4 教育・研究組織等
(1) 各コースの教育
 

 
@ 学校臨床研究コース
ア 組織
 平成20年度より,学習臨床コースと発達臨床コースが統合されて学校臨床研究コースとなった。本コースは,学習臨床研究科目群(学部では学習臨床科目群),生徒指導総合科目群,学校心理科目群よりなる。
 学習臨床研究科目群では,梅野正信教授,両角達男准教授が4月1日付けで着任した。同じく4月1日付けで,小林恵准教授が教授に昇任し,西川純教授,松本修准教授(同日付けで教授に昇任),久保田善彦准教授が教職大学院へ異動,北條礼子教授が言語系コースへ異動した。朝倉啓爾教授は,教職大学院と本コースの両方で専任スタッフとなった。平成21年3月時点での教務スタッフの構成は,教授8名,准教授8名,講師1名である。院生は115名が在籍した。
 生徒指導総合科目群と学校心理科目群では,橋本定男准教授が4月1日付けで,末松裕基講師が6月1日付で,稲垣応顕准教授が10月1日付けで着任した。また,阿部勲准教授,中山勘次郎准教授が,10月1日付けで教授に昇任した。なお,若井彌一教授と藤田武志准教授は,4月1日付けで,新しく開設された教職大学院の所属となった。林泰成教授は教職大学院と本コースの両方で専任スタッフとなった。平成21年3月時点での教務スタッフの構成は,教授4名,准教授7名,講師1名であるが,荻原克男教授と下司晶准教授は3月末で辞職する(荻原教授は北海学園大学へ異動,下司准教授は日本大学へ異動)。院生は,89名が在籍した。
イ 教育の特色
 本コースでは,教科の授業にとどまらず学校教育全般を幅広く研究対象とし,児童生徒の学習促進と人間形成の両面にわたって,実際に学校で起こっていることと当事者の視点を大切にしながら,実践的支援に資する臨床的教育および研究を行っている。実践的な知識・技能だけでなく,その理論的な背景の検討や再構築も行いながら,新たな教育活動を構想し推進できる能力の育成を目標としている。学生・大学院生は,「学習臨床研究」(学部は「学習臨床」),「生徒指導総合」及び「学校心理」の各科目群のいずれかに所属して学びながら,各自の研究課題を追求し卒業論文・修士論文の作成をめざしている。
ウ 運営・活動の状況
@)コース会議等の開催状況
 学習臨床研究科目群では,月1回,会議を開催し教育研究に関する事項を協議し決定している。生徒指導総合科目群と学校心理科目は,合同で月1回会議を開催し教育研究に関する事項を協議し決定している。入試や修論の指導等にかかわる審議も,学習臨床研究科目群と,生徒指導・学校心理科目群の2領域編成で行っているため,コース全体の会議は開催していない。
A) 審議された主な事項
 それぞれの会議において,新しいコースの科目群として,どのように教育研究にあたるべきかが検討された。
B) 重点的に取組んだ課題や改善事項等
 何人かのスタッフが教職大学院へ移動したこともあって,残ったスタッフでいかに効率よくカリキュラムを運営し,卒論修論の指導を行うかを検討し,実践に移してきた。
エ 優れた点及び今後の検討課題等
 本コースでは,教科や領域を横断しつつ,多様なスタッフが学校現場とかかわり教育実践研究に取り組んでいる。また学校臨床研究コースの括り(2年次生以上は学校臨床コースと発達臨床コース)で,1〜3年までの在籍院生が平成20年度は200名を超えた。特筆すべきことである。
 今年度より,本コースの中が3つの科目群より構成され,2つの領域に分かれて運営されることになったが,初年度ということもあって多少の混乱があった。今後,スムーズな運営のために組織のさらなる改編が検討されねばならない。本コースの改編は,教職大学院との差別化を図るためのものであったが,その差別化と共生の在り方を今後も検討する必要がある。
 

 
A 臨床心理学コース
ア 組織
 本コースの構成は,教授2名,准教授3名,講師1名,助教1名の陣容である。昨年度末,准教授1名が転出したため,後任人事の公募を行ったが,適任者がいなかったため,来年度改めて公募することになった。本年度9月兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科(博士課程)学校教育臨床連合講座のマル合審査に五十嵐透子准教授が合格した。また,本コースの学生ニーズ及び社会的ニーズに応え教育研究指導体制の万全を期するため,昇格人事が進められ,本年4月1日付けで五十嵐透子准教授が教授に昇格することになり,これで修士課程,博士課程ともにマル合教授3人体制となった。
イ 教育の特色
 本コースは,日本臨床心理士資格認定協会の第1種認定を受けた臨床心理士養成コースであり,教育,医療,福祉,司法に関わる人間の心の問題の解決に関する実践と解決方法の開発研究を目的とした専門的な教育研究分野として,これまで多くの修了生を輩出してきている。昨年度から学部も臨床心理学コースとして独立したため,6年一貫の臨床心理士養成,そしてその後の博士後期課程3年間を含む臨床心理学研究者養成といった条件整備が今後必要になる。幸い,博士課程学校教育臨床連合講座のマル合教授3名が指導する修士課程修了生が一度に3名も合格したことも,本コースのさらなる条件整備の試金石にもなると考えられる。
ウ 運営・活動の状況
@)コース会議等の開催状況
 定例のコース会議は,毎週火曜日10:30〜12:00の日程で行ってきている。年度当初にはコースのいっそうの活性化に向けて昇任人事に向けての積極的対応を促すとともに,折りに触れてその触発を行った。また,連合大学院博士課程のマル合や合の審査への申請を積極的に促した。
A)審議された主な事項
 全学的な検討事項等についての議論はもとより,特に次の点について検討した。a) 資源配分申告書(評価区分147-U)コース・科目群別研究評価についての基準の作成を行った。b)学部臨床心理学コース並びに大学院臨床心理学コースのよりいっそうの教育の質の向上のためのカリキュラム検討を行った。c)日本臨床心理士認定協会の平成18年度指定継続申請に関して平成20年度から施行することになったカリキュラムの完全実施を行った。
B)重点的に取組んだ課題や改善事項等
 日本臨床心理士認定協会の平成18年度指定継続申請に関して平成20年度から施行することになったカリキュラムの完全実施を行い,非公式だが高い評価を頂戴している。また,臨床心理士養成コースの学内実習施設である心理教育相談室の相談料が有料になったため,質の高い臨床サービスと臨床指導体制のよりいっそうの充実が望まれる。
エ 優れた点及び今後の検討課題等
 本コースの連合大学院博士課程のマル合教授は3名となり,今後,学部の臨床心理学コースと大学院修士課程臨床心理学コースの6年一貫の臨床心理士養成,及び博士後期課程3年間を含む9年間一貫の臨床心理学研究者養成といった条件整備が現実的な検討課題になってきていると考えられる。
 

 
B 幼児教育コース
ア 組織
 木村准教授が本学教職大学院へ移籍され,杉浦講師が平成20年10月1日付けで准教授に昇任された。本コーススタッフは教授3名,准教授1名となった。また大山教授が年度末で定年退職された。
イ 教育の特色
 本学の保育士養成を中心的に担ってきた。特に保育園実習の事前・事後指導を実施し,保育園実習の引率・指導をスタッフ全員で行った。
 幼児教育専修の4年次生及び免許プログラムの大学院生他を対象とする幼稚園専修教育実習では,コーススタッフが事前・事後指導を実施した。事前指導では実習園に学生が伺って観察を行い,より有意義な実習になる機会を設けた。
 「実践セミナー」「実践場面分析演習」の「U」では,附属幼稚園との連携・協力のもとに保育実践プログラムを作成し,附属幼稚園で受講生が保育実践を行った。その過程を全員で分析し考察して報告集にしてまとめた。
 学部2年生全員を対象とした2年次の幼稚園での観察・参加実習については従来通り講座のスタッフ全員が実習の引率・指導と各園への挨拶回りを行っている。
ウ 運営・活動の状況
@)コース会議等の開催状況
 コーススタッフ全員によるコース会議を20回開催した。
A)審議された主な事項
 ルーティンな問題から学部,大学院の教育・研究における諸問題,さらに本講座の運営方針や運営の進め方等を協議した。
B)重点的に取組んだ課題や改善事項等
 今年度は文部科学省が企画運営する幼稚園教員資格認定試験の実施に,コーススタッフ全員と関係する他コース教員が協力して参画し,多大な業務を分担し遂行した。
エ 優れた点及び今後の検討課題等
 専修教育実習の実習園とは緊密に連絡を取り合い,協力し実習を進めることができた。実践セミナー及び場面分析演習ではかなり高度な実践力を育成できた。その一方で,コーススタッフ数が4人となり,業務負担が非常に重かった。学内委員会委員等の選出方法に若干の改善がみられたが,それでも厳しい状況で,さらに検討して欲しい。共同開講授業科目を精選し,授業内容を見直しを進めた。さらに大学院定員充足のための工夫も重要な課題である。また今後も文部科学省が企画運営する幼稚園教員資格認定試験に参画することになるが,どのようにして業務を配分するか早急な検討が必要である。
 

 
C 特別支援教育コース
ア 組織
 組織については,臨床・健康教育学系に所属し,特別支援教育実践研究センターには3名が兼任として配置された。また,他の7名については特別支援教育実践研究センター研究員の委嘱があった。そして,特別支援教育実践研究センターの助教として4月1日に道城裕貴氏が着任した。また,特別支援教育コースと特別支援教育実践研究センターは一体となって運営され,教授4名,准教授3名,講師2名,助教1名の構成となった。
イ 教育の特色
 本コースは,特別支援教育に関する高度な専門的知識と実践的指導力を修得させることにより,障害のある幼児児童生徒の教育的ニーズに応じて適切な指導と必要な支援を行うことができる教員を養成することを目的としている。このため,教員の専門分野は障害児に関する教育学,心理学,生理学,指導法など多岐にわたっている。院生も,定員を上回る人数が確保されている。講座の授業としては,今年度より学校教育法と教育職員免許法の一部改正があり,特別支援学校教諭の専修免許状,一種免許状を取得するために必要な科目を開設した。特に,5障害にわたる教育領域及び重複・LD等の教育領域のすべてにわたって履修できるようにした。また,講義による専門的な知識の提供とともに,特別支援教育実践研究センターにおける臨床研究の場を数多く設定し,特別支援教育に関する幅広い教育・研究を展開した。
ウ 運営・活動の状況
 コース及び特別支援教育実践研究センターの教員全員によるコース・センター会議を26回開催した。また,コース・センターでは,院生募集・支援,カリキュラム,予算,人事,特別支援教育実践研究センターの構想・地域連携の5つのワーキング・グループを組織し,それぞれのテーマに関連する課題について改善策を検討した。その後,コース・センター会議において全教員により具体的な方策について議論し,実施した。さらに,3か年にわたる特別教育研究経費(教育改革)による事業も3年目となり,附属学校や特別支援教育実践センターを活用したカリキュラム開発の作業を行い,成果をあげた。
エ 優れた点及び今後の検討課題等
 特別支援教育が本格的実施となり2年目となったが,特別支援教育コースでは特別支援教育実践研究センターとの緊密な連携の下,院生の様々なニーズに迅速に対応できる体制を整えた。特に,小・中学校等において喫緊の課題となっている発達障害に関する教育・研究の充実を図り,特別支援教育実践研究センターにおける臨床教育・研究をより充実させることと,附属学校園,地域の特別支援学校,小・中学校等における実習を積極的に取り入れたカリキュラムを発展させることができた。今後の課題は,特に附属学校園と連携した臨床実習を継続・発展させることにある。
 

 
D 言語系コース
(国語)
ア 組織
 平成20年4月1日現在の国語の構成員は,教授4名,准教授5名の9名である。 在籍学生は,学部2年生19名,3年生19名,4年生17名,大学院修士課程1年生7名,2年生12名,3年生4名である。
イ 教育の特色
 本分野は,国語学,国文学,国語科教育,書写・書道の4領域で組織されており,学部学生,大学院学生ともにその各領域に所属している。指導の具体はそれら領域における実施を中核とするが,必要に応じて複数領域での指導を柔軟に行っている。卒業論文と修士論文の指導に係る構想発表会・中間発表会は全領域合同で行い,領域にかかわらず議論が展開されている。 なお,漢文学を専攻する教員を欠くため,大学院(隔年)・学部ともに非常勤講師を招いて充実をはかっている。
 また「上越教育大学国語教育学会」を組織しており,年2回の例会では,卒業・修了生の実践または研究の発表,卒業論文・修士論文の発表および教員の研究発表が行われており,平成20年度末で56回をむかえ,小中高教員を中心とした学外からの参加者も少なくない。学会誌として年1回『上越教育大学国語研究』を刊行し,平成20年度で23号を数える。
ウ 運営・活動の状況
 本年度,国語分野会議は18回開催された。主たる審議内容は,カリキュラムの具体的な内容の検討と担当者,修士論文・卒業論文の指導方法,附属学校(国語科関係)との連携,分野の人事基準の明確化,分野の広報活動,大学院定員充足の方策,入試に関する事柄,「上越教育大学国語教育学会」の運営方針・同学会誌の編集等である。
エ 優れた点及び今後の検討課題等
 学生の教育・研究指導において分野内の領域を横断した体制が組織されている点が優れている。このため卒業・修士論文の指導・評価ともに広い視野で実施することが可能になっている。これと連動して,学会の運営も活発である。
 今後の検討課題として,ここ数年,国語の大学院生の減少傾向が見られるので,その対策をとることが必要である。また,その属性は現職研修教員,留学生を含む新卒の進学者,長期履修学生および免許プログラム学生のごとく複雑化している。このため単一の方法では有効に指導しがたい状況が現実に生じている。修士論文の質的水準の維持をはかりつつ,学生の属性に応じたきめの細かい対応が求められる。学部については,基礎学力を養成しつつ採用試験の合格率を上昇させることが引き続き求められる。
 
(英語)
ア 組織
 本年度の英語のスタッフは,学校臨床研究コースから配置換えの北條礼子教授を含め7名,外国人教師1名の計8名である。
イ 教育の特色
 学校教育学部では,英語の基本的な力を身につけさせるとともに小・中・高等学校及び社会のニーズに対応できる能力の育成を目指して創設された言語系英語コースの8年目にあたり,2年生18名,3年生17名,4年生18名が在籍した。11月に卒業論文中間発表,平成21年2月には卒業論文発表会を開催した。
 大学院言語系英語コースでは,英語教育に関する指導力・教科専門性・実践的技能をあわせもった人材の育成を目指している。平成20年度は,1年生が15名,2年生が15名,3年生(免許プログラム)が7名在籍した。2年生は4月の修士論文構想発表会,10月の修士論文中間発表会,1月末の修士論文審査・試験を経て,3月に巣立っていった。1年生は,前期において様々な授業を履修しつつ6月末までには指導教官を確定し,次年度の構想発表に向けて本格的な研究活動に入った。
ウ 運営・活動の状況
 平成20年度は分野会議を13回開催した。審議した主な内容は「大学院定員充足策について」,「小学校英語教育充実のための方策と人事配置」等である。
 「小学校英語教育」に係わる出前講座を実施し,公開講座開催の準備や上越市教育委員会との連携・協力体制確立につとめた。また,附属小学校,糸魚川市の公立小学校から「小学校英語活動」について支援を求められ,北條教授,石濱准教授が指導・助言を行っている。
 学会に関わる活動では,平成20年7月には,言語系外国語講座が事務局となっている「上越英語教育学会」の第12回大会が本学マルチメディア教室で開催された。県内・県外から大勢の参加者があった。実践報告・研究発表を行うとともに,機関誌『上越英語研究』第9号を刊行して,地域・社会との教育・研究分野での連携を図っている。
エ 優れた点及び今後の検討課題等
 「マルチメディア語学教材システム」の本格的稼働に伴い,e-Learningを活用した教材開発や自学型カリキュラムの整備などを進めていく必要があると思われる。また,「英語コミュニケーション能力向上」,「小学校英語指導力養成」,「異文化理解マインド育成」の3点について重点的に取り組んでいくことが求められる。とりわけ,「小学校英語教育」については,学内適任者の配置換えにより,北條教授と石濱准教授による2人指導体制を導入し,社会的なニーズに応え,これらの施策によって大きな成果を上げている。平成22年度から本格導入される小学校における英語教育に向け,教育課程,教材開発のさらなる充実を図る必要がある。その結果として本学の大学院定員充足にも貢献することにつながると思われる。
 

 
E 社会系コース
ア 組織
 平成20年4月1日より社会系コースの構成員は教授6人,准教授6人の計12人である。本年度より法律学専任の准教授が配置された。しかし哲学,社会学,日本史の免許上の選択必修科目については非常勤講師により開講している。
イ 教育の特色
 当コースでは,教育内容にかかわる地理学,歴史学,法律学,経済学,倫理学,宗教学などの専門諸科学,及び教育方法にかかわる社会科教育学を研究し教育する体制をとっており,学部学生及び大学院生は自らの研究課題に基づいて各研究室に所属し,各指導教員のもとで卒論,修論を作成する。しかしながら,当コースは,研究室単位だけではなく,全教員が協力・連携して学生及び院生の教育・研究指導に当たるという共通認識が確立されており,大学院においては全教員参加のもと,修論構想発表会1回と修論中間発表会3回を実施している。
 したがって,学部生及び院生の研究内容は,教科専門,社会科教育,教科専門内容の教材化という各視点で構成された学際的・総合的な研究に取り組んだものが多くみられる。
 なお,当コースの大学院修了生,在学院生,そして本学及び他の大学教員及び公立学校の教員などで構成される上越教育大学社会科教育学会では,「学会だより」及び学会誌の発行,巡検,例会,研究大会の開催等の研究活動を行っている。
 本年度の研究大会は10月18日に,本学学校教育総合研究センターで開催され,県内外から多数の現職教員が参加し活発な討議が行われた。
ウ 運営・活動の状況
 本年度,社会系コースの教員会議は計21回開催された。ここではコース長のもとで議事進行が行われ,各種委員会委員による報告がなされ,さらに学部教育と大学院教育における指導理念と指導体制についての話し合いが行われた。
 院生の修論指導については個別指導のみならず,コース全体で実施する集団指導体制が確立されている。学部生の卒業研究における指導体制は1教員2名の学生を上限とし,院生の修論指導については1教員2名の院生を原則とする指導体制をとっている。
 実践セミナーT・U「社会」,実践場面分析演習T・U「社会」では,学部3年生と大学院1年生,学部4年生と大学院2年生とが合同で行う授業体制が定着し,授業成果を冊子にまとめ上げるという成果を上げている。
 コース内の共通資料室等の使用については,人501を借用して公民資料室に当てた。人501は資料室仕様であり,開学以来社会系コースで使用していたものなので,今後継続してその使用を申請していく。また,同室は全学共通印刷室としても共同利用している。
エ 優れた点及び今後の検討課題等
 卒論及び修論において個別指導と集団指導の指導体制を確立しており,特に修論指導においては全教員参加による数回にわたる研究発表会を開催している。また,実践セミナー・実践場面分析演習では学部生及び大学院生との合同授業体制をとり,授業成果の発表会を開催すると同時に,授業成果を冊子にまとめている。
 大学院の定員充足について,定員25人に対してM2が20名,M1が21名であり,定員を充足していない。今後,入学辞退者を出さないことと同時に定員充足に向けた取り組みが重要課題としてある。
 また,論文指導及び教育課程の充実のために,教員の欠員補充(倫理学担当教授の退職によるもの)が急務である。
 なお,来年度は経済学担当教授1名の定年退職により経済学担当の准教授採用が予定されており,内部より准教授の教授昇任が決定されている。 
 

 
F 自然系コース
ア 組織
 数学分野は教授3名(全て数学プロパー),准教授2名(数学プロパー1,数学教育1)の計5名から,理科分野は,物理学3名(教授2,准教授1),化学3名(教授2,講師1),生物学1名(准教授1),地学2名(教授1,准教授1),理科教育学1名(准教授1),理科野外観察指導者養成部門1名(教授1)の合計11名で本年度はスタートした。9月に准教授(数学教育)が赴任し,11月末に准教授(数学プロパー)が他大学へ転出した。年度途中に理科教育学の准教授が教授へと昇任した。物理学2名,化学1名,理科教育学1名の4名の教授が本年度限りで定年退職される。
イ 教育の特色
 数学分野 基礎教育に大きく貢献している。各教員が授業,演習,ゼミ等において学部生,院生に対する魅力ある教育活動に工夫をしている。
 理科分野 自然に興味関心を持ち,積極的に研究に取り組む意欲を育て,科学研究の体験を踏まえて自分自身を発見し,次世代の教育に生かす人材の育成を理科分野は目指している。学生・院生はいずれかの研究室に所属し,講義,演習,実験,ゼミナール等の指導を受けながら,専門の研究を行う,あるいは,理科の教材とその指導方法を学習する。平成16年度に創設された「理科野外観察指導者養成部門」は,既存の5部門(物理学,化学,生物学,地学,理科教育学)と連携しつつ,講義・実験を通して,野外観察のあり方や指導方法など実践を重視した指導を行ってきた。「理科野外観察指導実習」は,本学大学院学校教育研究科の授業科目であり,地域の教員に対して専修免許状取得に関わる学習の場を提供している。
ウ 運営・活動の状況
 数学分野 全員の会議は必要に応じ,機敏に開催した。教授部会は,人事に関する必要性が出てきたときに,開催した。会議においては日常の校務分掌から,教育論に及ぶ,幅広いテーマが審議された。院生のゼミにおける問題点があれば,これを共有し,全員で解決する意識を持つことに努めた。次年度には,数学教育で1名着任することが確定している。また,数学プロパー1名を採用予定である。
 理科分野 月ごとに定例の理科部会を,さらに入学試験実施等のため臨時の理科部会を開催し,教育・研究と分野運営等に関する計画立案や情報の共有をはかっている。特に,卒業研究・修士論文の研究指導については,年度初めに綿密な年間指導計画を立て,学生に周知させるともに,教員が連携して指導に当たっている。修士課程の広報活動としては,前年度に引き継ぎ,雑誌『教職課程』に「理科野外観察指導者養成部門」他理科分野の概要や入試の日程等の広告を掲載した。理科分野の受験者数を増やすために,各種のパンフレットの発送につとめた。本年度は,生物学,地学,理科教育の教員公募3件を行った。新年度には生物学の講師と地学の准教授が着任予定である。なお,理科教育の公募については新年度へ引き継がれる予定である。
エ 優れた点及び今後の検討課題等
 数学分野 数学プロパーと数学教育の両者の相乗効果による,教育・研究の更なる進展及び教員採用率の向上を図るには,いかなる方策が必要か,等について具体性のある議論が必要である。
 理科分野 どの授業科目も学部生や現職教員や免許取得プログラム受講者など多様な受講生をかかえている。学部・修士課程ともに,教科「理科」の実践的指導力を確実に習得させるためにはカリキュラムを一段と改善する必要がある。
 

 
G 芸術系コース
ア 組織
 「音楽」では教授4名,准教授5名,1月1日をもって講師1名が加わり10名で,「美術」では教授4名,准教授2名,講師2名の全8名で教育・研究・運営を行った。なお,平成21年3月31日をもって「音楽」の茂手木潔子教授が退職,「美術」の風巻孝男教授が定年退職された。
イ 教育の特色
 実技系コースとしての特質から,成果の発表は重要である。音楽では恒例となっている院生演奏会アウトゥンナーレ,合同の卒業・修了演奏会,学部4年次生による音楽劇,美術では美術作品発表,卒業修了制作展,院生展が意欲的に開催された。全国規模のコンクール,展覧会での入選,また上越市展,妙高市展での入選,受賞が数多くあった。修士論文に関しては指導の徹底を図るべく音・美とも,1年次にデザイン発表会等2回,2年次に中間発表会を経て修士論文発表会を行った。
ウ 運営・活動の状況
@)コース会議等の開催状況
芸術系コースとしては年度始めに1回,あとは音・美の各科目群ごとに開催した。「音楽」は臨時を含め23回,「美術」は臨時を含め18回。
A)審議された主な事項
「音楽」では教大協北陸地区会開催校として,「美術」では北陸地区美術部門研究協議会の開催校として運営方法等。上越教育大学開学30周年記念の演奏会並びに展覧会の開催に関わる事項。カリキュラムの具体的内容の検討。修士論文・卒業研究の指導方法。分野の人事基準。学部学生の教育指導に関する卒業迄の体系的指導の内容等。
B)重点的に取り組んだ課題や改善事項等
 「音楽」では「体験学習」のあり方を検討,実技の基礎力を指導する方向で個人レッスンを行った。「美術」では学部前期入学試験における美術実技検査内容につき,継続した内容の問題を持って改善を図り,また学部学生の卒業迄の体系的指導の内容を具体的に検討実施した。
エ 優れた点及び今後の検討課題等
 教員数が大幅に削減されていく中で,授業時数の負担が偏らないよう配慮しなければならない点,大学院生の多様な希望に応じた研究指導体制作りが今後の検討課題である。しかし,そのような状況の中で,より充実したカリキュラムを構築するため,「音楽」「美術」とも全員で協力しながら教育・研究にあたった点,また,個々の授業や活動だけでなく全学的なものも多くの教員が担当していることが優れている点である。
 大学院,学部の定員が必ずしも充足していないことから,広報活動を中心に修了・卒業生との連携,他大学との情報交換・協力体制等により現状を改善することが緊急の課題である。 
 

 
H 生活・健康系コース
ア 組織
 生活・健康系コースは,保健体育,技術,家庭,学校ヘルスケアの4つの科目群で構成されている。平成20年度の教員数は,保健体育9名,技術5名(副学長1名を含む),家庭5名,学校ヘルスケア5名の計24名(教授14名,准教授7名,講師3名)であった。人事関係では異動が2件あり,平成20年4月1日付で佐藤ゆかり講師(家庭)が着任し,平成21年1月1日付で佐光恵子准教授(学校ヘルスケア)が群馬大学に転出した。また欠員補充のための公募人事1件(学校ヘルスケア)と教授昇任人事1件(家庭)が起こされた。
イ 教育の特色
 保健体育は,体育科教育学,体育学,運動学,学校保健学の分野からなり,これらの基礎的理論と学校現場での指導実践とを有機的に融合させた指導プログラムのもとで,教育実践力に富む教員の養成及び地域の体育教育・スポーツ活動の支援を目指している。技術は,技術科教育,木材加工学,金属加工学,電気・電子工学,機械工学,情報工学,栽培学の分野に関する研究を通して,生活における情報化や国際化に対して主体的に対応する能力や,地球環境保全に配慮した技術的活動能力をもった人材を育成することを目指している。家庭は,家庭科教育学,家庭経営学,食物学,被服学,児童学及び住居学の分野からなり,社会環境の変化による複合的な生活の問題に対応できる専門的な資質・能力をもった人材を育成することを目指している。学校ヘルスケアは,学校健康教育学,食科学,精神保健等の医科学・看護学等の学問的基盤に立ち,ヘルスコーディネーターとしての役割を担う人材を養成することを目的としている。
ウ 運営・活動の状況
 大学側よりコース長に配信される依頼,照会事項はいずれも科目群単位で対応しなければならない内容であったたため,一堂に会する会議は開催せず,情報のすべては紙媒体及び電子媒体により構成員及び科目群世話人に周知し,必要に応じて意見の集約を図るという運営方法によった。また各科目群は定例の科目群会議を開き,科目群運営の円滑化を図った。
 重点的に取り組んだ課題や改善事項は,保健体育では,教員免許状更新講習試行演習の実施,学部・大学院連携授業の充実,大学院入試の出題方法に関する検討等であった。技術は,他大学の教育学部技術科,私立大学の工学部・農学部,技術コース同窓会等との連携を強化し,大学院生の充足率向上を図った。家庭は,科目群の展望を討議し,人材配置デザイン構想を明確にするとともに,ホームページの大幅な改訂を図った。学校ヘルスケアは,専門研究セミナー等の充実を図るとともに,ホームページの充実,専門誌への広告掲載等の広報活動を行った。
エ 優れた点及び今後の検討課題等
 保健体育は,本コースの学部・大学院定員の大半を確保してきた実績をもつが,指導教員が十分に確保されていないため,専任教員の増員が急務の課題である。技術は,大学院修士論文最終発表会を,上越技術・家庭科研究会及び技術コース同窓会と連携し,公開形式で実施した。検討課題は,専任教員の増員,学部・大学院生の充足率の向上である。家庭は,人事についての議論の一元化を図り,構成員全体の合議によることとした。検討課題は,人事の促進,学部・大学院生の定員充足である。学校ヘルスケアでは,昨年度に引き続き現職派遣を含む養護教諭経験者3名の入学者があったことから,養護教諭の養成及び研修について現場からの要請に応えていると判断できる。さらに教育・研究環境の充実を図ることが今後の課題である。
 

 
I 教育実践リーダーコース
J 学校運営リーダーコース
ア 組織
 本専攻の教員構成は平成20年4月末で18名であった。教授は9名,准教授は7名,特任教授2名である。異動者及び異動予定者は平成21年4月より若井彌一教授が学長就任のため異動し,後任者が着任予定である。
 大学院専門職学位課程在籍者は,1年次学生32名。平成21年度に,新入生が入学する。また,平成21年度に学部に教職デザインコースが新設される。
イ 教育の特色
 本専攻は,教育実践リーダーコースに関わる学習指導領域と生徒指導領域,また,学校運営リーダーコースに関わる教育課程・教務系リーダー領域と学年・組織運営系リーダー領域の4つの領域から構成されている。しかし,教員は固定的に一つの領域に所属するのではなく,横断的に所属し,教育を行っている。いずれの領域も,学校現場と連携し,その学校の教育改善を実現する過程で,学生指導を行っている。
 本専攻に所属する学生は,中長期の教育実習をコアとしたプロジェクト科目群を中心とした教育を受けている。プロジェクト科目群では,組織的な事前・事後指導はもちろん,教育実習中も組織的な指導を行う。また,年間を通じて,常に実習校と連携をとり,実習が実習校の教育改善につながるような計画立案と改善を継続的に行っている。その中で,学生と学校の課題意識に基づき,チームとしての追求課題を深め,その成果を学校現場に還元する。
 平成21年度より始まる学士課程の教育活動に関しては,専門職学位課程の教育活動と連携するよう計画を進めている。
 連携する学校単位で,その成果を発表する場を設けている。さらに,地域に対する発表の場を設けている。このような場を通して,学生・教員集団の相互理解,相互乗り入れをはかるのみならず,地域や学校との相互理解,相互乗り入れを発展させ,共有化する工夫を行っている。
ウ 運営・活動の状況
 ほぼ毎週に専攻会議を開催し,本専攻の運営に関する重要事項について協議している。さらに,必要に応じて一つのテーマに絞って半日以上を費やす臨時専攻会議を開催している。
エ 優れた点及び今後の検討課題等
 次年度は開設2年目となり,1年目の学修の成果を2年目に繋げる教育を行わなければならない。また,学生の就職支援を行わなければならない。これらが来年度の最重要課題である。
 人事については,平成22年に向けた人事を平成21年度中に行う。欠員と昇任人事について,適正な人事配置と均衡のある職階構成が教育・研究環境の整備にとって不可欠であり,その是正と改善が望まれる。