６　附属施設等

　

(10) 附属中学校

ア　設置の趣旨（目的）及び組織

�@）設置の趣旨（目的）

a）義務教育の学校として，教育基本法等の教育関係法規に基づき，生徒の心身の発達に応じた中等普通教育を行う。

b）上越教育大学学生の教育実習（参観・参加・実習）の場として学生の指導に当たる。

c）大学と一体となり，教育理論及び実践に関する研究を行う。さらに，中学校独自の立場から研究と実践を行い，地域の教育現場に寄与できる資料を提供する。

�A）組織

校長，副校長，教頭，主幹教諭，指導教諭，教諭13名，養護教諭１名, 講師７名

イ　運営・活動の状況

�@）教育研究の状況

a）研究の概要

研究主題　「社会に広がる学びの創造（第２年次）〜活用力と社会性をはぐくむ学びの過程に着目して〜 」

研究内容

1）「社会に広がる学びの創造」を目指し，生徒の実生活・社会生活の場面や将来の生活の場面において必要となる能力と資質をはぐくむ学びを展開する。

・実生活及び社会生活の場面における新たな事物・事象に対する学びの過程を明らかにする。

・学びの過程の各段階における活用力の構成要素及び社会性の重点要素を設定する。

・活用力の構成要素及び社会性の重点要素をはぐくむ具体的な取組を工夫し，授業実践を積み重ねる。

2）生徒の活用力や社会性の実態を把握できるよう，アンケートなどの各種調査を実施する。

3）授業公開及び協議会を開催して学校外からも広く意見を求め，研究を深める。

4）研究紀要及び実践事例集を作成して，授業実践の成果と課題を明らかにする。

　2007年度研究の課題を受け，「思考」「表現」の段階の指導に重点を置きながら，各教科，総合的な学習の時間，人生ゼミにおいて研究を進めた。

b）教育研究協議会の開催

　今年度の研究協議会を10月10日（金）に，次のような日程で実施した。

・全体会（全体発表，全体指導，歓迎合唱）9:00〜10:00

・公開授業�T・�U（全教科の授業公開）10:15〜12:10

・協議会（共通協議題「社会に広がる学びを具現化する授業の在り方」）13:00〜14:45

・講演会（「「生きる力」を育む教育の新たな展開」講師：国立教育政策研究所次長　大槻　達也　様）15:00〜16:30

　当校教育研究協議会には，北海道から九州までの全国各地の先生方から参加していただいた（参会者397名，院生・学生スタッフ６名，計403名）。朝から晴天にも恵まれ，滞りなく今年度の教育研究協議会を終えることができた。研究会当日は，各教室で熱の入った授業が展開され，多くの参会者から，歓迎合唱をはじめ，生徒のあいさつ，授業に真剣に取り組む姿に対して，おほめの言葉をいただいた。

　全体指導では，上越教育大学教授　朝倉啓爾様から附属中学校の責務として，「基本に忠実な教育研究の展開」の視点から，以下のご指導をいただいた。

　「基本」とは，一つには「学習指導要領」であり，一つには附属中学校の「学校要覧」に明記されている第３の任務，即ち「大学及び附属小学校と一体となり，教育理論及び実践に関する研究を行う。さらに，中学校独自の立場から研究，実践し，地域の教育現場に寄与できる資料を提供する」ことである。両者の間には，前者を踏まえた教育研究を推進することにより，後者の任務が果たされるという関係がある。研究の方向性，内容，運営などの検討に当たっては，この点についての共通認識をもつことが肝要である。

　公開授業では，教科13，人生ゼミ（道徳＋学級活動）１，総合的な学習の時間１の計15の授業を公開した。その後の協議会では，公開授業を基に，社会に広がる学びとなるための授業の在り方について，参会者から数多くの意見や提言が寄せられた。

�A）管理運営の状況

研究推進のための体制づくり

a）研究委員会と研究会議の実施

　４人の教諭からなる研究委員会を中心に，全教員で研究を推進している。研究内容を毎週月曜日に研究委員会で検討し，それを木曜日の全教員出席の研究会議に諮る体制を取っている。

b）大学教員からの指導の場の設定

　当校の研究については，日ごろから本学教員に指導を仰いでいるが，特に研究協議会開催に向け，指導をいただく場を設定している。本年度は，５月と２月に全体の打合会を行い，各教科ごとに，随時指導を受けるようにした。

c）研究協力体制の整備

　当校の研究推進に当たり，各教科の指導者として本学教員及び教育事務所の指導主事等から，中間検討会，研究協議会，年次の研究のまとめに関して指導をいただいている。また，公立学校の教員からも協力を受ける機会を設けている。

�B）附属中学校の活性化・充実のための取組

a）附属中学校の伝統を踏まえ，教育活動のキャッチコピーを「確かな学力，響く歌声，あふれる探求心」と定め，以下に述べる取組を行った。

1）潤いと達成感のある学校運営の工夫

　生徒にとって潤いのない学校生活にならないように，当校では時間割の工夫等で授業時数を確保し，学校行事を減らさないように努めている。伝統となっている年２回の校内合唱コンクールや体育祭，文化祭，スキー合宿等を実施し，生徒の活力を引き出し，達成感を味わわせることができた。

2）大学教員の支援を受けた「附属中学校，わくわく大学ウィーク」の実施

　生徒の知的好奇心や進路意識を高めることをねらって，夏季休業中に，大学教員から専門研究に触れる「特別授業」を行ってもらった。平成14年度から取り組まれている事業であるが，平成15年度から期間を１週間に延長し，大学挙げての支援を受けている。本年度の延べ受講生徒数は222人で，受講生徒の多くは新鮮な感動をもち，所期の目的を達成することができた。

3）体験的な活動の充実を図る総合的な学習

　総合的な学習においては，各教科の学びが生活場面に生きる三つの領域の学びとして実施してきた。

　１年生「地域社会（学校生活）と自分とのかかわり」，２年生「日本や国際社会と自分とのかかわり」，３年生「未来の社会の在り方と自分の生き方」をテーマにし，森林体験学習（１年），森小屋体験（２年），沖縄平和学習（２年），ミュージカル（３年）と体験的な活動を充実させ実施した。生徒，保護者から有意義な活動であると評価をいただいている。

4）国際理解教育の推進

　今年度は，７月16日（水）〜20日（日）の４泊５日の日程で，韓国ソウル市の水洛中学校生徒30名と引率３名，計33名が訪日し，交流を深めた。この交流を通して学んだことを全校に伝え，文化やものの見方・考え方などの共通点や相違点を確認することができた。

5）家庭・地域との連携の強化

　家庭との連携として親子面談，授業公開，ＰＴＡの事業として，「ＰＴＡ親子講演会」，「親子での学校整備活動」，「きささげコーラスによる合唱コンクールへの参加」など親子で附属中学校で活動する場面を多く設定してきた。このように行動連携として実績を上げている。

　地域との連携として，総合的な学習で，「上越の朝市の取材（１年）」，「高田本町商店街のフィールドワーク（１年）」，人生ゼミの学習で，「人生の先輩から学ぶ−市民サークルへの訪問（２年）」など，複数の教科の学習において，積極的に近くの市立図書館を始めとする施設設備の利用や市民団体への訪問取材を行っている。また，地域の人材を活用した講演会や授業を実施している。

6）確かな学力の定着

　放課後の自主学習（木曜）に，数学と英語の基礎学力向上策として，６月〜２月に計18回の放課後自主学習を行った。上越教育大学の院生・学生から募った19名の学習支援ボランティアが，自主学習を希望する生徒の相談役に当たった。生徒自身の基礎学力の定着に向けた取組に対する支援になればと期待している。

b）教育実習の実施

　学部４年生及び当校卒業生の合わせて41名の実習生を迎え，５月12日（月）〜５月30日（金）の３週間実施した。また，９月９日（火），11日（木）の２日間，学部１年生167名が半々に分かれて，実習生の配属学級の授業，終学活等を参観した。

c）職員会議及び学校評議員会の開催

　校長の意思決定に基づく学校運営が円滑に実施されるよう，定期的に年18回職員会議を開催し，共通理解を図ってきた。

　また，教育に関する識見を有する方から，国立教員養成系大学の附属校としての使命を果たす学校運営の在り方について意見を聞く学校評議員会を６月20日（金）と３月４日（水）に開催した。

ウ　優れた点及び今後の検討課題等

�@）大学の理念に沿った附属中学校の目的の視点から

a）大学との連携

　当校の研究の面でも大学の講義の面からも，大学の各研究室と当校との間に緊密な連携が図られている。また，当校教諭が中心となって活動している地元の研究サークルの指導者として，大学教員からも積極的に月例会等に参加してもらっている。

　大学の附属学校として，大学教員による中学校における授業や大学院生の研究授業の受入れを実施している。また，学部生や院生の卒論・修論にかかわるアンケート等の資料取りに協力している。

　本年度は，附属中学校として１件の学内研究プロジェクトが採択（継続）されたほか，学校教育実践研究センターの各分野の研究プロジェクトにも当校教諭が参加している。さらに，多くの教科で共同研究が行われるよう努める必要がある。

b）教育実習

　教科によって実習生の人数にばらつきがあることと，当校教諭数との兼ね合いから，実習生によって担当時数の片寄りが予想されたので，実習生同士のティーム・ティーチングによる実習を取り入れた。

　上越教育大学スタンダードに合わせた教育実習への対応を検討し，大学と附属学校園の連携を図った教員養成学部の学士力の質保証を実現していく必要がある。

�A）附属中学校の教育研究・管理運営の視点から

a）教育研究

　教育研究について，２年次であり保護者への理解を図るため直接，保護者に伝える機会を増やす（もつ）ことと生徒を通じて伝わることの両方を実践してきた。学校評価等から理解も深まってきたことがわかる。また，校内研修の場での大学教員の積極的な活用を図っていくことも必要である。

b）緊急時・災害時の対応等

　社会の防犯意識が高まる中，緊急時の学校の対応として，災害用伝言ダイヤル，緊急ｗｅｂページ及び希望者への緊急用のメーリングリストという３つの手段で，生徒が学校にいる時間帯や災害時の学校の対応等を提供できるようにした。

　一方，体育館天井からの水滴落下など生徒の安全にかかわる施設面では予算の関係もあり，なかなか改善されていかない点に危惧している。

�B）生徒募集に関する学校説明会の実施等による定員充足に向けた取組の視点から

　附属中学校への入学を希望する児童が少しでも早い時期からその準備ができるようにと，学校説明会を６月下旬に開催した。そこでは，当校教諭による模擬授業を行ったり，事前に作成した学校紹介用パンフレットを配付したりして当校のよさを強調することで，参加した児童が附属中学校への受検の意志が固まるように努めた。また，市の校長会や上越管内の小学校へ直接訪問してのＰＲ，生徒募集用ポスターの作成，管内の小学校・公共機関・塾への掲示依頼の取組を行った。さらに要請があれば出向いて学校説明を行うように計画したところ，７か校（昨年５校）の小学校等から要請があり，これを受けて説明を行った。更に，地元新聞への宣伝掲載及び新聞への募集チラシの折り込みを実施した。その結果，162名（昨年182名。162名のうち，101名が公立小学校）に及ぶ出願があり，定員を充足することができた。