【臨床心理学コース】
 

五十嵐 透 子(教 授)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
 臨床心理学における【人】のさまざまなこころの動きに関する理論や概念を,自らの体験に基づき実感として理解すること,からだや脳を含めた生物化学的側面,心理面,そして社会面からの包括的理解と対応およびシステム論からの理解と対応を教授している。評価においても,知的理解だけでなく,自らの体験に即した理解を評価点として取り入れている。
【観点2】教育の達成状況
 臨床心理学は,臨床実践に反映され,その達成は卒業および修了後の臨床活動での長期的視点で達成されていくものである。受講時は,その基礎の習得状態で判断している。他者理解のまえに,自分に対し率直かつオープンに向き合い,ありのままの状態をみつめることを個別およびグループ活動のなかで達成されている。
研究指導
【観点1】学部
 学生一人ひとりが関心のある領域の選択において,論理的に現象を考え,論文レビューから自らの研究計画の立案,分析,考察までの指導を続けている。今年度は,教師を目指す教育学部学生の「いじめ」に対する理解と対応に関する研究を行った。
【観点2】大学院
 人の健康にとって多くの要因が関与しているが,そのなかでも完璧主義傾向の適応的および不適応的側面からの理解や,社会文化的影響を考慮した「感謝」研究を進めている。
その他の教育活動
・新潟県立看護大学 非常勤講師
・新潟県立看護大学大学院 非常勤講師
・愛知県立大学大学院 非常勤講師
・金沢大学大学院医学系研究科 非常勤講師
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】(1)平成23年3月:『大学生におけるsense of coherenceとアタッチメント・スタイルおよび知覚されたソーシャル・サポートの関連』(共著) 教育実践学論州,12,71-81.
(2)平成23年3月:『大学生の自己愛傾向と対人ストレス・コーピングとの関連』(共著) 上越教育大学心理境域相談研究,10,31-42.
発】(1)平成22年9月:『大学生の自己愛傾向と対人ストレス・コーピングとの関連 』(共著) 第29回心理臨床学会秋季大会ポスター発表
(2)平成22年9月:『ふれあい恐怖傾向が大学適応感に与える影響』(共著) 第29回心理臨床学会秋季大会ポスター発表
共同研究(幼,小,中,高等学校及び特別支援学校教員との共同研究を含む)の実施状況
(1)自然災害の危機的介入後のアフター・ケアのガイドライン作成 代表者:五十嵐透子 科学研究費補助金
学会活動への参加状況
(1)第31回American Anxiety Disorder and Related 学会出席(2011年3月), (2)第29回心理臨床学会春季大会ワークショップ講師(2010年5月), (3)第29回心理臨床学会秋季大会への参加(2010年9月), (4)2011年American Counseling Association年次カンファレンスへの参加(2011年3月)
 
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)新潟県立高田高等学校 学外カウンセラー, (2)常心会 川室記念病院非常勤カウンセラー, (3)上越市若年者自立支援ネットワーク会議委員, (4)文部科学省補助金事業 子ども・若者支援事業「妙高ひまわりキャンプ」運営委員会委員, (5)上越市国際交流JOIN外部コンサルタント ,(6) Citizen Diplomacy committee advisor, (7)心理教育相談室 相談員, (8)講演及び研修会講師(新潟労災病院(5月),新潟県上越養護学校(8月),児童家庭相談員 新潟県高齢福祉相談担当職員等(11月),新潟県立精神医療センター(11月),新潟県立精神医療センター&柏崎養護学校のぎく分校合同事例検討会(11月),上越市諏訪小学校(12月),「上越」和・道グループ学会(2月)等)
◎社会への寄与等
 医療および地域精神保健福祉領域におけるサポートに加え,教育領域での生徒及び教員への心理的サポートやコンサルテーションを継続している。
 

内 田 一 成(教 授)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
 全科目ともスライドの配布資料(2単位科目で1ページあたり4スライドで,両面約30頁)を配り,スライドショウやVTRを中心に講義している。受講生の成績評価はもちろんであるが,その前提である教育の質,授業の質に注意を払うようにしている。臨床心理士試験の合格者数,質の高さが世間から問われることを認識した責任ある教育を日々心がけている。
【観点2】教育の達成状況
 授業の学生自身の取り組みについては事前のシラバス確認以外はいずれも平均4.0以上で,この点,授業の方法は,4.3以上,授業内容もシラバス記載を除けば,いずれも4.5以上であった。
 大体達成できているが,なおいっそうの工夫を期したい。
研究指導
【観点1】学部
 2名とも,それぞれ「教員養成大学に通う学生の児童虐待に対する意識・態度の研究」,「教育大学生の職業選択とアイデンティティについて」の卒論を完成させ,前者の学生は本学大学院修士課程臨床心理学コースに進学し,後者の学生は地方公務員として就職している。
【観点2】大学院
 大学院1年次生5名,2年次生名を担当した。2年次生の2名はそれぞれ新潟県教員採用試験と大阪府警察の臨床心理職に合格し,着任している。両名とも平成23年の日本心理臨床学会大会で論文を私と連名で発表予定である(題目:「抑うつの認知過程がBPSSモデルに基づく健康に及ぼす影響」「高校生の抑うつ予防に関する集団認知行動療法的介入プログラムの臨床効果」)。また,連合大学院博士課程学校教育実践学専攻教育臨床連合講座2年年次生1名は,博士号(博士(学術))取得に向けて研究指導中である。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】(1)平成22年5月:『基礎と臨床の心理学研究法の新たな視点』(単著) 福祉心理学研究,第6巻, 26-31.
(2)平成23年3月:『抑うつの認知過程がBPSSモデルに基づく健康に及ぼす影響』(共著) 上越教育大学心理教育相談室紀要 第10巻,1-8.
(3)平成23年3月:『中学生における身体感覚増幅が心気症傾向と身体症状に及ぼす影響-早期発症過程における基礎的研究-』(共著) 上越教育大学心理教育相談室紀要 第10巻, 9-16.
(4)平成23年3月:『抑うつの認知過程がBPSSモデルに基づく健康に及ぼす影響』(共著) 上越教育大学心理相談室研究, 第10巻,17-29.
学会活動への参加状況
(1)平成22年度:日本福祉心理学会理事
 
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)「平成22年度教職12年経験者(小・中・特)全体研修T」『いじめ問題の基本的認識と学校の説明責任』
◎社会への寄与等
 教職12年経験者(小・中・特) 全体研修T として,自験例に基づいて「いじめ問題の基本的認識と学校の説明責任」の講演を行い,好評を博している。
 パワーポイント資料は37枚である。
 

加 藤 哲 文(教 授)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
 教育方法については,毎回,授業ごとに,授業の内容や関連情報を印刷した資料を配付して解説した。また,演習においては,小グループでのワーク学習を実施し,グループ内での共同活動を通して,学生の積極的な授業への取り組みを促進した。成績評価については,課題に対するレポートの提出を基本とし,授業時の発言やワーク等への積極的な取り組みや,討論への参加度を加味して総合的に評価した。
【観点2】教育の達成状況
 各授業ともに,学生からの授業内容の理解度や,教育実践等への貢献度については,肯定的な評価を得た。また,演習においては,知識のみではなく,臨床や教育実践時に,それらの知識やスキルを発揮できるようにするために,演習の内容やレポートも工夫することによって,より実用性のある学習内容であったと評価できる。
研究指導
【観点1】学部
 今年度は,学部3年生2名,および学部4年生が1名所属したが,毎週火曜日の午後3時から5時30分までの,大学院生との合同ゼミで指導を行った。3年生には,学校現場や心理臨床の現場における課題や問題点について,討論に参加させながら,後期には,学生自身でテーマを決定させ発表を行ってもらった。また4年生には,ゼミに参加や,個別指導を通して,卒業研究の指導を行い,卒業論文を完成させた。これらの活動によって,学校や心理臨床における,より現実的な研究テーマについて考察する機会を提供できたと考えられる。
【観点2】大学院
 修士課程では,4名の1年生と4名の2年生の研究指導を行った。2年生については,修士論文の作成を目標に,毎週1回のゼミでの総合的な指導とともに,各個人ごとの研究指導を毎週行った。また1年生には,サブゼミを行い,臨床指導とともに,研究方法などに関する指導を行った。
 また,2名の博士課程学生の指導は,両名ともに,現職の教員(埼玉県と長野県)であるために,毎週1回程度のメールでの指導とともに,2ヶ月に1回程度の集中講義を行い,主に,博士論文作成のための研究指導を行った。
その他の教育活動
(1)新潟県立看護大学看護学部(心理学担当)
(2)新潟県立看護大学大学院修士課程(母子関係援助論担当)
(3)横浜国立大学教育人間科学部(情緒障害の心理担当)
(4)富山大学人間発達学部(生徒指導論担当)
(5)ゼミ所属の3年生(2名)に対して,小学校教育実習の指導を行った。
特色ある点及び今後の検討課題等
 学校現場や心理臨床の現場において生じる児童生徒の生徒指導や生活指導上の問題について,ゼミや修士論文の指導時に重点を置いた。また,教育現場や心理臨床において,教員や専門職として現場でコンサルテーションやコーディネーションを行う際の具体的な方法や技術について,知識のみならず,実際の現場での指導を通して,教育を進めた点が特色である。今後は,このような教育方法をより積極的に進めるために,そのほかの本務に要する時間とのバランスをいかに保つかが課題となる。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
著】(1)平成23年3月:『行動コンサルテーション実践ハンドブック』(共著) 学苑社
論】(1)平成22年6月:『教育場面における行動コンサルテーションの介入整合性の促進:フォローアップ方略の構成要素の検討』(共著) 行動療法研究,第36巻,第2号,147-158
(2)平成22年6月:『Application of group contingency to the high school students with developmental disabilities』(共著) International Journal of Behavioral Medicine,Vol.17 S40
(3)平成23年3月:『集団社会的スキル訓練が児童の学級不適応状態に及ぼす効果』(共著) 上越教育大学心理教育相談研究,第10巻,43-57
発】(1)平成22年10月:『クラスでできる応用行動分析の実際』(単) 日本LD学会
 
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)新潟県教育委員会特別支援教育総合推進事業, (2)上越市就学支援委員会, (3)上越市巡回相談事業運営委員会
◎社会への寄与等
 今年度は,新潟県の委員会の委員長,上越市の委員会を2件担当した。いずれも,特別支援教育に関するもので,教育や福祉の分野できわめて社会的ニーズの高いものであり,その意味で社会貢献を果たしたと考える。
 

佐 藤 淳 一(准教授)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
 講義形式の授業では,毎回講義の最後に,質問コメント用紙を配布・回収し,次回の授業の中で,各自の理解の補足や疑問に答えるようにし,あわせて学生の意見を参考に講義内容を調整・改善するようにした。
学部
「教育相談・カウンセリング論」(分担):心理アセスメント2回分を担当し,知能検査や人格検査を中心に,心理査定の実際や倫理的配慮などをパワーポイント等用いて説明するとともに,演習形式を取り入れて受講生の体験も重視した。
「臨床心理学」(分担):心理療法の理論と実際について2回分を担当し,来談者中心療法と力動的心理療法をパワーポイント等用いて概説した。
大学院
「臨床心理基礎実習T」(分担):臨床心理面接の基本的態度と技術を習得するため,クライエント中心療法を中心とする理論と実際についての講義と,セラピスト役とクライエント役を通したロールプレイ形式による臨床心理面接(ロールプレイA〜D,インテーク面接)の演習を行った。また,それらの逐語録レポートの提出を求めて,個別に添削指導を行った。他に,インテーク・カンファレンス,ケース・カンファレンスに参加し,ケースを担当する院生にはクライエントの理解につながるようなコメントを行うことを心がけた。
「臨床心理基礎実習U」「臨床心理実習A」(分担):心理教育相談室においてケースを担当するゼミ生(M1:3名,M2:2名)に対して臨床指導を行った。具体的には,集団スーパービジョンおよび個人スーパービジョンを通して,ゼミ生自らが,クライエント理解を深め,適切な関わりや対応をできるような指導を心がけた。他に,インテーク・カンファレンス,ケース・カンファレンスに参加し,ケースを担当する院生にはクライエントの理解につながるようなコメントを行うことを心がけた。
「臨床心理実習B」(分担):外部医療機関の実習生に対して学内および院内の臨床指導を行った。
「学校臨床心理学特論」:学校教育において心理的問題を持つ児童生徒やその保護者への理解と援助,教職員との連携などをパワーポイントを用いて概説した。また,受講生には心理臨床の基礎文献や事例論文の発表を求めた。
「臨床実践援助法」(分担):授業全体のとりまとめを担当するとともに,被虐待児への心理臨床的援助についてパワーポイントを用いて概説した。
「臨床心理学研究法特論」(分担):調査法2回分を担当し,質問紙法と描画法を用いた調査研究について概説した。
「臨床心理マネジメント特論」(分担):教育,医療,福祉における心理職の実際と他職種との連携について紹介した。
「実践場面分析演習T・U」(分担):教育実践の事例を心理臨床の視点からコメントした。
【観点2】教育の達成状況
 学生による授業評価では,いずれもおおむね良好な評価を得たと思われる。ゼミの修了院生は,病院の心理職と学校の教職員として活躍中である。
研究指導
【観点1】学部
 「臨床心理学セミナーT・U」学部3年生(1名)には,自らが興味を持って選び,かつ臨床心理学に関する研究となるようなテーマや内容を見出せるよう指導した。学部4年生(1名)には,具体的に卒業論文を作成するにあたっての研究の構想,調査の方法,結果の分析,論文の執筆について,細やかに支援ならびに指導を行った。また,筆者が研究代表者を務める本学研究プロジェクトの研究協力者を担当した。
【観点2】大学院
 「臨床心理研究セミナーT・U」M1(3名)には,自らが興味を持って選び,かつ臨床心理学に関する研究となるようなテーマや方法を見出せるよう支援し,それとともに臨床心理学研究の理解を深めるよう指導した。M2(2名)には,具体的に修士論文を作成するにあたっての研究の構想,調査の方法,結果の分析,論文の執筆について,細やかに支援ならびに指導を行った。なお,筆者が研究代表者を務める本学研究プロジェクトの研究協力者も担当した。
その他の教育活動
・教育実習におけるゼミ生の学生指導を行った(小学校4名,うちゼミ生1名)。
・上越教育大学附属中学校相談員
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 心理教育相談室においてケースを担当するゼミ生(M1:3名,M2:2名)に対する臨床指導をきめ細やかに行った。具体的には毎週行う個人スーパービジョンとグループスーパービジョンを通して,ゼミ生自らが来談者に対して適切な理解や対応ができるよう指導を心がけた。また,描画法や投映法を用いた心理査定の実際,絵画療法の演習,事例論文の講読・発表なども行った。このような取り組みを通して,ゼミ生が遊戯面接,臨床心理面接,保護者面接といった臨床実践を行いながら,心理臨床の基礎を身につけるとともに,来談者に対して有効な心理的援助サービスを提供できることを目指した。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】(1)平成22年8月:『フロイトの症例「ねずみ男」に関する考察(Y)―「診療録」と「公刊された論文」との対比』(共著) 京都文教大学臨床心理学部研究報告,第2集,pp.179-192
(2)平成23年2月:『不登校研究の展望―国内における70年代までの「学校恐怖症・登校拒否」』(共著) 上越教育大学研究紀要,第30巻,pp.123-132
(3)平成23年2月:『居場所と精神的健康との関連−一人でいられる能力の観点から』(共著) 上越教育大学心理教育相談研究,第10巻,pp.67-79
(4)平成23年3月:『フロイトの症例「ねずみ男」に関する考察(Z):「診療録」と「公刊された論文」との対比』(共著) 京都文教大学臨床心理学部研究報告, 第3集, pp.141-157
業】(1)平成23年3月:『不登校にある児童生徒への臨床心理的援助に関する基礎的研究(U)』(共著) 上越教育大学研究プロジェクト終了報告書 代表者:佐藤 淳一
発】(1)平成22年9月:『児童養護施設における被虐待児の心理的特徴−バウムテストを用いて』(共) 日本心理臨床学会
(2)平成22年9月:『青年期における対人恐怖心性と攻撃性の関連−P-Fスタディを用いた検討』(共) 日本心理臨床学会
(3)平成22年9月:『甘えのスタイルと強迫傾向との関連−素直な甘えと屈折した甘えとの関連から』(共) 日本心理臨床学会
学会活動への参加状況
(1)4月〜3月:日本パーソナリティ心理学会「パーソナリティ研究」編集委員, (2)9月:日本心理臨床学会第29回秋季大会参加発表, (3)10月:日本ロールシャッハ学会大会参加
◎特色・強調点等
・フロイトの症例「ねずみ男」に関する共同研究の成果を発表した。
・ゼミ生の修論の成果を心理臨床学会にて共同発表した。
・昨年度のプロジェクト研究(若手)の成果を本大学の紀要に発表した。また,本年度のプロジェクト研究(若手)にも引き続き採択された。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)上越教育大学心理教育相談室相談員, (2)新潟県スクールカウンセラー, (3)独立行政法人国立病院機構さいがた病院「倫理会議」「外部評価会議」委員, (4)新潟県立国際情報高校・高大連携事業(臨床心理学)講師, (5)教職12年経験者研修(小・中・特)コース別研修(生徒指導コース)講師
◎社会への寄与等
 心理教育相談室の相談員として,ゼミ生の担当ケースの臨床指導を行うとともに,ケースの性質に応じて自ら担当している。また,スクールカウンセラーや教育相談員として,地域のカウンセリング・教育相談にも従事している。
 

高 橋 靖 子(准教授)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
 「臨床心理面接特論U」では,教員による各種心理療法の概論およびそれに関した学生による文献報告の組み合わせで,学生参加型の授業とした。
 「臨床心理演習」において,簡単なグループワークやエクササイズ,ロール・プレイや心理テスト体験を取り入れながら,カウンセリング的な関わりについて段階的に理解が深まるように工夫した。そして,「心理学概論」では,心理学の様々なトピックスについて日常のエピソードを交え簡単な心理テストや映像教材をさしはさみながら,わかりやすく伝えるよう心掛けた。
 「臨床心理学基礎演習T」においては,心理教育相談室において院生が担当するケースについてインテークカンファレンスおよびケースカンファレンスを通じて討論・指導を行った。また,「臨床心理実習B」においては,医療現場における臨床心理士の役割やクライエントに対する心理援助アプローチについて十分学ぶことができるように学内や実習先での指導を精力的に行った。
【観点2】教育の達成状況
 今年度は初担当の講義が2つあったが,前年度までの授業・演習における反省や学生からのフィードバックをもとに,新たな教材研究や資料を練り直し,魅力ある授業を心がけた。
 「臨床心理面接特論U」では,受講生の動機づけの高さもあり集中講義ではあったが充実した講義となった。しかし,内容の定着度については反省すべき点もみうけられた。
 「臨床心理演習」では,少人数ということもあり,カウンセリング指導を密に行うことができ,受講生による一定の評価につながった。
 「心理学概論」では,内容を盛り込みすぎて学生に十分な理解が及びにくかったことから,今後は一つのトピックスについてゆっくりと丁寧に取り上げるよう改善したい。
研究指導
【観点1】学部
 学部3年生1名を担当したが,心理学論文の読み方や文献検索の方法に関する基本的な知識を復習し,興味のある論文を総合・批判的に読んでレポートとしてまとめるよう指導した。教員からも関心の共有できる英語論文や参加した学会やワークショップの概要を紹介した。
【観点2】大学院
 担当なし
その他の教育活動
 放送大学諏訪学習センターにおいて面接授業「臨床心理学演習」を集中講義形式で実施した。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 病院・福祉,学校領域における心理臨床経験を生かし,医療領域および学校領域のどちらを志向する学生であっても臨床心理学的理解および支援に役立つ講義・演習や臨床的指導を積極的に進めていきたい。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
業】(1)平成23年3月:『平成21年度文部科学省委託事業 教員の資質能力追跡調査 中間報告書』(共著) 上越教育大学
発】(1)平成22年9月:『特別支援教育支援員の活用に関する全国調査(1)〜配置状況,募集・採用方法を中心に〜』(共) 日本LD学会第19回大会
(2)平成22年9月:『特別支援教育支援員の活用に関する全国調査(2)〜研修,人的資源の活用,ニーズ,評価を中心に〜』(共) 日本LD学会第19回大会
(3)平成23年3月:『特別支援教育支援員制度に関する課題意識―支援員の活用に関する教育委員会の実態調査(3)―』(共) 日本発達心理学会第22回大会
共同研究(幼,小,中,高等学校及び特別支援学校教員との共同研究を含む)の実施状況
(1)特別支援教育支援員を活用した通常学級支援プログラムの開発 代表者:加藤哲文(上越教育大学) 科学研究費補助金基盤研究(C)
学会活動への参加状況
(1)9月9日:日本LD学会第19回大会出席, (2)3月27日:日本発達心理学会第22回大会発表
◎特色・強調点等
 現在,大学病院産科における縦断研究について分析を行っており,子どもの愛着表象について国際比較調査の準備中である。
 

宮 下 敏 恵(准教授)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
 学部の授業である「教育相談,カウンセリング論」では,学校現場において生じる児童・生徒の様々な不適応問題,病理の問題などを理解し,援助をおこなえる実践力を身につけるために,各教員の専門性を生かしたティームティーチングにより,講義を行った。大学院の授業である「臨床心理査定演習T」では,学校現場,医療現場などで用いられているパーソナリティ検査を中心に,実際に心理検査用紙を用いて検査を施行,採点,結果を解釈した。検査報告書をまとめさせ,添削して何度も修正することにより,臨床現場ですぐに対応できる実践力を身につけさせるようにした。また「臨床心理学特論U」では,イメージ療法,箱庭療法,遊戯療法などについて学生が事前にレポートをまとめ発表し,まとめることにより,より意欲的に授業に参加することができたと考えられる。シラバスにおいて,成績については明記し,評価基準通りに評価を行った。
【観点2】教育の達成状況
 不登校,いじめなどの学校での問題について講義を行い,学校現場における教育相談の必要性について述べ,教師となったときにどのようにしたらよいかなどを考えさせ,学校現場を中心として,現場に出たときに自分は何を出来るか,何をしたいのかについて考えさせた。
 また大学院においては,知識だけではなく,演習,実習を多く行うことで,臨床現場での実践力,即応力が身につくように行った。
研究指導
【観点1】学部
 不登校,いじめなどの学校での問題についてゼミで討論を行い,学校現場における教育相談の必要性,教師となったときにどのようにしたらよいかなどを考えさせ,学校現場を中心として,現場に出たときに自分は何を出来るか,何をしたいのかについて考えるように研究指導をおこなった。ロールレタリングを用いた時間的展望,自尊心への影響についての研究や,青年期における対人恐怖心性が他者評価に及ぼす影響についての研究について指導を行った。
【観点2】大学院
 青年期における対人関係での怒りの影響,学校組織における有効な教育相談体制のあり方,教師のメンタルヘルスなどについて指導を行った。また,学校現場における教育相談の実践力を習得させるために,カウンセリング技術をはじめ,様々な臨床技法の実習を行った。さらに,心理教育相談室において受理した事例への関わりを通して,事例の見立て,面接の進め方,面接技術,介入方法,さまざまな病理や症状の知識について指導を行った。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 学校現場,臨床現場における実践力を身につけさせるように,様々な点から指導を行っている。現場で活躍するために,現在本人の抱えている課題は何かを明確にし,少しずつでも成長し,変化できるように,ひとりひとりに丁寧に対応している。大学院においては,附属の心理教育相談室での指導もあることから,どのように責任をもちながら,指導を行っていくかが今後の検討課題である。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】(1)平成23年2月:『小・中学校教師におけるバーンアウトの現状−3回の調査を通して−』(共著) 上越教育大学研究紀要,30,143-152
(2)平成23年3月:『語彙分析の方法を用いた面接プロセスの検討(3)−発話語彙の連続プロット分析−』(共著) 上越教育大学心理教育相談研究,10,59-66.
発】(1)平成22年9月:『語彙分析を用いた質的研究(27)』(共) 日本心理臨床学会
(2)平成22年9月:『語彙分析を用いた質的研究(28)』(共) 日本心理臨床学会
(3)平成22年9月:『語彙分析を用いた質的研究(29)』(共) 日本心理臨床学会
学会活動への参加状況
(1)平成22年度:日本催眠医学心理学会編集委員, (2)平成22年度:日本心理臨床学会代議員, (3)平成22年度:学校教育相談学会上越地区研修会, (4)9月3日:日本心理臨床学会第29回大会出席, (5)5月23日:心理臨床学会ワークショップ出席, (6)8月7日〜8日:日本臨床心理士会学校臨床心理士全国研修会出席
 
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)新潟県スクールカウンセラー, (2)新潟県臨床心理士会スクールカウンセラーコーディネーター, (3)新潟県学校派遣カウンセラー, (4)中越・中越沖地震こころのケアのためのカウンセラー, (5)新潟県教職員12年研修いじめ問題とその説明責任講師, (6)上越市立教育センター研修会講師, (7)新潟県教職員12年研修生徒指導コース研修講師, (8)上越市立上杉小学校校内研修会講師, (9)新潟県新任教頭メンタルヘルス研修講師, (10)学校教育相談学会上越地区研修会講師, (11)新潟県こころの緊急支援活動支援員
◎社会への寄与等
 心理的悩みを抱えて,附属の心理教育相談室に来談する児童,生徒,成人に対して,心理療法を行い,地域のメンタルヘルスのために寄与した。また事例に関わる学校と連絡をとり,コンサルテーションを行うことで,地域の学校との連携を高めた。
 

井 沢 功一朗(講 師)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
 全部で15回の講義を3分割し,各段階ごとに課題提出をしてレポートにより回答してもらった。これは講師側の口頭説明や配布資料などが,学生側にとって理解できるものになっているかを確認することが第一目的である。また同時に,こうした小レポートは授業出席における学生側の自発性の確認にもなる。全3回のレポートを総合することにより,当方が最大限に達成できる授業効果と,学生の理解度を数値化して評価している。
 つまり,当方は「学生の理解度」は,講師の工夫の度合いと学生の自発性との両方が相互作用した結果として発生するものであると考えている。
【観点2】教育の達成状況
 上記【観点1】で記載したことを実行した。
 学生の全15回講義の理解度は良好であった。
研究指導
【観点1】学部
 男子学生1名に対して,質問紙調査の倫理遵守を説明した。それを前提として,具体的なアンケートの作成方法から実施,多変量解析までの数理・統計的分析技法を教授した。
 卒業論文として十分な水準の結果を提出することができた。
【観点2】大学院
 臨床心理学コース修士課程3年生の修士論文指導に専念している。
 この指導案件については,学長を中心とする全学的なレベルでの組織的対応を取っており,当該学生の研究の進歩状況は良好である。
その他の教育活動
 心身に病状を発生した学生に対しては,学内保健管理センターや,学生の保護者・かかりつけの医療機関などと緊密に連絡を取りながら,当該学生の健康の回復・維持を最優先しながら指導を行った。
 組織としての臨床心理学コースは上記の学生保護の責任遂行が不可能であったため,「コース」という限定的な組織単位を越えた,いわば「組織間横断的」な教育上の取り組みを試み,本学構成員全体からのご協力を得られた。
特色ある点及び今後の検討課題等
 上記とほぼ同じ。
 「事実に基づく客観的情報の共有」と「プライバシー保護」との明確な規定が必要であると考える。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)同和・人権問題研究所および法務省人権局上越支部からのアドバイジー
◎社会への寄与等
 社会を構成する市民が判断すること。
 

山 本 隆一郎(助 教)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
 具体(具体的な事象や実践)と抽象(理論や法則など)を相互往来し,“わかりやすく・面白い”かつ教育の内容を学生が自ら応用をしたり問題解決場面で活用できることを意識した講義や演習を心がけた。また,毎回の授業にレジュメを準備し,授業の最後には感想・疑問点などを記入させ,次回以降の授業に反映させるよう心掛けた。自身の担当分の成績評価に関しては,授業開始時に明確な評価基準を伝え,学生が評価に疑問のないように心がけた。
【観点2】教育の達成状況
 授業評価の各項目において概ね高評価が得られた。また,当初から目標としていた「卒後に活用できる実践知識やスキル(具体)だけでなく,様々な未解決の問題を考える力(抽象)の育成」ができたと考えている。この点に関しては,授業評価の自由記述や講義の感想の中で「“教師”としてという視点ではなく“一人の人間”として大事にしたいことを教わった」というコメントもあり学生にも伝わっていることが確認できた。
研究指導
【観点1】学部
 セミナーは担当していないが,コース2年生の科目である心理学講読演習の講義においては,学術論文の探し方,読み方,批判的思考の重要性などを学生の発表と討論を通じて育成するよう務めた。また,学位論文の副査として4名の卒論生の審査を行なった。
【観点2】大学院
 セミナーは担当していないが,学生の研究計画や分析方法に関して積極的に助言を行なった。また,発表会などでもレジュメにコメントを残し,学生全員にフィードバックを行なった。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 現在,セミナーを担当していない立場を生かし,広く学生の質問や相談などの窓口としてコースの教育の活性化を測れるよう努めてきた。今後は,この点のみならず,一人の教育者・研究者・実践家として自身の経験や現在進行中の研究・実践を学生に還元していくよう努めていきたいと考えている。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
著】(1)平成22年7月:『不眠の医療と心理援助 -認知行動療法の理論と実践-』(共著) 金剛出版
論】(1)平成22年10月:『Excessive daytime sleepiness and sleep behavior among Japanese adolescents: a nationwide representative survey.』(共著) Sleep and Biological Rhythms, Vol.8, No.4, 282-294
(2)平成22年10月:『The cortisol awakening response and autonomic nervous systemactivity during nocturnal and early morning periods.』(共著) Neuroendcrinology Letters,Vol.31, No.5, 685-689.
(3)平成22年12月:『不眠に関する疫学研究』(共著) 臨床脳波,第52巻,第12号,697-703.
(4)平成23年2月:『よくある質問&回答 23)寝酒はしてもいいの?』(共著) 治療,第93巻,第2号,282-283.
(5)平成23年3月:『認知行動療法に基づく原発性不眠のセルフヘルプ研究の現状-系統的レビューによる検討-.』(共著) 上越教育大学心理教育相談研究,第10巻,第1号,81-91.
発】(1)平成22年7月:『日中の過剰な眠気と睡眠障害との関連-高校生を対象とした縦断調査研究-.』(共) 日本睡眠学会第35回定期学術集会
(2)平成22年10月:『労働時間・休養・余暇と生活習慣病との関連について』(共) 第69回日本公衆衛生学会総会
(3)平成22年10月:『医師の飲酒習慣とその関連要因の探索.』(共) 第69回日本公衆衛生学会総会
(4)平成23年1月:『中学生の不登校の要因としての抑うつおよび睡眠の問題に関する研究.』(共) 日本行動療法学会第36回大会
(5)平成22年9月:『臨床心理学における認知的情報処理の機能:不眠における認知的情報処理の機能―CBT−I の基礎研究から介入・心理援助へ―』(単) 日本心理学会74回大会
(6)平成22年10月:『Examination of the background factors of depression in junior high-school students.』(単) XL Congress of European Association for Behavioral & Cognitive Therapies
学会活動への参加状況
(1)平成22年度:日本カウンセリング学会第44回大会準備委員, (2)7月1日〜7月2日:睡眠学会第35回定期学術集会出席・ポスター発表(本学着任前), (3)9月20日〜9月22日:日本心理学会第74回大会出席・シンポジウムでの話題提供, (4)10月27日〜10月29日:第69回日本公衆衛生学会総会出席・ポスター発表
◎特色・強調点等
 平成22年度は研究成果の発表・論文投稿・依頼原稿執筆を積極的に積極的に行なった。また個人研究(大学生の不眠症の認知行動療法に関する研究)のみならず学外の研究グループ(中学生・高校生の飲酒・喫煙・生活習慣に関する疫学研究)にも参加し,平成23年度以降の研究成果公開に向けたデータ収集等を行なった。個人研究の発展のため,科学研究費補助金若手研究(B)に応募し,平成23年度より2ヵ年の研究助成が採択された。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)9月〜3月:上越教育大学附属心理教育相談室相談員
◎社会への寄与等
 上越教育大学附属心理教育相談室での相談員として,地域に開かれている相談室としての機能を高めるよう積極的に業務を行なった。