月2日、2月3日:日本近代文学会新潟支部例会参加,
◎特色・強調点等
 三島由紀夫および宮沢賢治に関する研究を中心に行った。従来、見落とされてきた観点を掘り下げる作業を通じ、それぞれの作家の文学世界に新しい光を当てることが出来た。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@平成18年11月16日:燕市市民大学講座講師(タイトル「宮沢賢治『注文の多い料理店』の世界」)
A平成18年11月22日:三条市成人大学講座講師(タイトル「泉鏡花「女客」について」)
B平成18年9月2日、16日、30日:小川未明文学館講座講師「未明童話の読み方・捉え方」
C平成18年9月:絵手紙コンテスト審査委員(「「前島密とふれあう」ふれあいハガキの会」主催)
 

 
 本 條 治(助教授)
 

 
中 里 理 子(助教授)
 
<教育活動>
授 業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
○授業形態、学習(研究)指導法等の教育方法に関する取組状況
 学部の講義科目では、日本語の基礎知識の習得と言葉の歴史への理解を目指して授業を組み立てた。適宜指名して意見を聞き、学生自身が主体的に参加できるようにした。また、日本語の常識や文学史の基礎知識などを確認する小テストを実施して、小学校・中学校の国語を担当する教員にふさわしい知識を身につけられるよう工夫した。学期末には講義を通して得た知識をまとめられるような試験を実施し、授業への参加のしかたと期末試験とを合わせて成績評価した。演習科目では、各学生が調査・分析を行った資料を作成し、それを各グループ内で発表し、班別討議によって考察と理解が深まるような授業形式にした。討議を経て考察が深まった内容をレポートとして提出してもらい、授業の参加のしかたとレポートとを合わせて成績評価した。
 大学院の講義科目では、国語科教育に携わる教員に必要と思われる日本語の知識を深めることを目的として、語彙・文法の面を中心にいくつかのトピックを選定して講義した。現職教員の再教育と教職を志す現役院生に対する国語の力を養うことを目標に、授業を組み立てた。適宜意見・感想を聞き、小課題を書いてもらい、院生自身が主体的に考え、授業に参加できるようにした。学期末に選択課題を出してその中からレポートにまとめてもらい、成績評価した。大学院の演習科目では、院生が考えながら参加できる形式を工夫し、授業を通して文章表現に対する意識を高める内容を組み立てた。グループ演習を取り入れ、話し合い等の活動を通して、実践的に文章表現力及び鑑賞力が身に付くようにした。
【観点2】教育の達成状況
 学部の講義科目では、日本語に関する基礎的知識のうち、特に語彙に関する事柄について、力をつけることができた。
 学部の演習科目では、授業の活動を通して、発表する力、話し合う力、資料をまとめる力を養うことができた。
 大学院の講義科目では、初等・中等教育の国語科における基礎的知識のうち、作文や読解に関わる文法事項、及び、言語事項でふれられる語彙の知識に関して力をつけることができた。
 大学院の演習科目では、文章表現について、表現者として気をつける点、鑑賞者として味わう点について、具体的に考えさせることができた。
研究指導
【観点1】学部
 学部学生については、卒業論文のテーマに関する文献を集めて先行研究を把握し、目的に添った研究方法を選択した上で自分の論を構築し、それをわかりやすく整理して学術的論文にまとめられるよう指導した。論文をまとめる過程で、情報を収集する力、調査したことを文章化し、わかりやすくまとめる力が養えるよう指導した。
【観点2】大学院
 大学院学生については、基礎的な知識の確認から始めて専門的な知識の拡充を図り、そこから得られた知識を研究内容へ応用・発展させて学術的論文にまとめられるよう指導した。論文をまとめる過程で、専門的な情報を収集する方法、それらを整理する力、論文にふさわしい文章にまとめる論理的な思考力、構成力が養えるように指導した。
その他の教育活動
@3年次ゼミ生に対して、教育実習期間中の実習指導を行った。
A4年次ゼミ生に対して、教育実習期間中の実習指導を行った。また、教員採用試験及び民間の採用試験の面接対策の指導、模擬授業の指導を行った。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 授業においても研究指導においても、学生・院生の自主的な取り組みを重視し、課題を与えて各人にそれについて考えさせ、自分の言葉で表現できるような指導を心がけている
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】@平成19年3月:「笑いを描写するオノマトペの変遷−中古から近代にかけて−」(単著)上越教育大学研究紀要 26巻 pp.1-14
学会活動への参加状況等
@6月3日〜4日 全国大学国語国文学会夏季大会出席
 

 
渡 部 洋一郎(助教授)
<教育活動>
授 業
 大学院修士課程の授業では,前年同様,1年生対象の「国語科教育演習B」において,教師の即時的な意思決定を把握する方法としての「刺激回想法」に関する講義を行い,実際の刺激回想記録に基づきながら,授業実施過程における教師の意思決定分析を実施した。また,そうした分析は,臨床的な教室場面での実際の授業を考える際にどのような点で意味があるのかも併せて検討し,量的な分析の手法である「領域分析」と組み合わせた新たな分析方法の可能性について受講者を含め考察を行った。「国語科教育特論B」では,大正時代における随意選題論争に関する資料をもとに,特に発想・着想過程に関わる作文指導法の検討を行った。また,現在の作文教育の課題に即して考えたとき,これらの論争はいかなる視点を提供し得るのかについても言及し,経験主義的な作文指導が内包する構造的な問題について考察を深めた。1・2年生対象の「実践場面分析演習」では,主な量的分析にかかわるこれまでの国語科教育の取り組みを概観した上で,修論作成に向けての実質的な分析法の策定を行った。
 学部2年生対象の「中等国語科指導法(課程論)」では,特に,中学校の授業指導に関わって,具体的な国語の説明文教材に基づき実際の授業展開や指導法の工夫を考えた。また,「限定条件」という視点を設定すると新たにどのような指導の可能性が開けるのかについても検討を行った。
研究指導
 学部では,先行研究の調査の方法とその整理・検討の方法を習得させるとともに,卒業論文作成のために必要な資料の考察の仕方について実地に指導を行い,説明的な文章教材の条件読みに関わる論文を完成させた。また,大学院では,修士論文の作成にあたり,教材文の特徴を導き出すためのマトリクスの開発を行い,それによって導かれた教材文の特徴を踏まえた新たな教材指導法を開拓し,その効果を確認した。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】@平成18年12月:「説明的文章教材を用いた批判的な読み解き−時間軸に基づく教材内容の解釈−」(単著)『教育創造』第154号通巻279号 高田教育研究会 48-53
業】@平成18年8月:「作文指導」『学習指導用語辞典』(単著)明治図書 219
A平成19年3月:「子供の興味・関心から出発する授業はなぜ難しいのか」(単著)『妙高市立新井中央小学校研究集録』妙高市立新井中央小学校 139-140
共同研究の実施状況
@新潟県教育委員会の研究指定を受けている妙高市立新井中央小学校と3カ年計画の3年目の研究及び実践指導
学会活動への参加状況等
@5月27〜28日:第110回全国大学国語教育学会出席
A8月 8〜9日:日本国語教育学会第69回例会出席
B8月 21日:日本読書学会第50回研究大会出席
C9月30〜10月1日:第回111回全国大学国語教育学会出席
D早稲田大学国語教育学会役員
E日本読書学会事務局長
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@4月〜3月:新井市立新井中央小学校研究会講師兼研究協力者
A8月:学校図書館司書教諭講習会講師
B10月:新潟県立教育センター研修講座講師
C10月:上越国語連絡協議会秋季大会講師
 

 
迎   勝 彦(講 師)
 
<教育活動>
授 業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
○授業形態、学習(研究)指導法等の教育方法に関する取組状況
 学部においては一斉授業の形態をとった。この授業形態の問題点を解消するため、受講者の発表の場や話し合いの場を随時設けるとともに、教材の工夫(配布資料・ワークシート・音声教材の工夫)を中軸とした指導法の見直しを随時行った。また、授業内容は教育実習を含め、教育実践場面に適用できるものとなるよう配慮した。なお、毎回15分程度の時間を使い、教員採用試験(中学国語問題)と関わった課題の検討を行った。これには国語科教員としての資質と能力を高めるとともに、教員採用試験対策としての意味も持たせている。受講生の反応はおおむね良好であった。大学院においては一斉授業だけではなく、適宜討論を交えるなどして、講義及び演習が、受講者相互の情報交換、意見交流の場となるようにも配慮した。また授業分析・研究を扱う実習として「インタビュー活動」(受講者相互の教育観・教育理念をインタビューし合う)を構成し、受講生のニーズに即応した授業構成に留意した。ストレートマスターにとっても現職派遣院生の教育観や教育理念を学び、感じることのできるよい機会となった。
○成績評価法に関する取組状況
 評価については、学部、大学院ともに成績評価基準を明示して厳格な成績の評価に努めた。
【観点2】教育の達成状況
 良好。学部学生、大学院生ともに、社会に貢献する人材育成を図るという点からみて、高い付加価値を身につけさせることができたと考える。これは、授業後のアンケートやレポート、感想などから読み取ることができる。学部学生については特に、国語科教材の検討と開発を行う能力と資質を重点的に高めることができた。大学を卒業し、実際に授業を行う場合、この教材を読み取る能力や開発する能力は即戦力として必要とされるものである。大学院生については特に、「小・中学校授業の観察、分析、評価」という点において臨床的な実践力を習得させることができた。インタビュー実習を通して「学習者の考えを知る」ことの方法、知見をある程度寄与することができたと考える。今後は、国語科の授業を通して、主体的・能動的な話し手、受容的な聞き手を育てる教員の養成を図り、さらに、教員自身がコミュニケーション能力を身につけるように指導したい。コミュニケーション能力を養う有効な方法に「話し合い活動」がある。話し合いは、狭義の話し合い活動に加えて、読む活動における読みの交流、書く活動における構想段階の交流など、様々な場面で効果的な活動であり、授業内容を深めると同時に適切なコミュニケーション能力を養うことができる。話し合いを円滑に進めるために必要な知識・技能を伝え、コミュニケーション能力を育てる教員を養成したい。また、よりよい話し合いのあり方を考えることにより、教師自身のコミュニケーション能力も育成できると考える。児童・生徒との関わり、他教員や保護者、地域との関わりなど、様々な人間関係の中で、円滑にコミュニケーションを図れる教員の養成を目指したい。
研究指導
【観点1】学部
 学部の指導においては、国語科教育に関わる臨床的な実践力を習得させるために、主として、@作文学習指導の歴史的検討と臨床的研究のあり方、A教育評価における「主観的評価」と「客観的評価」の比較とその方法、B授業分析の方法に関わる専門性を高めることをねらいとした研究指導を行った。
【観点2】大学院
 大学院の指導においては、現職派遣教員のニーズに応えるよう、より高度な教育実践力を修得させることをねらいとした。また、教育実践場面を対象とする「研究法」「分析法」を中軸とした専門的知識の教授を行うとともに、具体的実践的な作業・実習を重視した。修士論文制作に関わる研究指導では、話し言葉教育(話し合い活動・インタビュー活動)及び文学教育(読みの過程分析・読者反応理論)を中軸にして行った。
*現職派遣大学院1年生1名の修士論文指導及び現職派遣大学院2年生4名の修士論文(平成19年1月提出:以下の4論文)指導を担当した。
「モニターの役割に着目した『聞くこと』の実践的研究〜第三者としての聞き手を育成することの可能性〜」
「学びを生み出す話し合い授業のデザイン」
「文学的文章の読みの過程分析−メタ認知概念を導入した学習支援の検討を通して−」
「〈像〉の形成と表出を促す指導法の研究−読者反応理論に基づく授業の構築−」
その他の教育活動
(1)「特別教職講座(国語)」の講義担当
 国語科の指導内容を「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」に分けて説述するとともに、小学校受験希望者に対する指導を行った。また、教員採用試験に関する受験指導および面接対策を行い、面接時の応答に関する指導、集団討論における「話し合い」の進行のあり方やその方法に関する指導も併せて行った。希望者に対する個別指導も適宜行った。
(2)教育実習、教員採用試験に関する学生指導・支援
 小学校教育実習及び中学校教育実習の事前指導と事後指導を行い、機会をとらえた実習生への助言・指導に努めた。今後も教員を志す学部学生・院生が教職に就けるような支援をしていきたいと考えている。
(3)附属小学校における研究会実施に係る指導・助言
@平成18年度上越教育大学附属小学校研究協力者
  附属小学校研究協力者として、小学1年生の教育実践(「国語科」)に関わる指導と研究協力を行った。
A平成18年度上越教育大学附属小学校アクションリサーチ共同研究者
 附属小学校共同研究者として、小学1年生の教育実践(「国語科」)に関わるアクションリサーチを実施した。
B上越教育大学附属小学校2006年「研究会」ミニ講演会講師
 上越教育大学附属小学校主催:2006年「研究会」(平成18年6月22日・23日に開催)において、研究協力者として国語科授業に関する講演(演目:「ことばを媒介とする学びとそのとらえ」)を行った。
(4)独立行政法人国立病院機構新潟病院附属看護学校における特別講義講師
@講義:「『聞く、話す』−もっとラクに会話をするために−」(4時間):平成18年7月10日
A講義:「『聞く、話す』−よりよいコミュニケーションを目指して−」(4時間):平成18年7月18日
B講義:「『聞く、話す』−実践トレーニング−」(6時間):平成18年10月27日
(5)独立行政法人国立病院機構新潟病院における院内講演会講師
@医療サービス向上に関する講演:「あなたはどう言いますか?−よりよいコミュニケーションのために−」:平成18年11月24日
A医療サービス向上に関する講演:「あなたはどう言いますか?−よりよいコミュニケーションのために−」:平成18年12月1日
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 学部学生の指導にあたっては、教育実習対策と教員採用試験対策の二点を重視した。前者については、国語科における教材研究の方法、学習指導のあり方を中軸として基礎的な点から指導、助言を行っている。後者については、国語科の教科内容に関する情報提供を基本としながら、面接・討議討論に関わる指導、小論文執筆に関わる指導、模擬授業対策を適宜行った。これらは、教育実習対策及び受験対策としてのみ機能するものではなく、学生自身が実際に教職に就き、実践的、臨床的に教育活動を行っていく上で重視されるべき点であると考える。学生個々において、その重要度や有効性に異なりを見せるため、今後は個々の学生のニーズにあった情報提供、各種能力の育成を念頭においた指導を行っていくようにしたい。大学院生の指導にあたっては、基本的に「授業研究」「授業分析」の基本的考え方(理念や理論)の教授と臨床場面を想定した具体的実際的な研究の方法、分析の方法に関する意見の交流、情報の交換を重視した。これは、大前提として修士論文研究の基盤を与えることをねらいとしたものであるが、現職派遣教員が、これまでの教育実践を振り返り、今後の教育実践のあり方を考えていく上での指針を与える上で意義があったと考える。この他、独立行政法人国立病院機構新潟病院附属看護学校及び独立行政法人国立病院機構新潟病院での「聞く、話す」をテーマとした講義や講演を行い、研究成果を実践場面に活用した。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】(1)平成19年3月「教室における言語行動をどのように見取るか−授業研究に基づいた指導方略の検討−」(単著)『岡山大学国語研究』第21号 岡山大学教育学部国語研究会
共同研究の実施状況
(1)本学附属小学校研究協力者
 附属小学校研究協力者として、小学1年生の教育実践(「国語科」)に関わって共同研究を実施した。
(2)本学附属小学校アクションリサーチ共同研究者
 附属小学校共同研究者として、小学1年生の教育実践(「国語科」)に関わるアクションリサーチを実施し、共同研究を行った。
学会活動への参加状況等
(1)平成18年6月17日:「上越教育大学国語教育学会」6月例会参加
(2)平成18年8月21日:「日本読書学会第50回研究大会」参加
(3)平成19年2月10日:「上越教育大学国語教育学会」2月例会参加
◎特色・強調点等
 平成18年度より本学附属小学校の研究協力者及びアクションリサーチ共同研究者として、小学1年生を対象とした授業構想、臨床的検証を行った。教育現場と連携して学習指導のあり方やその方法論を検討し、その成果を地域や学校現場へ還元するためにも、理論と実践的試行を相関させた研究の進展を目指し、実際に授業実践を構想していく必要がある。なお、実践場面を対象にした授業分析を行うことにより、以下のことを重視した。文章理解や作文など様々な国語科の活動に必ず取り入れられる「話し合い活動」を中心とした授業の分析である。授業の記録をデータ化した資料を分析し、そこから問題点を見出すとともに、学習者の認知・情意的側面を把握するために学習者の内面を探る方法(刺激回想法、インタビュー法、質問紙法による内観分析)を採っている。今後は、聞き手の発話解釈を行為的側面から分析するために、語用論とくに関連性理論を援用した分析法を確立し、これらの手法に基づいた分析を実施することで、量的・質的な分析システムを統合的に構築していくようにしたい。さらに、教育現場を対象とした授業分析を重ねていくことにより、小・中学校の実態に即応した学習理論の構築とこれに基づく指導法の考案と検討を行っていく必要がある。指導法の考案については、話し合い活動を成立させるための教材開発、実際の話し合い活動を効果的に進める指導のあり方、話し合い活動を振り返り次の活動へつなげる指導のあり方、という3点から考察を進めていく。「話し合い」過程の実態分析に基づき、これを効果的に進めるための指導方法を具体的に提案したいと考えている。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)独立行政法人国立病院機構新潟病院附属看護学校における特別講義講師
@講義:「『聞く、話す』−もっとラクに会話をするために−」(4時間):平成18年7月10日
A講義:「『聞く、話す』−よりよいコミュニケーションを目指して−」(4時間):平成18年7月18日
B講義:「『聞く、話す』−実践トレーニング−」(6時間):平成18年10月27日
(2)独立行政法人国立病院機構新潟病院における院内講演会講師
@医療サービス向上に関する講演:「あなたはどう言いますか?−よりよいコミュニケーションのために−」:平成18年11月24日
A医療サービス向上に関する講演:「あなたはどう言いますか?−よりよいコミュニケーションのために−」:平成18年12月1日
(3)上越教育大学エネルギー環境教育研究会運営委員
 上越教育大学エネルギー環境教育研究会((財)社会経済生産性本部エネルギー環境情報センターによりエネルギー教育普及事業拠点大学に選定されたことを受けて発足)の運営委員及びカリキュラム開発班チーフを務めた。研究テーマは「小・中学校における地域社会との連携をはかったエネルギー教育・環境教育カリキュラムの作成」で、上越地区の実践校(小・中学校)6校及び地域企業・行政・NPOと相互に連携を図りながら研究活動を行った。
(4)平成18年10月14日:平成18年度「エネルギー環境教育研究フォーラムin新潟」(主催 経済産業省資源 エネルギー庁)参加及び大会運営
(5)平成19年3月25日:「エネルギー教育フェア2007」(主催 経済産業省資源エネルギー庁(財)社会会経済生産性本部・エネルギー環境教育情報センター日本エネルギー環境教育学会)参加及びブース展示担当
◎社会への寄与等
 「上越教育大学エネルギー・環境教育研究会」において上越地区を中心としたエネルギー・環境教育に関するネットワークづくり、情報収集、実践活動を行った。また、地域の小学校及び中学校との当該教育研究に関する連携(運営委員会・総会)を図った。平成18年10月には、経済産業省資源エネルギー庁が主催する「平成18年度 エネルギー環境教育研究フォーラムin新潟」の大会運営に参画した(本学において開催)。
 上記フォーラムは、エネルギー環境教育に関する社会の教育・研究に関するニーズに応えたといえる。また、エネルギー環境教育に関するネットワークづくりを実現させていくことにより、地域への当該教育についての関心や意識改革を図ることができたと考える。今後の課題としては、このネットワークをさらに広げていくとともに、充実を図ることである。