【心理臨床講座】
 

 
内 田 一 成(教 授)
 
<教育活動>
授 業 
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
○授業形態,学習(研究)指導法等の教育方法に関する取組状況
 全科目ともスライドの配布資料(2単位科目で約30頁)を配り,スライドショウやVTRを中心に講義している。受講生の成績評価はもちろんであるが,その前提である教育の質,授業の質に注意を払うようにしている。臨床心理士試験の合格者数,質の高さが世間から問われることを認識した責任ある教育を日々心がけている。
 授業評価によれば,どの科目の授業方法についても内容についても総じて高い評価であった。大学院科目のうち,「臨床心理学特論T」は,臨床心理学の「原論」に関するもので,かなりの専門的知識があってはじめて深くて正確な理解が可能になるといえる科目であるが,臨床心理士資格取得希望で入学してくる学生の心理学全般並びに臨床心理学の基礎知識についても個人差が著しく大きく,なかなかこの前提条件を満たせないなかで,専門的内容も深めていかなければならない難しさがあることは否めない。学生の授業内容に対する満足度は高く,有意義であったと受け止めているようだが,しかしその中にあってより深く正確な理解が可能になるようにもっとわかりやすい話し方や教授法の工夫が必要と考えられる。それとともに,授業の方法や内容についての評価の高さに比してシラバスの事前確認が低く(学期の途中でシラバスの内容にない追加のスライド資料にそった講義を実施),100問試験の予告にもかかわらず,受け身の態度であることが試験成績からも伺われたことが大いに気になる点である。本授業をよりよく理解するために必要な専門的知識についても事前に資料を配付しているが,これについても事前指導が必要と考えられる。それとともに,院生がこの「原論」についても深い理解が増し,かつ課題解決的な態度で授業に臨むことができるような配慮・工夫を行いたい。
 「発達臨床心理学特論」は新たな学問領域で,かなりの学際的な専門知識があってはじめて深くて正確な理解が可能になると言える科目である。そのため,本授業をよりよく理解するために必要な基礎理論・技術について触れながら,発達上の諸問題,その成立機序と治療理論,並びにその代表事例の紹介等を行っているが,授業方法や授業内容の適切さや興味関心などについて4以上の評価は70〜80%にとどまっていたので,より深く正確な理解が可能になるように更なる工夫が必要と考えられる。自由記述では,「PPTは1枚に多くの情報が入りすぎ,好みでなかった」と言う指摘もあったが,「人間の一生を再考する,すばらしい授業でした。唯一,部屋(教室)が狭かったので,もう少し広い部屋(教室)にしてほしかったです。」「生から死まで,半年間で学習できたのでよかったです。」「発達臨床心理学について非常に有益な示唆を得ることができました。」「ありがとうございました!!」の労が労われるような指摘が多く,身が引き締まる思いとともに,よりよい授業に向けてさらなる工夫を心がけていきたいと思う。それとともに,院生がこの科目についても能動的,かつ課題解決的な態度で授業に臨むことができるような配慮・工夫をしていきたい。
 学部の「臨床心理学」では,授業内容に対しては総じて有意義であったと受け止めているようだが,しかしその中にあってより深く正確な理解が可能になるようにもっとわかりやすい教授法の工夫が必要と考えられる。シラバスの事前確認は低く,受講生が後方2・3列に密集して着席し,スライド,並びに臨床面接や心理検査場面のビデオを見ないで内職したり,居眠りしたりする学生が少なくないので,授業のはじめに各受講生が何を期待して本授業を履修しようとしたのか,そのあたりの把握から検討する必要性を感じた。受け身の態度ないしは勉強不足であることは,試験成績からも露骨に伺われたことが大いに気になる点である。自由記述では,「基礎知識をつまないと理解困難と感じた」という指摘があり,もっとわかりやすい授業の工夫も必要と考えられるが,他方,この科目は応用心理学の一分野であるためもっと基礎心理学の勉強をしてから受講してほしいという思いもある。
○成績評価法に関する取組状況
 特に講義科目においては安易に論述形式やレポートにするのではなく,大学の社会的責任に応え,入学後の学力向上に応えるため,あらかじめ各授業の学習目標,授業計画,並びに成績評価基準を明示し,各授業のユニットごとの達成度の観点で厳正に評価する必要性を感じており,それに向けて努力している。
【観点2】教育の達成状況
○ 進学や就職などの卒業(修了)後の進路の状況から判断した取組状況
 学部4年生を2名担当し,卒論はいずれも教師になっても活かすことのできる児童生徒の心理的な問題に関する調査研究であり,1名は中学校教員に採用され,もう1名は臨時採用で来期の教員採用試験に向けても奮闘中である。
 大学院1年次生6名,2年次生は4名担当した。2年次生のうち,教員派遣生の1名は修了後学校現場へ復帰した。ストレートマスター2名と社会人入学者の3名の進路は,それぞれ医療法人の精神病院常勤臨床心理職,教育センターの常勤カウンセラー,社会福祉法人の発達支援センターの常勤臨床心理職であった。また,平成19年度臨床心理士認定試験には,昨年度修了した3名が受験し,最終合格者はそのうちの2名にとどまった。
 博士課程3年次生1名を担当し,本院生は臨床心理士資格を取得済みで,心療内科の臨床心理士やスクールカウンセラーとしても活躍中であるが,この3月には博士号(「博士(学術)」)を授与され,現在,大学教員公募に応募している最中である。
研究指導
【観点1】学部
 教育に関わる臨床的な実践力の修得並びに教員採用試験等に向けての動機づけの増進を図るため,教員派遣生の大学院生とともに研究指導を行っている。学部生2名の卒論テーマは以下のとおりである。
@「家族イメージ法に関する基礎的研究―イメージの特徴,精神健康度,学校生活満足度との関連」
A「レジリエンスと心の居場所が学校生活満足度に及ぼす影響」
【観点2】大学院(修士過程,博士課程)
 修士課程の臨床心理学コースにおいては「practitioner-scientist model」並びに「実践即研究」の観点から,基礎研究はもとより,日常の臨床活動を科学的研究に高められる研究指導を行っており,今年度はゼミ生全員が紀要に掲載したが,順次,全員が学会誌掲載(紀要論文のいくつかは学会誌でも十分採択されるレベルのものであるが,在学中に成果をいち早く公表したいという事由を尊重し,紀要投稿を優先したが)を達成できるように努力したい。なお,修士課程4名の修論テーマは以下のとおりである。
@「児童自立支援施設に在籍する生徒への集団認知行動療法の臨床効果」
A「適切な自己評価技能の習得がADHD児の行動改善に及ぼす臨床効果」
B「ストレスモデルにおける対人関係能力と社会的スキルが職場ストレス反応に及ぼす影響」
C「中学生の自己評価と予測自己評価のズレが学校不適応感に及ぼす影響-生物-心理-社会モデルを通して-」
 博士課程の院生は,3名とも「practitioner-scientist model」に立脚し,すでに臨床心理士の資格を取得しており,日々の臨床実践と研究活動の二本立てで活躍中である。3年次生1名は博士論文を提出し,この3月に博士号(博士:学術)を授与されている。なお,3名の博論テーマは以下のとおりである。
 @「抑うつへの反応スタイルに関する研究-ruminationの分類に着目して-」
 A「心気症傾向の発現過程に関する研究」
 B「高校生のドロップアウトに関する学校臨床心理学的研究」
その他の教育活動
福岡教育大学で集中講義。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】@平成20年3月:『新たな非行分類と類型別CBTモデルの提案』(共著) 上越教育大学心理教育相談室紀要 第7巻, 1-9.
A平成20年3月:『ストレスモデルにおける対人関係能力と社会的スキルが職場ストレス反応に及ぼす影響』(共著) 上越教育大学心理教育相談室紀要 第7巻, 11-24
B平成20年3月:『中学生の自己評価及び予測自己と学校適応感との関連―生物-心理-社会モデルを通しての予備的検討―』(共著)上越教育大学心理教育相談室紀要 第7巻, 25-35.
C平成20年3月:『適切な自己評価技能の習得がADHD児の行動改善に及ぼす臨床効果』(共著)上越教育大学心理教育相談室紀要 第7巻, 59-71.
学会活動への参加状況
@平成19年度日本福祉心理学会理事等
◎特色・強調点等
 世界最高の心理学のバイブルとして半世紀の間改訂し続けられ,ベストセラーを誇っている,Atkinson,R.L., Atkinson,R.C., Smith, E. E., Bem,D.J., & Nolen Hoeksema,S.(2000)による「『Hilgard’s Introduction to Psychology』(13th.Ed.). Fort Worth: Harcourt College Publishers」(内田一成監訳(2002)「『ヒルガードの心理学』第13版 ブレーン出版(全1540頁)」に引き続き刊行された,Smith, E.E., Nolen-Hoeksema, S., Fredrickson,B.,& Loftus, G.R.(2003)による「『Atkinson & Hilgard’s Introduction to Psychology』(14th.Ed.).Wadsworth/Thomson Learning: Belmont」(内田一成監訳(2005)「『第14版 ヒルガードの心理学』ブレーン出版(全1100頁) (本文18章,補遺2章構成:第1章「心理学の特徴」,第2章「心理学の生物学的基礎」,第3章「心理的発達」,第4章「感覚過程」,第5章「知覚」,第6章「意識」,第7章「学習と条件づけ」,第8章「記憶」,第9章「言語と思考」,第10章「動機づけ」,第11章「感情」,第12章「知能」,第13章「人格」,第14章「ストレス,健康,コーピング」,第15章「心理的障害」,第16章「心理的障害の治療」,第17章「社会的影響」,第18章「社会的認知」,補遺「測定と統計的方法」,「用語解説」)の第2刷が2007年5月に刊行され,現在好評発売中である。
 本書は最新の心理学の知識を読者に提供するものとして世界8カ国語に翻訳され,全米の139の大学がテキストに指定し,英語版だけで毎年50万部を売り上げているという,心理学のバイブルとまで称されている世界最高の心理学書と言われ続けてきている。監訳本は,日本の心理学の教科書概念を変えたとも言われるほど値段は高いが (18,900円),心理学学徒必携の書, 臨床心理士指定大学院入試の必携書,並びに臨床心理士資格認定試験受験のための必携書とも言われていて,多くの大学・大学院で教科書・参考書指定されているように,世界的名著の出版は学問の底力を高め,持続性のある大学貢献にもなると考えられる。
 
<社会との連携> 
@独立行政法人国立病院機構さいがた病院倫理委員会委員
A新潟県カウンセラー学校派遣事業(雄志中学校,板倉中学校)(平成19.4.1〜平成20.3.31)
 

 
加 藤 哲 文(教 授)
 
<教育活動>
授 業
 大学院担当授業の「心理アセスメント演習U」では, 臨床心理学コース学生を対象に心理検査法の演習を行った。特に学校教育場面で必要とされている知能検査法を中心に, 実際の検査機器を用いた実習指導を行い, その後に検査結果の見たて方について, 実際のデータをもとに小グループによる実地指導を行った。また「臨床心理基礎実習」及び「臨床心理実習」では, 実際の心理臨床業務に準拠した実習を, 心理教育相談室及び外部実習機関(病院や教育センター等)で行い, 1年間に渡り, 毎週3〜4時間をかけてケース担当実習時の指導とケース担当前後の打ち合わせやケースカンファレンス及びスーパービジョンを行った。「応用行動分析学特論」では, 臨床心理学コースの院生だけではなく, 障害児教育コースや発達臨床コースの学生も多数受講する中で, 教育相談, カウンセリング, 障害児教育, 学級経営等に役に立つ指導・訓練やコンサルテーション方法の実際について, 多数の事例を取り上げながら「応用行動分析」の最新知見や技法の実際を講義した。また, 「発達障害学特論」では, 最近の学校現場で最も関心が高まっていることもあり, 多数の受講生のもとで開講された。最新の話題(新聞等で頻繁に報道されている話題も含めて)を取り上げ, 発達障害に関する誤解や偏見を解き正しい理解を促進することと, 学校での教育的支援の具体的な方法論について講義を中心に授業を進めた。以上の各授業では, 毎回の印刷資料の配布, パワーポイントやビデオ教材の使用を通して, 知識や技術を実践的にリアルに再現できるよう工夫をした。
研究指導
 修士課程2年次生4名及び1年次生7名について,不登校等の学校不適応, 発達障害や特別な教育的ニーズのある児童生徒への臨床心理学的な支援方法について研究指導を行った。その結果2年次生は, 「就学前発達遅滞児の身辺処理技能の形成におけるコンジョイント行動コンサルテーションの効果」, 「適応指導教室における不登校生徒の自己学習に及ぼすセルフマネージメント訓練の効果」, 「就学前の発達障害児の社会的相互作用の促進に及ぼす仲間媒介法の効果」といった3つの修士論文を完成させた。これらはいずれも平成20年度に開催される各種学会で発表される予定である。また修士課程1年次生は, 不登校や発達障害への支援方法に関するサブゼミにおいて, ほぼ1年間にわたって欧米文献の購読や研究方法の検討を行ってきたので, これらへの指導を毎週定期的に実施してきた。また学部学生は4年次生1名の指導を行い, 卒業研究として「障害のある幼児をもつ保護者のストレス」に関する調査研究を行った。さらに, 新潟県派遣の長期研修生1名(1年間)と, 鳥取県派遣の長期研修生1名(6ヶ月)の指導を行った。
その他の教育活動
@富山大学(教職課程)で「生徒指導論T」, A新潟県立看護大学で「心理学」, B横浜国立大学教育人間科学部で「行動情緒障害の心理」, 青山学院大学大学院で「障害者の心理」の集中講義を行った。
A上越教育大学公開講座で,「応用行動分析で特別支援教育が変わる」と題する3日間の講師を務めた(平成19年7月30日〜8月1日)
◎特色ある点等
 臨床心理学及び学校心理学を基礎として,学校現場で役に立つ,教育相談やカウンセリング,及びコンサルテーションの方法論ついて教育研究指導を進めてきた。特に, 最近では小中学校の通常学級に在籍している軽度発達障害のある児童生徒の支援や, 彼らを担当する教員への支援に関わる方法論の提供が求められていることから, 今年度の教育研究指導も, 学校教育現場におけるこれらの研究を希望している学生や研究生に寄与できたと思われる。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
著】@平成19年5月:『心理療法プリマーズ:行動分析』(共著)ミネルヴァ書房
A平成19年11月:『発達障害の子を育てる家族への支援』(共著)金子書房
B平成19年12月:『学校で生かせるアセスメント』(共著)明治図書
論】@平成19年7月:『個別の指導計画作成を主体とした研修プログラムが特別支援教育コーディネーターの行動に及ぼす効果』(共著)LD研究, 第16巻第2号 pp.164-1809
A平成20年3月:『学校における「連携」の必要性とそれを実現するための諸課題』(単著)上越教育大学心理教育相談研究, 第7巻第1号 pp.73-78
B平成20年3月:『職人芸の継承のためにするべきこと』(単著)実践障害児教育(学習研究社), 2008年3月号pp.2-3
発】@平成19年8月:『埼玉県における特別支援教育の行方:学びのコミュニティはどこまで拡がるか』(共)日本行動分析学会第25回大会公開シンポジウムp.5.
A平成19年9月:『生涯発達支援を実現するための「学び」のコミュニティの創造』(共)日本特殊教育学会第45回大会発表論文集
B平成19年9月:『臨床心理士の資格を有する教師の現状と課題』(共)日本心理臨床学会第26回大会発表論文集
C平成19年11月:『連携を科学する:「連携」がもたらす成果を確実なものにするために』(共)日本LD学会第15回大会発表論文集 p.280
D平成19年11月:『学級の中での特別支援教育に対する行動療法の貢献:支援法略の決定・支援実行のにおける行動的アセスメントの役割』(単)日本行動療法学会第33回大会発表論文集, p.73
他】@平成19年7月:『心理教育相談室の役割と地域貢献への取り組み』(単) 上越教育大学学園だより, 2007年9月号, p.13
A平成20年3月:『特別支援教育が学校を変える:発達障害児の指導法研究』(単) 新潟文化(新潟日報社)第6号, pp.14-15
B平成20年3月:『特別支援教育における養護教諭の役割:心のサポートからコーディネートまで』(単) 埼玉県養護教員会研究紀要, 第28集, pp.47-62
学会活動への参加状況
@5月25日〜31日:国際行動分析学会第33回大会出席(米国サンディエゴ市)
A8月3日〜5日:日本行動分析学会第24回大会出席・発表
B9月27日〜30日:日本心理臨床学会第25回大会出席・発表
C9月22日〜24日:日本特殊教育学会第45回大会出席・発表
D11月23日〜25日:日本LD学会第15回大会出席・発表
E11月30日〜12月2日:日本行動療法学会第18回大会出席・発表
F日本行動療法学会理事・編集委員
G日本発達障害学会評議員
H日本行動科学学会運営委員
◎特色・強調点等
 主として通常の学級における特別な教育ニーズのある児童生徒への支援方法について研究を進めてきた。そして教育相談室等での児童生徒への直接的な指導や訓練のみならず, 学校や家庭における教師や親を対象とした行動コンサルテーションの方法論の研究を進めてきており, 今年度もそれらの成果を4つの学会で開催したシンポジウムで公表した。したがって, 今年度もこの領域の研究成果の蓄積や研究レベル向上に貢献したと考えられる。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@平成19年4月〜20年3月:新潟県教育委員会学校派遣カウンセラー(上越市柿崎小学校, 上越市春日小学校, 妙高市新井小学校)
A4月〜3月:上越市教育委員会就学支援委員会委員
B4月〜3月:新潟県特別支援教育推進体制調査研究委員会委員長
C4月〜3月:上越市特別支援教育巡回相談事業全体会委員長
D新潟県臨床心理士会副会長
E4月〜3月:新潟県発達障害者支援協議会委員長
F4月〜3月:さいたま市特別支援教育推進体制検討委員会委員長
G6月, 9月:新潟県特別支援教育推進員養成研修会講師
H9月:新潟県立総合教育センター発達障害児教育講座講師
I8月:八戸市総合教育センター特別支援教育特別支援教育研修会講師
J8月:新潟県保育士会障害児保育講座講師
K5月, 8月:日本LD学会・特別支援教育士養成研修会講師
L9月:石川県教育センター特殊教育研修会講師
M11月:兵庫県障害児教育センター講師
N7月, 8月:富山県総合教育センター特別支援教育研修会講師
O5月:国立特殊教育総合研究所・短期研修会講師
P8月:岩手県総合教育センター特別支援教育研修会講師
Q4月〜3月:新潟県教育委員会高等学校教育課・定時制通信制チャレンジ委員会講師
◎社会への寄与
 学内においては,1年間にわたって,心理教育相談室室長及び相談員として,外来ケースへのカウンセリングや教育相談,学校の教師等へのコンサルテーションを行ってきた。また,学外での寄与としては,主として,新潟県やさいたま市の各種協議会・委員会の委員長を務め,スクールカウンセラー等の巡回指導・相談業務,学校,教育センター,教育委員会,保育関連施設で開催される教職員研修会での講師を担当した。特に,不登校や非行,発達障害に関わる問題をテーマとした講演や,指導助言が大半を占め,現在の学校現場でのニーズに多大な貢献をしたといえる。
 

 
阿 部   勲(准教授)
 
<教育活動>
授 業
 受講者が,講議した内容の一つひとつをただ単に暗記したり,理解するだけでなく,その内容をめぐって,自分なりに考え,問題を発見するよう努力してきた。
研究指導
 学部,大学院ともに自分で問題意識をもち,自分で研課題を設定し,自分でその解明に努力するよう,こちらからの指示を極力さけて,学習支援に努めた。
その他の教育活動
@上越保健医療福祉専門学校「発達心理学」
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@新潟労災病院倫理委員会委員
 

 
五十嵐 透 子(准教授)
 
<教育活動>
授 業
学部:カウンセリング基礎実習・演習では,コミュニケーション・スキルの基礎的なスキルの向上に加え,地域の教育や医療領域での精神保健福祉活動での体験学習を通し,自分自身の精神障害に対する偏見や誤解などを見つめ,今後の教育における精神障害に対する的確な理解を促す教育につながるような指導を行った。
大学院:心理臨床の専門家としての,自他ともの理解を深めると同時に“あるがまま”の状態を受容することとに関し教育・指導を行った。
 海外教育(特別)研究において,アメリカでの体験学習の指導と同伴:コミュニケーション能力と言語と社会文化的関連,アメリカと日本の教育現場の比較,主体的かつ積極的活動を通し,異文化体験のなかで,柔軟性のある多角的視点で現象をとらえ,児童生徒の理解と対応を,体験を通して学ぶことを促進した。
その他の教育活動
@金沢大学大学院医学系研究科 非常勤講師
A愛知県立看護大学 大学院 非常勤講師
B新潟県立看護大学 特別講義
C学校や地域での講演や研修会
 
<研究活動>
著】@平成19年5月:『ヘルスケア・ワーカーのためのこころのエネルギーを高める対人関係情動論:“わかる”から“できる”へ』 (単著)  医歯薬出版
論】@平成20年3月:刺激統制法とは?Q&Aでわかる肥満と糖尿病3・4 Vol 7 (2) pp.188-191
A平成20年3月:家庭教育における“しつけ”と課程と学校とのかかわりの歴史的変遷(共著)上越教育大学 心理教育相談研究,第7巻,pp.79-92 
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@精神保健福祉機関での心理臨床実践活動
A教員や看護職を含むヘルスケア・ワーカーのメンタルヘルスに関する研修講師(長岡市・新潟県・神奈川県など)
B支援者自身のメンタルヘルスに関する研修講師(新潟県)
C中越地震に関する児童・生徒・教職員の“心のケア”事業でのカウンセラー
D中越沖地震での協働や連携に関する研修(新潟県)
E高等学校における生徒や保護者へのカウンセリングと生徒理解に関するコンサルテーション
F高等学校評議委員
G被害者支援アドバイザー
H国際交流や外国人への心理的サポートへのコンサルテーション
 

 
越   良 子(准教授)
 
<教育活動>
授 業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
 授業時に課したレポートのいくつかを全体に向けてフィードバックすることで,知識・理解の促進と共有を図った。
【観点2】教育の達成状況
 学級集団心理学および社会心理学に関する基礎的知識を習得させることは,ある程度達成されたと考えられる。院生・学部生自身がそれまで持っていたのとは異なる新たな視点をもって,学級集団や人間関係について理解することが可能になったと考える。 
研究指導
【観点1】学部
 論理的な思考の展開を重視し,学生が自身の考えを自身の言葉で,論理的に,的確な文章で表現できるようになることを目標として指導した。 
【観点2】大学院
 現職院生に対して各自の問題意識の深化を求め,現場で独り立ちして実践的研究を行えるようになるためにも,論理的に思考し記述するという点を重視して指導した。そのために,心理学の先行研究の精読と,心理学研究法の要因計画法に則った分析を重視した。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 目の前の,当たり前と思っていた現象を自身で理解しようとし,そのために文献を読み,院生・学生同士が議論し,教え合い助け合うことを奨励している。院生・学生が同輩の力を相互に借りて自身の研究を深められる研究体制を目指している。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】@平成19年7月:『教師の児童認知の多様性が児童の級友認知と級友関係に及ぼす影響』(共著) 学校心理学研究 第7巻1号 pp.21-33.
A平成20年2月:『ユーモアが学級内の局所的及び大局的対人関係と学級風土に及ぼす影響』(共著)上越教育大学研究紀要 第27巻 pp.73-83.
B平成20年3月:『学級集団過程に関わる社会心理学の動向』(単著)教育心理学年報 第47集(印刷中).
学会活動への参加状況
@「教育心理学研究」常任編集委員
◎特色・強調点等
 学級内の人間関係のダイナミックスが学級集団を動かしていくプロセスについて,教師と児童の認知,ユーモア行動において実証的に明らかにされた。 
 

 
角 田 京 子(准教授)
 
 

 
内 藤 美 加(准教授)
 
<教育活動>
授 業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
 大学院の講義では自閉症など発達障害の特徴や社会性の発達に関する最近の認知発達心理学的な知見に基づく研究成果を紹介し,子どもの発達に関する心理学的な理解を促した。成績評価は基礎的事項に関する理解度を調べるために論述試験によった。大学院および学部の実験では,レポートの添削及びその解説を行い,心理学的データの分析方法や研究計画法,研究報告書の作成方法を習得させた。基準点に達しないレポートは再提出を課し,修士・卒業論文につながる心理学の報告書として最低限の形式と内容を備えたものを評価対象とした。
 学部の概論では,心理学入門としての位置づけを明確に説明した上で,心理学の面白さを体験させることを目標として学生が内容を理解することに重点を置いた。講義3回ごとに1回の割合で学生に質問表を提出させ,質問の解説を行った。講義内容の定着度を期末試験によって評価した。
【観点2】教育の達成状況
 学部1名の卒業生は,東京聖徳大学大学院(臨床心理学)に合格した。大学院2名の修了生のうち,東京都現職派遣の1名は,東京都板橋区立の中学校に復職し,学校心理士資格取得の申請を行った。もう1名は新潟県の心理職臨時職員として勤務するとともに,地方公務員採用試験受験準備を行っている。
研究指導
【観点1】学部
 学部生には最低週1回のゼミを設けた。3年生1名は1月まで認知心理学の翻訳書講読を,その後は卒業研究準備のための雑誌文献講読を行った。学部4年生1名に対しては,年間を通じて卒論研究のための文献講読と保育園での実験(3〜6歳児計76名)を行わせ,卒業論文を執筆させた。保育園への研究協力依頼や成果報告などに本報告者が付き添い,学生に対外的な依頼や交渉能力を身につけさせた。
【観点2】大学院
 2年生2名に対して,学部と同時開催の週1回の定期ゼミに加えて不定期にゼミを行い,修士論文のための文献講読,調査項目作成,保育園での実験(3〜6歳児計76名)および論文執筆指導を行った。特に実験および調査データの収集と分析,結果の解釈について助言を与え,原稿に丁寧に朱を入れて論文の向上を図った。免許プログラム2年生1名に対しては,1月中旬まで定期的に国内外の心理学雑誌論文を講読させ,2,3月には修士論文の研究計画策定に助言を与えた。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 以上の教育活動における特色の第1は,講義への模擬実験の導入である。こうした模擬実験を頻繁に行うことにより,心理現象の面白さを実感させ,その心理学的な捉え方を身近な実体験から理解させるよう努めた。第2に研究指導上の特色として,各学生の問題意識を具体的な研究に結びつけ,実証的に検証するための方法を考えさせた。現職派遣院生には,問題意識を客観的に調査分析する態度を養った。学部と修士の論文執筆者2名には実際に幼児に実験を行うことにより,子どもの発達に関する心理学的な捉え方とその面白さを体験させ,あわせて,対象を客観的,理論的に分析する能力を養った。現職派遣院生に,大学院は授業単位取得が目的ではなく,修士論文作成のための自学自習と問題意識の具体化を図る場であることを十分伝え切れなかったことが今後の検討課題である。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
著】@平成20年1月:潜在記憶. 記憶の生涯発達心理学(太田信夫・多鹿秀継編著),60-73, 154-166, 北大路書房.
論】@平成19年5月:心の理論研究の現状と今後の展望. 児童心理学の進歩2007年版, 46, 1-37, 金子書房.
A平成20年1月:The relationship between second-order false belief and display rules reasoning:The integration of cognitive and affective social understanding. Developmental Science, in press.
発】@平成19年9月:第71回日本心理学会ワークショップ話題提供「日本の子どもにおける“心の理論”の発達」
学会活動への参加状況
@発達心理学会論文審査委員(2006.4〜2008.3まで)
科学研究費取得状況
2006-2008 平成18年度科学研究費補助金基盤研究C
◎特色点等
 著書では,乳幼児期と児童期の潜在記憶に関する従来の研究成果と最新の知見から研究の経緯と現在的視点で捉えた子どもの潜在記憶発達を論じた。論文及び日本心理学会シンポジウムでは,心の理論(人の心的状態を理解する能力)の発達を日本の子どものデータをもとに論じた。心の理論発達が欧米のの個人差や社会文化的規定性を指摘した点は,極めて先進的である。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@平成19年4月1日〜平成20年3月31日 放送大学講師「感情の心理学」
◎社会への寄与等
 放送大学では最新の知見を取り入れた感情理解の発達を分かりやすく解説し,心理学の普及を図った。
 

 
中 山 勘次郎(准教授)
 
<教育活動>
授 業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
 大学院「学習心理学特論」では,動機づけに関する最新の研究成果をとり入れ,教育実践への適用事例をあげながら講義した。また,過去のレポートの例とコメントをWeb上に掲載し,発展学習やレポート作成の参考にできるよう配慮した。
 学部「学習心理学」では,学習領域に限らず教育心理学全般にわたる基礎概念について講義を行い,さらに,最新の研究成果にもとづいて実際の授業のありかたを考える「授業の心理学」を開講して,体系的な学習を支援している。
【観点2】教育の達成状況
 学部「学習心理学」において,教員採用試験を見通したテーマ・教材等をなるべく多く取り入れるよう努めている。
研究指導
【観点1】学部
 4年生2人・3年生1人を指導した。実践的な問題意識や発想を取り入れた研究指導を行い,本年度は「対人感情の変容」および「自己調整学習」という,実践的なテーマの卒業研究が生み出された。
【観点2】大学院
 長期履修3年生2人,2年生2人の修論研究と1年生4人を指導した。学校現場の実践的な問題意識を,心理学の視点から理論的に裏づけ,解決方法を探るという方針で指導にあたっており,本年度は理科・数学の学習指導に関する研究や特別支援学校での指導に関連する修士論文が生み出された。
その他の教育活動
(1)横浜国立大学大学院教育学研究科非常勤講師(「学習心理学」を担当)
(2)附属中学校教育相談体制に基づく相談員
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 学校現場での実践という視点を常に意識しながら,内容を構成している。また,受講生の質問を積極的に汲み上げ,フォローしたり授業改善に役立てるよう努力している。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】@平成20年2月:『知識理解をベースとした心理教育の意義について』(単著) 上越教育大学研究紀要 27巻 pp.85-95
他】@平成19年8月:『心理学を教育実践に活かす(2)  授業の心理学』(単著) 指導と評価, 53巻8号 pp.44-47
学会活動への参加状況
@9月15日〜17日:日本教育心理学会第49回総会(文教大学越谷キャンパス)出席
A日本教育心理学会理事
B日本学校心理士会新潟支部長
◎特色・強調点等
 児童の学習への動機づけの予測因としての学習目的の影響性を中心に,個々の学習意欲の特徴をとらえようとする研究を継続して進めている。また,学習指導に関する教育的カウンセリングやコンサルテーションに対して,動機づけ理論にもとづいて提言を試みている。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@カウンセラー学校派遣事業に基づく派遣カウンセラー:中越教育事務所管轄(柏崎市立半田小学校・柏崎市立田尻小学校)
Aカウンセラー学校派遣事業に基づく派遣カウンセラー:上越教育事務所管轄(上越市立東本町小学校・上越市立谷浜小学校)
B9月11日〜13日:新潟県看護職員臨地実習指導者養成講習会講師(教育心理)
◎社会への寄与等
 前年度に引き続き,派遣カウンセラーとして臨床的な面での地域への支援を行うとともに,カウンセリング活動の学習指導への拡大についても,積極的な提言を行った。
 

 
宮 下 敏 恵(准教授)
 
<教育活動>
授 業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
 学部の授業である「教育相談,カウンセリング論」では,各教員の専門性を生かした授業内容を設定し,不登校,いじめなど児童・生徒の様々な不適応問題,教員にとって必要な精神病理の問題,発達障害の知識及び対応,外部機関との連携,危機対応など学校現場における生徒指導,教育相談についての内容を実際の事例をもとにわかりやすく解説した。大学院の授業である「心理査定演習T」では,学校現場,医療現場などで用いられているパーソナリティ検査を中心に,実際に心理検査用紙を用いて検査を施行,採点,結果を解釈した。さらには実際の臨床データをもとに検査結果の解釈を行い,レポートにまとめたものを添削指導することにより,理解がより深めることが出来たと考えられる。また「臨床心理学特論U」では,イメージ療法,箱庭療法,催眠療法,遊戯療法などについて学生が事前にレポートをまとめて発表することにより,より意欲的に授業に参加することができたと考えられる。
 シラバスにおいて,成績については明記し,評価基準通りに評価を行った。 
【観点2】教育の達成状況
 学校での問題について講義を行い,具体的な事例を中心に学校現場における教育相談の必要性について述べ,教師となったときにどのように自分が実践するかを考えさせることにより,卒業後に自分が子ども達の心の問題についてどう取り組むかの手がかりになったのではないかと考えられる。大学院においても,事例をあげて解説をし,臨床データをまとめる課題などを行ったことにより,修了後にすぐ実践できる力が身についたと思われる。
研究指導
【観点1】学部
 学部3年生については,青年期の友人関係の特徴など臨床心理学の基礎研究の文献購読を行った。学部4年生については,〜べきという思考と志向性の高さが青年期の精神的健康にどのように影響を及ぼすかに関する卒業研究の指導を行った。
【観点2】大学院
 小学生における不適応傾向児童への援助方法に関する研究や小学生におけるうつの研究,中学生の友人関係の研究やいじめ加害者の研究,大学生における無気力に対するソーシャルサポートの研究,大学生における感動体験に関する研究,大学生における心配の研究などについて指導を行った。また,心理教育相談室において,事例の見立て,面接の進め方,事例の理解と介入方法について指導を行った。
その他の教育活動
(1)放送大学教養学部非常勤講師埼玉学習センター(「臨床心理学実習A」を担当)
(2)放送大学教養学部非常勤講師長野学習センター(「臨床心理学演習」を担当)
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 卒業後,修了後の現場における問題意識をもてるように,できるだけ事例をあげ,具体的に考えさせるように講義,指導を行った。指導のための準備を今後さらに充実させ,限られた指導時間の中で生かせるようにしていきたい。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】@平成19年12月:『特性不安の違いによる感情の調整方法について−否定形暗示文 の作用を通して−』(単著)健康心理学研究,20(2),52-60.
A平成20年2月:『小・中学校教師におけるバーンアウト傾向とソーシャル・サポートとの関連』(単著)上越教育大学研究紀要,27,97-105.
B平成20年3月:『語彙分析の方法を用いた事例の検討 −不登校傾向を示した小学生男児の事例を通して−』(共著)上越教育大学心理教育相談研究,7,47-57.
発】@平成19年9月:『小学校低学年児童におけるバウムテストの描画特徴と学級満足度の関連』(共) 日本教育心理学会第49回大会研究発表
A平成19年9月:『教師のバーンアウト傾向とソーシャルサポートとの関連(2)』 (単) 日本教育心理学会第49回大会研究発表
B平成19年9月:『中学校教師特有のビリーフに関する研究』(共) 日本教育心理学会第49回大会研究発表
C平成19年9月:『教師の援助関係向上とバーンアウト低減への試み』(共) 日本教育心理学会第49回大会研究発表
D平成19年9月:『語彙分析を用いた質的研究(6)−夢分析事例におけるクラインエトーカウンセラー間の発話語彙の相互影響−』(共) 日本心理臨床学会第26回 大会研究発表
E平成19年9月:『語彙分析を用いた質的研究(7)−事例内容の解釈との比較−』 (共) 日本心理臨床学会第26回 大会研究発表
F平成19年9月:『語彙分析を用いた質的研究(8)−漠然とした不安と息苦しさを愁訴とした一事例の面接過程の検討−』(共) 日本心理臨床学会第26回大会研究 発表
G平成19年9月:『語彙分析を用いた質的研究(9)−因子の内容の比較−』(共) 日本心理臨床学会第26回大会研究発表
H平成19年9月:『語彙分析を用いた質的研究(10)−プレイセラピーの質的研究−』(共) 日本心理臨床学会第26回大会研究発表
I平成19年9月:『語彙分析を用いた質的研究(11)−ロジャースのあるカウンセリング事例における心的プロセス−』(共) 日本心理臨床学会第26回大会研究発表
共同研究(幼,小,中,高等学校及び特殊教育諸学校教員との共同研究を含む)の実施状況
@中越地震における心理的援助の特徴と危機介入のガイドライン作成への試み 代表者:五十嵐透子(上越教育大学准教授) 科学研究費補助金 
学会活動への参加状況
@7月 日本ストレスマネージメント学会出席 
A9月 日本教育心理学会出席 
B9月 日本心理臨床学会出席
C日本パーソナリティ心理学会 編集委員
D日本催眠医学心理学会編集委員,研究委員 
◎特色・強調点等
 教師のバーンアウトを中心とするメンタルヘルスの研究をすすめていること,心理面接場面における面接の流れに関する研究をすすめていること,さらには中越地震における心理的援助についての研究に関してもすすめている。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@平成19年4月〜平成20年3月 新潟県スクールカウンセラー活用事業によるスクールカウンセラー(上越市立大潟町中学校,上越市立吉川中学校) 
A平成19年4月〜平成20年3月 新潟県カウンセラー学校派遣事業による派遣カウンセラー(上越市立大潟町小学校,上越市立南本町小学校) 
B平成19年5月,7月,9月,12月,2月「新潟県中越地震に係わる児童生徒の心のケア」カウンセリン グ派遣(北魚沼郡川口町立川口小学校,北魚沼郡川口町立田麦山小学校,北魚沼郡川口町立泉水小学校)
C平成19年7月,10月,12月,1月「新潟県中越沖地震に係わる児童生徒の心のケア」カウンセリング派遣(上越市立大潟町小学校,上越市立吉川小学校,上越市立柿崎小学校,上越市立上下浜小学校,上越市立黒川小学校,上越市立柿崎中学校,上越市立八千浦小学校)
D平成19年7月 上越市学校調理員メンタルヘルス研修会講師「職場でよりよい人間関係を作るには」
E平成19年7月 新潟県小・中・特殊教育諸学校教職員メンタルヘルス初任者研修上越地区講師「メンタルヘルス」
F平成19年8月 新潟県小・中・特殊教育諸学校教職12年経験者研修地区別(上越)全体研修講師「いじめ問題の基本的認識と学校の説明責任」
G平成19年8月 上越市立教育センター主催カウンセリング研修会講師「カウンセリングの基礎基本」
H平成19年8月 新潟県湯沢町学校研修会講師「学校で生かせるカウンセリング」
I平成19年8月 新潟県小・中・特殊教育諸学校教職12年経験者研修コース別研修生徒指導講師(中越地区)「カウンセリングテクニックを生かした生徒指導のコツ」
J平成19年8月 新潟県北魚沼郡川口町養護教諭研修会講師「震災後の心のケア」
K平成19年9月 新潟県保育士会研修会講師「カウンセリングテクニックを生かした対応の実際」
L平成19年12月 上越市城西中学校学校保健委員会研修会講師「困難に負けず,しなかやで豊かな心を育てる」
M平成19年12月〜平成20年3月 新潟県こころの緊急支援チーム支援員
◎社会への寄与等
 小学校,中学校において,児童・生徒の心理的援助,保護者の相談,教職員の相談などに関わった。また,小学校,中学校において,中越地震,中越沖地震に伴う心のケアを行った。さらに,小,中学校の教職員を対象に,いじめ,人間関係,カウンセリングなどの研修を行った。また心理的悩みを抱えて大学附属の心理教育相談室に来談する児童,生徒,成人に対して,心理療法を行い,地域のメンタルヘルスのために寄与した。
 

 
井 沢 功一朗(講 師)
 
<教育活動>
授 業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
@授業形態,学習(研究),指導方法の教育方法に関する取り組み状況
 本学の学部学生の特徴としては,受講態度および研究計画立案などにおいて比較的受動的な点があげられると考える。そのため,授業においては,従来の板書と口頭説明中心の方法を全面的に改善し,パワーポイントにより図や写真などの視覚的材料をできるだけ多く用いるように心がけた。また,手書きでノートを取ることが習慣づけられていない学生が多いため,授業内容の要点をまとめた配布プリントを全授業で毎回配布し,穴埋め式でキーワードや重要な説明などをプリントに自己記入していくように促した。
 また,大学院生については,現職教員とストレートマスターのいずれにおいても教育実践に応用可能な最新の知見を求めていると考える。そのため,心理学という専門性にこだわらず,関連してくる様々な知識(例えば人間行動遺伝学など)についても,できる限りわかりやすい形で紹介することを心がけた。学部生対象の授業と同様に,視覚教材の使用と穴埋め式の配布プリントを使用し,授業の要点については自発的にメモをとり受講者自身の知識として消化してもらうよう促した。
 また,学部生の卒論指導では,まず論文や図書を精読する態度を重視して取り組んだ。その中から学生が自らの実習体験などと重ね合わせてテーマを選ぶことができるように促した。卒論指導の重点は,テーマもさることながら,そのテーマについて調査研究をする際のマナー,データ分析技法,結果のまとめ方ならびに得られた結果を調査協力者にフィードバックする義務など,研究者として必要とされるモラルと態度を最重要視した指導を行った。
A成績評価に関する取り組み状況
 レポートの課題は基本的に授業で解説したキーワードをもとに論述を構成するという形をとった。このような形態をとることで,普段の授業でのプリントへの自己記入や補足説明のメモ,およびその理解度がはっきりと把握することができる。成績評価で着目する第一の観点はこうした基本的知識の理解度についてである。さらに,そうした理解をもとに展開された論述の論理的な構成にも着目した。ただメモをとっただけでは論旨の通った論述を展開することはできないし,逆に講義内容を理解していればそれだけ論述の幅も広がる。このように,普段の受講態度が論述に反映されるように課題を設定し,それに基づいて上記2つの点に着目しながら成績評価をした。課題の提示に際しては,ただ単にキーワードを提示するだけではなく,それに関連する様々な論争や研究者ごとに出されているさまざまに異なる知見について言及したうえで,それらを受講者の観点から総合し,さらに受講者本人の見解を論述するような課題設定を試みた。
【観点2】教育の達成状況
 受講生のモチベーションは科目ごとで異なっていたが,授業方法や授業内容については学部・院ともに肯定的な学生評価を受けた。また,提出されたレポートについても水準の高いものが多く,このことからH19年度の授業と成績評価の方針はおおむね妥当であったと判断する。
研究指導
【観点1】学部
 まず,卒業論文1本の指導については,教員になることのモチベーションをより高めることに努めた。また,当該学生が様々な実習によって得た体験的知識を卒論のテーマと結びつけて考えるように促した。さらに今後,教育実務につくにあたって引き続き考えていくことができるようなものへと展開していくよう指導した。学部3年生については,心理学の基礎用語についての補足説明を加えながら,学術論文を精読する習慣を身につけるよう促した。わからない部分をわからないまま読み飛ばすのではなく,時間をかけて,一つ一つわからないことを可能なレベルで理解していくよう説明を加えた。
【観点2】大学院
 臨床心理学コースは相談室実習の指導を行わない場合は研究指導も担当できないため,指導担当学生は在籍していない。
 ◎特色ある点及び今後の検討課題等
 特色としては,授業のための材料や配布資料などを十分に時間をかけて準備し学生に提示することで,学生のモチベーションを高めようとした点があげられる。単に出席状況や臨時レポートなどを課すことで学生の単位取得や成績評価に対する不安を動機付けとするような方法を極力避けた点である。今後の検討課題としては,シラバスでの講義内容の記述にさらに工夫を加える必要があると考える。学術的・専門的な用語が多すぎると,授業の内容と一部合致していない印象を学生に与えてしまうことがわかった。今後はシラバスの記述について,より日常語に近い言葉を用いながら要点を提示する必要があると考える。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
著】@平成19年6月:境界性パーソナリティ障害の弁証法的行動療法(大野裕監訳,岩坂彰ほか共訳 誠信書房) 担当箇所は第7章から第11章(p267−496)まで。
共同研究(幼,小,中,高等学校及び特殊教育諸学校教員との共同研究を含む)の実施状況
@川口町被災児童メンタルヘルスケアのガイドライン立案研究(共同研究者:五十嵐透子・宮下敏恵)
◎特色・強調点等
 翻訳書については,青年期にも多く見られる情動不安定性や衝動的行為に対して欧米で最も高い評価を受けている心理療法についての書籍であり,本訳書も各方面から高い評価をうけている。また共同研究については,現在データの整備中であるが,過疎地域における災害後の児童の長期的なメンタルヘルスに焦点を絞ったものであり,今後は各学会での発表を通じて得られた知見を発信していく段階に入る。特に,非都市部での被災者支援に関する研究は国内外でも希少であり,今後のより一層の研究作業への集中が必要であると考える。
 

 
高 橋 靖 子(助 教)
 
<教育活動>
授 業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
@平成19年11月に本大学に着任以降,臨床実践援助法および教育相談・カウンセリング論の一部を担当し,親子関係の発達論,および不登校や発達障害といった学校での「問題行動」に対する成長促進的な関わりについて講義した。
A臨床心理学基礎演習U(インテークカンファレンスおよびケースカンファレンス)において,心理教育相談室において院生の担当するケースについて討論・指導を行った。
【観点2】教育の達成状況
ストレートの修了生は,病院の心理士やスクールカウンセラーとして心理臨床の仕事に携わりながら,そして現職の教諭は職場に復帰しつつ,今秋の臨床心理士資格試験受験を予定している。
研究指導
セミナーは担当していないが,学部生2名,大学院生9名の学位論文副査として審査を行った。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 病院・福祉,学校領域における心理臨床経験を生かし,臨床心理学的理解を深めるような講義や臨床的指導を積極的に進めていきたい。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】@平成20年3月:Depression and maternal attachment in Japanese women during pregnancy and the postpartum (Kaneko, H., Honjo, S., Murase, S., Nomura, K., Sechiyama, H., Takahashi, Y., H17-H19年度科研費(基盤B)研究成果報告書 妊娠・産褥期における母親のメンタルヘルス,母子愛着と母子相互作用について)
発】@平成19年8月:The Relationship between Attachment Representations and Depressive Symptomatology in Pregnant Japanese Women XIII International Congress of the European Society of Child and Adolescent Psychiatry (Italy)(Kaneko, H., Sechiyama, H., Nomura, K., Tanaka, N., Murase, S., Honjo, S.との連名発表)
A平成20年3月:母子短期分離・再会場面での18ヶ月齢児の行動と情動表出−6-18ヶ月齢の乳児の気質的個人差・母親の分離不安との関連発達心理学会第19回大会論文集 pp.314(水野里恵・本城秀次との連名発表)
学会活動への参加状況
@平成19年9月 日本心理臨床学会
A平成20年3月 日本発達心理学会
◎特色・強調点等
1998年から継続している妊産婦に関する縦断研究について,親へのインタビュー,親子の相互作用および子どもの生育状況などのデータを収集しており,現在はデータ整理及び解析に取りかかっている。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@平成19年10月 信州大学教育学部附属松本中学校PTA会報 スクールカウンセラーインタビュー pp.2−4
A平成19年11月-12月 信州大学非常勤カウンセラー(工学部・教育学部・附属六校園)
B平成20年2月 仕事発見伝W インタビュー「スクールカウンセラー」 平成19年度厚生労働省若年者地域連携事業 進路の見つけ方マガジンVIEW No.4 NPO法人夢のデザイン塾 pp.34−35
◎社会への寄与等
スクールカウンセラーとしていくつかのインタビュー取材を受け,カウンセラーの社会的認知を広め,高校生の職業選択についての判断材料を提供するような広報活動を行った。