4 教育・研究活動
(1) 各講座・分野の教育・研究
 

 
@ 学習臨床講座
ア 組織
 本講座の教員構成は平成20年3月末で17名であった。教授は8名,准教授は8名,講師は1名である。異動者及び異動予定者は以下の通りである。平成20年4月から五百川裕准教授が自然系教育講座(理科)より異動し,さらに小林恵准教授が平成20年4月1日付で教授に昇任されることになった。中野靖夫教授は平成20年3月31日をもって退職された。さらに,北條礼子教授が言語系教育講座(外国語),西川純教授,松本修准教授,そして久保田善彦准教授が平成20年4月1日付で教職大学院教育実践高度化専攻の専任教員として異動することになった。さらに4月1日付けで梅野正信教授と両角達男准教授が着任の予定である。
 大学院修士課程在籍者は,2年次学生53名,1年次学生61名,学部学習臨床コース在籍者は4年次28名,3年次27名,2年次11名である。
イ 教育・研究の特色
 本講座は,教育方法臨床分野,学習過程臨床分野,情報教育分野,総合学習の4分野から構成されている。 いずれの分野も,教育現実に密着して,個々の児童・生徒の学習の過程を臨床的に研究し,教育実践上の様々な課題に応えられる教育研究を推進してきた。
 本講座に所属する学生は,実践的指導力に加えて実践課題に取り組む研究能力,教材開発,そしてカリキュラム開発の能力をシステマティックに修得している。学生は研究室単位での演習を通して研究活動を進めながら,修士論文の構想発表と中間発表でその成果を共同で論議し,深めている。修士論文提出後の修士論文発表会は,4分野が分科会形式で行われ,その成果の共有を図っている。
 学士課程の教育研究活動に関しては,修士課程における教育研究活動と連動しながら進められており,卒業研究については4分野で中間発表を行い,全体に2会場で実施し,4分野の相互乗り入れですることにより,学習臨床の成果を幅広く共有化する工夫を行っている。
ウ 運営・活動の状況
 教授会が開催される日の12時から13時を基本に講座会議を開催し,本講座の運営に関する重要事項について協議している。本年度の主要事項は,教職大学院設置の関わって既存研究科の改革案について,発達臨床講座並びに生徒指導総合講座とともに協議し,「学校臨床研究コース」を取り纏めた。
エ 今後の検討課題等
 次年度から学習臨床コースは,学校臨床研究コースの1分野の形態になる。学校臨床研究コース自体,教職大学院との相違・共生をどのように内外に明確なコンテンツをもって発信できるか,これが第一の課題である。さらに,学習臨床に関わる専門領域と専門研究の体制ないし環境を発展的に整備していくことも重要な課題である。
 人事については,欠員と昇任人事について,適性な人事配置と均衡のある職階構成が教育・研究環境の整備にとって不可欠であり,その是正と改善が望まれる。
 

 
A 幼児教育講座
ア 組織
 礪波講師が18年度末に他大学に転出されるため退職され,19年4月1日付けで丸山助教授が,教授に昇任された。その結果,本講座スタッフは教授3名,准教授1名,講師1名となった。 また20年度当初には木村准教授が本学教職大学院へ移籍される予定である。
イ 教育・研究の特色
 本学の保育士養成を中心的に担ってきた。特に保育園実習の事前・事後指導を実施し,保育園実習の引率・指導を講座のスタッフ全員で行った。
 幼児教育専修の4年次生及び免許プログラムの大学院生他を対象とする幼稚園専修教育実習では,講座のスタッフが事前・事後指導を実施した。事前指導では実習園に学生が伺って観察を行い,より有意義な実習になる機会を設けた。
 「実践セミナー」「実践場面分析演習」の「U」では,附属幼稚園との連携・協力のもとに保育実践プログラムを作成し,附属幼稚園で受講生が保育実践を行った。その過程を全員で分析し考察して報告集にしてまとめた。
 学部2年生全員を対象とした2年次の幼稚園での観察・参加実習については従来通り講座のスタッフ全員が実習の引率・指導と各園への挨拶回りを行っている。
ウ 運営・活動の状況
 講座のスタッフ全員による講座会議を23回開催した。ルーティンな問題から学部,大学院の教育・研究における諸問題,さらに本講座の運営方針や運営の進め方等を協議した。
 また,今年度は文部科学省が企画運営する幼稚園教員資格認定試験の実施に,講座のスタッフ全員が参画し,多大な業務を分担し遂行した。
エ 今後の検討課題等
 本講座は来年度,学校教育専攻幼児教育コースとなり,スタッフの人数がさらに1名減少し,業務負担が重くなる。そこで早急に共同開講授業科目を精選したり,授業内容を見直したりしなければならない。学内委員会委員の選出方法を検討したりしなければならない。さらに大学院定員充足のための工夫も重要な課題である。また今後も文部科学省が企画運営する幼稚園教員資格認定試験に参画することになるが,どのようにして業務を配分するか早急な検討が必要である。

 
B 生徒指導総合講座
ア 組織
 平成19年度において,講座教員に次の異動があった。@林泰成准教授が平成19年4月1日付で教授に昇任した。A下司晶講師が平成19年10月1日付で准教授に昇任した。B育児休暇中であった安藤知子准教授が8月より職務に復帰した。C西穣司教授が今年度末で辞職した(創価大学へ転出)。D三村隆男准教授が今年度末で辞職した(早稲田大学へ転出)。その結果,19年度を終えた時点では教授3名,准教授4名であった。(なお,次年度より若井彌一教授および藤田武志准教授が教職大学院へ移動することとなっている。)また,大学院修士課程在籍者は(発達臨床コース全体として),1年次学生44名,2年次学生39名,3年次学生8名であった。
イ 教育・研究の特色
 第一に,教育学と心理学を専攻する教員グループがそれぞれの研究領域の特性を生かしつつ,相互に連携して発達臨床コースの教育活動を支えている。発達臨床コースは,本講座のスタッフで形成する生徒指導総合分野と,心理臨床講座のうち臨床心理学コース担当教員を除いたスタッフで形成される学校心理分野との二つの分野から構成されている。(1)生徒指導総合分野では,不登校やいじめ等,生徒指導の問題に個別的に対応するだけでなく,学ぶ意欲の喪失,家庭・地域の変貌など学校内外の今日的課題について探求する。 (2)学校心理分野では,子どもたちの心と行動について心理学の視点から理解するとともに,発達と学習を適切に援助するための理論と方法を探求する。これら二つがそれぞれの専門的視点から,今日の教育がかかえる諸問題に対して総合的かつ臨床的な教育研究活動を推進している。このような態勢をとることにより,学生の多様な問題関心に適切に応えることが可能となっている。
 第二に,各分野それぞれの専門性を生かしつつも,発達臨床コース全体としての統合性ある教育活動を展開するために,研究セミナーと実践場面分析演習の授業運営に独自な工夫・配慮を行っている。研究セミナーでは,日常の個別教員による指導の発展形態として,5月に大学院2年次学生の「修士論文第2次構想発表会」(1年次学生も全員出席),10月に「修士論文中間発表会」(同),そして12月には1年次学生による「修士論文第1次構想発表会」を開催して,所属教員全員による多面的かつ詳細な指導を実施している。また,実践場面分析演習(生徒指導総合分野)においては,学校教育に関する実践的諸問題への広い視野の習得と分析的考察能力の向上を意図して,ディベートによる追究・討議の機会を設定し,学部3〜4年次学生(「実践セミナー」の授業)を含めた意欲的な学習を促した。なお,例年に引き続き,この実践場面分析演習の授業記録を本年度も報告書にまとめ公表した。
 第三に,本講座所属の教員多数が会員となっている日本学校教育学会の運営に力を注ぐとともに,特に現職教員の大学院学生に研究大会での研究発表や機関誌への論文投稿を積極的に行うよう指導し,広くわが国教育学界の発展・向上にも貢献している。
ウ 運営・活動の状況
 ほぼ毎月1回を基本に講座会議を開催して講座の運営について協議したほか,随時の対応事項について適宜臨時の協議を行った。なお,教育面(特に大学院生の修士論文指導)に関しては,発達臨床コースとして協議・決定すべき事項が少なくなく,適宜コース運営会議を開催して運営の円滑化を図ったところである。 本年度の重要審議事項としては,教職大学院設置にともなうコース改編(学習臨床コースと発達臨床コースを1コースに統合)のあり方について,通常議題として,講座内予算配分,学部2年次生(生徒指導総合分野)の研究室所属決定,発達臨床コース大学院1年次生の研究室所属決定について,他があった。
エ 今後の検討課題等
 第一に,次年度のコース再編へ向けた課題がある。教職大学院設置にともない,次年度から発達臨床コースと学習臨床コースが統合されることとなるが,これまで両コースが作り上げてきたそれぞれの独自性と伝統を尊重しながら,円滑な移行を実現するために様々な協議・調整が必要である。特に,この統合が内在的理由に基づくものではないだけになおさら,関係組織間の十分な意思疎通・調整が重要となる。第二に,発達臨床コースを支えていた教員団の大きな変動(2名が他大学へ転出,2名が教職大学院へ移動)をめぐる対応課題がある。発達臨床コースの学生総数が従前より増加してきているのに加え,教育職員免許取得プログラム学生等への丁寧できめ細かい指導が求められているなかで,新しい教員の一刻も早い速い補充が急務である。それとともに,新スタッフを迎えての新たな職場モラールの育成が望まれる。
 

 
C 心理臨床講座
ア 組織
 講座の構成は,教授3名(うち1名は学長特別補佐として出向中),准教授8名,講師1名の陣容であった。
 新職位制への移行に伴い新たな人事基準が作成された。その基準に則って初の助教人事の公募が行われ,高橋靖子助教に決定し,今年度の 11月1日付で本学に着任した。藤生英行准教授が8月31日付で本学を辞し他大学に転出したので,その後任人事の公募が行われ,佐藤淳一准教授に決定し,新年度4月1日付で着任予定である。また,角田京子准教授が本年3月31日付で本学を辞し他大学に転出することになったため,その後任の公募を予定しているところである。
 本講座教員が指導を担当した学部生は3年次6名,4年次生12名であった。
 大学院については,臨床心理学分野がコースとして独立したため,臨床心理学コースと発達臨床コース学校心理学分野となり,大学院生は臨床心理学コース1年次生25名,2年次生19名であった。
イ 教育・研究の特色
 学部教育は,心理臨床分野の専攻学生に対して全教員で指導にあたり,特に卒論や実践場面分析演習では,基礎心理学と臨床心理学の連携を重視した指導体制をとっている。大学院教育は組織上分離しているが,授業科目は臨床心理系の教員が学校心理分野の院生に臨床心理関係科目を,そして学校心理系の教員が臨床心理学コースの院生に基礎心理学関係科目を開講し相互に補完し合っている。両者ともそれぞれ修論中間発表会や修論発表会を行いレベルの向上に努めている。研究面では著書,学術論文が多数出されている。
ウ 運営・活動の状況
 講座会議は月1回開催し,年度当初には心理臨床講座のいっそうの活性化に向けて昇任人事に向けての積極的対応を促すとともに,折りに触れてその触発を行った。全学的な検討事項等についての議論はもとより,次の諸点について検討した。a)新職位制度への移行に伴う人事基準の見直しを行い,教授会に提出し,決定した。b)平成20年度から学部臨床心理学コースに配属されることになる学生を想定し,そのためのカリキュラム編成を継続的に行った。c)日本臨床心理士認定協会の平成18年度指定継続申請に関する直接面談での指導を受けて進めていた作業のうち,平成20年度から施行することになる同上の必修科目中,実習を除く16単位を本学必修科目(修了要件に含めること)として位置付ける具体化の作業を教育支援課とともに行った。d)臨床心理士養成コースの学内実習施設である心理教育相談室の相談料が有料になったため,質の高い臨床サービスと臨床指導体制のよりいっそうの充実が望まれる。e)教育組織と教員組織の改組に関わる議論を行った。f)新組織に関わる委員会委員等の選出を行った。
 大学院は臨床心理学コースと発達臨床コース学校心理分野と分かれているが,今年度より院生室が発達臨床コースが2部屋,臨床心理学コースがM1とM2で1部屋になり,特に心理教育相談室への来談ケースへの対応等が膨大な時間になるとともに守秘義務を前提としたケース関係の意見交換が必要となる臨床心理学コースの院生たちにとっては1部屋の教育効果は非常に大きかったと考えられる。
エ 今後の検討課題
 平成19年度から,学部も大学院と同様に臨床心理学コースと発達臨床コース学校心理分野と分離することになったことから,教育組織としてのそれぞれの独自を尊重し合いながら,心理学としての共通性を大切にした効果的な指導体制づくりが今後の課題と思われる。また,臨床心理学コースにおける心理教育相談室の来談ケース担当院生への臨床指導にかかわる加重負担の解消方法,並びにより効果的な指導体制づくりは最重要検討課題の1つである。
 

 
D 特別支援教育講座
ア 組織
 従来の障害児教育講座は特別支援教育講座と名称が変更され,同様に一体となって運営されてきた障害児教育実践センターが特別支援教育実践研究センターと名称が変更された。組織については,4月1日に長野大学より葉石光一氏が准教授として着任し,笠原芳隆講師が准教授に昇任したため,教授3名,准教授3名,講師1名となった。
イ 教育・研究の特色
 本講座は,特別支援教育に関する高度な専門的知識と実践的指導力を修得させることにより,障害のある幼児児童生徒の教育的ニーズに応じて適切な指導と必要な支援を行うことができる教員を養成することを目的としている。このため,教員の専門分野は障害児に関する教育学,心理学,生理学,指導法など多岐にわたっている。講座の授業としては,今年度より学校教育法と教育職員免許法の一部改正があり,特別支援学校教諭の専修免許状,一種免許状を取得するために必要な科目を開設した。特に,5障害にわたる教育領域及び重複・LD等の教育領域のすべてにわたって履修できるようにした。また,講義による専門的な知識の提供とともに,特別支援教育実践研究センターにおける臨床研究の場を数多く設定し,特別支援教育に関する幅広い教育・研究を展開した。
ウ 運営・活動の状況
 講座及び特別支援教育実践研究センターの教員全員による講座会議を26回開催した。また,講座では,院生募集・支援,カリキュラム,予算,人事,特別支援教育実践研究センターの構想・地域連携の5つのワーキング・グループを組織し,それぞれのテーマに関連する課題について改善策を検討した。その後,講座会議において全教員により具体的な方策について議論し,実施した。さらに,3か年にわたる特別教育研究経費(教育改革)による事業も2年目となり,附属学校や特別支援教育実践センターを活用したカリキュラム開発の作業を行い,成果をあげた。
エ 優れた点及び今後の検討課題等
 今年度より特別支援教育が本格的実施となり,特別支援教育講座は特別支援教育実践研究センターとの緊密な連携の下,院生の様々なニーズに迅速に対応できる体制を整えた。特に,小・中学校等において喫緊の課題となっている発達障害に関する教育・研究の充実を図り,特別支援教育実践研究センターにおける臨床教育・研究をより充実させることと,附属学校園,地域の特別支援学校,小・中学校等における実習を積極的に取り入れたカリキュラムを発展させることができた。さらに,来年度は教育改革事業の最終年度となるので,より一層成果をあげることが必要である。
 

 
E 言語系教育講座(国語分野)
ア 組織
  平成19年4月1日現在の構成員は,実技教育研究指導センター所属の教員を含めて9名である。教授4名,准教授4名,講師1名であり,このうち迎勝彦講師が平成20年1月1日をもって准教授に昇任する。
イ 教育・研究の特色
  本分野は,国語学,国文学,国語科教育,書写・書道の4領域で組織されており,学部学生,大学院学生ともにその各領域に所属している。指導の具体はそれら領域における実施を中核とするが,必要に応じて複数領域での指導を柔軟に行っている。卒業論文と修士論文の指導に係る構想発表会・中間発表会は全領域合同で行い,領域にかかわらず議論が展開されている。
  また「上越教育大学国語教育学会」を組織しており,年2回の例会では,卒業・修了生の実践または研究の発表,卒業論文・修士論文の発表および教員の研究発表が行われており,平成19年度末で54回をむかえ,小中高教員を中心とした学外からの参加者も少なくない。学会誌として年1回『上越教育大学国語研究』を刊行し,平成19年度で22号を数える。
  なお,漢文学を専攻する教員を欠くため,大学院(隔年)・学部ともに非常勤講師を招いて充実をはかっている。
ウ 運営・活動の状況
  本年度,国語分野会議は20回開催された。主たる審議内容は,カリキュラムの具体的な内容の検討と担当者,修士論文・卒業論文の指導方法,附属学校(国語科関係)との連携,分野の人事基準の明確化,分野の広報活動,大学院定員充足の方策,入試に関する事柄,「上越教育大学国語教育学会」の運営方針・同学会誌の編集,退職記念祝賀会の企画等である。本年は,カリキュラムと学生指導の方法,教育課程とその周辺の事項,及び学生の定員充足に係る方策,学会運営方針に係る議論が中核を占めた。
エ 優れた点及び今後の検討課題等
  学生の教育・研究指導において分野内の領域を横断した体制が組織されている点が優れている。このため卒業・修士論文の指導・評価ともに広い視野で実施することが可能になっている。これと連動して,学会の運営も活発である。
  大学院は一定の学生数を確保しえているが,その属性は現職研修教員,留学生を含む新卒の進学者,長期履修学生および免許プログラム学生のごとく複雑化している。このため単一の方法では有効に指導しがたい状況が現実に生じている。修士論文の質的水準の維持をはかるのみならず,修了時の状況を予測し,学生の指向に応じたきめの細かい対応が要求される。学部については,基礎学力を養成しつつ採用試験の合格率を上昇させることが求められる。

 
F 言語系教育講座(外国語分野)
ア 組織
 本年度の外国語分野のスタッフは分野所属教員6名,附属実技教育研究指導センター所属教員1名と外国人教師1名を含め,8名であったが,3月末に附属実技教育研究指導センター所属の平野七濤教授が定年退職され,最終的には合計7名となった。
イ 教育・研究の特色
 学校教育学部では,英語の基本的な力を身につけさせるとともに小・中・高等学校及び社会のニーズに対応できる能力の育成を目指して創設された言語系英語コースの7年目にあたり,2年生18名,3年生17名,4年生18名が在籍した。11月に卒業論文中間発表,平成20年2月には卒業論文発表会を開催した。
 大学院言語系英語コースでは,英語教育に関する指導力・教科専門性・実践的技能をあわせもった人材の育成を目指している。平成19年度は,1年生が14名,2年生が20名,3年生(教育職員免許取得プログラム)が2名在籍した。2年生は4月の修士論文構想発表会,10月の修士論文中間発表会,1月末の修士論文審査・試験を経て,3月に巣立っていった。1年生は,前期において様々な授業を履修しつつ6月末までには指導教員を確定し,次年度の構想発表に向けて本格的な研究活動に入った。
ウ 運営・活動の状況
 平成19年度は分野会議を21回開催した。審議した主な内容は「大学院定員充足策について」,「小学校英語教育充実のための方策と人事配置」等である。
 「小学校英語教育」に係わる出前講座を実施し,公開講座開催の準備や上越市教育委員会との連携・協力体制確立につとめた。また,糸魚川市の公立小学校から「小学校英語活動」について支援を求められ,石濱准教授が指導・助言を行っている。
 学会に関わる活動では,平成19年7月21日には,言語系外国語講座が事務局となっている「上越英語教育学会」の第11回大会が本学マルチメディア教室で開催された。県内・県外から大勢の参加者があった。実践報告・研究発表を行うとともに,機関誌『上越英語研究』第8号を刊行して,地域・社会との教育・研究分野での連携を図っている。
エ 今後の課題等
 「マルチメディア語学教材システム」の本格的稼働に伴い,e-Learningを活用した教材開発や自学型カリキュラムの整備などを進めていく必要があると思われる。また,「英語コミュニケーション能力向上」,「小学校英語指導力養成」,「異文化理解マインド育成」の3点について重点的に取り組んでいくことが求められる。とりわけ,「小学校英語教育」については,学内適任者の配置換えにより,教授と准教授による2人指導体制を導入し,社会的なニーズに応え,これらの施策によって大きな成果を上げることは,結果として本学の大学院定員充足にも貢献することにつながると思われる。

 
G 社会系教育講座
ア 組織
 平成19年4月1日における社会系教育講座の構成員は教授6人,准教授6人の計12人であった。従来,教員配置のあった哲学,社会学,法律学等については,依然として補充できていない。そのため当該科目は非常勤講師により開講している。
イ 教育・研究の特色
 当講座では,教育内容にかかわる地理学,歴史学,経済学,倫理学,宗教学などの専門諸科学,その教育方法にかかわる社会科教育学を研究し教育する体制をとっており,学部学生や大学院生は自らの研究課題に基づいて各研究室に所属し,基本的には各指導教員のもとで卒論や修論を作成する。しかしながら,当講座では,研究室単位だけではなく,全教員が協力・連携して学生や院生の教育・研究指導に当たるという共通認識が確立されており,大学院においては全教員参加のもと,修論構想発表会1回と修論中間発表会3回を実施されている。
 したがって,学部生や院生の研究は,教科専門,社会科教育,教科専門内容の教材化という各視点で構成されたものなど多岐にわたり,学際的・総合的な研究に取り組んだものが多くみられる。
 なお,当講座の修了生と在校大学院生が主となり,大学教員や公立学校の教員などで構成される上越教育大学社会科教育学会では,「学会だより」及び学会誌の発行,巡検,例会,研究大会の開催等の研究活動を継続して行っている。本年度の研究大会は10月20日に,本学学校教育総合研究センターで開催され,県内外から多数の現職教員が参加し活発な討議が行われた。
ウ 運営・活動の状況
 本年度,社会系教育講座の教員会議は計18回開催された。ここでは講座代表と各種委員会委員による議事と報告がなされ,学部教育と大学院教育における指導理念と指導体制についての話し合いが行われ,系としての意見がまとめられた。
 院生の修論指導については個別指導のみならず,系全体でも行えるよう集団指導体制を確立している。学部生の卒業研究における指導体制は1教員2名の学生を上限とし,院生の修論指導については1教員2名の院生を原則とする指導体制をとっている。
 実践セミナーT・U「社会」,実践場面分析演習T・U「社会」では,学部3年生と大学院1年生,学部4年生と大学院2年生とが合同で行う授業体制が定着し,授業成果を冊子にまとめ上げるという成果を上げている。
 講座内の共通資料室等の使用については,人501を借用して公民資料室に当てた。人501は資料室仕様であり,開学以来社会系教育講座で使用していたものなので,今後継続してその使用を申請していく。また,同室は全学共通印刷室としても共同利用している。
エ 優れた点及び今後の検討課題等
 卒論及び修論において個別指導と集団指導の指導体制を確立しており,特に修論指導においては全教員参加による数回にわたる研究発表会を開催している。また,実践セミナー・実践場面分析演習では学部生及び大学院生との共同授業体制をとり,その授業成果の発表会を開催すると同時に,授業成果を冊子にまとめている。
 大学院の定員充足について,定員25人に対してM2が20名,M1が18名であり,定員を充足していない。今後,入学辞退者を出さないことと同時に定員充足に向けた取り組みが重要課題としてある。
 また,論文指導及び教育課程の充実のために,教員の欠員補充と有資格者の昇任が急務である。なお,法律学に関しては採用人事を起こし,20年度の教員配置を予定している。

 
H 自然系教育講座(数学分野)
ア 組織
 数学分野の教員スタッフは教授3名,准教授4名の計7名であり,平成19年度末で退職する教員(准教授)が1名である。
イ 教育・研究の特色
 数学を専門とする教員の教育・研究の特色は,基礎教育に大きく貢献していることである。各教員が授業,演習,ゼミ等において学部生,院生に対する魅力ある教育活動に工夫をしている。
 数学教育学を専門とする教員の教育・研究の特色は,ゼミ指導においては,教員と院生が一緒にフィールド(教室)に入り,教育実践研究過程を共有することである。
 このことで,教育現場との密接なかかわりをもった研究を推進し,これを学部・大学院の教育に生かしていることである。特に,また,大学院生の研究活動において,他大学(筑波大学,東京理科大学)他講座(学習臨床講座学習過程臨床分野)との交流,各学会(日本数学教育学会,全国数学教育学会)等における研究交流を積極的に図っている点にも特色がある。
 実践場面分析演習T,U「数学」及び実践セミナーT,U「数学」においては,数学分野の教育・研究を有機的に関連づけるべく,日々工夫と改善を図っている。これら4つの授業科目を学部生・院生及び教員が3つのグループに分かれて実施している。院生一年次生が行うモデル授業に関連して,その数学的発展を学部4年次生と数学専門教員が協同で練り上げ,纏めていることが1つの特徴がある。
ウ 運営・活動の状況
(ア)今年度末の学内配置換に伴う教員の補充を公募した。しかし適任者はいなかったため,再公募することになった。転出者(辞職者)の補充については見通しが定かでない。
(イ)分野会議の開催状況
 概ね毎月開催した。教授会が全学教員が参加することになり,各種委員会の報告等は著しく少なくなった。
(ウ)審議された主な事項
 教員の採用・昇任の際の基準の見直をした。特に,数学教育学を担当する教員の研究活動評価を実情に合うように改めた。
(エ)重点的に取り組んだ課題や改善事項
 数年前から行っている,採用する教員の人事に,教室の教員が審査の過程に参加を実施した。
エ 今後の検討課題
 数学を専門とする教員と数学教育学を専門とする教員による共同作業によって実現し得る,地域の小・中学校及び高等学校における教育活動への支援の在り方について具体的に検討し,これを積極的に推進することである。

 
I 自然系教育講座(理科分野)
ア 組織
 理科分野は6部門(物理学,化学,生物学,地学,理科教育学および理科野外観察指導者養成部門)で構成されている。教員は物理学3名(教授2,准教授1),化学3名(教授2,講師1),生物学1名(准教授1),地学2名(准教授2),理科教育学2名(教授1,准教授1),理科野外観察指導者養成部門1名(教授1)の合計12名で本年度はスタートした。
イ 教育・研究の特色
 自然に興味関心を持ち,積極的に研究に取り組む意欲を育て,科学研究の体験を踏まえて自分自身を発見し,次世代の教育に生かす人材の育成を理科分野は目指している。前年度につづき学部および大学院修士課程における教育・研究指導体制を「物質・エネルギー」「生命・地球」「理科総合」の3グループとし,学生・院生はいずれかに所属し,講義,演習,実験,ゼミナール等の指導を受けながら,理科の教材とその指導方法を学ぶ。この3グループ制は来年度からは解消される。
 平成16年度に創設された「理科野外観察指導者養成部門」は,既存の5部門と連携しつつ,講義・実験を通して,野外観察のあり方や指導方法など実践を重視した指導を行ってきた。「理科野外観察指導実習」は,本学大学院学校教育研究科の授業科目であり,地域の教員に対して専修免許状取得に関わる学習の場を提供している。
ウ 運営・活動の状況
 理科部会を,月ごとに定例で,さらに入学試験実施等のため臨時に開催し,教育・研究と分野運営等に関する計画立案や情報の共有をはかっている。特に,卒業研究・修士論文の研究指導については,年度初めに綿密な年間指導計画を立て,学生に周知させるとともに,教員が連携して指導に当たっている。
 修士課程の広報活動としては,前年度に引き継ぎ,雑誌『教職課程』に「理科野外観察指導者養成部門」他理科分野の概要や入試の日程等の広告を掲載した。本年度はモノクロで10月号11月号と連続させた。さらに,理科のホームページも一部改変した。理科分野の受験者数を増やすために,各種のパンフレットの発送につとめた。
 平成19年度の修士課程1年生は10名(内数で教育職員免許取得プログラム院生7)で,学部理科分野新2年生は14名であった。
 修士論文の研究成果を地域に公開するために,平成20年2月9日(土)に修士論文発表会を本学講202教室で開催した。一人の持ち時間は,発表20分,質疑応答5分,交代1分とした。発表会の案内は全学ホームページに掲載した。修士課程修了生は18名で,学部卒業生は9名であった。
エ 優れた点及び今後の検討課題等
 どの授業科目も学部生や現職教員や教育職員免許取得プログラム受講者など多様な受講生をかかえている。学部・修士課程ともに,教科「理科」の実践的指導力を確実に習得させるためにはカリキュラムを一段と改善する必要がある。

 
J 生活・健康系教育講座(保健体育)
ア 組織
 平成19年4月1日付けで周東和好氏を講師として迎え,本年度の分野教員組織は9名の構成員によって運営が行なわれた。その内訳は,教授4名(市川,伊藤,加藤,直原), 准教授3名(榊原,清水,土田), 講師2名(大橋,周東)であった。また,保健体育分野に在籍した学生数は,学部生44名(4年生15名,3年生15名,2年生14名),大学院生が37名(3年生5名,2年生21名,1年生11名)であった。
イ 教育・研究の特色
 保健体育分野は,体育科教育学,体育学,運動学,学校保健学の4つの柱からなる。そして,これらの基礎的理論と学校現場での指導実践・体験とを有機的に融合させた指導プログラムのもとで,(1)教育実践力に富む教員の養成,および(2)地域の体育・スポーツ活動の支援を目指している。(1)については,大学院の「実践場面分析演習T・U」と学部の「実践セミナーT・U」を融合させた授業において,近隣の小・中学校との連携に努めることにより,教科臨床的研究の機会を増やし,指導実践力を高める努力を行った。さらに,新しい教員養成カリキュラム開発の可能性を追求した。このことは,教員免許状更新講習の開設に向けた体育分野の講習プログラム案の作成にも活かされる結果となった。(2)については, 出前講座6件,公開講座3件,JCV公開講座4件,授業公開1件を実施し,地域貢献面での充実に努めた。また,例年,運動部の課外活動を指導する教員が,個人的に学生を引率して各種スポーツ大会の運営を支援している点も本分野の特色であろう。
ウ 運営・活動の状況
(ア)分野会議等の開催状況
本年度は, 分野教員会議を12回,臨時教員会議(入試判定)を4回開催した。また,必要に応じて分野の庶務係,教務係,入試係および施設係の各教員に臨時の運営会議を委嘱し,分野運営の円滑化を図った。
(イ)審議された主な事項
主たる検討事項は以下に示す通りであった。
・学部・大学院連携授業の充実
・大学入試実技検査における検査方法の妥当性および成績処理ソフトの導入の検討
・分野ホームページの充実と作成
・分野卒業生・修了生名簿の充実
・体育館改修工事と工事に伴う諸事の改善
・緊急危機管理時に備えた分野内教員の連絡網充実
・体育棟および体育館内の不要物品の積極的な廃棄
・教員免許状更新講習の開設に向けての体育分野からの講習プログラム案の作成 等。
(ウ)重点的に取り組んだ課題や改善事項
・大学入試実技検査方法に関する妥当性を検討し,実施方法の改善を図った。また,実技検査結果の成績処理における正確性を高めるため,成績処理ソフトを導入した。
・本学設立後初めての体育館改修工事が行われ,体育館の衛生環境および安全性の改善が図られた。一年間に亘る工期であったため,年間を通じて授業運営や課外活動指導および地域貢献活動に関わる体育館の使用調整を行った。さらに,工事に伴う諸事について検討し,体育館周辺の下履き・上履きの履きかえエリアの設置,体育館1階入口周辺の整備,2階体育館の物品の廃棄と倉庫使用方法の検討等を行った。
エ 優れた点及び今後の検討課題等
 保健体育分野は過去20年以上にわたって, 生活・健康系教育講座の学部・大学院の定員の大半を確保してきた実績を持つ。今年度も,新年度入学予定者として25名の大学院生を確保することが可能となった。したがって,新年度の体育分野は大学院1年生25名,2年生11名,3年生5名の学生規模となり,計41名の大学院生に対して教育・研究活動が実施されることとなった。院生控え室・研究室の拡充および新規教員採用計画の策定が今後の課題であろう。

 
K 生活・健康系教育講座(技術)
ア 組織
 平成19年度の組織は,専任教員が黎子椰教授(平成19年8月1日付けで准教授から教授に昇任),山崎貞登教授,東原貴志准教授(平成19年4月1日付けで採用)の3人,併任として川崎直哉副学長が教授併任,情報基盤センター専任教員の大森康正准教授併任の計5人であった。
イ 教育・研究の特色
 修士論文研究では,技術分野全体の構想発表会を行ったが,中間発表会は行わず学会発表を推奨し,外部評価による質の向上を図ってきた。中学校技術教育実習,学部卒業研究,修士論文研究ともに,附属中学校や公立中学校との連携を重視した教育・研究を行った。修士大学院生6人の進路は,派遣教員2人,教職4人であった。
ウ 運営・活動の状況
 分野会議は,毎月1回定例の分野会議と臨時の分野会議3回の計15回開催した。重点的に取り組んだ課題の第1点は,技術コースを専攻する大学院生の充足率向上である。ここ数年,技術コースの大学院生は少なかったが,他大学の教育学部技術科や私立大学の工学部・農学部等を重点的に,学部4年生に対する院生募集方法の改善を行った。
エ 優れた点及び今後の検討課題等
 優れた点として,平成20年度は修士大学院生が12人合格し,入学辞退者数は2人で,計10人が入学し,定員充足率の向上に寄与した。また,大学院修士論文最終発表会を公開とし,平成20年2月9日(土),上越市高陽荘にて,上越技術・家庭科研究会及び技術分野同窓会の共催により,技術分野が主催した。検討課題の第1は,分野の専任教員が少ないために,人事配置の検討である。第2点は,学部の技術コース専攻生の増加対策が喫緊の課題である。平成19年度4年次生が2人,3年次生と2年次生はゼロである。第3点は,技術コースを専攻する大学院生の充足率のさらなる向上である。

 
L 生活・健康系教育講座(家庭)
ア 組織
家庭分野の教員は、家庭科教育、生活経営学、児童学、食物学、被服学を専門領域とする7名で構成され、教育・研究を行っている。平成19年度は、教授4名、准教授3名の教員により分野運営がなされた。細江教員が、平成19年度海外先進研究実践プログラムでの採択を受け、米国テキサス大学サンアントニオ、ヘルスサイエンスセンターに派遣された(6月1日―10月31日)。 なお、細江容子准教授が平成20年4月1日付けで教授に昇任、本年度の定年退職者の後任人事として家庭科教育学の公募により平成20年4月1日付で講師採用の予定である。平成20年3月末日をもって大瀧教授、滝山教授が定年退職、藤木准教授が転出した。
イ 教育・研究の特色
昨年度から本分野ではカリキュラム検討委員会を開き、授業内容の充実と当該分野の教員が家庭科の教員養成に共通の価値観を持って携わることを目指している。本年度は教育内容を開発した「家庭(ブリッジ科目T)」を開講し、教員全員が担当した。また、毎授業時に授業評価アンケートを行い、授業改善を恒常的に図る体制で実施した。
ウ 運営・活動の状況
(ア)分野会議等の開催状況
本年度は23回の分野会議を開催した。定例の分野会議は、毎月第2水曜日の午後に設定されており、必要に応じて、臨時会議を開催し対処した。
(イ)審議された主な事項
主な議題は、カリキュラム・学生の教育及び研究指導・不適応状態を抱えた学生のサポート・分野所属学生確保対策・各種委員会からの審議事項等であった。
(ウ)重点的に取り組んだ課題や改善事項及び前年度の検討課題への取り組み状況
教員を希望する学生が、教科としての家庭科の重要性及び魅力ある授業実践力をつけるような教員養成カリキュラムの開発と授業実践を目指して積極的に取り組んだ。
エ 優れた点及び今後の検討課題等
実践セミナー及び場面分析演習の授業構築にあたって全教員で授業計画を検討するとともに、毎授業終了時に授業評価を行い学生に家庭科の授業実践力を育む授業実践を目指してきた。このような実績を踏まえ、今年度も授業計画に沿って実施し、さらに「家庭(ブリッジ科目T)」の授業をスタートさせていることなど、分野の全教員が魅力ある授業実践を創りだすことができる教員組織を優れた点と評価している。来年度の課題としては、本年度の定年退職による人事配置は、家庭科教育学のみの採用人事であったこと、加えて教員転出により専任教員の減少したために人事補充の問題がある。また、家庭分野の大学院生をいかにして増やしていくかが今後の検討課題である。

 
M 生活・健康系教育講座(学校ヘルスケア)
ア 組織
 学校ヘルスケア分野は,養護及び健康教育に関する教育研究体制を充実することによって,主に高度の専門的能力と実践的指導力をもった養護教諭並びに栄養教諭の養成を図り,教育実践研究の拠点としての役割を一層充実させ社会的な要請に応えるものとして,平成18年4月に設置し,本年度はその完成年度にあたる。本分野の教員スタッフは学校健康教育学,食科学,精神保健,医科学,看護学を専門とする教授4名,准教授1名の計5名である。
イ 教育・研究の特色
 本分野では,学校教育の円滑な実施とその成果を確保していく上で最も基盤となる児童生徒の健康に寄与する理論や方法を追求し,ヘルスコーディネーターとしての役割を担いうる人材を養成することを目的としている。したがって,児童生徒の健康をめぐる現代的課題に関して,学校健康教育学,食科学,精神保健をはじめとする医科学・看護学などの学問基盤に立脚した多様な授業科目を開講している。本年度は現職派遣をはじめ現職教諭5名と他大学からの進学者2名の大学院2期生計7名が入学し,第1期生3名が修了した。
ウ 運営・活動の状況
(ア)分野会議等の開催状況
 月1回の定例の分野会議をはじめ,4回実施した入試などに関連した臨時の分野会議を開催した。
(イ)審議された主な事項
 完成年度となる本年度は修士論文の指導など教育研究の充実を図ることを意図した課題について協議した。懸案であった実践場面分析演習などの授業内容や進め方については,保健所との協働した取り組み等を取り入れるなど,分野の特性に対応した内容を試みた。
(ウ)重点的に取り組んだ課題
 本分野の特質等を広く社会に知らせて入学希望者を増やす手立てについて検討し,リーフレットやホームページの作成,専門誌への広告掲載などの広報活動を行った。
エ 優れた点及び今後の検討課題等
 大学院の2期生に現職養護教諭4名が入学したことは,本学での養護教諭の養成及び研修についての現場からの要請に応える整備が進みつつあることを示していると判断できる。さらに,充実が図れるよう教育研究面の整備について検討していくことが課題である。

 
N 芸術系教育講座(音楽)
ア 組織
 平成19年度より,教科教育の峯岸創教授を迎え,新たに教授5,准教授5の10人体制で新学期を迎えることができた。しかしながら,平成19年9月に山本茂夫教授が急逝し,ふたたび教授4,准教授5の9人体制となった。
イ 教育・研究の特色
 音楽分野の研究として,実技レヴェルの向上を目指す点も重要な研究目的である。平成19年度は,声楽専攻の大学院生が県大会で受賞するなど好成績を収め,修了式において学生表彰を受けた。
ウ 運営・活動の状況
(ア)講座・分野会議等の開催状況
 講座会議は,毎月第3週の昼休みに開催。
 分野会議は,教授会当日の教授会終了後を定期開催とし,必要に応じて臨時会議を開催した。臨時会議を含めて,夏季休業中,冬季休業中以外は,月2回程度の会議を開催している。
(イ)審議された主な事項
・大学院新1年生の論文指導プロセスに関する共通認識の確認
・分野全体がかかわる授業についての評価方法の共通認識の確認
・大学院定員充足のための方策
・学部2年生の希望者数を増加させるための方策
・国際交流委員担当からの要請に関する分野での対応
・山本茂夫教授を送る会の実施
(ウ)重点的に取組んだ課題や改善事項等
 院生数確保に関する問題に,多面的に取り組んだ結果,20年度に関して良い結果を得られた。
エ 優れた点及び今後の検討課題等
(ア)特筆すべき点
@ 本年度の大学院入試の結果,平成20年度に向けて新1年生15人を迎えることとなり,音楽分野としては目標数に達した。
A 台湾の音楽大学からの教員,学生を迎えて,本学の吹奏楽団との交流演奏会が行われた。
B東洋音楽学会の第58回全国大会を開催し,全国から約10人の研究者,学生を迎えた。本学卒業生,および修了生で現職教員の研究発表,国指定重要無形文化財の柏崎綾子舞を招へい。中越沖地震義援金の募金を行い寄付した。また,初日には,附属小学校生徒によるバリガムランの披露も行われた。
C文部科学省科学研究費について,茂手木,時得の2教員が助成を受けることとなった。
D平成19年度から,学部論文指導についても,実技教員が加わって分野全体で論文指導を行うことに変更した。
(イ)今後の検討課題
 学部卒業研究に関する年度計画を作成し,学生指導に生かすことを協議中。
 懸案事項としては,平成15年度入学大学院生の休学が長引き修士論文執筆が終了していない点である。今年度の修了を目指して分野の課題として取組んでいるところである。

 
O 芸術系教育講座(美術)
ア 組織
 平成19年度は,教授4名,准教授3名(内,実技教育研究指導センター所属教員1名),講師1名の計8名で8月まで運営され,9月1日付でデザイン担当の安部 泰講師が着任し,計9名の教員体制で教育・研究・運営を行った。また,平成20年3月31日をもって太田將勝教授が定年退職された。
イ 教育・研究の特色
 本分野の教育・研究は,院生・学生が美術の多様な専門分野における特色・魅力を十分理解し,それぞれの研究活動に活かすことができるような教育・研究指導体制を目指し進められている。大学院1年生9名,2年生12名,教育職員免許取得プログラム3年生1名,計22名の院生と学部生20名が,ともに授業や学習活動を通して論文や作品制作などの研究活動に意欲的に取り組むことができるよう留意した。
 修士論文の作成に係る指導の徹底を図るべく,修士1年次においては10月に赤倉研修センターにおいて宿泊研修会を行い,翌年2月に構想発表会を行った。同様に,2年次は10月に中間発表会,翌年2月14日に修士論文発表会を行った。修士論文指導に関連し,平成19年9月開催の第45回大学美術教育学会(神戸大学)において,院生3名が研究発表を行っている。
 院生・学生の作品発表については,平成20年2月に第24回卒業・修了制作展を高田図書館と大学を会場に開催し,3月には大学院1年生による院生展を高田図書館で行った。また,全国的規模の展覧会(国展,新制作展,妙高四季彩展,全国大学版画展など)での入選や,上越市展,妙高市展等での入選,受賞が数多くあった。さらに,信州大学との連携による「立体造形合同展覧会」や地域のイベントへの参加やワークショップの開催など,ほとんどの院生・学生がそれらの活動に参加し,大きな成果をあげた。
ウ 運営・活動の状況
 分野会議は,定例12回,臨時5回,計17回開催された。その主たる審議事項は,カリキュラムの具体的な内容の検討,修士論文・卒業研究の指導方法,分野の人事基準,大学院および学部の定員充足に係る対策,教員人事計画と公募などであった。
 また,特に本年度重点的に取組んだ課題や改善事項としては,学部前期入学試験における実技検査(美術)内容の再考と,学部学生指導の充実があげられる。実技検査の内容については過去の問題検討と現状分析の結果,新たな問題作成の方向を模索することとなり,学部学生の教育指導に関しては,卒業までの体系的指導の充実を図るためにワーキンググループをつくり検討を重ね,来年度から段階的に実施する運びとなった。
エ 優れた点及び今後の検討課題等
 教員定員が約半分になっている中で,以前にも増して充実したカリキュラムを構築するために全員で協力しながら教育・研究にあたっており,しかも美術分野にかかわる授業や活動だけではなく,全学的なものを多くの教員が担当していることが優れている点である。
 しかし,近年,大学院および学部の定員がかならずしも充足されていない状況を鑑み,広報活動を中心に,修了・卒業生との連携,他大学との情報交換・協力体制等により,現状を改善することが緊急の課題である。また,教育職員免許取得プログラム制度が導入され初めて修了生を出したわけであるが,その指導過程の中で今後取組むべき課題も浮かんできた。大学院生の多様な希望に応じた研究指導体制を,教員削減の中でいかに築いていくのか,さらに検討していかなければならない。また,学部学生に関しては卒業までのセミナー運営について,特に学生の意欲的な研究態度を育む指導のあり方について,分野全体で取組んでいく必要がある。