第一章 組織の運営状況に関する自己点検・評価
 
2 平成21年度の大学運営
 
 平成21年度は,第一期中期目標期間の最終年度にあたり,これまでの5年間の進捗状況を踏まえつつ,中期目標を達成すべく業務運営に努め,以下の事項について,重点的な取組を行った。
 
 教育活動では,(1)学部において単位の実質化に向けた適切な成績評価を実施するため,平成21年度入学生からGPA制度の導入,(2)専門職学位課程(教職大学院)のカリキュラムの円滑な実施のため,公立学校退職校長を特任教授として1人増員(合計3人体制),(3)学部及び大学院の教育実習等の充実のため,新潟県教育委員会との人事交流による特任准教授を2人増員(合計5人体制)した。
 
 学生への支援としては,(1)修学,就職及び生活に関する総合的な学生支援体制を構築・機能させるための組織として「総合学生支援室」の設置,(2)学校不適応学生の早期発見とその後のケアを支援するため「学生支援オールインワンカルテシステム」の導入,(3)教育公務員特例法に基づく大学院修学休業制度を利用して修学する現職教員学生を対象に,授業料の半額若しくは全額を免除する制度の導入及び免除の実施,(4)本学独自の給付型奨学金制度「上越教育大学くびきの奨学金」の導入及び給付を行った。
 
 研究活動では,平成21年度上越教育大学研究プロジェクトにおいて,学部・大学院カリキュラムの6年一貫教育及び学部教育と現職教員研修の融合を実現する教員養成カリキュラムの開発について研究を進めるため,「学部・大学院6年一貫教育を見通したカリキュラムの開発」のテーマを設け,研究を実施した。なお,この研究も含めて,新規採択分23件及び前年度からの継続分10件合わせて33件のプロジェクトを採択・実施した。
 
 研究活動推進のための取組としては,(1)研究環境のより一層の整備・改善と研究の推進・開発を目的とする「研究推進・開発室」を試行的に設置し,論文投稿等についての相談を実施,(2)教員の職務の一部を一定期間免除し,自らの研究に専念させる制度として導入した「サバティカル制度」について,平成22年度の利用希望者を募集し,前期・後期あわせて6人の利用を許可,(3)競争的教育研究資金の配分について,産前産後の特別休暇や育児休業を取得した教員が不利益を被らないようにするため,活動業績に関する取扱いの制定,(4)科学研究費補助金不採択者に対する継続申請のための支援や学内研究プロジェクト不採択者に対する研究奨励策として研究費の追加配分を行った。
 
 社会連携・地域貢献等を推進するための取組としては,(1)専門職学位課程(教職大学院)のカリキュラムの中核となる「学校支援プロジェクト」(連携協力校の課題に対して,本学の支援チームが実習における体験やデータを協働で検討し,具体的な提案として学校現場に提供するもの)の成果について,「学校支援プロジェクトセミナー」を開催し,新潟県教育委員会並びに上越市及び妙高市の小・中学校関係者等に還元,(2)本学と上越市教育委員会及び民間企業が実施してきた「学校評価支援に関する研究」で構築した「ハートアイシステム」を,上越市が行う学校評価実証実験(小学校17校,中学校8校)で活用し,各学校での運用について検証するとともに,上越市教育委員会等と共催の「教育フォーラムin上越」(平成22年1月30日)において実践事例として発表,(3)教育委員会の要望・意見を大学運営に反映させるため,新潟県教育委員会及び新潟市教育委員会と本学との連携推進協議会を設置した。
 
 業務運営の改善及び効率化の面では,(1)法人組織と大学組織の関係を整理するため,「国立大学法人上越教育大学基本規則」の制定及び「上越教育大学学則」の一部改正と,各種委員会等の位置づけの見直し,(2)法人及び大学の運営に関する学長の補佐体制の強化のため,これまで副学長兼務としていた理事職を専任とし,副学長を4人に増員,(3)男女共同参画推進のため「男女共同参画宣言」の策定及び「新潟県ハッピー・パートナー企業(男女共同参画推進企業)」への登録などを行った。
 
 財務内容の改善に関しては,(1)経費の節減のため,ゴミの節減及びリサイクル推進に関する周知,高効率化照明への更新及び太陽光発電設備の設置により,管理的経費を前年度比8%削減,(2)平成18年度に策定した「平成21年度までの財政計画」に基づいた人員管理を行った結果,総人件費改革の基準となる平成17年度人件費予算相当額の概ね17%を削減,(3)余裕資金について,国債及び定期預金で長期的に運用しているもののほか,新たに短期的な運用を行い,運用益を大学運営資金に充当した。
 
 評価活動に関しては,(1)教職大学院等の認証評価にも対応可能な専門職学位課程(教職大学院)に係る評価基準及び観点・指標を制定するとともに,平成22年度の教職大学院認証評価の受審決定,(2)大学全体の自己点検・評価として,毎年実施している各教員の教育・研究活動等や学内組織の運営状況等に関する自己点検・評価のほか,本学評価基準に基づき,「本学の目的」,「教育研究組織」,「正規課程の学生以外に対する教育サービスの状況」,「施設設備」及び「財務」の事項について特に重点的に自己点検・評価を実施した。
 
 広報活動に関しては,(1)本学の研究成果等を学外へ発信することを目的とした学術機関リポジトリについて,平成22年度の公開に向けて,本学研究紀要や学外の一般学術雑誌に発表した論文等をデータベースに登録し,学外への試験公開を開始,(2)都道府県教育委員会等への説明資料として,「スーパー教職大学院(A5版,全284頁)」を作成し,専門職学位課程(教職大学院)の紹介及び情報提供に活用,(3)入学志願者に対しては,学部のオープンキャンパスでは,新たに学長ゼミや公開授業などをプログラムに追加し,内容を充実させた。大学院の説明会においては,テレビCM及び雑誌等への広告掲載により広く周知を図った上で,新たに新潟サテライトでの個別相談会や兵庫教育大学及び鳴門教育大学との3教育大学合同説明会を開催し,入学希望者の相談機会を増やすとともに,本学で開催した大学院説明会では,大学院学生約20人も個別相談に対応するなど,きめ細かな説明会を実施した。