6 附属施設等
 
(3)保健管理センター
@ センター
ア 設置の趣旨(目的)及び組織
保健管理センター(以下,「センター」という)は,本学における保健管理に関する専門的業務を行い,もって学生及び教職員の心身の健康の保持及び増進を図ることを目的としている。常勤の教員2名(うち1名学校医兼務),看護師1名,非常勤として検査技師1名,学外カウンセラー2名,学校医2名(眼科,耳鼻咽喉科各1名)で組織されている。 運営についてはセンター運営委員会の議を経て,所長が管理・運営を行っている。
イ 運営・活動の状況
運営・活動は例年と同様に定期・特別健康診断,内科・外科的な応急措置,身体・精神保健相談,禁煙相談および健康診断証明書の発行を中心に行ったが,平成21年度の特筆すべき活動として,当該年度に流行した新型インフルエンザ感染に対する対策を行ったことと慢性腎臓病に関する市民公開講座を実施したことがあげられる。
1) 学生の健康診断
学生の定期健康診断は学生自身が健康調査票を記載し,身長,体重,血圧の測定,尿検査,視力検査,胸部X線検査(上越地域総合健康管理センターの検診車による間接撮影)を受けた。学生の定期健康診断の受診率は95.6%(学部生98.8%,院生92.2%)で,前年とほぼ同様であった。また聴打診などによる内科健診を学部及び大学院の新入生を対象に実施した。さらに眼科及び耳鼻咽喉科のスクリーニング健診を実施し,有所見者及び希望者については,眼科及び耳鼻咽喉科の各学校医により精密健診を実施した。精神保健に関しては,新入生に対しUPI(University Personality Inventory:大学生精神健康調査)調査を行い,所見の多かった学生について呼び出し,面接相談を行った。
教養基礎科目の体育実技科目として,学部1年次学生にマリンスポーツ,並びにスノースポーツを課しているが,当該実習中及び課外活動中の健康管理の観点から,特別健康診断として学部1年次学生全員に心電図検査を実施し,事故の発生防止に努力している。また,学部4年次学生全員に対し生活習慣病予防の保健教育・保健指導を兼ねて,心電図検査,血液生化学(GOT・GPT・γ-GTP・血液脂質・尿酸・血糖)及び末梢血液検査を実施し,有所見者には個別に再検査等事後措置及び保健指導を行った。さらに今年度も教育職員免許取得プログラム受講の大学院1年次生に心電図検査を実施した。
2) 職員の健康診断
職員の健康診断は,全職員を対象に身長・体重・血圧の測定,視力・聴力・尿検査,胸部X線検査を実施し,受診対象年齢者及び希望者を対象に血液検査・心電図検査・便潜血反応検査について実施した。センターにおける健康診断受診者は教育系職員110人,事務系職員116人の計226人(63%)で,前年度よりやや増加していた。人間ドック受診者は113人で30.9%と昨年と比べ著変なかった。
3) センターの利用状況等
当センターの利用については,職員の勤務時間内において常に対応できるようにしている。身長,体重,血圧,体温測定等は,いつでも計測できる。精神保健相談は相談者の希望を聞き,基本的には予約制とし,月・水・金の学外カウンセラーに引き継いでいる。緊急を要する場合には,学内カウンセラーと連携するなど,迅速な対応に努めている。本年度の利用者総数は968人(学生872人,教職員96人)で,前年度より減少していた。
4) 精神保健相談体制
本年度は学内カウンセラー2名,学外カウンセラー2名,精神科医1名による精神保健相談体制とした。総相談件数は延べ288件で,前年度(362件)より大幅に減少していた。その要因として,不適応状態(行動)にある学生に対する本学のサポート体制(平成18年度確立した)により教員から比較的早期の段階で相談を受けることが多くなったことと,毎年新入生に行うUPI調査を本年度から例年精神保健相談の多い大学院生に重点をおいて拾い上げることにより早期に不適応状態(行動)に陥りやすい学生を発見できたことなどが考えられた。
5) 新型インフルエンザ対策
平成21年4月から6月にかけて本学では学生の46名が季節性のインフルエンザ(B型がほとんど)に罹患した。そこへほぼ同じ時期に“新型”インフルエンザ(H1N1)が国内で急速に流行し,関西の大学生にも感染者が発生し,全学休校に至る大学も現れる事態となった。
本学では4月下旬から新型インフルエンザ対策の危機管理室会議を立ち上げたが,センターから危機管理室会議に対して情報提供,助言,指導などを行った。またセンター独自としても学内の学生・職員向けにインフルエンザに関する情報提供や注意喚起(うがいや手洗いの励行,マスク着用,体温測定など)を掲示物によって行った。
しかし本学でも残念ながら8月中旬から新型インフルエンザ感染者が少しずつ発生した。11月初旬の学園祭後,新型インフルエンザの爆発的な学内流行が起こり,感染やその疑いのある学生や職員に対して,センターへの連絡を義務付けると同時に,医療機関受診の案内,回復後の復学・復職の指導なども行った。幸い重症者の発生はなく,全学休講も比較的短期間で済み,平成22年1月に入り急速に感染者は減少し,2月以降感染者はでなかったが,最終的に学生205名,教職員10名の感染者が発生したことは残念であった。
6) 禁煙相談等健康支援活動
今年度も定期健康診断時に全学生を対象に喫煙に関するアンケート調査を行い,学生の喫煙実態把握に努めた。5月31日の世界禁煙デーに伴い,啓蒙活動の一環として,禁煙ポスターを貼り,禁煙促進を図った。
さらに受動喫煙予防を推進するため,平成23年度から実施される敷地内全面禁煙に向けて,健康促進月間(11月19日〜12月10日)において禁煙相談を実施し,併せて健康相談も開催した。
7) 性腎臓病に関する市民公開講座
近年新たな生活習慣病の一つであり,心臓病や脳血管障害の危険因子として注目されている慢性腎臓病CKDに関する市民公開講座(「市民公開メディカルセミナーin 上越 天・地・腎? CKDってなあに?」)を5月16日に本学講堂で行った。
これは本センターが中心となって企画し,新潟大学大学院医歯学総合研究科腎医学医療センター寄附講座,中外製薬との共同で開催した。内容は,上野所長,上越市内の医師,看護師,栄養士による講演,パネルディスカッション,市民との質疑応答であり,約180名の市民が参加し,好評を得た。
ウ 優れた点及び今後の検討課題
1) 麻疹対策
今年度も入学者に対して入学前に事前に抗体検査を実施し,抗体陰性・低抗体価者の方にはワクチン接種を受けていただき,再検査でも同様の場合には再度ワクチンの接種を受けることを必須とした。感染が心配される水痘,風疹,おたふく風邪についても抗体検査とワクチン接種について勧奨の形をとった。今後も感染症対策と確実な教育実習対策として,学生全員の感染症についての認識を高める事が今後の検討課題である。
2) 新型インフルエンザ対策
センターでは2年ほど前から緊急連絡のために,学生に定期健康診断時に本人と家族の携帯電話番号を健康診断票に記入してもらっている。また今回流行した新型インフルエンザ対策として,学生や教職員への連絡や診療経過情報の確保と確実な指導のために,新たな個人情報シートと感染者管理ファイルを作成し,緊急対応し,混乱を回避できたことは優れた点であったと考えられる。しかし,今回の新型インフルエンザは「弱毒型」であり,幸いにも学内に重症者や死者は出なかったが,近年心配されている「H5N1」の「強毒型」インフルエンザへの学内対策はまだ十分とはいえない点は今後の検討課題と考えられる。
3) 精神保健相談体制の充実
不適応状態(行動)にある学生に対してはサポート協働体制が確立し,早期に対応することができるようになったが,さらなる学内周知(特に新任教職員への周知)が課題である。
4) ホームページ等による情報発信
ホームページにより,学生の健康増進に役立つ健康情報や流行性疾患などについてのリアルタイムな情報提供をより一層心がけていく。
5) 禁煙推進活動
今年度も学生の喫煙率が把握できたことは有意義であった。今後,喫煙者に対する禁煙相談,全学生を対象とする喫煙アンケートの実施,敷地内全面禁煙に向けた推進活動を可能な限り行う。
A 運営委員会
ア 設置の趣旨(目的)及び組織
1) 組織設置の趣旨(目的)
保健管理センター運営委員会は,当センターの運営等に関する諸問題について審議するために設置された機関である。
2) 組織の構成及び構成員等
委員長はセンター所長が務め,委員としてセンター教員1名,学生委員会委員長1名,各専攻から選出された教授又は准教授の計3名,学長が指名した教授又は准教授1名,総務部長1名及び学務部長1名の合計9名で構成されている。
イ 運営・活動の状況
1) 委員会等の開催状況
平成21年7月28日と平成22年3月10日の2回,委員会を開催した。
2) 審議された主な事項
・ 平成20年度保健管理センター年次報告書
・ 平成21年度学生健康診断計画
・ 平成22年度事業計画
3) 重点的に取組んだ課題や改善事項及び前年度の検討課題への取組状況等
受動喫煙予防や禁煙支援対策とメンタルへルスケア推進について協議し,重点的に取組んだ。大麻などの薬物乱用に関する啓蒙活動についてさらに協議し,推進する必要がある。