6 附属施設等
(7)特別支援教育実践研究センター
@ センター
ア 設置の趣旨(目的)及び組織
中央教育審議会答申「特別支援教育を推進するための制度の在り方について(平成17年12月8日)」において、障害のある幼児児童生徒の教育の基本的な考え方について、特別な場で行う「特殊教育」から、一人一人のニーズに応じた適切な指導及び支援を行う「特別支援教育」に発展的に転換していくことが、今後の方向性として示された。関連する法の改正・整備も進められており、「特別支援教育」に適切に対応するために、平成19年4月1日から「障害児教育実践センター」から「特別支援教育実践研究センター」へ名称を変更した。
特別支援教育実践研究センターは、「特別支援教育における実践的な教育及び研究の推進を図るとともに、特別支援教育諸学校教員の研修を行う。」ことを設置目的にしている。またその職員配置は、特別支援教育実践研究センター長(兼務)、センター兼務教員(@教授(1)、A講師(1)、B助教(1))、及び事務職員(非常勤)となっている。
センターはその設置目的に関して、(1)臨床部門(@教育臨床、A教育相談)、(2)研究部門、(3)研修部門(@指導者研修、A教材教具開発)の3部門5領域に関する機能を有しているが、その運営には特別支援教育コースと一体となってあたっている。
 
イ 運営・活動の状況
臨床部門に関しては、@教育臨床において、特別支援教育コースに所属する大学院生と特別支援教育臨床実習・障害児応用教育臨床実習を受講する大学院生を対象にして、特別支援教育に関する臨床実習の指導を行っている。A教育相談においては、特別支援教育コースの大学院生を含めたチームにより、本センター兼務教員(センター教員)及び特別支援教育コースに所属する教員の指導のもとに、地域の障害のある子どもの教育診断、発達援助、日常生活の指導・援助について、保護者や学校等の担当者などを対象に、面接相談や各種検査(総合的な教育診断、早期発見)、継続指導、経過観察を行っている。併せて、障害のある子どもに関わる人々の環境の調整、地域の医療・相談・教育機関への紹介やケースワークも実施している。研究部門に関しては、障害のある子どもの教育実践に関する総合的な研究を行っているが、特別支援教育に関する最新の研究課題や教育行政・施策の動向を踏まえた研究とともに、過去の優れた理論や指導技術の発掘にも取り組んでいる。平成20年3月には上越教育大学特別支援教育実践研究センター紀要第14巻を刊行し、研究で得られた成果を公表し続けている。研修部門に関しては、@指導者研修において、研修セミナーを実施している。これは地域の特別支援教育関係者への専門的知識や内外の最新情報の普及・啓蒙としての地域貢献活動であるとともに、特別支援教育コースの大学院生にとっては、この研修を通して大学院のカリキュラムを超えた幅広い知識や情報を獲得することができる。平成19年度は、特別支援教育実践研究センター設立20周年にあたり、また特別支援教育コースによる「特別支援教育研究経費(教育改革)関連事業:特別支援教育のための大学院における教員養成・研修システムの開発」事業(平成18年〜20年度)の中間年であることから、記念事業として特別講演、及びシンポジウムを開催した。並びに、平成19年度は、上越地区特別支援教育懇談会、新潟県認定講習会、平成19年度附属学校初任者研修会、上越自立活動研修会(隔月)、上越言語障害研究会が開催された。A教材・教具の開発に関しては、学校等における特別支援教育実践に資する教材・教具及び障害のある子ども一人ひとりの個別のニーズに合った教材・教具を開発し、実際の臨床実践活動を通じて教材・教具の有効性を検証することによって、より効果的な教材・教具の開発について検討している。
 
ウ 優れた点及び今後の検討課題等
臨床部門(@教育臨床、A教育相談)の取り組みは特別支援教育コースの大学院生の実践的指導力を培うことに直結している。特別支援教育実践研究センターに来所する障害児の指導原理、技術を学習させ、VTRを用いた場面分析やコンピューターを用いたデータ分析などを習得させている。また、研究部門において取り組んでいる障害のある子どもの教育実践に関する総合的な研究は、特別支援教育における実践知の開発を支える上で欠かせないものになっている。さらに、研修部門(@指導者研修、A教材教具開発)の取り組みは、地域の特別支援教育関係者への専門的知識や内外の最新情報の普及・啓蒙としての地域貢献活動の中心になっている。これらの活動が、特別支援教育コースの教員と一体となって、センターの施設・設備を十分に活用して進められている。
 
A 運営委員会
ア 設置の趣旨
特別支援教育実践研究センター運営委員会は、「特別支援教育における実践的な教育及び研究の推進を図るとともに、特別支援教育諸学校教員の研修を行う。」ことを設置目的にしている。構成員は、特別支援教育実践研究センター長(兼務)、センター兼務教員(@教授(1)、A講師(1)、B助教(1))、及び事務職員(非常勤)となっている。
 
イ 運営・活動の状況
平成19年度第1回特別支援教育実践研究センター運営委員会が平成19年7月25日(月)に開催され、平成18年度事業報告、同決算が協議され、引き続いて平成19年度事業計画、同予算等について協議した。運営委員会の後、平成19年度第1回特別支援教育実践研究センター紀要編集委員会が開催され、同紀要の名称を上越教育大学特別支援教育実践研究センター紀要に改称すること、及び巻数については継続することとし、上越教育大学特別支援教育実践研究センター紀要第14巻、及び同編集幹事等について協議された。
 
ウ 優れた点及び今後の検討課題等
特別支援教育実践研究センターでは、前述のように地域社会への貢献と教員研修・支援を目的として、県内外の特別支援学校・学級・通級指導教室を担当する教員を対象に、各種の研修・研究会の開催や教育相談をセンター竣工時(平成4年)より継続して行ってきた。その一環として、毎年1〜2回、特別支援教育に従事する研究者や実践家を講師に招いた研修セミナーを開催している。研修セミナーは、19年度まで計75回実施され、毎回、学外の教員の参加は非常に多く、地域からの期待は大きい。最近では、従来の特別支援学校・学級・通級指導教室の教員だけでなく、通常学級に在籍する学習障害やADHD、高機能自閉症児への教育的支援への助言・指導を求める教育相談のニーズと実績が顕著に増加している。また、センターが所有する各種の心理・生理・教育検査の実施に関わる講習会のニーズは非常に高いが、講習会を実施することができる施設・設備は不十分である。このような地域からのニーズに応えるための教員研修・支援機能の拡充が必要であり、具体的には特別支援教育に関わる情報や資料提供の機能(ライブラリィ)を備えた地域支援リソースセンター(仮名称)の増築等が課題として挙げられる。