【芸術系教育講座(美術)】
 
 

 
太 田 將 勝(教 授)
 
<教育活動>
授 業
 学部・修士課程:博物館資料論(学部)では,美術博物館の領域を担当し,@従来の美術史学の方法,A前衛美術についての研究・調査の方法,Bそれらを集約・応用した展覧会の立案・推進・運営について,公立美術館を想定し,演習した。模型や実物を使用。指導法(学部)・美術教育関係の科目については,教育現場と連携しつつ,学生・院生主体の研究授業を推進した。こうした授業の折々,具象美術についてはパノフスキー(特に中世中国絵画については矢代幸雄),抽象美術についてはカーリン・トーマスや竹内敏雄の文献にそれぞれの存在意義を尋ね,美術の各分野が相互に対手の意義を認め,尊重しあってこそ,美術の世界全体が活気と意味あるものに発展し,教科としての図工・美術も盤石なものになるであろうことを力説した。他方,メルロ=ポンテイ等の身体論の文献を講読しつつ,図工・美術の意義を考察し,作業や実習的要素も取り入れ,変化ある授業を目指した。博士課程(連合大学院):東洋・西洋の美術を対置し,特に中国宋時代の水墨画の意味を,実技的演習を取り入れながら,講述した。従来の「鑑賞教育」といった浅いものではない,作品の究極的質を感取するにはどうしたら良いかを検討・討議した。成績評価については,いずれの場合も出席重視。レポート,各種アンケート,ドリルなどを総合した。
研究指導
 大学院修士課程のゼミ生2名。修士課程1年1名は,本学入学以前に国外での美術教育実践の体験があるため,これを2年後の修士論文に生かせるように工夫した。修士課程2年1名は,小学校での鑑賞に係る授業やアンケート調査を実施し,統計的に集約,鑑賞の意味と効果についての修士論文にまとめた。これら2名は,当該年度の大学美術教育学会においてその成果を口頭発表した。博士課程(連合大学院)では,副指導教官として2名の学生を指導し,学位授与に導いた。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
作】@平成19年9月27日:海上保安庁 第8回未来に残そう青い海 図画コンクール審査
A平成19年10月11日:妙高四季彩ジュニア展審査
他】@平成19年8月15日:「斬新な手法,郷里への懐旧の念」新潟日報
A平成19年12月1日(編集):『道徳―実践と体験―』長岡モラロジー事務所
B平成20年3月6日:『子どもの絵―成長と描画の発達過程から―』造形芸術研究所
学会活動への参加状況
@大学美術教育学会
A日本理論心理学会
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@海上保安庁図画コンクール審査員
A上越市美術品収集委員
B妙高四季彩ジュニア展審査員
C森蘭斎画集編集委員会委員長
 

 
風 巻 孝 男(教 授)
 
<教育活動>
授 業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
○授業形態,学習(研究)指導法等の教育方法に関する取組状況
 後期の授業は病気再発による手術と術後療養のため,3〜4回の休講を余儀なくされ,授業内容の大幅な変更,短縮を余儀なくされた。
 学部:@「表現と鑑賞」の授業は,個性と様式発展(発達段階)をキーワードとして,造形表現の意味について理解させることを目的としている。特に留意すべきは,美術家の幼・少年期の作品が彼の最も本質的な特性を示していることである。時代様式については,個人様式の発展のプロセスとの類似性に着目し,東洋・日本の美の特性については,西洋美術との比較を通して理解を深めるよう授業内容を工夫した。A「西洋美術史論」は,レオナルド,ミケランジェロ,ラファエロ等の活動を追いながら,ルネサンス美術の特質を理解させることを目的とし,B「西洋美術史演習」は氷河期から古代ギリシア・ローマに至る美術を取り上げ,美術の始源,様式の展開,古典様式について理解を深めることを目的としている。
 大学院(修士課程):@「芸術理論」は,ヴェルフリンの表象形式,ガントナーのプレフィグラツイオーン等の様式論やゲシュタルト心理学,フロイト等を援用しながら,美術様式形成の必然性について理解を深めることを目的としている。A「西洋美術史特論」は,18〜19世紀にかけてのドイツ美術を扱ったものであるが,本年度は,授業時間の不足もあって,本授業の中心となるべきロマン主義については概論に止まらざるを得なかった。
 授業内容は,個人様式を取り扱う場合には,芸術家の幼・少年期の活動に着目し,後年の活動との緊密な関連を指摘し,時代様式を扱うにしても,個人の発達段階との類似性に言及すると言ったように,常に教育的観点を念頭に置いている。美術とは,自然,宗教,生活等人生に深く根ざした活動であり,美術研究は人間学そのものといっても過言ではない。ヴィンケルマン,ゲーテ,シラー等の美術論が教育的視座から生れているように,諸芸術(否,諸科学すべて)がそれ自体教育的意味を内包していることは論を俟たない。教育的,人間学的立場から授業内容を設定すべく努力している。
 授業ではギリシア,ヨーロッパ各地で撮影したスライドの映写やクリンガー,メンツェル等のオリジナル作品の鑑賞も含まれ,合理的,実証的説明を心がけた。
○成績評価法に関する取組状況 
 成績評価は鑑賞力テスト及びレポート提出によって行ったが,その際特に重視したのは,受講者が自分自身の言葉で記述していることである。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】@平成19年2月:「C. D. フリードリヒに帰せられた諸作の真贋に関する論考(6)― テプリッツ旅行中の素描,水彩画 ― 」(単著)上越教育大学研究紀要 第27巻 pp.261-271
 平成10年3月刊行の同紀要所載の拙稿「カール・グスタフ・カールスのフリードリヒ風様式についての考察」以降本稿に至る10年間,フリードリヒ風様式に関する論文を15編作成したが,今回はその最終回にあたるものである。本研究はドイツ,ドレースデン銅版画館研究員ペトラ・クールマン・ホデック博士の勧めもあって,ドイツでの公表を目的としている。
 

 
西 村 俊 夫(教 授)
 
<教育活動>
授 業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
○授業形態,学習(研究)指導法等の教育方法に関する取組状況
 全学共通科目の複数教員による授業(図画工作,表現・状況的教育方法演習他)においては,担当者で適宜会議し,授業内容等の検討を行っている。教科に関する科目の講義(工芸科指導法他)の授業では,毎回講義資料を配付すると共に,講義内容の理解を深めるためビデオ等の映像資料を使用している。実技・演習の授業(工芸表現A,木工芸研究他)では,特に,「何をつくるか」を考えるプロセスを大切にしている。具体的には,一人ひとりのテーマに則した資料の収集と分類,アイデアスケッチ作成,プランの発表やディスカッションなどを行っている。制作活動では,道具の使い方や部品の組み立て方などに一人ひとりの工夫がみられるように支援を行っている。
○成績評価法に関する取組状況
 実習・演習の授業では,提出課題の評価に制作プロセスでの様々な工夫や発見の状況の評価を加えて総合的に評価している。
【観点2】教育の達成状況
○進学や就職などの卒業(修了)後の進路の状況から判断した取組状況
 ゼミ卒業・修了生の進路は以下の通りである。学部卒業生は1名で,民間に就職している。修士課程修了生は3名で,東京都と神奈川県の教員に採用されている。
研究指導
【観点1】学部
 3年のセミナーでは,文献の講読(音読)と内容に関する意見の交換及び木材を使用した作品制作と作品の学内展示を行った。4年のセミナーでは,学生の卒業研究テーマにそった指導を行った。
【観点2】大学院
 修士課程学習臨床科目の授業では,地域の小学校と連携して図画工作の研究授業を行い造形行為の教育的な意義について考察した。修士論文作成のセミナーでは,それぞれの研究テーマにそった発表及びディスカッションを行った。博士課程においては,3名のゼミ生それぞれの研究テーマにそった学会の口頭発表と投稿論文作成の指導及び博士論文作成の指導を行った。
その他の教育活動
 附属小学校の教育研究協議会の指導者を担当した。
◎特色ある点及び今後の検討課題
 美術授業の他に学部全学必修の相互コミュニケーション科目,大学院学習臨床に関する科目など多様な授業を行っている。大学院の学習臨床に関する科目では,地域の小学校の協力を得て受講生が十分な論議の上で計画した研究授業を行うという実験的授業を行っている。研究室には,博士課程,修士課程,学部それぞれの学生がおり,常に教育・研究に関する交流が行われている。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
作】@平成19年4月:『時間の椅子』 空間の彩展 画廊るたん(東京・銀座)
A平成19年9月:『時間の椅子2-07B』 第71回新制作展 新国立美術館
発】@平成20年3月 美術科教育学会群馬大会で「工作・工芸領域部会コロキウム」を主催
学会活動への参加状況
@11月3日〜5日:第46回大学美術教育学会出席
A3月28日〜30日:第30回美術科教育学会出席
B平成19年度大学美術教育学会副理事長
C平成19年度芸術教育実践学会代表
D美術教育実践学会理事長
◎特色・強調点等
大学美術教育学会で副理事長及び学会誌編集委員長を務めたことなど学会及び美術教育の発展に努力した。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@上越市美術展覧会運営委員
◎社会への寄与等
 上越市美術展覧会彫刻・立体造形部門の運営委員として,県内の美術教育関係者と交流をするとともに県の美術教育の発展を支援している。
 

 
福 岡 奉 彦(教 授)
 
〈教育活動〉
授 業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
 上越教育大学に入学してくる学生の多くは教員養成の学生である。将来を担う教師としての核の教育を,理論と実践の往還関係から学生たちが学びとれるように授業を構築している。また,表現というキーワードで全てカリキュラムを組み込んでいる。表現という行為を通して制作を学ぶことを中心に据え,美術史や美術理論,学校教育のなかに組み込まれている教育実地研究における問題点や子供たち一人ひとりの表現の意味と価値を学ぶ美術科教育と連携し,教育実践へ発展できるようにも配慮して指導を行っている。
 全ての表現に関する成績評価法は,授業の指導教員だけで評価するのではなく,実技を担当している複数の教員と学生たちが参加した講評会を開き,学生たちの制作過程の説明と共に,各教員たちとの自由な対話のなかから客観的に表現の評価を経験できる評価方法をとっている。
【観点2】教育の達成状況
 授業は,美術コースの学生たちと他コースの学生たちとの混合で行われており,そこには互いに刺激しあった多様性のある表現が生まれている。しかし,美術コースを選択してきた,特に学部生の基礎の実技に関する知識は皆無に等しい現状がある。そのなかでゼミを中心として,将来を担う教師としての経験的実技制作の卒業制作展においての発表の場を最終目標としている。また,大学院では,同じくゼミを中心に据え,作品発表と構想発表,中間発表に続く学位論文を集大成として行っている。ゼミの学部の卒業生一人は新潟県で臨採へ,大学院の一人は北海道の教員採用,留学生は中国に教員として戻り,一人は研究生として本学に残り研究を続ける事となった。
研究指導
【観点1】学部
 美術コースを選択して来た学部2年次の造形基礎Aの授業では,他コースの受講生と美術コースの学生がまざるなか,それぞれ学生が持ち続けているイメージの視野を展開させながら広げ,絵画表現の素材に対する興味を持たせる事を目標としている。また,伝統絵画表現と鑑賞の授業では,絵画の伝統の重要性と現代という軸に生きているそれぞれの学生自身の表現のあり方を模索させ,版画表現という実践を通して表現の幅を実感させている。3年次の絵画表現の授業では油彩画を中心に据え,歴史的表現と現代の表現を対峙させ,表現における基礎とイメージの展開の経験をとらせている。ゼミ生には,卒業研究をとうして制作と制作レポートを課し,その研究が教育実践へ発展できるように配慮して指導を行っている。
【観点2】大学院
 大学院生は,絵画という専門性の意義を様式論だけでなく,教育現場での効用性を重視した授業を構築している。
 表現の多様性,表象のおもしろさやイメージの表現の拡大及び分析等を通して,新たな鑑賞教育と制作表現の往還関係を具現化し,そこから生まれる新しい教材開発を生みだしている。また,オリジナル作品の鑑賞及びビデオ鑑賞を行い,美術という専門性にとっての制作の意味性を考察しつつ,版画・油彩画研究に関する授業を行っている。
 また,表現に対する学習目標をそれぞれの学生に持たせ,基礎実技にそった表現の多様性を尊重している。
その他の教育活動
@大学版画学会と町田市立国際版画美術館が主催する第32回全国大学版画展(全国の美術大学,教育系大学,短期大学,専門学校64校による)に大学院2年生の2名の木版画,銅版画を出品させ,公開セミナー参加と各校の大学生との交流をはかった。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 授業のなかで鑑賞教育と制作表現の往還関係を示すために,歴史的作品及びオリジナル作品を多数授業の進行度合いで学生たちに見せている。いろいろな作家の作品を直に見ることにより,具現化された生の声が伝えられる。将来,教育を預かる現場の教師として,多様化が進むなか,美術という教育で養ったイメージの拡大を受講した学生たちが持つことによって,子供たちの個性,特色を見極めて教育機能の充実を計り,与えられた役割を担っていけるように授業を行っている。また,学生の作品の発表では,社会と美術館と大学の一体化の意義を体験させ,今日の教育状況における新しい学習の意味も知らせている。
 また,小・中学校及び高等学校の美術教育が厳しい状況におかれている現状認識に立ち,今日の社会状況との関わりを視野に入れ,大学院生,学部生との共通認識を持ち続けられるように行っている。しかし今後とも,教員養成における美術教育のあり方を更に直視して研究していく必要がある。
 
〈研究活動〉
研究成果の発表状況
発】@平成19年5月:「窓」F100号,「牡丹」F15号,「華」直径28p円形の油彩画3点を出品する。独立の8人展 (ギャラリーユニコーン主催)
A平成19年6月:「羽音」F200号が出品される。安井賞候補の作家たち展 (新潟県立近代美術館)
B平成19年10月:「引窓」F200号の油彩画を会員として出品する。第75回独立美術協会展 (新国立美術館)
C平成19年10月:「月と屋根」F20号の油彩画を出品する。生誕100年記念「山口薫と山口薫に学んだ作家たち」展(表参道画廊+MUSEE F企画)
D平成20年1月:「セーヌ暮色」F100号,「牡丹」F10号,「アネモネ」F4号の3点を出品する。EVOLUTION16展 (日本橋・高島屋,なんば高島屋,JR名古屋・高島屋主催)
学会活動への参加状況
@全国公募団体でもある独立美術協会の会員として,第75回総会及び展覧会展示委員として新国立美術館で業務を行なう。
◎特色・強調点等
 企画の展覧会に出品した「セーヌ暮色」F100号の油彩画が平成20年1月31日新潟日報紙上に作品写真と美術評論家・藤島俊会氏による批評文が掲載される。
 
〈社会との連携〉
社会的活動状況
@第75回独立美術協会展(全国公募・新国立美術館)で審査委員を行なう。
A第38回ジュニア展の中学校の部の審査及び審査評を平成19年11月29日の新潟日報紙上に掲載される。
B「海と烏」P30号の油彩画が新潟の美術(新潟教育美術研究会編)美術資料に掲載される。
C第32回全国大学版画展(町田市立国際版画美術館)出品の学生記事が,平成19年12月1日上越タイムズに掲載される。
◎社会への寄与等
 新潟県立近代美術館及び新潟県立万代島美術館の美術品の収集の選定の委員として新潟県の文化振興に寄与している。尾崎 正明(東京国立近代美術館副館長),宮田 亮平(東京芸術大学美術学長),幸福 輝(国立西洋美術館学芸課長)他4名による委員会である。
 

 
阿 部 靖 子(准教授)
 
<教育活動>
授 業
 平成19年度に新設(2年次生対象のため本年度から実施)された授業科目「保育・表現の指導法」(演習2単位)を本年度初めて開講した。昨年までは,「保育・音楽表現の指導法」と「保育・造形表現の指導法」の2つの授業として開設されていたものが,幼稚園教育の5つの内容「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」に対応させ,授業が新設されたものである。音楽的表現を専門に指導する教員と一緒に授業構想に基づき授業計画を立て,受講生の実態も考慮しつつ授業を実施した。授業全体の構成は,音楽的な表現と造形的な表現について各々担当する部分を3回ずつとり,その後,実際の幼稚園にでかけて子どもたちの前で自らの発表をし,発表後に子どもたちの反応などをもとに,表現のあり方について学ぶというものであった。約50名の受講生が,自らの表現活動から始まって,グループ活動による表現を行い,そして,それを実際に子どもたちの前で行うという一連の学習内容を通して,音楽的な表現と造形的な表現との統合,あるいは,基盤となる感覚を育てることができたと思われる。と同時に,保育者自身の表現についての感覚・態度を育て,それが指導者としての資質の向上につながったと考えられる。   
 また,昨年に引き続き,教育職員免許取得プログラム受講学生のための図画工作科指導法においては,受講学生の図画工作科に対する既習状況の相違を鑑み,受講生の意欲・関心を高めつつ,教材研究能力や指導力を自ら高めることができるような授業内容を昨年度の反省に基づき検討した。具体的には,近隣の幼・小学校への作品展参観や,実際の授業見学などをもとにレポートを作成させ,できる限り授業以外の時間も利用し,実際に自分の目で学ぶことを考慮した。後期午後6時からの授業でほとんど外での活動ができないことや,学生の負担を考えると,従来の3年生必修の授業内容とは異なる受講学生の実態に対応した内容を今後さらに検討していく必要があると思われる。
研究指導
 大学院2年生1名は教育職員免許取得プログラム学生であり,残る2年間で絵画制作を中心とした専門を背景に修士論文をまとめるよう指導を行った。また,大学院1年生2名は,それぞれの問題意識に基づき研究テーマを明確にしながら資料収集を進めていくべく研究指導を行なった。
その他の教育活動
 教職講座(図画工作)担当
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】@平成20年3月「教員養成学部学生の表現・コミュニケーションに関する実習授業について(2) −『からだでつくろう,みんなの彫刻の活動をもとにして−』 日本教育大学協会研究年報 第26集(共著)
作】@平成19年5月〜8月:国際ビエンナーレ「ユーモアと風刺展」ブルガリア
A平成19年7月:日本美術家連盟 新潟県会員展2007(新潟県民会館)
B平成19年9月:海の見える杜美術館彫刻ビエンナーレ(広島県) 他
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@新潟県森林審議会委員(新潟県)
A建築審査会委員(上越市)
B景観審議会委員(上越市)
C子ども発明工夫・模型工作展実行委員会委員及び審査委員(上越市)
D建築紛争調整委員会委員(上越市)など
 

 
高 石 次 郎(准教授)
 
<教育活動> 
授 業
【観点1.2】
(1)「体験学習(人間教育学関連科目)」(学部1年次)-----粘土の採取,成形,焼成,釉薬作りなど,すべての工程を自分たちで工夫しながら行った。そのことにより,陶芸と自然や人とのかかわりを理解できた。はじめは大変そうであったが,次第に自分たちの学習として責任を持って楽しみながら授業を進めるにようになった。
(2)「表現・状況的教育方法演習(相互コミュニケーション科目)」(学部1年次)-----本授業が学内プロジェクト研究に指定されたことにより,東京からプロの俳優とコミュニケーションと演劇の研究者の協力を得て授業を進めることができた。表現についての講義,コミュニケーションについてのワークショップの後に,16クラスが10分間の演劇を行った。
(3)「図画工作(ブリッジ科目)」(学部1年次)-----粘土で様々な形を作ったり机上に延ばしたり上方に伸ばしたりし,美術や陶芸の専門性の根源的な部分が粘土を媒体としながら人との関係へそして学校教育場面へ繋がることを学習した。また,最後にレポートを提出させた。
(4)「造形基礎B/D」-----3人の教員が担当し,それぞれが造形に対する講義と実習を行った。その後3グループ(3教員)に分かれ作品制作を行い,最後にレポートと作品についての発表を行った。その際,単に結果としての作品が中心になるのではなく作品を作る際に生じる様々な出来事性を大切にするように指導した。何故ならば,そのことに学校教育現場での美術の重要性があるからである。
(5)「工芸表現B」-----陶芸のプロセスにある発見や工夫・技術を実際に粘土,道具,焼成などの素材などに触れながら体験し,陶芸の作品を制作した。
(6)「陶芸研究(大学院)」-----粘土から陶芸作品までの過程を追いながら,「素材・プロセス・技術」と「作ること・人(子ども)」との関係について学習した。また,美術コース以外の現職派遣学生の受講が多いために,陶芸をベースとしながらも学校教育の話題が多く活発な授業が展開できた。また,最後に毎回の授業での出来事や内容を基にしながらそれぞれの考えをレポートにして提出させた。
(7)「意味生成表現特論」-----前半は4人の教員がそれぞれに意味生成をテーマにした講義を行った。後半は子ども・学び・遊び・造形・意味生成をキーワードとして,毎回協議を積み重ねた後に,地域の春日小学校で共同研究授業(造形活動)を行った。最後にレポートを提出させた。
(8)「学習臨床学特論」---前半の各教員の講義のあとに,各教員のグループに分かれて演習などを行った。高石のグループではロクロ成形を行う時に生じる考えや工夫の変化などを追って,「作ると考える」ことについて臨床的に観察し発表する授業を行った。
研究指導
【観点1.2】
 学部生は工芸表現セミナーT.Uを,大学院生は工芸基礎.応用セミナーを中心に,ゼミ形式で学校教育や陶芸制作及び論理について発表及びディスカッションを行った。また,地域の小学校での造形活動や地域住民との造形活動の企画・運営を中心的に行うことで子ども・保護者・教諭・住民の実際に触れた。これらの活動への参加や教員の授業の補助をしながら,そこでの出来事によって美術や造形活動が状況的にどのように学習として成り立つか,すなわち臨床的な実践力について学んだ。単に陶芸作品を作るのでなく,陶芸の専門性を有効かつ柔軟に援用しながら学校教育現場で「作る」ことをキーワードとすることによって現場でのさまざま子どもの問題に対応できる実践力の修得に努めている。
その他の教育活動
@平成20年1月:北城高校美術科授業協力
A学部及び大学院生のゼミ学生の教育実習の指導を行った。
◎特色ある点及び今後の検討課題
 特色としては,陶芸関係の授業では,技術の伝達や作品主義に傾倒しすぎないようにしながら,陶芸文化と人間との関係に目を向け,陶芸を通して教育や社会へと繋がっていくことを大切にした点が挙げられる。今後の検討課題としては,大学の授業でありながら教える側と教えられる側の区別・乖離が学生の側に高校までの授業のあり方の延長として見受けられ,そのことによって,授業が双方向のものにならず従って活性化しない点が挙げられる。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】@平成20年3月:「<こと>的な美術教育のあり方−造形遊び・陶芸作品制作・大学教育に通底すること−」(単著)大学美術教育学会誌(pp.209-215)
A平成19年12月:「私の陶芸からみた−<こと>的な美術教育のあり方」(単著)教育創造vol.157上越教育大学附属小学校/高田教育研究会編
作】@平成19年4月:6人展(画廊企画)東京京橋 シルバーシェル
A平成19年12月:新潟のやきもの展 新潟市雪梁舎美術館
B平成20年3月:個展(画廊企画)東京京橋 シルバーシェル 
発】@平成19年11月:研究発表‘学びの過程を生成する造形活動の臨床的開発〜大学院教育における小学校との連携による題材開発実践の事例研究〜’(高石次郎・西村俊夫・松本健義) 第46回大学美術教育学会研究発表大会(神戸市)
共同研究(小・中・高等学校との共同研究を含む。)の実施状況
@平成19年7月:大学院授業「意味生成表現特論」と絡めた春日小学校との‘造形活動における子どもの学び’研究
A平成18〜19年度:学内研究プロジェクト『本学必修科目「表現状況的教育方法演習」(学部1年/後期)のカリキュラム開発−学外の実践者と本学教員のコラボレーションによる授業の構築と実践−』 研究代表
学会活動への参加状況
@平成19年11月:第46回大学美術教育学会及び研究発表大会出席(神戸市)
A平成19年度:大学美術教育学会学会誌委員
B平成19年12月:第11回美術教育実践学会シンポジウム企画運営(上越教育大学)
C平成19年度:美術教育実践学会事務局長
◎特色・強調点等
 大学の授業と地域の小学校を連携させた共同研究授業のあり方が,より学生や小学校の教諭が積極的に深い考察を伴って参加する実践的な研究として展開することを目指している。また,そこで陶芸や美術が学習の中でどのような役割を担えるか・位置づけになるかを研究している。
 
<社会との連携> 
社会的活動状況
@新潟県展(工芸部門)の講評
A上越市美術展覧会運営委員
BJ2新潟 陶芸講座講師
C「前島密とふれあう」ふれあいハガキコンクール審査委員
D新潟県児童生徒 絵画・版画コンクール審査委員
Eアークオアシスデザイン陶芸教室講師
◎社会への寄与
(1)地域の小学校・中学校の企画・行事に関わり大学研究の成果を学校教育現場に活かすよう心掛けている。
(2)地域の展覧会の審査員を行い地域文化の高揚に寄与している。
 

 
安 部   泰(准教授)
<教育活動>
授 業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
◯授業形態,学習(研究)指導法等の教育方法に関する取組状況
 視覚デザインに関する授業の担当が主であるが,理論部分と実践部分を交互に取り入れる事でより体感的に理解が深まるよう授業を設定した。目的の分かりにくい演習課題を先に行うのでは無く,最終的に制作するものを提示した上でそのために必要な技術や知識を身につける事を説明し,段階的に実制作と評価の繰り返しを積み重ね,学生自身が一つ一つの演習に目的と意義を感じながら学習を進める事の出来るよう配慮した。
◯成績評価方法に関する取組状況
 一つの制作の中に段階毎に評価の機会を設定し,それぞれについて達成状況の評価と学生本人への確認を行った。学生毎に得意・不得意の箇所が異なる為,途中段階に於ける達成状況と最終的な制作物の完成度の2点を主な評価基準とする事を明示した上で成績評価を行った。 
【観点2】教育の達成状況
◯進学や就職などの卒業(修了)後の進路の状況から判断した取組状況
 平成19年度に於いては着任が後期からであった為,自己点検・評価の材料を有しない。
研究指導
【観点1】学部
 既に卒業研究・制作を半分以上進めている段階であったので,担当教員の意向を確認した上での補助的な指導に留めた。
【観点2】大学院(修士課程)
 上記に同じく,修了研究・制作に於いては既に完成に近づいている時期であった為に,担当教員の指導及び学生の理解度等を確認し,補助的な指導に留めた。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 専門分野であるデザインに対する理解を深めてもらう為に,敢えて職業デザイナーのワークフローを提示し,追体験を行う事によって体感的に理解できるよう授業を設定したものである。これは現在の学校教育に於けるデザインの扱い方が,社会に於いてのデザインの理解と乖離しつつあるのではないかという疑問に基づくものであるが,今後更に研究・検証を進めながら改善を続けていく。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
作】@平成19年10月:上越教育大学大学院「芸術系美術コース案内」平成20年度版 上越教育大学大学院学校教育研究科芸術系美術コース
A平成19年11月:「湖魚の注文の多い料理店」メインイラスト 第27回全国豊かな海づくり大会ふれあい交流事業会場(大津市),滋賀県立琵琶湖博物館
B平成19年12月:上越教育大学専門職大学院GPパンフレット等 上越教育大学学務部教育支援課
C平成20年1月:碧南海浜水族館・碧南市青少年海の科学館リーフレット 碧南海浜水族館・碧南市青少年海の科学館(碧南市)
学会活動への参加状況
@12月1日:第11回美術教育実践学会研究大会 運営参加
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@上越市美術展覧会運営委員
◎社会への寄与等
(1)上越市美術展覧会運営委員として運営活動に関わった。
 
 
松 尾 大 介(講 師)
 
<教育活動>
授 業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
○授業形態,学習(研究)指導法等の教育方法に関する取組状況
 授業の導入として,各学生の意図にもとづく動機を持たせたうえで実制作に取り組めるようレクチャーしている。造形表現における立体と平面との特質の違いに着目させながら,立体的に形象化する際の素材に向けた行為と,対象把握の心的内容との結び付きを理解させるよう配慮している。実制作で得た経験が彫刻分野だけにとどまらず,様々な表現の場で生かされるよう留意している。
○成績評価法に関する取組状況
 制作過程における試行錯誤を重視している。適宜レポートを課し,最終日には作品を展示し,合評会を開くことで教員と学生の多様な考えに触れると同時に,学生自身の体験を客体化できるよう留意している。
【観点2】教育の達成状況
○進学や就職などの卒業(修了)後の進路の状況から判断した取組状況
 今年度,ゼミの卒業・修了生はいなかった。
研究指導
【観点1】学部
 セミナーでは,教育・社会における美術を媒介としたコミュニケーションについて意識をもたせるために,地域の文化活動団体との連携を図りながら,小学生を対象とした造形表現活動等の実践的な活動の企画・運営を行った。
【観点2】大学院
 大学院1年2名のうち1名は「十日町石彫シンポジウム」の企画・運営に長年にわたり従事している経験に基づき,美術を媒介とした地域と教育のかかわりについて研究を進めた。中学校教員でもある本学生の学校現場の実践と結びつくよう配慮しながら指導を行った。また,教材開発の延長として学生の実技能力を向上させるよう配慮し,展覧会への出品を支援した。1名は新潟県芸術展で彫刻部門連盟大賞を受賞し,もう1名は二紀展(全国公募,東京都美術館),昭和会展(全国公募,東京日動画廊)へ入選した。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 信州大学との研究協力として学生による合同展覧会を毎年開催している。単なる作品発表の場ではなく,造形表現活動を通じて地域の人々や学生自身が,美術の果たす役割や生活との結びつきを考える場となるよう配慮している。今年度は須坂市蔵の町並みキャンパス推進協議会・須坂市教育委員会・信州大学美術教育分野彫刻研究室・上越教育大学芸術系美術教育講座彫刻研究室の主催のもと,須坂市内小学生を対象とした造形表現活動を行うと同時に,須坂市動物園を会場とした展覧会を支援した。地域の特色を生かしながら,学生に対して美術による教育的意義への意識を高めることができた。今後も学生同士の相互作用による協同研究を続け,学生の主体性を導き出せる活動になるよう心がけていきたい。 
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
作】@平成19年4月:木彫『畜』H210×W114×148cmを「第81回国展」へ会員として出品する。(国立新美術館)
A平成19年9月:木彫『畜-内燃・外燃-』H77.5×W110×D90cmを「第31回国画会彫刻部の試み展-コラボレーション‐」へ会員として出品する。(東京都美術館)
学会活動への参加状況
@平成19年9月4日〜5日:第46回大学美術教育学会出席
A平成19年度:美術教育実践学会理事
◎特色・強調点等
 「第81回国画会彫刻部の試み展−コラボレーション−」では,視覚特別支援学校の子供たち対象の造形表現活動を行う等,造形作品を通じて社会に機能する美術のあり方を模索する場になるよう配慮された。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
@上越市美術収集委員
A第81回国展の審査及び運営委員
B平成20年1月25日:上越市美術教育研修会講師(『彫ることと私』を講演)
C財団法人新井文化振興事業団・上越教育大学実技センター主催「文化体験プログラム」企画・運営に従事
◎社会への寄与等
 財団法人新井文化振興事業団・上越教育大学実技センター主催「文化体験プログラム」では,音楽分野上野准教授とともに企画・運営に従事した。「自然の素材を使って音楽を奏でる」をテーマに近隣の小中学生対象の造形表現活動及び演奏会を行い,市民の文化的関心の向上に寄与した。