4 教育・研究組織等
(2)各学系の研究
 

 
@ 学校教育学系
ア 研究の特色
研究活動は,各教員の学会活動とは別に,本学研究プロジェクト採択についてみると,本学系が一般研究で3件(全体11件),若手研究で1件(大学教員5件)であった。
博士の学位取得状況は,教授7名(全21名),准教授9名(全23名),講師6名(全7名)である。教授及び准教授の学位取得についてサバティカルなどの一層の積極的な支援も望まれる。
イ 優れた点及び今後の検討課題
昨年度に引き続いて,本学の研究プロジェクトによる実践研究に積極的であり,とくに学校現場と連携した実践研究は今後も期待される。本学は連合の博士課程をもち,高度な実践研究を推進することも新構想設立の理念に掲げられて,学校教育学系は広義の学校教育学諸領域における教育実践学研究の発展に寄与することも期待されている。しかし現状では,主指導教員数が限られ,理念との懸隔は大きい。修士課程とともに連合博士課程における研究活動のビジョンと進展が望まれる。
 

 
A 臨床・健康教育学系
ア 研究の特色
本学系は,主として臨床に関わる研究領域を担当する教員によって構成されている。具体的には,臨床心理学,障害者臨床を含む特別支援教育学,さらに医学領域を含む健康教育学等である。
臨床心理学や特別支援教育を担当する教員グループでは,心理教育相談室や特別支援教育実践研究センターにおける心理臨床業務,臨床教育,実践研究を担う傍ら,研究活動を行い,その成果は臨床心理学や特別支援教育学領域の学会誌への掲載,関連諸学会における研究発表によって公表されている。また,心理教育相談室や特別支援教育実践研究センターの研究紀要でも研究報告等が多く掲載されており,大学院生との共同研究の成果も公表されている。健康教育を担当する教員グループでは,新型インフルエンザへの全学的な対応の中核を担う傍ら,大学生の保健管理に関する学会において研究発表やワークショップでの発表を行っている。
イ 優れた点及び今後の検討課題等
本学系の教員の担当する研究領域は,上述したとおり多岐にわたっているが,全体的には,人々の心身面の健康や心理的・教育的支援,特別な教育的ニーズのある児童生徒を対象とした臨床的な研究実践を進めてきている。これらの成果は,本学の学生や教職員のみならず,地域の人々にも広く還元されてきている。このような状況から,本学系の教員は,授業や学生への研究指導や校務を行いつつ,地域に根ざした研究活動を行っており多忙な業務を担っている。今後は業務の効率化を検討するとともに,研究スタッフの増員が必要である。
 

 
B 人文・社会教育学系
ア 研究の特色
本学系に所属する主な研究領域は次のとおりである。
国語学,国文学,漢文学,国語科教育,書写・書道,英語学,英米文学,英語科教育,小学校英語教育,歴史学,地理学,法律学,経済学,社会学,哲学,倫理学,宗教学,社会科教育。
イ 優れた点及び今後の検討課題等
本学系に共通するプロジェクト研究は認められないが,小学校英語教育に関し学内プロジェクトへの採用が本年度は1件あった。また社会科関係では,本学地域貢献事業への採択を承け,地域教員の研究団体である新潟県社会科教育研究会との協力のもと,地域巡検のための資料集を作成,地域の全小・中学校に配布した。以上のほか,研究活動として上記領域に関する次の3学会が組織されており,学生を含めた研究活動が積極的に展開されている。
「上越教育大学国語教育学会」
昭和58年7月に設立。上越教育大学言語系コース(国語)の教員,学生,卒業生・修了生をもって組織され,会員数はおよそ800名である。国語科教育及び国語学,国文学,書写・書道の研究を深め,会員相互の親睦を図ることを目的とする。機関誌『上越教育大学国語研究』(最新号は平成21年2月発行の第24号),学会報『上越教育大学国語教育学会報』を刊行し,例会を年2回開催する。6月の例会は卒業生・修了生による研究発表,2月の例会は卒業・修了年度の在学生による研究発表が中心で,それぞれ教員の研究発表が加わる。
「上越英語教育学会(The Joetsu Association of English Language Education)」
平成9年9月に設立。上越教育大学大学院言語系コース(英語)の教員,所属学生及び修了生を中心に組織され,会員数はおよそ150名である。毎年7月に年次大会を開催し,機関誌『上越英語研究』(最新号は平成21年12月発行の第10号)を刊行し,会員の研究成果発表の場となっている。本会は,英語科教育,英語学・言語学,英米文学の研究を深めるとともに,会員相互の親睦を図ることを目的とし,研究発表会等会員の研究活動を促進する事業,会員間の情報交換及び親睦を促進する事業等を行っている。
「上越教育大学社会科教育学会」
昭和61年3月に設立。本学社会系教育及び本学大学院社会系コース在籍者並びに修了者を中心に組織され,会員数はおよそ500名である。会員の分布は北海道から九州まで全国に及ぶ。毎年1回,学術大会を開催するとともに,機関誌『上越社会研究』(最新号は平成21年10月発行の第24号)を刊行し,会員の研究成果発表の場としている。本年度の辰野千壽教育賞においては,会員の一人が優秀賞を受賞した。
なお,(ア)項の研究領域において,本年度は漢文学,英文学,社会学,哲学,倫理学専攻の教員が欠けており,その補充が今後の検討課題となっている。
 

 
C 自然・生活教育学系
ア 研究の特色
本学系に所属する教員の主な研究領域は,代数学,幾何学,解析学,応用数学,数学科教育,物理学,化学,生物学,地学,理科教育,野外観察,機械工学,電気工学,情報科学,金属加工学,木材加工学,技術科教育,食物学,被服学,保育学,生活経営学,家庭科教育等の自然科学及び生活科学に関連した専門分野に亙る。
イ 優れた点及び今後の検討課題等
独立行政法人大学評価・学位授与機構の求める教育研究評価に係る研究業績(SS業績)として,本学系所属教員2名の2業績(いずれも学術論文)が本学より選定された。昨年度の自己点検・評価書にも記載したように,大学評価・学位授与機構による「学部・研究科等の研究に関する現況分析結果」の研究成果の状況が“期待される水準にある”とされた判断理由の中で,当該S以上の業績として昨年度本学より選定された本学系所属教員の学術論文2編について具体に言及・評価されている。本学の研究に対する評価に本学系の優れた研究成果が貢献していることは特筆すべき点である。今後も優れた研究成果をあげることが望まれる。
GPプロジェクト研究等については,兵庫,鳴門,上越の3教育大学(代表:兵庫教育大学学長)で採択された専門職大学院等における高度専門職業人養成教育推進プログラム「教職大学院の実習等のFDシステム共同開発」に本学系所属教員が参画した。学内研究プロジェクトは,新規分で一般研究3件及び若手1件,継続分で一般研究1件が採択された。
 

 
D 芸術・体育教育学系
ア 研究の特色
芸術・体育教育学系における研究領域は音楽,美術,保健体育の3つから構成される。各研究領域はさらに,音楽は声楽,器楽,作曲,音楽学,音楽教育学の5つ,美術では絵画,彫刻,デザイン,工芸,美術理論・美術史,美術教育学の6つ,保健体育では体育学,運動学,学校保健学,体育科教育学の4つの柱から成り立つ。さらに,例えば器楽はピアノ,管楽器,指揮,絵画は洋画,日本画,版画,体育学は体育心理学および体育哲学,運動学は運動方法学,運動生理学およびバイオメカニクスという具合に細分化される。
芸術・体育教育学系の3つの研究領域はいずれも実技の研鑽を中心とした身体知と理論との調和を図るという点において一致している。また,いずれも地域貢献を強く求められる分野でもあり,所属の教員の多くは日常的に学外での音楽や美術,スポーツの普及・指導に尽力するとともに,大会やコンクールにおける審査,競技会の審判等務めることを期待されており,実際に上越市内,新潟県内,さらに全国的に多数の実践がなされた。
イ 優れた点及び今後の検討課題等
本年度の芸術・体育教育学系における研究プロジェクトについては,前年度からの継続のものとして「つくったモノとからだのかかわりを中心とした表現教材の開発」「地域における大学を核とした芸術文化創造のための教育実践研究 −学校教育と社会教育の連携をめざして−」,また次年度への継続のものとして「初等教育における造形表現力育成のための基礎研究」「幼児の動きを豊かにする運動カリキュラムの実践的開発」を挙げることができる。
共同研究の一環として,2月に上越大和アートサロンで「上越教育大学美術教員展」が開催された。美術所属の教員8人全員がそれぞれの分野の作品を展示し好評を得た。また,地域貢献のひとつとしては,3月に上越文化会館創立30周年記念として公演された音楽劇「くびき野の歌」において音楽所属の教員たちが作曲,演出,指揮を担当するなど中心となって活躍し,成功に導いた。
大学創設以来,音楽と美術は「芸術系」としてまとめられていたが,教員組織として先年より体育が加わって新たにこの学系が成立した。実際に活動してみると,この3つの領域は実技との関わりから非常に共通する意識を持っていることがはっきりしてきた。今後,3領域が連携する独創性の高い研究が始まることを期待したい。