6 附属施設等
 
(8)附属幼稚園
@ 設置の趣旨(目的)及び組織
ア 本園の任務
1) 教育基本法,学校教育法等に基づき幼児を保育し,適当な環境を与えてその心身の発達を助長するとともに,保育に関する研究を行う。
2) 学部学生および大学院学生の実地教育,実地研究に協力し指導に当たる。
3) 大学および附属小・中学校と連携し,教育理論および実践に関する研究を行う。
4) 地域社会における幼児教育の振興に寄与する。
イ 組織   園長,副園長,教諭3名,養護教諭1名,事務職員1名,非常勤講師3名
ウ 教育目標 「元気な子ども やさしい子ども 考える子ども」
A 運営・活動の状況
ア 教育研究・管理運営の状況
1) 教育課程改善研究の推進
平成22年度から文部科学省研究開発学校の指定を受け,幼稚園教育と小学校教育との円滑な接続を促す幼児教育の在り方に着目した研究に取り組み始めた。今後,3年計画で研究を推進していく。
a 研究主題  「幼小の円滑な接続を促す幼児教育の推進」(1年次/3年)〜接続プログラムの作成と指導方法等に焦点づけて〜
b 研究内容
研究初年度となる今年度は,幼児の主体性を生かした学び合い,支え合いを重視した接続プログラムを開発するとともに,幼児期の発達特性を踏まえた幼稚園教育と小学校教育の「接続期」を設定し,小学校からの学びの基盤となる力を培う教育課程を検討・編成し,実践した。
c 平成22年度教育研究会の開催(第18回幼児教育研究会 10月6日)
幼稚園・保育園に加え小学校や教育行政からも大勢の参加者があり,総勢約250名からの参加が得られた。あいにくの雨となったが,保育室や遊戯室,ベランダ等を使い,仲間とかかわり,自己発揮しながら活発に遊ぶ幼児の姿を公開することができた。参会者からも子どもの育ちや指導者のかかわりについて高い評価をいただいた。午後からは,「幼小の円滑な接続にかかわるシンポジウム」を開催した。研究者,小学校教諭,幼稚園長,行政関係者等,それぞれの立場から幼小の円滑な接続にかかわる取組や思い等について話をしていただき,今後の課題や解決の方向を協議し合った。その後,東京成徳大学教授 神長美津子先生から「幼小の円滑な接続を目指して」と題してご講演をいただいた。
d 研究紀要の発刊
年度末3月に平成22年度研究紀要『幼小の接続を考える』を刊行した。日々の書きためている履歴やこれまでの研究の中で書きためてきた記録を整理し,小学校からの学びの基盤となる力を8つの視点からとらえた。また,接続期を5歳児の10月から1年生5月の中旬頃までと設定し,特に「伝え合いに着目した接続プログラムを作成し,実践を進めた。園の豊かな環境の中で,幼児が繰り返し楽しんできた遊びを協同性を育むという視点から見つめ直して紹介した。幼児が「場」「物」「人」とかかわりながら,広がり深まっていく遊びの中で仲間関係を育んでいく特徴的な様相を分かり易く示した。
2) 管理運営の状況
a 教職員や保護者等による学校評価を生かした学校運営改善の取組
年度始めに保育や運営の方針を簡潔に示したグランドデザインを作成し,教職員と保護者による学校評価を1月に行った。学校評議員会では保育や研究の成果及び学校評価の結果を示し協議を行うとともに,文部科学省からの「国立大学附属学校園の新しい活用方法〜とりまとめ〜」を踏まえて,当園の課題と今後の取組について具体的に提案し,意見をいただいた。また,学校評価の結果は学校評議員会での意見を加えてまとめたものを3月のPTA総会で保護者に公表し,次年度の改善に反映させた。
b 教育環境の整備と安全管理の徹底
幼児の豊かな体験の場として充実した環境となるように,毎週全職員で園庭等の整備作業等を行った。
また,幼児の遊びがいっそう充実するよう,今年度も実のなる樹木や草花等の植え付けなどを行った。
c 安全確保の取組
警察や消防署などの協力を得て,火災,地震,不審者侵入等を想定した避難訓練を年6回実施した。
PTA交通安全委員と協力した安全指導や施設設備安全点検などを定期的に実施し,安全確保に努めた。
また,安全な登降園のために,外部講師を招いて保護者と子どもと一緒の交通安全教室を開催した。
具体的な道路横断の方法や歩行の注意などを遊戯室に設置した仮設の交差点で練習し,日常生活に生かされる研修となった。
d 本園の魅力に関する調査結果に基づいた積極的なPR活動等
保護者アンケートにおいて,ほとんどの保護者が教育の質のよさに満足している結果を踏まえ,教育のよさをパンフレット配布や地域TVのCM放映,園開放デー等実施により積極的にPRした。
また,園見学を随時受け入れ,実際に園に足を運んでいただき,園の雰囲気や幼児の遊びの様子を体感していただくことで,園の魅力を知っていただくようにした。
イ 附属幼稚園の活性化・充実のための取組
1) 保育の充実を図る取組の推進
a 毎日の終礼時における情報交換,実践レポ−トを持ち寄って話し合う「保育を語る会」や研究推進委員会(週1回)などを通して,保育改善や研修に継続的に取り組んだ。
b 幼児教育コース教員など園外指導者の協力を得ながら専門的な見地を生かした研究や研修を進め,幼児の学びを見とる力や実践的指導力の向上を図った。
c 幼児の学びや育ちについて履歴を集積し,保育や指導計画の改善に生かした。
2) 家庭との連携を深める取組の推進
a 登降園時や連絡帳等を活用した情報交換をはじめ各種たより等を通して保護者との連絡を密にした。
b 保育参観日と教育相談日を毎月1回実施。保育参観日には毎回9割近い参加があった。運動会や祖父母参観等の園行事には遠方の親族も多く参加され,幼稚園の理解を深める機会となった。
c 年2回の「ふぞくフォーラム」(保護者対象)を実施し,幼児教育の重要性や園運営について理解を図ることができた。第1回は,園長の「やる気のある子どもに育てるには」というテーマで講話を行った。2回目は大学を会場に学長から「子どもたちに生きる力を」というテーマでご講演をいただき,その後,大学見学等を実施した。
さらに,父親・祖父を対象としたフォーラムを休日に2回実施。幼児の育ちや大学との連携について共に考え理解を深める機会となった。
3) 大学・附属校との連携・協力の推進
a 「幼小の円滑な接続を促す幼児教育の推進」の研究の充実を図るために附属小学校1年生の担任との連携を強め,定期的に情報交換を行いながら取組を進めた。
また,幼児と1年生との交流活動を年間を通して行い,小学校への接続が円滑に行われるよう,双方向性のある活動展開が可能になるようにした。
b 学部2年生の教育実習と学部4年生等の幼稚園専修教育実習を受け入れた。
c 幼児教育コース教員と協議会を行い,研究や運営等の課題について協議した。
d 大学教員や英語教育専攻の学部生・院生の協力を得て,年長児を対象とした英語活動を毎月実施した。
e 特別支援教育コース並びに同実践研究センターと連携し,幼児の発達相談環境を整えた。園内で「言葉の指導」を行い,早期に発音の矯正や吃音の指導に当たることができた。
f 学部生・院生のボランティアにより園外保育援助や園行事の充実を図った。
g 幼小中12年の学びの連続性を重視し,附属三校園の交流活動や情報交換を行い連携を深めた。
4) 近隣の幼稚園・保育所との連携
a 上越市学校教育研究会幼稚園部会との共催で講演会を実施した(11月10日)。上越教育大学准教授 迎勝彦先生をお迎えし,「子どもの言葉の育ちをはぐくむ,その視点とはたらきかけ」という演題でご講演をいただき,上越地区の幼稚園・保育所・小学校から約60名の参加があった。当園の研究にもふれながら,子どもが自発的に行動を起こすように働きかけるコミュニケーションスキルという視点からご講演をいただいた。
b 研究協力者として上越地域の公立・私立幼稚園教員の協力を得て,共に研究を深めている。
B 優れた点及び今後の検討課題等
ア 教育研究・管理運営の状況の視点から
1) 教育研究の推進について
これまでの研究成果を踏まえ,今後は幼稚園教育と小学校教育の接続に焦点づけ,「幼小の円滑な接続を促す幼児教育の推進」をテーマにカリキュラムや指導法の研究開発を進めていく。
2) 教育実習の受入れについて
これまで同様,附属校として質の高い教育実習指導に努める。
3) 大学教員との共同研究等の推進について
幼児期の仲間関係の発達や英語活動,特別支援教育等についての実践的研究を継続して推進する。
イ 附属幼稚園の定員充足等の視点から
1) 園の積極的なPR活動等
附属三校園のパンフレット作成・配布等により,附属校の質の高い教育について積極的にPRする。
2) 食育等特色ある教育活動の推進
現代の幼児期の教育課題を踏まえ,野菜の栽培活動を通した食育,仲間とかかわる中で協調性や社会性を表現する力等を育み小学校への円滑な接続を図る保育,年間にわたる英語活動を教育課程に位置付け,特色ある教育活動を計画的に推進する。