【言語系教育講座(外国語)】
 

 
加 藤 雅 啓(教 授)
 
<教育活動>
授 業
 学部:「コミュニケーション英語」では,18年度から新たに導入されたマルチメディア教室を活用し、リスニングとスピーキング能力の育成を重点目標とし,英語によるスピーチと質疑応答,及びペアワークやグループワークを通して積極的にコミュニケーションを図る態度の養成に工夫を凝らした。また,英語によるコミュニケーションが得意でない学生に対しては,本人の能力と興味に応じた補助教材を準備して学習への動機を高めると同時に,基礎的な英語の知識の習得,及び理解力の向上に意を尽くした。「英語学概論」では英語学の全体像を概説した上で,談話文法理論,機能文法理論の観点から英語を理解するための基本的な知識の体系である英文法をとらえなおし,「覚える文法」から「考える文法」,「コミュニケーションに役立つ英文法」への橋渡しを行った。「英文法」の授業では英字新聞や洋画などの生きた英語教材を活用しながら「母語話者の言語直感に迫る文法」の構築を目指した。いずれの授業においても、本学講義支援システムを活用し、学生にはレポート、及び振り返りシート」を提出してもらい、これに対してコメント、及び「振り返りシートの振り返り」を作成して講義支援システムにアップすることにより、学生と教員による双方向のフォローアップを行い、学習項目に関する理解を深めた。
 大学院修士課程:「談話文法特論」の授業では,教育現場における英文法指導について,談話文法理論における最近の研究成果を織り込んで内容を構成した。従来の記憶中心の学校英文法を脱却し,生徒にとって身近な話題を英字新聞やWWWの中に求め,コミュニケーションを重視した実践的な英文法指導への取り組み方を工夫した。「英語学演習」の授業では,語用論,特に関連性理論における最新の言語理論を取り込み,認知とコミュニケーションの観点から発話の理解,とくに橋渡し指示に関する理解を高める工夫を行った。これらの知見を応用し,談話における指示詞に関する実践的な教材開発を行った。
 学部生の成績評価については,積極的にコミュニケーションを図る態度という観点からスピーチ内容・プレゼンテーション,質疑応答,およびレポートを重点的に評価した。大学院生については,教室で実践できる内容を盛り込んでいるかという観点から期末レポートを評価した。
研究指導
 学部では従来の記憶中心の英文法指導の不備を指摘しながら,「英語ではなぜ同じ意味内容を伝えるのに複数の言い方が存在するのか(第3文型と第4文型,能動文と受動文)」などの「生徒のなぜに答えることができるような英文法指導」を実践し,大量の生きた英文データを与えて臨床的実践力の養成を行った。
 修士課程では,教育現場において最新の言語理論がどのように応用できるかという観点により,「関連性理論の枠組みによる実践的コミュニケーション能力の育成」,「認知言語学による未来表現の分析と応用」等のテーマで実践研究を指導し,中学校・高校の英語教育現場におけるより高度な臨床的実践力の養成を行った。
博士課程では,副指導教官として高度な教育実践学を念頭に置いて博士論文指導を行い、「博士候補認定試験」を実施した。(平成18年4月2日)
その他の教育活動
 平成18年5月〜6月, 教育実習における学生指導を行った。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 本学講義支援システムを活用し、学生には毎週レポート、及び振り返りシート」を提出してもらい、これに対してコメント、及び「振り返りシートの振り返り」を作成したうえで講義支援システムにアップすることにより、学生と教員による双方向通信による授業のフォローアップを行った。学生は振り返りシートを作成するにあたり、授業を振り返ることにより学習内容を確認することができ、教師は学生の振り返りシートを読むことにより、学生の理解度を把握することが可能となった。さらに、教師による「振り返りシートの振り返り」を次の授業の冒頭で振り返ることにより、他学生の疑問点を自らの問題としてとらえ直すことが可能となり、学習項目を一層深く理解することが可能となった。また、英語によるスピーチ,ペアワークやグループワークを通して,積極的にコミュニケーションを図る態度の養成に工夫を凝らした。さらに,「覚える文法」から「考える文法」,「コミュニケーションに役立つ英文法」、「体にしみ込ませる英文法」への橋渡しを行い,英字新聞や洋画などの生きた英語教材を活用しながら「母語話者の言語直感に迫る文法」の構築を目指した。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】@平成18年11月:「談話における右方移動構文−統語的複雑性と情報価値」 単著 International Journal of Pragmatics, vol.16: 47-70. 日本プラグマティックス学会
A平成18年11月:「談話における定名詞句表現の解釈とその指導−関連性理論によるアプローチ」共著 International Journal of Pragmatics, vol.16: 71-86. 日本プラグマティックス学会
B平成19年2月:「談話における右方移動構文とその指導」単著 上越教育大学研究紀要 第26巻43-64.
C平成19年3月:『談話における右方移動構文に関する総合的研究−関連性理論、認知文法による考察−』 単著 平成17〜18年度科学研究費補助金(基盤研究(C)) 課題番号 17520322 研究成果報告書
共同研究の実施状況
@平成18年度継続中:『公立小学校への英語科導入に関する包括的開発研究』 (代表者:斎藤九一 科学研究費補助金(基盤研究(B))(平成15年度―18年度)
学会活動への参加状況等
@平成18年7月:上越英語教育学会の企画・運営(事務局長)
A平成18年10月:日本プラグマティックス学会出席(理事,評議員,編集委員)
B平成18年11月日本英語学会出席(評議員)C平成18年12月日本語用論学会出席,D学会誌International Journal of Pragmaticsの編集
◎特色・強調点等
 最新の言語理論である関連性理論を取り上げ,この理論が学校教育における英語学習にどのような形で応用できるかという観点から中学校英語教諭と共同研究を行い,定名詞句表現の解釈についてこれまでに例を見ない中学校英語教材を開発した。
 
<社会との連携>
社会的活動状況・社会への寄与
@新潟県立小出高等学校において出前講座「情報構造の話し」を行った。(平成18年5月31日)
A新潟県立柏崎高等学校において出前講座「情報構造の話し」を行った。(平成18年11月20日)
B長野県立長野西高等学校において出前講座「情報構造の話し」を行った。(平成18年12月1日)
C日本英語検定協会面接委員として地域における中学校・高等学校・大学の生徒・学生の英語コミュニケーション能力向上に寄与した。
D社会福祉法人御幸会理事会・評議会に出席した。(平成19年2月17日)
 

 
齋 藤 九 一(教 授)
 
<教育活動>
授 業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
○授業形態、学習(研究)指導法等の教育方法に関する取組状況
 学部の異文化理解科目「コミュニケーション英語」では、時事的な内容のテキストを採用して、今日的話題の英文を読む訓練を行った。授業形態は、毎回受講生を指名して英文の音読・内容把握・設問回答の作業を行わせるものであった。発音や読解の間違いを直すのはもちろんだが、いわゆる頭ごなしに訂正するのではなく、なぜそのような発想になったかを共に考え、学生の年齢に相応しい一般常識を踏まえながら、より正確な読みに至るように進めた。
 また、学部の言語系英語コース専門科目では、『イギリス小説入門』(英文学概論)と、『英詩鑑賞入門』(英文学演習)をテキストにして講義・演習を行った。
 大学院では、実践場面分析演習において、メアリー・シェリー『フランケンシュタイン』の教材化に関する院生の発表・討議の指導を担当した。
○成績評価に関する取組状況
 成績評価は、いずれの場合も、当該学期で学んだ教材のほぼ全体を範囲とする期末試験と、普段の出席状況を総合的に判断して行った。
【観点2】教育の達成状況
○進学や就職などの卒業(修了)後の進路の状況から判断した取組状況
 学部の卒論ゼミで指導した2名のうち1名が臨時採用によって教職の道を歩き、もう1名は公務員に採用された。
研究指導
【観点1】学部
 卒業研究に直結するものとして、「英米文学基礎セミナー」ではジェイン・オースティン『高慢と偏見』および岡倉天心の英文著作 The Book of Tea、そして「英米文学応用セミナー」ではアン・ブロンテの『アグネス・グレイ』とチャールズ・ディケンズの『二都物語』について、それぞれ英語原文による精読を指導した。「応用セミナー」の成果は卒業論文として結実した。
【観点2】大学院
 修士論文に直結するものとして、「英米文学応用研究セミナー」ではジェイン・オースティンの『分別と多感』について原文による精読を指導した。「応用研究セミナー」の成果は修士論文として結実した。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 学部の「コミュニケーション英語」では、時事的な話題を取り上げるのに加えて、断片的な英字新聞の抜粋では扱うことができない文化的・歴史的背景を記述したテキストを使用するように配慮した。具体的には時事問題を平易な英語で記述したテキストを読むことに加え、日々発生するニュースを伝える英語記事のコピーを時折配付して講読した。このような教材の併用によって学生の興味を引き出し、彼らが自学自習する動機づけになればと思う。また、将来、小学校等で総合学習・国際理解教育を担当する可能性のある本学学生にとって意義あるものと考えている。
 学部の「英文学概論」では、イギリス小説の流れと著名な作家・作品に関して、具体的なテキストの抜粋の読解も含めて講義した。また、「英文学演習」ではイギリスの詩の流れを解説し、主要な詩人の作品の読解を行った。「英米文学基礎セミナー」と「英米文学応用セミナー」では19世紀イギリス小説から定評のある作品を選んで、テキストを丁寧に味わうことを指導した。
 大学院の実践場面分析演習においては、有名でありながら実際に読まれることは少ない『フランケンシュタイン』の教材化を取り上げた。院生に関心を持ってもらえたと思う。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
 19世紀イギリスのディケンズとトロロプの小説における心理的な描写と当時の心理学的言説に関する文献を渉猟しているが、 当該年度においては本学附属中学校長職を兼務した多忙さゆえに特に記すべき成果はなかった。ただし、近刊予定の『ディケンズ鑑賞大事典』(ディケンズ・フェロウシップ日本支部編)にディケンズ『マーティン・チャズルウィット』論を寄稿してある。
共同研究の実施状況
@公立小学校の英語科導入に関する包括的開発研究 代表者:齋藤九一 科学研究費補助金
学会活動への参加状況等
〔参加状況〕
@6月3日:全国国立大学附属学校校長会総会(お茶の水女子大学)出席
A8月24日:全附連校長会研究会(東京学芸大学主管)出席
B10月20日:日本教育大学協会・全附連・全附P連・北信越地区研究協議会(上越教育大学附属中学校主管)実行委員長
◎特色・強調点等
 ディケンズを中心とする19世紀ヴィクトリア朝のイギリス文学を専門とし、近年、ディケンズとトロロプという同時代の二人の小説家のいわゆるインターテクスチュアルな関係、および、伝記的な相互関係に関心を寄せて研究している。先行研究がほとんどない分野ゆえの苦労と喜びの伴う作業である。
 

 
平 野 絹 枝(教 授)
 
<教育活動>
授 業
 学部の授業では最近の研究成果を取り込んだ形で、効果的な英文読解方略を指導し、異なった読解問題形式にふれさせて学生の多様な読解能力を引き出すことを心がけた。音読、黙読を練習させ、繰り返し読みの効果を強調した。このような英文の読解力向上のほかに、最近のアウトプット理論や方略使用によるコミュニケーション能力の育成に努めた。動機付けにビデオ、CDを使用して、英語の歌に親しませた。時々、日本人にとって、容易でない発音の指導も心がけた。ペア・ワークで、与えられた課題の相互評価をさせ、クラスの前で発表させることで、学生同士のフィードバックを保障した。アウトプットを強いることで、言語習得の育成をめざし、時には課題文の暗唱テストを課しインプットの重要性を理解させるよう配慮した。「中等英語科指導法」の授業では、限られた授業時間で教授法理論などを中心に理解させることに腐心した。また英語力の向上のため、教授法理論に関する英文を読ませたり発音の指導も行った。大学院では、ESL/EFL及び応用言語学の理論と指導、多角的な視点にもとづいた教材分析の理論研究と実際に焦点をあてた。理解の確認のチェックのため、時々小テストを行い、その後グループやペア・ワークで、問題点を討議させて、インタラクションをはかった。また、英語教材分析結果のレポートを相互に発表させ、コメント、質疑応答の時間を設けた。場合によってはレポートの加筆修正を求め再提出させた。大学院の授業では、特に英語教育学に関する諸理論をわかりやすく解説することに腐心した。学生のなかには、学外の学会発表を行って英語教育指導の改善や研究の発展に貢献した。
 成績評価に関しては、出席、日常点、課題、試験結果にもとづいて総合的に評価した。
研究指導
 第2言語習得理論,読解理論、方略、テスティングに関する文献の指導、データの収集、分析法,論文の構成,展開,考察の仕方について、国内外の文献を通して日本語と英語の指導を行った。学部3年生と修士課程1年次生には、単独指導も時にあったが、主にグループ指導で、また、修士課程2年次生には一人一人単独に密で丁寧な研究指導を行うよう心がけた。修士論文執筆の指導では、データ分析とその結果及び考察の正確で明確な記述及び英語の論理構成にもとづいた論文構成になるように、章ごとに提出させ指導した。
 学部、大学院(修士)計4名の論文の指導を行った。連合大学院(博士)では1名の学位(学校教育学)の審査に関与した。
その他の教育活動
 平成18年4月〜19年3月:新潟大学(学部)非常勤講師として「英語1」を担当した。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 最近の英語教育学の理論を取り入れ、英語の理解と産出のバランスを様々な、一斉指導、ペア、グループワーク活動のなかで考慮することによって、学生が効果的に相互的に、英語力の向上や専門知識の獲得をめざせるよう、自主的に課題に取り組み研究する力を培うことができたと考える。今後、限られた授業時間内で個に対応した指導をどのようにしたらよいかが検討課題である。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】@平成19年3月:Recall protocols as a measure of reading comprehension: Advantages and disadvantages(単著)上越教育大学研究紀要 第26巻 pp. 79-86
A平成19年3月:『日本人英語学習者の読解力テストの妥当性の検証及び影響要因に関する研究』(単著)平成16年度〜平成18年度科学研究費(基盤研究(C)(2))研究報告書 pp.1-55
学会活動への参加状況等
@6月24日〜25日:第36回中部地区英語教育学会和歌山大会出席
A8月5日〜6日:第32回全国英語教育学会高知研究大会出席
B9月8日〜10日:大学英語教育学会第45回全国大会出席
C大学英語教育学会評議員、中部地区英語教育学会運営委員、編集委員
◎特色・強調点等
 読解テストの妥当性の検証があまりなされていないリコールテストに関する研究で、目標言語学習経験年数、性差、読解力、学力、の諸要因がリコールテストのパフォーマンスとその妥当性に及ぼす影響や方略との関係について継続的な研究を行っているが、これまでの先行研究では例がほとんどなく、テスト作成、評価、読解教材開発、読解指導の改善、に貢献する点で、興味深い示唆があり、独創的であるといえる。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@英語スピーチコンテスト審査員
 

 
前 川 利 広(教 授)
 
<教育活動>
授 業
学 部
 一般の英語教育では、大きく分けて二通りの方針で英語教育を実施した。
1) 20人強のクラスにおいて、基本的な英語力をつける指導をした。4技能のうち特にリーディングの指導に焦点を合わせた。教材は英字新聞から読みやすいものを毎回配布して使用し、トピックが新鮮であった分、やる気を起こさせたようである。
2) 40人強のクラスにおいては、アメリカ合衆国の歴史、地理、文化に関する資料を使用し、アメリカ文化の理解を促すとともに、英語を読む力の涵養を目指した。
3) その他、英米文学講読、米文学概論、アメリカ小説講義等の講義をした。これらは毎年とても好評であり、米文学概論では授業で紹介した小説を競って読むという現象が3年生の間に発生したと聞く。
大学院
(前期): 英文を読む力をつけることと、自然について書かれた上質の文化論を読み、アメリカ文化についての洞察を得ることの二点を主たる目的とした。使用したテキストは、Anne Morrow Lindbergh, Gift from the Sea.である。 内省的な内容の読みやすいエッセイであり、とても好評であったことがアンケート調査からわかる。
(後期): 現職の高校・中学英語教員を含む5人が受講した。短編小説を教材に使用したが、かなり分かりやすく奥の深い作品を選んだため、とても喜ばれた。
研究指導
 ゼミで指導した内容は、次の通り。
1) 4年次生は4人在籍した。卒論の対象として、Montana 1948とThe Graduateを選んだ。テーマをどのように見つけ、どのように論理を積み上げ、どのように傍証を加えて論文にするかということを指導したのは例年のとおりだが、この年はことのほか論文の内容が興味深かった。卒論発表会では聴衆の理解を勝ち得て、好評であった。
2) 3年ゼミ生はJack London 著、The Call of the Wildを読んだ。作品の面白さに満足感を抱いていたが、英文は若干難しかったようである。
3) 修士課程では学生にとっても教員にとっても非常に苦労の多いゼミとなった。英語力自体をあげることと論文の執筆指導という難事が立ちはだかったが、なんとか完成にまで至らせることができた。学生はかねてから念願のフライト・アテンダントとして航空会社に就職し、修士課程修了とともに夢をかなえて、忘れがたい年となったようである。今後の幸せを祈るばかりである。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 4人全員が中学・小学校の教師に採用された。このゼミだけで大学学部全体の教員合格者のうち13分の1程度を占めた。ここに至るまでには、日々読ませる・書かせるというゼミでの指導は勿論だが、それぞれの学生に応じた小論文の指導、面接の指導など効果があったようだ。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】@「長編の中の短編小説&8212;“One Trip Across” ”The Tradesman’s Return”」(上越教育大学紀要 第26巻)
学会活動への参加状況等
5月:日本英文学会
6月:International Hemingway Society
12月:日本ヘミングウェイ協会
◎特色・強調点等
 近頃の関心は長編小説と短編小説の相違にあり、さまざまな作家による短編小説と、さまざまな批評家による研究論文を集中的に読んでいるところである。問題点は主として創作方法の違いにあることは明確だが、具体的技法の違いを明らかにするとなると非常に難解である。また短編小説にもさまざまあり、その種類は作家の数だけ存在するといってもよい。結果をまとめるまでにはいましばらく時間が必要である。
 
<社会との連携>
 出前講座の注文が4件あり、そのうち糸魚川高校、高田南城高校、情報国際高校でアメリカ文化と歴史について1時間半ずつ話した。後日高校側から送られてきたアンケートによると、高校生にはとても喜ばれたことがうかがわれる。50人から80人の前で90分間、大きな声でしゃべるのは猛烈に疲れ、喉を甚だ傷つける。今後の継続も考えてはいるが、件数を減らすことも考慮したい。
 公開講座で学外の市民対象に「アメリカ文学入門(1)」と題して授業を行った。千差万別の受講生がおり、興味深かった。終了後のアンケートでは好評であったものの、英語でなく翻訳を使ったことには不満が残ったことが記されていた。翌年は原語で試みることにする。
 

 
石 M 博 之(助教授)
 
<教育活動>
授 業
 学部の「コミュニケーション英語」(1年次・2年次)の授業では、ポピュラーな歌を扱ったテキストを使用して、英語に親しませながらリスニングやリーディングの技能に焦点をあてた。そして、基本的な英語力の養成を目指した。最新のニュースに関する記事(時事英語)も扱った。事前にプリントを配布して予習しやすいようにした。授業では、オーバー・ラッピングの手法を取り入れたりして、簡単な言い回し(フレーズ)を表現できるまで指導した。「小学校英語教育概論」では、理論を概観させながら実際のアクティビティ(ゲームの活動・歌の活動)を体験するような授業展開をした。
 大学院で担当した授業では、専門的な理論的な知識(特に、アジアの小学校英語教育)を身につけさせると共に、その知識を応用して実際に想定した場面で支援・指導できる力を育成するようにした。特に、「小学校英語コミュニケーション演習」では、実際に模擬授業を試みさせた。
 以上の取り組みについてはおおむね達成されたが、授業の内容については更に精選をして内容がわかるようにする必要がある。
研究指導
 (学部)3名の卒業論文を指導した。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 学部の小学校英語に関する授業では、体験的な活動を多く取り入れた。将来教員になったとしても、基本的な指導ができるようにした。
 大学院では、授業を受講することによって、学校教育の枠組みで多様性のある小学校英語の教育実践が可能である。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
業】@平成18年5月:「『楽しく』『ためになる』英語活動の事例−新潟県糸魚川市立西海小学校の英語活動を基にして−」『秋田大学教育文化学部附属教育実践総合センター報告書』, pp.13-20,pp.27-46.
発】@平成18年7月:『「英語活動」の効果-児童の「聴解力」の向上に関する事例研究−』第6回小学校英語教育学会栃木大会
A平成18年8月:『日本人大学生の英語学習動機づけの検討−自己決定理論に基づいて−』(共)第32回全国英語教育学会高知大会
共同研究の実施状況
@小中連携を見据えた英語カリキュラム・教材研究プロジェクト(ICT Project): 旺文社ELT事業部
学会活動への参加状況等
@平成18年6月17日〜18日:児童英語教育学会(JASTEC)第27回全国大会出席
A平成18年6月23日〜24日:第36回中部地区英語教育学会和歌山大会出席
B平成18年7月29日〜30日:平成18年度小学校英語教育学会(JES)宇都宮大会出席・発表
C平成18年8月4日〜5日:第32回全国英語教育学会高知大会出席・発表
D平成18年12月9日:マザーグース学会第9回全国大会(茨木市)出席
E平成19年1月14日:ラボ教育公開シンポジュウム「子ども英語教育の未来を考える」出席
F平成18年度小学校英語教育学会紀要編集・査読委員
◎特色・強調点等
 小学校英語に関しては、児童の聴解力の向上、及び小学校英語に向けての教員養成や教員研修のあり方について検討しているが、特に、小学校英語と聴解力の関係を提示したという点ですぐれたものといえる。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@平成18年4月〜平成19年3月:糸魚川市立西海小学校英語活動教育実践(出前授業)指導(計35回実施)
A平成18年4月〜平成19年3月:糸魚川市立上早川小学校英語活動教育実践(出前授業)指導(計30回実施)
B平成18年7月〜平成19年3月:文部科学省地域サポート事業石川県かほく市英語活動協議会顧問・6回の英語活動授業や指導助言、及び協議会での指導助言と講演を実施
C平成18年5月8日:NHKラジオジャパン・フォーカス「日本の小学校英語の必修科について」という題で、20ヶ国語で糸魚川市立西海小学校の英語活動の発信(本人が一部出演)
D平成18年6月12日:新潟県南魚沼市立広神西小学校で出前授業、及び英語活動校内研修会講師
E平成18年11月20日と平成19年2月15日:富山県朝日町さみさと小学校で英語活動の出前授業2回
F平成19年3月5日:新潟県妙高市立新井北小学校で英語活動の出前授業、及び英語活動校内研修会講師
G公開講座「公立小学校における『英語活動』の進め方入門」合計6回 9時間
H平成18年11月:NPO小学校英語支援協会(代表:伊藤嘉一)理事
◎社会への寄与等
@公立小学校での学級担任とのティーム・ティーチングによる出前授業は、学校関係者から教員研修の1つのあり方として実践的かつ具体的であると評価を得た。教員研修等も、小学校英語教育・英語活動に関する理論の提示にとどまらず、具体的な指導方法がわかったと評価を得た。
ANHKラジオジャパン・フォーカスにおいて20ヶ国語で糸魚川市立西海小学校の英語活動が世界に発信され、多くの反響を得ることができた。
B新潟日報、上越タイムズ、越南新聞、越南タイムズ、北国新聞、北陸中日新聞で出前授業実践や教員研修内容が紹介され、地域から評価を得た。
 

 
大 場 浩 正(助教授)
 
<教育活動>
授 業
(学部)「コミュニケーション英語」(1・2年生)においては,リスニング,リーディング,ライティングの3技能と語彙に焦点をあてた授業を展開した。第1回目の授業において,受講学生の英語学習に関する意識等をアンケートにより調査すると同時に,授業全体の目的・目標,学習内容(計画),成績評価方法を詳細に解説した。また,毎回の授業では個々の活動に関して何のために行なうのか(何に役立つのか),どのように行うのかを明確にし,学習への動機付けを促し,自己評価やプリント等のチェックなどを通して(形成的評価として)その日の活動成果を確認した。学習の成果のみならずその過程を評価することを通して受講学生の学習意欲を高めるようにした。「中等英語科指導法(授業論)」でも同様に,学習内容や個々の活動の意義を明確にした。授業は全体を3期に分け,1期では英語の授業展開や指導案の作成の方法を解説し,2期では1期の内容を踏まえ,受講学生達が実際に1時間の授業を組み立て,模擬授業を行った。模擬授業後のディスカッションによって授業を観察する目が養えたのではないかと思う。3期には中学校現場の教員による講義を組み込み,学生の教職への動機付けを行った。教育実習や現場に出てから役に立つ英語指導の基礎技術を獲得させることに焦点をあてた。
(大学院)「英語科学習方法演習」と「英語科教育学習特論」では,目的・目標,学習内容,成績評価方法を明確にし,より高度な,そして,専門的な知識を獲得できるように,学生によるプレゼンテーションとグループディスカッション等を通して指導を行った(特に前者の授業)。また,英語指導の際に,直接的・間接的に役に立つ背景知識の獲得と自己の英語教育に対する考え方を形成させることに焦点をあてた(特に後者の授業)。毎回の授業後にはレポートを提出してもらいコメントをつけて返却した。
  
研究指導
 (学部)国内外の専門誌に掲載された論文や専門書の講読を通した専門的知識の獲得(文献研究)とその知識に基づく実証的な研究(実験研究)を通して英語教育に関する洞察や臨床的な実践力を深めさせ,卒業論文を完成させるための指導を行った。
 (大学院)より高度な専門的な知識,および臨床的な実践力を修得させるために,国内外の専門誌に掲載された論文および専門書の内容を報告させ(文献研究),それに基づいて議論等を行い,設定した研究課題への取り組みを通して修士論文を完成させるための指導を行なった。
その他の教育活動
 上越教育大学附属中学校における教育研究協議会実施に係わる指導・助言を行った。
 
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 学部では,英語を専攻していない学生の指導において,将来,(主に)小学校の教員として子供たちに英語を教える機会もあることを踏まえ,英語に対して肯定的な態度が育つように心がけると同時に,小学校の英語指導で用いられる活動を少し紹介した。また,英語教育に関する専門の授業では,最低限,教育実習における実践に役立つような基礎知識や活動を積極的に指導した。卒業論文の指導においては,理論的な側面にのみならず,理論に基づく提案等を通して実践力の獲得に焦点をあてた。大学院においては,教授法や指導技術の基礎となる第二言語習得研究に関する理論的な背景や実験研究の成果を正確に理解させることに勤めた。また,修士論文の指導においては,英語科における評価に有益な示唆を与える研究の指導を行うことが出来た。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】@平成18年9月:『The development of grammatical competence of Japanese EFL learners: Focusing on relative clause constructions』(共著)The Journal of Pan-Pacific Association of Applied Linguistics, 10, 73-87.
A平成18年12月:『Acquisition of English grammatical features by adult Japanese EFL learners: The application of item response theory in SLA research』(共著)Proceedings of CLaSIC 2006, 942-974.
発】@平成18年8月:『The acquisition of psych verbs by Japanese EFL learners: From the perspective of cue dependency』(共) The 11th Conference of Pan-Pacific Association of Applied Linguistics研究発表
A平成18年7月:『The Acquisition of the surface morphological properties of relative clauses and wh-questions in English by Adult Japanese speakers』(単) The 11th Conference of Pan-Pacific Association of Applied Linguistics研究発表
B平成18年12月:『Acquisition of English grammatical features by adult Japanese EFL learners: The application of item response theory in SLA research』(共) The Second CLS International Conference研究発表
他】@平成18年5月:「英語教師のための「学習ストラテジー」ハンドブック」(書評)(単)『英語教育』第55巻・第3号,大修館書店,p. 92
A平成19年2月:「項目応答理論・差異項目機能分析を用いた英語文法能力発達過程の研究」(共)科学研究費補助金研究成果報告書
共同研究(小・中・高等学校との共同研究を含む)の実施状況
@項目応答理論・差異項目機能分析を用いた英語文法能力発達過程の研究 代表者:山川健一(安田女子大学助教授)科学研究費補助金
A「初等教育段階における系統的英語教育に関わる教師教育プログラムの協働開発−連合大学院の特性を生かした学校教育実践学構築のモデルとして−」代表者:勝野眞吾(兵庫教育大学副学長)連合研究科共同研究プロジェクト
学会活動への参加状況等
@平成18年度北海道英語教育学会の運営委員及び学会誌編集委員
A平成18年度日本第二言語習得学会の運営委員及び学会誌編集委員
B平成18年5月20日〜21日:日本第二言語習得学会(大東文化大学)出席
C平成18年7月27日〜29日:The 11th Conference of Pan-Pacific Association of Applied Linguistics (Kwangon University, Korea) 出席
D平成18年11月18日:電子情報通信学会・言語と思考研究会出席
E平成18年11月26日:ことばの科学研究会月例会出席
F平成18年12月7日〜9日:The Second CLS International Conference (Singapore) 出席
◎特色・強調点等
 日本人英語学習者の関係節構文とwh疑問構文の習得について,オンライン処理における文解析の視点からの研究を昨年に引き続き行っている(科学研究費補助金による)。また,共同研究の第二言語の文法能力の発達における新しいテスト方法やデータ分析方法の開発(科学研究費補助金による)に関しても,その研究成果を国際学会で発表し,報告書の形でまとめた。これまでにない分析方法による包括的な研究という点で優れたものである。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@ECHOの会(上越地区中学校英語教師の会)研修会講師(『自立した英語教師になるために』を講演)
 

 
野 地 美 幸(講 師)
 
<教育活動>
授 業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
 教育方法に関しては、「英語学演習」で講義支援システムを使ってレポート管理を行ったり、「英語音声学」ではマルチメディア教室で教材作成・提示を行ったりと、18年度は特に情報機器の活用に取り組んだ。評価に関してもそうした取り組みに呼応する形で、講義支援システムの方に提出してもらったレポート、またマルチメディア室に残してもらった音声記録を平常点として組み入れた評価を行った。
【観点2】教育の達成状況
学部:「コミュニケーション英語」の授業では、LL 等を活用し、リスニングとスピーキングを中心にコミュニケーション能力の育成に努めた。「英語音声学」では、英語の音を体系的に教授した。「英語学演習」と「英語基礎研究」では英語の文の形成にどのような原理が関わっているかを解き明かし、英文読解力の養成を図った。
大学院:「英語学特論」においては生成文法理論の入門の授業を行った。「生成文法特論」においては、本年度は生成文法に基づく第二言語獲得研究に関する論文を読みとく形式で授業を行った。また、「実践場面分析演習」では、言語知識とはどういったものなのかについて授業を行った。
研究指導
【観点1】学部
 指導学部生3名(いずれも3年生)に対して英語学の基礎的知識の養成を図る一方、将来小学校の英語活動を行う際に重要となってくる英語力の向上が図れるよう意識して指導を行った。
【観点2】大学院
 指導院生1名(M1)に対してテーマ設定、研究資料収集、アンケート作成等、研究の助言を行った。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】@平成19年2月:「公立中学校・高等学校英語教員を対象とした「英語が使える日本人」に関する意識調査」(共著)『上越教育大学研究紀要』第26巻、pp.65-77.
発】@平成18年7月:「公立中学校・高等学校英語教員を対象とした「英語が使える日本人」に関する意識調査」上越英語教育学会第10回大会
共同研究(幼,小,中,高等学校及び特殊教育諸学校教員との共同研究を含む)の実施状況
@「公立小学校への英語教育導入に伴う諸問題とその対策」代表者:齋藤九一(上越教育大学教授)科学研究費補助金
A「小学校英会話を支援する国際理解カリキュラムの開発研究」代表者:北條礼子(上越教育大学教授)上越教育大学教員養成GP:マルチコラボレーションによる実践力の形成
B「国際理解に焦点を当てた小学校英語活動の学習プログラム構築」代表者:北條礼子(上越教育大学教授)上越教育大学研究プロジェクト
学会活動への参加状況等
@上越英語教育学会第9回大会(平成18年7月22日開催)の企画運営
A学会誌「上越英語研究」の編集
B日本英語学会第24回大会参加(平成18年11月4日)
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@上越市国際教育推進協議会委員
 

 
ブラウン・アイヴァン(外国人教師)
 
<教育活動>
授 業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
○授業形態、学習(研究)指導法等の教育方法に関する取組状況
 学生がクラス全員の前で英語を話すのは緊張するため、授業の活動にはペアワーク及びグループワークを取り入れた。
 英語コミュニケーションの活動では、まず基本フレーズを教え、活用方法を練習し、学生が自分の経験及び意見についてグループ内で発表した。そして学生は、成績評価の対象となる発表に向け、好きな話題を選びプレゼンテーションの準備をした。
 学生は、各々興味や関心のある事を自由に発表するため毎回英会話の内容は変化に富み、他の学生の発表の感想を書かせることで互いに良い刺激となり、楽しんでいたようである。
○成績評価法に関する取組状況
 成績評価は、継続評価(発表、作文宿題、授業のコミュニケーション活動の参加の質)と期末試験(リスニング、リーディング、ライティング)の総合評価で行った。
 成績評価法の配分比率(発表、作文など)と評価法(例えば、スピーチの内容が外国人に正しく伝わるような発音や文を使うかどうか)は、学生が分かりやすいよう予めシラバスに明示した。
 後期では、適切なレベルの実習のため役に立つ面白い話題のある教科書を選択した。
【観点2】教育の達成状況
学部生:
 多数の学生が英語コミュニケーションの経験をし、英会話力の自信を増した。
大学院生:
 英語ライティングの過程で学生の英作文の質が全体的に上達し、質の高い論理的な英語で、興味深い見解を伝えられるようになった。
研究指導
【観点1】学部
 4年生の卒業論文の英語要約文を指導した。 
【観点2】大学院
 研究資料及び教育実習資料、論文の英語の内容を確認し、適切な英文表現を指導した。
その他の教育活動
@ オーストラリアの教育交流会・教育実習の参加学生を対象に、クラスルーム・イングリッシュの授業を行った。
 学生が準備した授業のリハーサルにフィードバックをした。その教育実習は非常に効果的であった。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 日本の学生は人前で自分の意見を発表したり他の人の意見に対して自分の意見を述べるという経験が乏しいため、これから教員になろうという学生の将来を踏まえ、なるべく発表の機会を与えた。今後は、学部生もより積極的に英会話できるよう、クラスルーム・イングリッシュ及び会話ストラテジーを指導する予定である。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】@平成18年12月:『Rule Presentation, Feedback and Attention: A Comparison of Two Empirical Studies』(単著)上越英語教育学会:上越英語研究 第7号 pp.19-32
A平成19年2月:『The Applicability of Brown and Levinson’s Theory of Politeness to Japanese: A Review of the English Literature』(単著)上越教育大学研究紀要 第26巻 pp.31-41
国際研究プロジェクトへの参加状況
@オーストラリアの教育交流会・教育実習の参加学生に、クラスルーム・イングリッシュの授業を行った。
 彼らが工夫して準備した授業のリハーサルにフィードバックをした。その教育実習は非常に効果的だった。
学会活動への参加状況等
@平成18年5月:全国語学教育学会(JALT) 静岡県清水市東海大学 出席
在外研究の状況
@平成19年2月28日〜3月9日:イギリスロンドン大学(SOAS, Institute of Education)、サセックス大学(英語教育に関する社会言語学の研究計画の打ち合わせ)
◎特色・強調点等
 全国語学教育学会への出席は、最新語学教授方法(特に会話ストラテジー)の研究、及び社会言語学の研究活動(言語に対する日本人の態度)に有意義であった。
 上記イギリスの大学で社会言語学の研究プロジェクトの計画、特に研究方法の組み合わせと研究資料の内容とデザインが進捗した。
 
<社会との連携>
◎社会への寄与等
 地元の市民及び小学校、中学校の英語力又は英語教育の質を高めるため、研究活動又は教育指導を計画する予定。