第一章 組織の運営状況に関する自己点検・評価
 
2 平成20年度の大学運営
 
平成20年度は,第一期中期目標期間の5年目にあたり,これまでの4年間の進捗状況を踏まえ,中期目標の達成も視野に入れた業務運営に努め,以下の事項について,重点的な取組を行った。
 
教育活動では,学部において,教員に求められる実践的指導力を育成し,学生が各学年・卒業段階で修得すべき到達目標やその確認指標である「上越教育大学スタンダード」を作成した。また,教育実習において各学年段階,各実習段階で学習目標になる具体的な評価基準を示した「教育実習ルーブリック」を作成・活用することにより,実習前の自己課題の明確化を図るなど,内省的評価の深まりを促し,教育実習の質的な充実を図った。
大学院修士課程においては,前年度までの都道府県教育委員会との情報交換会で要望のあった「臨床的・今日的教育課題への対応力の育成」に向けて,共通科目をコース・科目群を超えたスタッフによるオムニバス形式にするなどの拡充を図った。授業評価等をもとにしたカリキュラムの全体的な評価では,同科目の受講者の満足度も高く,改善の成果が認められた。また,新たに設置した専門職学位課程(教職大学院)では,設置計画にのっとり円滑な運営に努めた結果,臨床共通科目,学校支援プロジェクト関連科目の受講者による授業評価では良好な回答が得られた。
 学生への支援としては,学生の教員就職及び修学指導等に総合的に対応する支援体制を充実させるため,これまでの公立学校長経験者による就職相談員及び教育職員免許取得プログラム相談員を改め,キャリアコーディネーターとして配置するとともに,2人増員して6人体制とし,常時3人以上の勤務体制とした。その結果,就職相談の件数がほぼ倍増し,就職相談を受けた者の教員採用試験合格率が前年度に比べ12.8%上昇した。
 
研究活動では,専門職大学院GPにおいて,「学校支援プロジェクト連携校」と,これらに対応した本学の支援チームが連携して実務的・実践的に教育活動の展開を支える「学校支援プロジェクト」を実施した。また,小・中学校等と連携・協力を積極的に推進するため,本学研究プロジェクトにおいて,「附属学校及び地域の学校との連携による臨床的研究」をテーマとする13件(新規6件,継続7件)の共同研究を実施した。上記研究プロジェクトや各種GP等における研究成果については,報告書の作成・配付及びシンポジウム等の開催により,教育関係者等に広く還元した。
研究活動推進のための取組としては,科学研究費補助金の申請を行ったが採択されなかった者に対し,継続して科学研究費申請を行うための支援として,大学教員(37人)及び附属学校教員(11人)に対し研究費の追加配分を行った。
 
社会連携・地域貢献等を推進するための取組としては,平成21年度からの教員免許状更新講習の実施に向けて,新潟県内の国公私立大学,工業高等専門学校及び社会教育施設など16機関で構成する「教員免許状更新講習コンソーシアム新潟」の幹事校としてとりまとめを行い,新潟県内4地区において,教員免許状更新講習の試行・予備講習を実施した。また,産官学連携による学校評価支援のための研究プロジェクト「バードアイシステムの構築による学校評価支援に関する研究」において,本学附属学校を含む上越市内の小・中学校(17校)を対象に試行評価を実施し,同システムの平成21年度からの事業化に向けて,本学,上越市教育委員会及び民間企業との間で包括的な協定を締結することとした。
 
業務運営の改善及び効率化の面では,人的資源を最大限に活用し,教員養成に関して次々に生ずる新たな社会的ニーズに弾力的に対応できるよう,これまでの教育研究組織である「部」及び「講座」を廃止し,教員組織としての「学系」と,教育組織としての「専攻・コース」を置き,学系に所属する教員が教育組織に出向く体制に移行した。
また,新たな教育ニーズへの対応として,専門職学位課程(教職大学院)を新設するとともに,修士課程及び学士課程の見直しを次のとおり行った。
〔専門職学位課程〕
・教育実践高度化専攻として,「教育実践リーダーコース」及び「学校運営リーダーコース」を新設
〔修士課程〕
・学校教育専攻の「学習臨床コース」及び「発達臨床コース」を見直し,「学校臨床研究コース」を新設
・幼児教育専攻及び特別支援教育専攻を廃し,学校教育専攻の「幼児教育コース」と「特別支援教育コース」を新設
〔学士課程〕
・教職大学院につながるコースとして,学校教育専修に「教職デザインコース」を新設
・学校教育専修の「学習臨床コース」及び「発達臨床コース」を見直し,「学校臨床コース」を新設
 
財務内容の改善に関しては,契約の適正化に向けた取組として,随意契約によることが真にやむを得ないものとして締結した随意契約については,ホームページ上で公表するとともに,業務の公共性及び運営の透明性をさらに確保するため,随意契約以外の本法人が締結した契約の内容も公表することとして「契約の公表に関する取扱について」を策定し,これに基づきホームページ上で公表した。
また,前年度に引き続き,管理的経費の節減に向けて,光熱水量の節減や省エネに関する意識の啓蒙のための呼びかけやデマンド管理制御装置の活用による電力使用量の抑制など,光熱水料の節約に努めるとともに,自己収入の増加に向けた本学の資金運用として,余裕資金で国債を購入し,利息収入を得た。
 
評価活動に関しては,今年度,新たに設置した専門職学位課程(教職大学院)について,今後実施される認証評価にも対応できる新たな自己点検・評価項目の検討に着手し,日本教育大学協会が実施する教職大学院の試行評価に参加し,自己評価書を作成するとともに,自己点検・評価項目及び評価基準の原案を作成した。
 
広報活動に関しては,UI(University Identity)の確立に向けた取組として,大学憲章を制定し,公表した。また,本学の研究成果等を電子情報として蓄積し学外へ情報発信するため,機関リポジトリの構築に向けて,リポジトリ基本ソフトを導入し,『上越教育大学研究紀要』中の656論文を電子化した。