【自然系教育講座(数学)】
 

 
黒 木 伸 明(教 授)
 

 
中 川   仁(教 授)
 
<教育活動>
授 業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
○授業形態、学習(研究)指導法等の教育方法に関する取組状況
 基礎線形代数学、線形代数学、代数学Aでは、具体例を多く挙げて解説することによって、線形代数、環論・体論に関する抽象的内容の理解を高める工夫を行った。また、演習問題を解いてレポート提出させることによって、計算力の養成を目指した。
研究指導
【観点1】学部
 代数学セミナーTでは、4名の学生に対して、重要な関数であるにもかかわらず微積分などでは詳しく扱われない関数であるガンマ関数について指導を行った。
 代数学セミナーUでは、2名の学生に対して、整数論を数値実験を通して体験的に学ぶというスタイルのテキストを使用して指導を行った。
【観点2】大学院
 代数学研究セミナーTでは、3名の学生に対して、それぞれ、代数的整数論、ディオファンタス近似、素数定理のテーマについて指導を行った。
 代数学研究セミナーUでは、2名の学生に対して、それぞれ、楕円曲線の有理点の構造、無理数のテーマについて指導を行った。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
発】@平成18年6月:『Zeta functions of pairs of ternary quadratic forms』ライデン大学 "Rings of Low Rank" 研究集会
学会活動への参加状況等
@9月20日〜23日:日本数学会秋季総合分科会出席
A3月12日〜14日:早稲田整数論研究集会出席
B3月27日〜30日:日本数学会年会出席
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@上越地区高等学校数学研究会顧問
 

 
溝 上 武 實(教 授)
 
<教育活動>
授 業
 学部では、数学内容の学習の必要性を強調し、動機付けに腐心した。大学院では、現場での実践との関連性を追求した。
研究指導
 学部では2名の卒業研究を指導し、大学院(修士)では1名の修士論文の指導をした。
 連合大学院(博士)では1名の学位(学校教育学)の審査に関与した。
その他の教育活動
 平成19年2,3月:連合大学院実践学セミナーに出席した。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
著】@平成18年6月:『ユークリッド幾何学を考える』(単著)、べレ出版
A平成18年10月:『写像・選択公理論』(単著)、横浜出版
論】@On perfect mapping of resolutions, JP journal of Geo. and Top. (to appear)
学会活動への参加状況等
@平成18年6月 位相空間論シンポジウム、Editor としての役目を果たした。またトポロジー関連のシンポジウムへ出席
A日本数学会
BZentralblatt Math. におけるReviewを行った。
Cジャーナルにおけるレフェリーの仕事を行った。
 

 
森     博(教 授)
 
<教育活動>
授 業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
○授業形態、学習(研究)指導法等の教育方法に関する取組状況
 学部:基礎的な理論を解説する準備として、中学校、高等学校等で学んでいる具体的な例を豊富に提示し、定理等として纏めることの意味を理解されるように工夫した。さらに、聴講学生が授業内容の理解を深め、自ら思考し計算をする時間をとり小テスト等を課した。授業時間内で終えない場合は2,3日後に提出できる余裕をもたせた。小テスト等は採点しコメントを付けて返した。
 大学院:学部時代に理解が不十分な状態でも、科目の履修がスムーズに行くように丁寧に解説をした。研究セミナーでは大学院できちんとしたゼミ形式に対応できるように、理論の背景についての説明、基礎的な内容の確認・復習等を行い、履修者に理解できるように工夫をした。
【観点2】教育の達成状況
 実践セミナー、実践場面分析演習において、「模擬授業」で取り上げた課題・教材について、その数学的な背景を探索し、数学的内容を深める検討を学部4年次生と共同で行った。
研究指導
 研究課題を関連する分野との関連性等の位置づけを理解できるよう時間を掛けた。限られた年限で研究内容を纏めるために、@自ら理解できる定理等とA当面仮定する定理等を分けた。このもとで課題研究を成就できるように議論を積み重ねた。
 
<研究活動>
共同研究の実施状況
@偏微分方程式姫路研究集会(2007年2月22日から24日)において
「RからRへの等長的はめこみ像について」共同研究者 島倉紀夫(東北大学名誉教授)が講演した。
学会活動への参加状況等
@平成19年3月27日〜30日 日本数学会出席
 共同研究者島倉紀夫氏と「RからRへの等長的はめこみ」について研究打ち合わせを行った。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@出前講座を平成18年12月15日に、新潟県立国際情報高等学校で行った。
 題名は「領域の面積とその長さについて」である。
◎社会への寄与等
@第50回上越算数・数学研究(高田)大会を開催した。
A平成18年11月1日、上越市立城西中学校、上越市立南本町小学校、上越市立大和小学校を会場校として公開授業、授業協議会を行った。
 

 
岩 崎   浩(助教授)
 
<教育活動>
授 業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
○授業形態、学習(研究)指導法等の教育方法に関する取組状況
 数学教育学特論Aと数学教材開発論の授業では、研究成果の一部を教材として利用することを継続して試みている。特に、その基となるデータである授業のビデオ記録を適宜活用することにより、現場の実践との関係を深める工夫を行っている。数学的経験と学習過程では、教育実習前ということに配慮し、実践場面というよりもむしろ教材の面白さを自ら体験できるような教材を工夫している。今年度も、昨年度に引き続き題材として無理数を取り上げ、連分数を伴う具体的な計算や作図などの活動を取り入れながら、学生たちがその表現の美しさ、その歴史的・哲学的意味を体験的に理解できるよう配慮し、学生たちが学校で扱われる教材をみる視点を広げることを試みた。
○成績評価法に関する取組状況
 今年度も昨年に引き続き、レポートの課題に焦点をあて、学生たちが何をどの程度まで学んだかを評価するために、授業での学生たちの具体的な活動や取組が明確になるようレポート課題を工夫し、学生たちの達成状況をより的確に把握するとともに今後の授業改善に生かすことが出来るように努めた。また、レポートによる評価基準をできるだけシラバスに明記し、厳格な成績評価を実施するように努めた。
【観点2】教育の達成状況
○進学や就職などの卒業(修了)後の進路の状況から判断した取組状況
 担当した大学院生は4名(学卒院生1名、小学校の現職教員1名、中学校の現職教員2名)であった。現職院生3名は、現場での実践的問題やこだわりを追求し、その成果を学会発表するとともに修士論文として提出し、現職復帰を果たした。学卒院生1名も、教育実習での反省をもとに、修士論文を提出した。また、公立学校の教員採用試験に合格を果たし、新潟県の中学校教諭として採用されることとなった。特筆すべきは、教員養成GPの取り組みにも自ら授業者となりながら積極的に参加し、現場の実践についての理解を深め、修士論文にもその成果を残せたことである。学部学生は2名で、内1名は、公立学校の教員採用試験に合格を果たし、愛知県の小学校教諭として採用された。もう1名は、新潟県の中学校において常勤の講師として採用された。
研究指導
【観点1】学部
 学部においては、大学院におけるこのような具体的事例や他の論文の具体的な実践場面を例として、講読している文献における著者の主張や学生各自の問題意識をより具体的に捉ることを促した。近隣で開催される授業研究会に積極的に参加することを促し、個々の授業場面についてディスカッションする機会を増やした。
 また、学部学生一人一人の教育実習における研究授業をビデオで記録し、後にそれを視聴し、それについてディスカッションする機会を設けた。その際、教師の教授行為だけでなく、その授業中の一人の子どもの活動を追いかけたビデオ記録も行い、子どもの立場に立った臨床的な指導力の向上に役立てたる工夫を行った。また、大学院生を交えての卒業論文発表会を継続して実施している。
【観点2】大学院
 大学院では、院生の臨床的実践力向上のために、院生一人一人の「こだわり」に則して、特に、院生の実践的研究における、実験授業及び臨床的インタビューとそのプロトコル、フィールドノートに現れる事象の解釈・分析を通して、児童・生徒に寄り添った算数・数学の指導のあり方を具体的に捉えることを試みている。また、自らの研究の視点を広げたり修正したりする契機として、さらに第3者から評価される機会として数学教育関係の学会や研究会への参加及び発表を促進した。平成18年7月1日〜2日に開催された全国数学教育学会 第24回研究発表会(広島大学)にM1院生2名M2院生3名が出席し、M2院生3名が研究発表を行った。平成17年10月29日〜30日に開催された日本数学教育学会 第39回数学教育論文発表会(広島大学)では、M1生2名、M2生4名が出席し、M2生3名が論文発表を行った。平成18年1月28日〜29日に開催された全国数学教育学会 第25回研究発表会(奈良教育大学)には、M1生2名、M2生4名が出席し、M1生1名とM2生3名が研究発表を行った。その他、平成18年7月13日〜14日に修士論文中間発表(妙高)を開催し、平成19年3月16日〜18日には、M1生を中心として、主に筑波大学の教員、大学院生と合同で修士論文の構想発表を行った。
その他教育活動(学外を含む)
@平成18年7月:学校図書館司書教諭講習(学習指導と学校図書館)の講師を務めた。
A平成18年8月:長岡市教育委員会の主催する「中学校数学アカデミー」の講師を務めた。
B平成18年11月:第50回上越算数・数学教育研究会(高田)大会 中学校部会における指導助言者を務めた。
◎特色ある点等
 講義や研究指導と学外で開催される授業研究会や特に大学院生の研究指導に外部評価を積極的に取り入れている点。特に、研究授業やその研究協議会に学部生、大学院生とともに参加し、その場で個々の授業場面についてコメントしたり、ディスカッションするようにしている。また、その際、ビデオ等に記録した研究授業の中から典型的な場面を、その筆記録とともに、授業で取り上げるなどして、臨床的な実践力を目指した指導を心がけている。また、特に大学院生には、できる限り学会や研究会にも参加・発表することを促し、他の研究者との相互交流を図り、それらを外部からの評価として積極的に研究指導に生かすようにしている。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】@DEVELOPING THE “OPERATIONAL APPROACH” TO ENCOURAGE STUDENTS' AWARENESS OF INCOMMENSURABILITY: What a Student Ta's Activity Suggest Us for Improving Our Teaching Design、 『算数と数学の接続における2つの一般化に関する開発研究』、平成17〜18年度文部科学省科学研究費補助金・特定領域研究(2) [代表者:岩崎秀樹] 研究成果報告書、pp.107-124.
AWHAT HAPPENS WHEN THE MATHEMATICAL MEANING IS DEVELOPING IN THE CLASSROOM? : From One Student's Perspective、『算数と数学の接続における2つの一般化に関する開発研究』、平成17〜18年度文部科学省科学研究費補助金・特定領域研究(2) [代表者:岩崎秀樹] 研究成果報告書、pp.125-147.
発】@平成19年1月:「中学校確率の活動的・体験的理解を図る授業の開発研究:教室における確率の意味の発生と展開」、 全国数学教育学会 第25回研究発表会 、 奈良市立中部公民館、 ( 2007.1.27(土)--28(日)).
A平成19年3月:「確率概念の活動的・体験的理解を図る教授単元の臨床的開発研究」(インターネットコンテンツ)、上越教育大学教員養成GPプロジェクト.
共同研究の実施状況
@「確率概念の活動的・体験的理解を図る教授単元の臨床的開発研究」 研究代表者:岩崎 浩、平成17年度大学・大学院における教員養成推進プログラム(教員養成GP)「マルチコラボレーションによる実践力の形成」経費
学会活動への参加状況等
@日本数学教育学会出版部幹事
A平成18年7月1日:全国数学教育学会 第24回研究発表会出席
B平成18年10月7日〜8日:日本数学教育学会 第39回数学教育論文発表会出席
C平成19年1月27日〜28日:全国数学教育学会 第25回研究発表会出席
◎特色・強調点等
 教員養成GPでの研究は、「教室を拠点として」数学教育を専門とする研究者、実務家教員、現職院生、学卒院生及び現場の教員とが協同し、教室で実現可能な具体的な数学教材、特に、確率教材とその指導法を開発してきた。ここでの実践研究における方法論は、これまで「教室を拠点とした」協同的数学教材開発研究方法論として精緻化してきたものである。現場の教員が単なる協力者ではなくフルメンバーである点、研究の過程それ自体が理論と実践との間の実質的な相互作用的サイクルであると同時に、現在進行中の実践に貢献しようとしている点等に主な特色がある。今年度は、この実践研究を振り返りながら、特に、1つの教室において、確率の意味がどのように発生し展開していくかを確率概念の本質である「循環性」を視点しながらその再構成を試みたが、その中で、中学校の確率の授業改善への手がかりや方向が明確になってきたことは1つの大きな研究成果である。その他、教員養成GPにおける研究成果はインターネットコンテンツとして本学のホームページ上に公開した。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@新算数教育研究会(東洋館) コメンテーター
A第50回上越算数・数学教育研究会(高田)大会 中学校部会指導助言者
B『教育実践研究』第17集(上越教育大学学校教育総合研究センター)における[算数・数学]部門の査読及び審査委員
 

 
岡 崎 正 和(助教授)
 
<教育活動>
授 業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
○授業形態、学習(研究)指導法等の教育方法に関する取組状況
 教育方法及び成績評価面での取組教育方法の工夫として,体験的活動の重視,映像の活用,さらに学校現場の問題を話し合う場を取り入れた。「数学的経験と学習過程」では,学生が将来学校現場で算数・数学を指導する際に,教材の背景となる豊かな数学的経験を持つことが必要不可欠だと考え,知のネットワークを理解できるよう教具を作成し,教材の体験的な理解を図った。また,「数学教育学特論演習」では,海外の最先端の論文の内容の理解をはかる上で,日本の学校の現状との比較検討を議論の中に取り入れた。「数学教材開発論」ではビデオ教材を用いて,実際の子どもの考え方を教材開発の重要な視点として位置づける試みを行った。
○成績評価法に関する取組状況
 評価はレポート形式で,体験的に培ったことを振り返るとともに,将来の学校現場での指導との関連を考えさせ,評価のための評価でなく,将来に生きる評価にするよう努めた。
【観点2】教育の達成状況
 教育の達成状況 上記の授業では実際的体験が重要視されていて,そのため出席して活動することが大きなウェイトを占める。その点で,ほとんどの学生が休むことなく出席し,活発に活動していた。また,レポート内容も,将来の教育活動を十分に見据えた文章が数多くあり,おおむね授業のねらいは達成できたと考える。
研究指導
【観点1】学部
 学部生に対しては,教材の深い知識と具体的な体験が必要とされると考え,そのための背景的な理論を適宜含めながら,活動を通して教材の意味,役割,面白さを体験することを中心に指導を行った。特に,図形・幾何教育の基礎として,折り紙の数学的活動をとりあげ,背景となる数学は何か,小・中学校の教育の中でどのように位置づくか等の視点から,教材を深く見る目を養うように指導を行った。
【観点2】大学院
 大学院 数学教育学の修士論文指導において,学校現場に直接関係のあるテーマを選び,授業実践研究に向けて,理論と教材分析に取り組むよう助言を行った。授業実践では臨床力を高める上で比較的長期にわたって開発,実践,反省のサイクルに取り組むことが重要だと考え,一単元の授業開発を行うよう研究指導を行った。院生の一人は既に上越市内の公立中学校で,指導教員,院生たちの協働による臨床的な授業実践研究を行い,一定の成果を得た。また,2人の院生が学会で研究発表を行った。
その他の教育活動
@教育実習の事前指導,実際の観察,事後指導を行った。
A附属中学校の教育研究協議会(数学部会)での指導・助言を行った。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 指導の特色は,体験的活動と学校現場との関連づけを取り入れ,より実践的に授業と研究指導を行うとともに,学生や院生の意図をくみ取って当事者の立場から活動を意味づけ,必要な指導と助言行った点にある。こうした指導は,学生や院生の興味,関心を引き起こしながら,当事者の能力を高めることに繋がると考えられる。今後よりよい指導へと高めていきたいと考えている。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】@平成18年7月:『Semiotic chaining in an expression constructing activity aimed at the transition from arithmetic to algebra』(単著)J. Novotna, H. Moraova, M. Kratka, and N. Stehlikova (eds.). Proceedings of the 30th Conference of the International Group for the Psychology of Mathematics Education, 4, 257-264.
  A平成18年10月:『研究としての授業研究の方法と課題−デザイン実験の方法論に焦点をあてて−』(単著)日本数学教育学会,第39回数学教育論文発表会論文集, 23-24.
発】@平成18年7月:『数学教育研究方法論としてのデザイン実験について−科学性と実践性の調和を目指して−』(単著)全国数学教育学会, 第24回研究発表会. 広島大学教育学部・教育学研究科.
  A平成18年10月:日本数学教育学会第39回論文発表会フォーラムで提案者
  B平成18年11月:『Semiotic chaining in an expression constructing activity aimed at the transition from arithmetic to algebra』(単著)The Fifth International Workshop of Mathematics Education Research with Prof. Dr. Wittmann and Prof. Doerfler. Hiroshima International Plaza. Hiroshima International Plaza.
共同研究の実施状況
@全デザインリサーチによる中学校数学へ向けた高学年算数の授業開発に関する研究 代表者:岡崎正和(上越教育大学助教授)科学研究費補助金
A算数と数学の接続における2つの一般化に関する開発研究 ―内包的一般化と外延的一般化に関する認知論的・記号論的考察― 代表者:岩崎秀樹(広島大学教授)科学研究費補助金
B確率概念の活動的・体験的理解を図る教授単元の臨床的開発研究 代表者:岩崎浩(上越教育大学助教授)平成17, 18年度大学・大学院における教員養成推進プログラム(教員養成GP)
学会活動への参加状況等
@平成18年7月1日〜2日:全国数学教育学会第24回研究発表会出席
A平成18年7月16日〜21日:30th Conference of the International Group for the Psychology of Mathematics Education出席
B平成18年7月31日:第88回全国算数・数学教育研究(東京)大会出席
C平成18年10月7日〜8日:日本数学教育学会第39回論文発表会出席
D平成18年11月1日:上越算数・数学教育研究会出席
E平成18年11月21日〜26日:第5回数学教育国際セミナー出席
F平成19年1月27日〜28日:全国数学教育学会第25回研究発表会出席
◎特色・強調点等
 数学教育学では,近年,授業を対象とした研究が増え,その思想的・理論的背景としてデザイン科学としての数学教育学という考えが普及しつつあるが,そのための研究方法論が確立されていない現状がある。そこで現在アメリカで研究が行われているデザイン実験の方法論の文献を数多く収集し,日本の授業研究を発展させる形で,研究方法論を整理し,提案を行った。またこの方法論を用いて,その乖離が歴史的にも現状においても様々に指摘されている小学校から中学校への移行期をターゲットとして,乖離を埋める手だてを臨床的に開発することを目指して,小学校高学年の小数のわり算と中学校1年の正負の数の乗除の単元の授業開発ならびに算数から数学への移行に関わる理論構築の一部を行った。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@「教育実践研究」の査読者
A平成18年7月31日:第88回全国算数・数学教育研究(東京)大会の中学校部会での指導助言
B第50回上越算数・数学教育(高田)大会で指導助言
◎社会への寄与等
 指導助言では,授業者の意図を積極的に意味づけるとともに,指導法に関わる他の視点を提供したり,フロアからあがった疑問に可能な限り応える努力をした。また,指導内容の背景に関して概略を説明した。
 

 
高 橋   等(助教授)
 
<教育活動>
授 業
 学部,大学院の授業ともシラバスに授業の方針を記載し,最初の授業のオリエンテーションで授業の日程や内容,評価の方法を示した。学部の授業では,必要に応じ実践でのトピックスを取り上げ,教材への視点と子どもへの視点の双方を扱うようにした。学部,大学院の授業ともできる限り学生が活動する時間を設け,学生の発言を取り上げ,議論の機会を設けた。成績評価にあたっては,レポートの内容を重視し,多角的に評価した。
研究指導
 学部生には,数学教育の基礎理論に関する議論の機会を設けるとともに,算数,中学校数学,及び高校数学における実践的課題の明確化と解決に向けての方策の探究をさせ,教育実習を振り返る機会を設けた。修士課程院生には,実践事例を踏襲しつつ,数学教育の基礎理論を探究する機会を設けた。さらに,基礎理論と実践例とを結び付け理論枠組みを仕上げ,データの収集と,解釈,考察を行うための指導をした。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 教員としての教養と実践力とを高めることに配慮した。授業で扱う内容が基礎的な知識である場合も,実践例を取り上げながらできる限り子どもの活動と指導とに関連づけた。その関連づけを通して,学生や院生の発言を引き出し,学生や院生の積極的な活動を促すようにした。学生や院生が同じ授業に参加し,その参加を通して学生と院生とが交流し,議論する機会も設けた。
 
<研究活動>
学会活動への参加状況等
@平成18年10月7日〜8日:第39回数学教育論文発表会。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@平成18年7月31日,8月1日 第88回 全国算数・数学教育研究 (東京)大会指導助言者。
 

 
谷 川 智 幸(助教授)
 
<教育活動>
授 業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
○授業形態、学習(研究)指導法等の教育方法に関する取組状況
 初めて解析学を学ぶ学部生及び大学院生に対してでも、解析学の基礎である微分積分学を習得できるように、その単元の導入に対して直感的で具体性をもつ例題を多く取り入れ、数学的な意味を十分に理解できるように解説してきた。
○成績評価法に関する取組状況
 成績評価に関しては、授業中で理解したことの確認として主に試験とレポートを課して厳密な評価を実施してきた。
【観点2】教育の達成状況
 授業に積極的に参加してもらうように、演習を多く取り入れ学生が解析学に興味を持ち、さらに向上心を持って自ら勉学に取り組めるように配慮した。
研究指導
【観点1】学部
 学部3年生2人、学部4年生3人に対して彼らの要望に応え、まず高等学校で学習して来なかった数学(数学III, C)をセミナー形式で指導し、次に教育現場で活用することができる自然現象を記述する数学モデルを題材に研究指導を行った。
【観点2】大学院
 大学院生2人に対して彼らの要望に応え、微分積分学の基礎から指導を行い、一部であるが「非線形微分方程式の解の大域的構造の研究」の最先端の研究内容を示し把握できるまで研究指導を行った。
その他の教育活動
@平成18年7月15日 上越数学教育研究会講演会講師
A平成18年7月29日 上越教育大学大学院数学科修士会における講演会講師
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 解析学の基礎となる微分積分学を習得していない学部生と大学院生に対して、如何に短期間で理解を深め、習得させることができるかが今後の課題である。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】@平成18年:Nonoscillatory half-linear differential equations and generalized Karamata functions, Nonlinear Analysis: Theory, Methods & Applications, Vol. 64, (2006), pp. 762−787.(共著)
A平成18年:On the structure of positive solutions of a class of fourth order nonlinear differential equations, Annali di Matematica Pura ed Applicata, Vol. 185, No. 4, (2006), pp. 521−536.(共著)
B平成18年:Oscillation criteria for a class of higher order nonlinear differential equations, Memoirs on Differential Equations and Mathematical Physics, Vol. 37, (2006), pp. 137−152.(単著)
C平成18年:Oscillation criteria for second order differential equations with positive and negative coefficients, Applied Mathematics and Computation, Vol. 181, (2006), pp. 853−863.(共著)
発】@平成18年9月:☆Regularly varying solutions of half-linear differential equations with retarded arguments, CDDE 2006, Colloquium on differential and difference equations in Czech Republic.
A平成18年9月:遅れ型半分線形微分方程式の緩変動関数解について 日本数学会秋季総合分科会, 大阪市立大学
B平成18年12月:微分方程式の解の漸近挙動と Karamata 関数, 日本数学会函数方程式論分科会研究集会 「微分方程式の総合的研究」, 京都大学
共同研究の実施状況
@非線型常微分方程式の漸近解析とその応用に関する研究 研究代表者:宇佐美広介(広島大学助教授)科学研究費補助金
A主要部が非線形微分作用素である高階非線形常微分方程式の解の構造の研究 研究代表者:本人 科学研究費補助金
学会活動への参加状況等
@平成18年9月19日〜22日:日本数学会秋季総合分科会出席(大阪市立大学)
A平成19年2月10日〜11日:振動理論ワークショップ 岡山 2007 に出席(岡山理科大学)
B平成19年3月27日〜29日:日本数学会年会出席(埼玉大学)
◎特色・強調点等
 微分方程式の振動理論の分野で未だ研究されたことのない「高階の非線形微分作用素を持つ非線形微分方程式の定性解析」の研究に着手し、その研究成果を上記の海外研究集会において講演を行い、好評を博した。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@平成18年7月15日 上越数学教育研究会講演会講師(「ある2階非線形微分方程式及び方程式系の正値解について」)
A平成18年7月29日 上越教育大学大学院数学科修士会における講演会講師(「無限区間における2階非線形微分方程式の正値解の漸近挙動について」)
B国際誌「Nonlinear Analysis Series A: Theory, Methods & Applications」の論文審査
C国際誌「Abstract and Applied Analysis」の論文審査