【言語系コース】
 

有 澤 俊太郎(教 授)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
 教育方法や成績評価は,2009年度における授業評価アンケートなどの結果に基づき,より受講生に興味や関心を持ってもらえるよう,新しい取組を追加した。
【観点2】教育の達成状況
 上記のような内容から,2010年度における教育は,教育方法や成績評価の点で十分に達成できたものと思う。
研究指導
【観点1】学部
 学部では,4年生のゼミ生を対象に卒業論文の指導を丁寧に行い,卒論を無事提出することができた。
【観点2】大学院
 大学院修士課程では,免P2年生と修士1年生を対象に修士論文作成のための指導を行った。
その他の教育活動
 2010年度は,山形大学教育地域学部において,非常勤講師として集中講義を行った。また,教育実習では,2名の4年生の中学校実習と1名の3年生の小学校実習の研究授業を参観した。
特色ある点及び今後の検討課題等
 上記のような点から,昨年度の学生指導は十二分に行えたものと考える。特に,集中講義における特色ある臨床的なテーマや,教育実習の事前事後指導などに関しては,高い評価が与えられるものと思う。今後はより一層丁寧な指導を心がけたい。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
発】(1)平成22年10月:『「ちょっと立ち止まって」の授業研究(T)−第5〜7段落の教育修辞学的考察』(共) 第119回全国大学国語教育学会
学会活動への参加状況
(1)平成22年度:日本読書学会理事, (2)平成22年度:日本国語教育学会理事, (3)平成22年度:全国大学国語教育学会常任理事, (4)5月29日〜5月30日:第118回 全国大学国語教育学会東京大会出席, (5)8月7日:第54回 日本読書学会研究大会出席, (6)8月9日〜8月10日:日本国語教育学会 第73回国語教育全国大会出席, (7)10月30日〜10月31日:第119回 全国大学国語教育学会鳴門大会出席及び発表
在外研究の状況
(1)平成22年7月:イギリスRA研究大会参加及び視察
 
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)平成22年:上越市図書館連絡協議会会長
 

小 埜 裕 二(教 授)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
 担当全授業において具体的なシラバスを作成し,ほぼシラバスどおりに授業を行った。成績評価についても,シラバス及び授業初回時に示した方針に基づき行った。教員養成を目的とする本学の学生に,小・中・高等学校の国語を担当する上での十分な能力・技能を身につけてもらうことを念頭におき,授業を展開した。また,読書に対する興味・関心を抱き,学校現場で児童・生徒に豊かな読書生活の習慣を授けることのできる力を身につけてもらうことにも配慮した。
【観点2】教育の達成状況
 学部の授業では系統性に配慮したカリキュラムを組み,教員養成大学に相応しい文学テクストの基礎的な読解技能が段階を追ってマスターできるよう工夫し,成果を挙げた。大学院の授業ではテクスト読解のための専門的技能を身につけることが出来るよう様々なアプローチの方法を提示した。授業及び各種セミナーを通じて,文学研究に関するテクスト理論の実践化に力を注ぎ,一定の成果を挙げたと考える。
研究指導
【観点1】学部
 学部学生には小・中・高等学校における国語の実践的能力を修得させるため,文学作品の解釈を中心とした共同討議を課外活動として毎週(金曜5限)行った。これは,担当の学生が毎回,資料を作成し,それに基づき,話す・聞くの活動を重視して展開したものである。この討議には大学院学生にも参加してもらい,学部学生への指導を通じ,より高度な読みの実践力と指導力を身につけてもらうことを図った。また学部・大学院学生連携の国文学実地踏査研究を2月に行った。行き先は鎌倉・小田原方面。サバティカル中も定期的に研究指導を行った。
【観点2】大学院
 上記の課外活動に大学院生に加わってもらい,その場を通じて,より高度な読みの実践力を身につけてもらうよう指導を行った。さらに大学院学生には,個々の研究テーマに即した個別指導を毎週定期的に行った。修士論文指導を直接行った学生は,M1が2名,M2が3名,M3が2名,D1が1名,D2が1名である。個別指導は定期的なもの以外に,不定期に多くの時間を費やして行った。サバティカル中も定期的に研究指導を行った。
その他の教育活動
・上越看護専門学校において「日本文化論」の非常勤講師を集中講義形式で行った(15コマ)。
・教育実習において学部学生4名,大学院生1名の指導を行った。
特色ある点及び今後の検討課題等
 学部の授業では系統性に配慮したカリキュラムを組み,教員養成大学に相応しい文学テクストの基礎的な読解技能が段階を追ってマスターできるよう工夫した。大学院の授業ではテクスト読解のための専門的技能を身につけることが出来るよう様々なアプローチの方法を提示した。本年はとくに授業及びゼミを通じて,文学研究に関するテクスト理論の実践化に力を注いだ。今後の課題としては,読解技能がより身近なものとして教育現場で活用されるよう,より一層の工夫を行いたい。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
著】(1)平成23年2月:『今年の終りの陽の光―宮沢賢治「風の又三郎」論―』(単著) 上越教育大学研究紀要,vol130,pp277-282
(2)平成22年10月:書評『佐藤義雄著「文学の風景 都市の風景」』(単著) 文芸研究 第112号
◎特色・強調点等
 三島由紀夫に関する研究,及び宮沢賢治に関する研究,及び郷土作家である小川未明の研究を3つの柱として進めている。今年度は,宮沢賢治研究の成果を公刊することを目指すと同時に,科学研究費に基づく研究として小川未明童話全集未収録作品の収集と研究に取り組んだ。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)8月〜10月:「前島密とふれあう」ふれあいハガキコンテスト選考委員, (2)4月〜3月:小川未明童話研究会主宰, (3)8月および11月:出前講座「小説の読み方,楽しみ方」講師(新潟県立柏崎高校), (4)4月〜3月:長野県カルチャーセンター講師(日本の抒情詩の世界), (5)10月:小川未明文学館講座講師「杉みき子と小川未明」, (6)7月:出前講座「小説の読み方,楽しみ方」講師(直江津中等教育学校)
◎社会への寄与等
 上越市及びその近隣の市を中心に,いくつかの講座の講師を務めるとともに,研究領域にかかわる審査員等を務めた。また郷土の作家である小川未明に関する研究会を本年度も引き続き主催した。月1回の研究会で20名の市民が参加する。
 

野 村 眞木夫(教 授)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
1)学部・大学院ともに音声言語(談話分析)の研究成果を反映した教育を展開し,教育現場での授業分析に資する能力を育成している。教科書は共著者として関与したものを用い,フリーの音声分析ソフト,言語分析用コンコーダンサ等を学生各自のパソコンにインストールさせて,実践的に展開している。一部の音声データは,受講学生自身のものを録画して使用し,関心を高めている。各自の問題意識に沿ったレポートにより,理論と実践のマッチした成果を評価対象としている。
2)現代日本語と古代日本語の文法を対比的に取りあげ,言語変化・語義変化・文法の変化等について教授している。この授業は,現代語に関する自分自身の言語直観をデータとすること,授業開始時に前回の講義内容のショートテストを実施することで,能力の定着をはかっている。
【観点2】教育の達成状況
1)大学院では,特に音声言語とテクスト分析の能力を育成しているが,レポートや修士論文中間発表において,講義・演習において教授した知見や分析手法を駆使して各自の課題に取り組んでいることが明らかであり,十分な教育の成果が達成されているものと判断している。
2)平成22年度の学部卒業生は3名であるが,すべて小学校教員として正採用になった。それぞれ,学部卒業論文を学習材分析や授業分析,授業実践に直結させうる方向性を獲得しているので,現場において一定以上の実践力と研究能力とを継続できるものと判断している。
研究指導
【観点1】学部
 学部では,文学作品の語学的な研究と絵本の言語学的な分析の研究を指導した。前者は比喩表現の一種としての共感覚表現をとりあげ,エクセルへの入力によりながら文学作品の特徴的な表現傾向を発見することができ,また,後者は認知心理学の観点を導入しながら,どのように推論や予測を実行しながら言語表現を読み取り,理解するのかを具体的に検討した。いずれも新しい観点を導入した研究であり,特に後者は言語学と認知心理学との接点を意識したもので,優れた成果を残すことができた。絵本の研究は,いわゆる物語絵本についてマルチモダリティの観点から切り込んだもので,研究方法の歴史は10年程度しかなく,新たな方法を習得しながら確実な研究成果を出すことができた。
【観点2】大学院
 2名の学生が,ともに談話分析を実施している。具体的はデータは,ロールプレイによる談話資料と自然談話による記述分析である。前者は,日本語教育の観点から,日本語とベトナム語の談話における断りの表現を分析し,両言語の学習者において母語の転移がどのように認められるかを導出しようとするものである。後者は,認知心理学の観点を加味しながら,言語理解においてはたらく予測能力に焦点化した研究であり,先行研究は心理学と言語学にわたる。いずれも,今世紀に入ってから開発されつつある研究方法を駆使するものであって,方法論と分析手法の双方の検討が先ず必要とされる。両者とも研究文献の収集をはじめ,真摯に研究を進めており,相当の成果が期待できる。
その他の教育活動
 初等・中等教育実習において,初等は2名,中等は3名の学生の指導をおこなった。それぞれ事前に学習材の分析の観点,実習中に訪問観察,事後に授業実践にかかるアドバイスを実施した。平成22年度に4年次であった学生は,すべて小学校教員採用試験で正採用となり,十分な成果があったものと判断している。
◎特色ある点及び今後の検討課題等
 専門は日本語のテクスト言語学にかかる理論的な研究であるが,文章と談話を具体的な研究対象としているので,学習材の分析と授業実践の活動に直接有効性をもつ方法や観点を教授することができる。このことから,特に学部レベルの教育活動においては,教育実習ならびに卒業後の現場における教育活動に資する能力の育成を明確にしながら演習・講義科目を展開している。学習指導要領では,例えば敬語の区分が新たにされていること,現代語と古典語の橋渡し,音声言語の記述・分析方法の能力の教授などは,必要不可欠の事項であり,これらをほぼ完全に教育活動において実施すべく,担当授業科目のシラバスを構築している。今後より広範な領域をカバーできるように,マルチモダリティの観点を導入した講義を平成22年度から試行している。これは,大学院では明示的に実施し,学部では実質的な導入を果たし,更に有効な教員養成の方法論として定着させる可能性がある。海外ではある程度の実績が示されているが,我が国では今後の課題となっており,発展が期待されるところである。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】(1)平成23年2月:『絵本「ごんぎつね」のスタイルとマルチモダリティ』(共著) 『上越教育大学研究紀要』30 pp.177-190
(2)平成22年6月:『大江三郎著「日英語の比較研究 ―主観性をめぐって」』(単著) 『日本語学』29-6 pp.76-83.
業】(1)平成22年10月:『表現研究関係文献紹介:佐久間まゆみ編著「講義の談話の表現と理解」』(単著) 『表現研究』92 p.72
他】(1)平成22年4月:『オンラインテクスト言語学/テクスト言語学の解説,研究方法,基本情報,研究業績,入試情報等の開示』 http://www.juen.ac.jp/lab/nomura/(本学のサーバー上)
学会活動への参加状況
(1)平成22年度:表現学会理事, (2)平成22年度:表現学会編集委員, (3)平成22年度:北海道大学国語国文学会編集委員, (4)平成22年度:日本文体論学会査読委員(臨時), (5)平成22年度:表現学会運営委員, (6)6月5日〜6月6日:表現学会全国大会(お茶の水女子大学)に出席。役員会出席,学会司会担当, (7)6月19日:上越教育大学国語教育学会に出席, (8)8月7日:表現学会編集委員会に出席。編集委員として学会誌の論文査読結果等に関与, (9)2月19日:上越教育大学国語教育学会に出席
◎特色・強調点等
 日本語をテクスト言語学の観点から,記述・分析している。マルチモダリティの考え方を導入することで,テクストを複合的な視点から観察することを可能にしている。談話については,言語表現と非言語行動の複合として記述する必要があるが,後者についてジェスチュアのみならず,視線,姿勢,音声的な特性等を対象とする研究が求められる。書籍体のテクストについても,印刷形態やレイアウト,さし絵等が検討の対象となる。絵本については,言語表現と絵画表現について統合的に理解するモデルを構想し,論文発表ならびに大学院の講義を行っている。以上のことから,従来のテクスト言語学や文章論,談話論,文体論の枠組みを拡張し,とりあげるメディアやジャンルをも多様にカヴァーすることを実行している。統合的なソフトウェア"ELAN"を導入し,ビデオ資料を対象として,談話における言語と視線・動作のシンクロナイズする実態を記述解析することを可能とした。これは,従来の表現研究を大幅に進展させるものである。
 専門領域とする日本語学およびテクスト言語学の領域での学会に係る貢献である。特に表現学会は,日本語と諸外国語による文章・談話を語学のみならず,文学・言語教育等との関連で研究することを目的としており,広範な領域をカバーし国際的にも注目されているところである。この学会の運営と学会誌の編集に継続的に関与しており,貢献度が高いと認識している。
 

押 木 秀 樹(准教授)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
 国語科書写指導のための基礎力の向上に加え,教師としての一般的な能力としての板書の文字などの基礎力向上にも,継続してつとめている。前者については,学習者中心型学習過程と学習内容中心型の教材観により教育をおこなっている。また,書字動作に関わる学習のため,視聴覚機器の使用やマルチメディア教材の作成により,学習効果を高める工夫を継続している。加えて,書字行為をコミュニケーション的視点で捉える指導について,検討を続けている。
 評価に関して,学習物をポートフォリオ的にまとめることで,自己の学習過程を評価できる工夫を継続中である。
【観点2】教育の達成状況
 国語科書写の指導力として,授業の考え方については一定の学力を身につけていると考える。一方,教師としての一般的な能力としての板書の文字などについては,まだ十分といえる状況ではない。特に教育実習先から,板書の能力向上の必要が指摘されるなど,更なる充実を検討したい。施設的にも人的にも厳しい状況ではあるが,効果的に学力を向上させる工夫をおこないたい。
 授業後の復習や実技を中心とする自習をおこなうための施設設備の不備については,十分な改善が見られたとは言い難い。後述するように,月・木曜日の夜に講202教室において自習および指導できるように,継続して努めている。
研究指導
【観点1】学部
 書写(書道)教育研究の動向に加え,文字を書く研究領域について,書学等の伝統的領域からGraphonomicsなど現代的領域までを見据えた上で,学生の課題に対する指導をおこなった。ゼミでの専門領域の研究とともに,教育実習前の模擬授業などを継続しておこなっている。文字研究・書道の領域に関しては,実物を直に見る機会を設けるなど,体験的部分についても留意した。
 本年度は,特にH20小学校学習指導要領の書写の特徴としての書き分け能力や,パラ言語的要素などに重点をおいた。
【観点2】大学院
 本年度も,新学習指導要領などを参照しつつ,文字を書くことの変化を踏まえ,書字目的及び相手意識などについて特に研究指導を行った。特に教師の書字意識と児童の書字意識などについて,比較することなどが本年度の特徴である。
 また,研究用機器の運用について,筆圧・握圧の測定のためのハードウェアを見直すなどをおこない,研究指導をやりやすいものとなるよう,努力した。
その他の教育活動
 信州大学教育学部において,非常勤講師として小学校免許用授業である「国語基礎」の一部(書写)を担当した。
 教育実習では,ゼミ担当学生への通常の指導に加え,書写に関連する授業をおこなう(ゼミ以外の)学生に対するアドバイスをおこなった。
 授業以外で「文字を書く能力」の向上のための指導を希望する学生に対して,硬筆・毛筆の個別指導時間として,長期休業期間を除く月曜日・木曜日の19:00-21:00に講202教室において指導をおこなった。
特色ある点及び今後の検討課題等
 研究活動において,これまでも書字行為によるコミュニケーションとパラ言語的な部分の重視,書字動作の学習内容化の2点において,先導的役割を果たしてきたと考える。特に後者については,前年度の書写書道教育学会におけるシンポジウムにおいて,教員養成としての提言をおこない,本年度同学会において補足となる発表をおこなった。他の教員養成大学においても,これらの視点による指導がおこなわれることを期待したい。
 課題として,前者に関連する,相手意識や目的意識をもって適切におこなう書字行為という視点による書写指導を充実させたいと考えている。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
作】(1)平成22年6月:『十二年き銘文』 第49回書象展 (国立新美術館)
(2)平成22年10月:『白楽天詩・月点波心…』 上越市展(運営委員として出品)
発】(1)平成22年9月:『書字動作における読みやすさの維持と冗長性の概念』(単) 全国大学書写書道教育学会旭川大会
他】(1)平成22年4月:『上越教育大学押木研究室Webページ/国語科書写指導の内容論を中心とする情報・本学研究室情報』 http://www.shosha.kokugo.juen.ac.jp/
学会活動への参加状況
(1)平成22年度:全国大学書写書道教育学会・常任理事, (2)平成22年度:全国大学書道学会・理事, (3)平成22年度:書学書道史学会・諮問委員, (4)9月30日:日本教育大学協会全国書道教育部門会 旭川大会 出席, (5)10月1日:全国大学書写書道教育学会 旭川大会 出席, (6)10月2日:全国大学書道学会 旭川大会 出席
◎特色・強調点等
 2006年から断続的発表してきた,書字動作とその指導に関するまとめとして,書字動作の冗長性に関して全国規模の学会で発表をおこなった。この内容は,2011年発刊予定の論文集に集録される予定である。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)8月:上越国語教育連絡協議会 書写実技講習会 講師, (2)11月:長野県総合教育センター教職員研修講座 講師, (3)石川県書写書道教育連盟 顧問, (4)上越市美術展覧会 運営委員, (5)11月:上越市学校教育研究会・書写部会講師
◎社会への寄与等
 主として,国語科書写指導に関する指導として,全国レベルにおいては学習内容論について担当(学会常任理事など)するとともに,北信越地区から上越地区においては書写指導全般について担当(講習会講師等)した。なお,上越地区に限定されるものとして,上越市美術展における書道部門の作品講評なども担当した。
 

 本 條 治(准教授)
 

中 里 理 子(准教授)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
 講義科目では,適宜質疑応答を交えて,受講生自身に考えさせる手立てを講じている。また,一方向的な知識の伝授ではなく,双方向的にコミュニケーションをとりながら授業内容を伝達できるように心がけている。成績評価は教育と絡めた内容にし,授業内容を教育に生かすことを意識させている。演習科目では,受講者自身がテーマを選び,その内容を発表資料としてまとめる力を養い,さらにグループ討議を通して話し合いの力を身につけられるように工夫している。発表と討議の後は,討議内容を盛り込んだ修正資料を提出させ,話し合いの結果を応用できるようにしている。成績はそれらを総合評価している。
【観点2】教育の達成状況
 学部については,講義科目において国語学の基礎知識及び言葉や文学史に関する基礎知識の定着を概ね達成できた。演習科目において文章をまとめる力,発表する力,話し合う力などを養うことができた。院については,主に小・中学校における国語学に関する知識の定着と知識を授業に応用する力を養うことができた。演習科目については,国語の授業で文章を鑑賞する力,実用的文章の作成を育成する視点を養うことができた。
研究指導
【観点1】学部
 興味のあるテーマに関する文献を集めて先行研究を把握し,卒業論文のテーマを自主的に決めるように導いた。そのうえで,目的に添った研究方法を選択し,先行研究にはない自分のオリジナルな論を構築するように指導し,その内容をわかりやすく整理して学術的論文にまとめられるように指導した。論文をまとめる過程で,情報を収集する力と取捨選択する力,調査したことを文章化してわかりやすくまとめる力が養えるよう指導した。
【観点2】大学院
 基礎的な知識を確認したうえで,先行研究を精査するところから始めた。先行研究を読みこなし,自分の論を組み立てる段階で必要となる専門的な知識の拡充を図り,そこから得られた知識を研究内容へ応用・発展させて学術的論文にまとめられるよう指導した。論文をまとめる過程で,専門的な情報を収集する方法,それらを取捨選択して整理する力,論文にふさわしい文章にまとめる論理的な思考力と文章構成力が養えるように指導した。
その他の教育活動
・長野県と新潟県の小学校教員採用試験を受験する学生2人に,面接の指導を行った。
・上越教育大学附属中学校研究協力者
特色ある点及び今後の検討課題等
 授業においても研究指導においても,学生の自主的な取り組みを重視している。課題を与えて各人にそれについて自分で考えさせ,自分の言葉で表現できるような指導を心がけている。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】(1)平成22年10月:『若者ファッション雑誌に見る男女の文体差』(単著) 『表現研究』92号 表現学会
(2)平成23年2月:『延慶本『平家物語』に見られるオノマトペ』(単著) 『上越教育大学研究紀要』30巻
発】(1)平成22年6月:『若者ファッション雑誌に見る男女の文体差』(単) 表現学会第47回全国大会
学会活動への参加状況
(1)6月5日:表現学会第47回全国大会出席, (2)日本文体論学会会計監査
◎特色・強調点等
 従来の研究内容の枠を超えて,雑誌の文体研究というテーマで学会発表するなど,研究領域の幅を広げることができた。また,お茶の水女子大学の高崎みどり先生主幹の科研「古典の談話研究」に研究協力者として参加し,その一環として古典作品の文体研究を進めることができた。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)11月:出前講座「マナーとしての敬語」(於:柏崎総合高校), (2)8月:免許法更新講習講師(於:長岡技術科学大学)
◎社会への寄与等
 附属中学校の研究指導者として,国語科の二人の教員の研究授業(1年生の「平家物語」,2年生の「故郷」)の指導に当たった。10月開催の附属中学校研究発表会に向けて,6月から研究実践授業参観と協議を重ねるなど,準備段階から協力・指導した。また,出前講座として柏崎総合高校で90分間の出張授業を行った。以上のことを通して研究の一端を教育現場に還元することができた。
 

迎   勝 彦(准教授)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
 学部においては一斉授業の形態をとった。この授業形態の問題点を解消するため,受講者の発表の場や話し合いの場を随時設けるとともに,教材の工夫(配布資料・ワークシート・メディア教材(PPなど)の工夫)を中軸とした指導法の見直しを随時行った。また,授業内容は教育実習を含め,教育実践場面に適用できるものとなるよう配慮した。なお,後期授業科目(中等国語科指導法)では,毎回15分程度の時間を使い,教員採用試験(中学国語問題)と関わった課題の検討を行った。これには国語科教員としての資質と能力を高めるとともに,教員採用試験対策としての意味も持たせている。受講生の反応は良好であった。大学院においては一斉授業だけではなく,適宜討論を交えるなどして,講義及び演習が,受講者相互の情報交換,意見交流の場となるようにも配慮した。ストレートマスターにとっても現職派遣院生との交流の場を設けたことにより,彼らの教育観や教育理念を学び,感じることのできるよい機会となった。成績評価については,学部,大学院ともに成績評価基準を明示して厳格な成績の評価に努めた。
【観点2】教育の達成状況
 良好。学部学生,大学院生ともに,社会に貢献する人材育成を図るという点からみて,高い付加価値を身につけさせることができたと考える。これは,授業後のアンケートやレポート,感想などから読み取ることができる。学部学生については特に,国語科教材の検討と開発を行う能力と資質を重点的に高めることができた。大学を卒業し,実際に授業を行う場合,この教材を読み取る能力や開発する能力は即戦力として必要とされるものである。大学院生については特に,「小・中学校授業の観察,分析,評価,改善」という点において臨床的な実践力を習得させることができた。
研究指導
【観点1】学部
 学部4年生の指導においては,文学教材の指導(第一次感想を生かした指導の在り方について),言語活用力の育成に関する指導について,それぞれ国語科教育に関わる臨床的な実践力を習得させることを目的とした研究指導を行った。学部3年生の指導においては,1)国語科教育研究の在り方,2)国語科における諸領域の歴史的検討と臨床的研究の在り方,3)国語科指導に関する現状把握と文献研究の在り方に関わる専門性を高める研究指導を行った。
【観点2】大学院
 大学院の指導においては,現職派遣教員のニーズに応えるよう,より高度な教育実践力を修得させることをねらいとした。また,教育実践場面を対象とする「研究法」「分析法」を中軸とした専門的知識の教授を行うとともに,具体的実践的な作業・実習を重視した。修士論文制作に関わる研究指導では,M1生には,高等学校における文学作品の読みに関する指導の方途,読者論・読書反応理論を中核とした方法論の検討・指導を行い,M2生には,小学校における話し合い学習指導の在り方について,「マッピング」という学習活動を組織することの有効性について探究するための文献的研究と指導構想・実施に向けた具体的な指導及びその分析と考察を進めるための研究指導を行った。
その他の教育活動
・独立行政法人国立病院機構新潟病院附属看護学校における非常勤講師(後期):「人間関係論」という講座を担当し,コミュニケーションの在り方や接遇,国語的な知識の習得に関する授業を実施した。
・上越教育大学附属小学校研究協力者
・上越教育大学附属幼稚園運営指導委員
・ハンドボール部顧問
特色ある点及び今後の検討課題等
 学部学生の指導にあたっては,担当する授業(初等国語科指導法や中等国語科指導法),ゼミ等の研究指導において,専門領域でもある国語科教育の内容を活かし,教育実習対策と教員採用試験対策も重点的に行った。前者については,国語科における教材研究の方法,学習指導のあり方を中軸として基礎的な点から指導,助言を行っている。後者については,国語科の教科内容に関する情報提供を基本としながら,面接・討議討論に関わる指導,小論文執筆に関わる指導,模擬授業対策を適宜行った。これらは,教育実習対策及び受験対策としてのみ機能するものではなく,学生自身が実際に教職に就き,実践的,臨床的に教育活動を行っていく上で重視されるべき点であると考える。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】(1)平成23年2月:『メタ認知的な意識及び思考を顕在化させるための視点―話し合い活動を対象とした授業研究に関する一考察―』(単著) 上越教育大学国語研究,第25号
(2)平成23年2月:『エネルギー環境学習の意義とその方法』(単著) 関東・甲信越地区エネルギー教育推進提案集 公益財団法人日本生産性本部エネルギー環境情報センター平成22年度エネルギー教育調査事業
(3)平成23年3月:『教員の資質能力の向上に係る基礎的調査中間報告書』(共著) 上越教育大学
(4)平成23年3月:『平成22年度研究開発実施報告書(第1年次研究)』(共著) 上越教育大学附属幼稚園
発】(1)平成22年6月:『話し合い学習指導における実践上の課題―思考力育成を目指した指導のあり方と教材開発―』(単) 上越教育大学国語教育学会第59回例会
共同研究(幼,小,中,高等学校及び特別支援学校教員との共同研究を含む)の実施状況
(1)中学校国語科における「話し合い活動」を対象としたメタ認知ツールの開発 代表者:迎勝彦(上越教育大学) 科研費 平成22年度基盤研究(C)(一般)
学会活動への参加状況
(1)6月19日:上越教育大学国語教育学会第28回総会及び第59回例会出席, (2)8月9日・10日:日本国語教育学会全国大会出席, (3)2月19日:上越教育大学国語教育学会第60回例会出席
◎特色・強調点等
 今年度は,科研費の採択もあり,学校現場の教員との連携を図ること,及び学校教育の現状を把握することを主として活動を行った。小・中学校教員との協同研究を推進するとともに,小中学校教員を対象とした講演を行うことで,自身のこれまでの研究成果の還元とその妥当性の確認を随時行った(教育研究が,研究のための研究で終始しないように,講演会を通して現場の教師の反応を得ることは意義があると考える)。これまでの研究,理論の内容の修正を図りつつ,改めて研究課題を設定し直すことができた。加えて,附属幼稚園における研究推進活動にも従事した。幼稚園と小学校との接続を,言語的コミュニケ―ションの視点から考察,検討を行った。自身の研究の幅を広げるきっかけとなると考える。
 また,エネルギー環境教育に関する研究活動の継続も図ることもできた。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)7月:上越国語教育連絡協議会・夏季研修会分科会指導者(上越市教育プラザ), (2)7月:柏崎市立南中学校区第2回小中授業交流会指導者及び講演会講師(柏崎市立新道小学校), (3)7月:授業力向上研修「国語科研修会A」講師(上越市立教育センター), (4)7月:教育課題研修会講演会講師(越路総合福祉センター), (5)11月:平成22年度「保育について語る会」講演会講師(上越教育大学附属幼稚園), (6)8月:教員免許状更新講習(上越)講師(上越教育大学), (7)8月:教員免許状更新講習(長岡)講師(長岡技術科学大学), (8)地域貢献事業「上越地域のエネルギー環境教育の推進とそれに関わる地域ネットワークづくり」(上越教育大学), (9)第19回「私たちのくらしとエネルギー」作文コンクール(関東・甲信越地区)選考委員(公益財団法人日本生産性本部エネルギー環境情報センター), (10)平成22年度関東・甲信越地区エネルギー教育推進会議オブザーバー(公益財団法人日本生産性本部エネルギー環境情報センター), (11)上越国語教育連絡協議会顧問(上越国語教育連絡協議会)
◎社会への寄与等
 県内の小学校や中学校での講演活動や協議会での指導を重視した活動を行った。これまでの教育研究の内容を学校現場へフィードバックする活動を行うことができたと考える。上越教育大学附属幼稚園の運営指導委員としても活動をし,その保護者に向けた社会貢献も行った(講演を行った)。このほか,上越・妙高地区を中心としたエネルギー環境教育に関するネットワーク作り,情報収集を継続して行うことで社会貢献に役立てた。また,全国規模のエネルギー環境教育推進会議にも参画し,児童作文の審査を行うなど,自身の専門(国語)との連動を踏まえた社会貢献も行うことができた。
 

渡 部 洋一郎(准教授)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
 教育方法では,学部の授業において実際の教科書教材を用いながら,効果的な教材解釈のあり方とそれを授業に生かすための具体的な方法について臨床的に授業を行うことができた。また,大学院修士課程の授業でも,授業を分析するための具体的な視点や実際の分析法について,実際のデータを用いながらわかりやすく説明することができた。成績評価では,そうした工夫が受講生にどのように受け入れられたかも踏まえて評価することができたと思う。
【観点2】教育の達成状況
 上記観点1の記述から,2010年度の授業目標のうち,特に教育方法の改善や工夫については当初の目的を達成できたと思う。また,成績評価に関しても,受講生から好ましい反応を引き出せたことや実際の教育実習にも役立てることができた点など,十二分な成果をあげることができた。
研究指導
【観点1】学部
 学部4年生の卒業研究では,2名の学生の論文指導を行った。1名は,「文章題理解における児童のつまずきとその支援−小学校下学年の加減問題を中心に−」というテーマで,なぜ一部の児童に文章題を理解する際に誤った解釈が起こるのかのメカニズムを検討した。また,そうした児童にはどのような支援や指導を行うとスムーズな文章題の理解へと導くことができるのか,も併せて検討した。もう1名は,「小学校国語教科書における挿し絵の分析と検討−白いぼうしの研究−」というテーマで,教材として用いられている実際の挿し絵を対象に,外形的な側面と内容的な側面から挿し絵の特徴を客観的に分析し,授業に生かす際の視点を検討した。
【観点2】大学院
 修士課程2年生の修士論文では2名の現職派遣院生の研究を指導した。群馬県派遣の院生は,「論理的思考力を育む説明的文章の構造に関する研究−多面的な読みを生み出す説明文構造モデル−」というテーマで,自然科学のジャンルにおける説明文を効果的に読み解くための汎用性のある読解モデルを構築した。また,新潟県派遣の院生は,「論理的思考力を育てる説明的文章指導の研究−トゥールミンモデルを活用した批判的な読みの形成−」というテーマで,特に主張的な論説文の読みに使われてきたトゥールミンモデルを基礎から見直し,新たなトゥールミン論理モデルを作り上げることができた。両者ともに優れて実践的な論文であり,特に後者はその内容が高く評価され,学会発表も行うなど著しい成果を上げることができた。
その他の教育活動
・2010年度は,学部4年生の中学校実習と学部3年生の小学校実習に関わって,ゼミの学生に事前の教材解釈の指導を行った。また,実習中は,大研と小研の研究授業を参観し,中学校2校と小学校3校を訪問した。特に,参観時の授業展開については,実習後に4年のゼミ生2名,3年のゼミ生3名に,授業時の工夫点や改善点について検討会を実施した。
・上越教育大学附属小学校研究協議会研究協力者
特色ある点及び今後の検討課題等
 学部における演習や講義,また,大学院修士課程における演習や特講などの工夫点については既に記述したとおりで,特に臨床的な観点から実際の授業に役立つ教材解釈のあり方と授業展開のコツをできるだけ具体的に授業の中で述べてきたが,今後の検討課題としては,そうした工夫が中学校実習や小学校実習の場でどの程度実行に移されているか等,実際の授業観察や授業分析の視点から検討することだと思われる。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】(1)平成23年3月:『教科内容学研究の視点と方法』(単著) 教員養成における「教科内容学」研究 pp.21-24.
(2)平成22年4月:『教育実習の課題と留意点』(単著) 新編中学校高等学校国語科教育法 pp.167-172. おうふう社
発】(1)平成22年10月:『「ちょっと立ち止まって」の授業研究(T)−第5〜7段落の教育修辞学的考察』(共) 第119回全国大学国語教育学会
他】(1)平成22年10月:『全国大学国語教育学会リーフレット/全国大学国語教育学会における公開講座内容の学術広報誌』 全国大学国語教育学会リーフレット
共同研究(幼,小,中,高等学校及び特別支援学校教員との共同研究を含む)の実施状況
(1)言語能力の育成に関する実践的研究 代表者:高岡市立高陵中学校長 佐脇由起子(富山県高岡市立高陵中学校) 富山県高岡市立高陵中学校平成22年度研究プロジェクト
学会活動への参加状況
(1)平成22年度:日本読書学会編集委員, (2)平成22年度:日本読書学会監事, (3)平成22年度:上越教育大学附属小学校研究協議会授業づくりセミナー, (4)5月29日〜5月30日:第118回 全国大学国語教育学会東京大会出席, (5)8月7日:第54回 日本読書学会研究大会出席, (6)8月9日〜8月10日:日本国語教育学会 第73回国語教育全国大会出席, (7)10月30日〜10月31日:第119回 全国大学国語教育学会鳴門大会出席及び発表
◎特色・強調点等
 昨年度は,国語教育関係の諸学会に参加するとともに,日頃の研究成果の一端を「第119回 全国大学国語教育学会鳴門大会(於 鳴門教育大)」で発表することができた。また,今年度にかけても継続的に成果発表を行うことができた点など,順調に研究活動を実施することができている。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)上越国語連絡協議会秋季大会講師, (2)富山県高岡市立高陵中学校平成22年度教育研究協議会講師, (3)上越教育大学附属小学校研究協議会授業づくりセミナー講師
◎社会への寄与等
 2010年度は,国語教育の全国的および学術的な学会である「日本読書学会」の編集員と監事を務めることができた。特に,編集委員としては,学会誌「読書科学」の査読と編集に深く関わり,研究および教育的な役割を果たすことができたと思う。また,他県の公立中学校から教育研究協議会の講師として招かれ,国語教育の講演を行ったり,上越・柏崎・糸魚川・妙高地区の小中学校教諭の研究団体である上国連の秋季研究大会講師も務めることができた。さらに,附属小学校でも授業づくりセミナー担当講師として講演を行うなど,これまでの研究や実践的な工夫について昨年度は様々な場面で講演を行った。以上のような点から,十二分な社会貢献を果たすことができたのではないかと思う。
 

加 藤 雅 啓(教 授)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
 学部:英語運用能力の育成を重点目標とし,積極的にコミュニケーションを図る態度の養成に工夫を凝らした。「英語学概論」では談話文法理論,機能文法理論の観点により「覚える文法」から「考える文法」,「コミュニケーションに役立つ英文法」への橋渡しを行った。「英文法」の授業では英字新聞等の生きた英語教材を活用し「母語話者の言語直感に迫る文法」の構築を目指した。
 大学院:教育現場における英文法指導について従来の記憶中心の学校英文法を脱却し,コミュニケーションを重視した実践的な英文法指導への取り組み方を工夫した。「英語学演習」では関連性理論における最新の言語理論を取り込み,認知とコミュニケーションの観点から橋渡し指示に関する理解を高める工夫を行い,指示詞に関する実践的な教材開発を行った。
【観点2】教育の達成状況
学部:積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度が身についた。「英語学概論」では,「覚える文法」から「考える文法」へ意識の転換が顕著に見られ,学校現場における「コミュニケーションに役立つ英文法」への橋渡しを達成することができた。「英文法」の授業では,全員が600頁を超える文法書を精読し,「母語話者の言語直感に迫る文法」を構築することができた。
大学院:「談話文法特論」の授業では,「話し手・聞き手・場面」で構成される「談話」を想定した「新しい文法」観,及び「母語話者の言語直感に迫る文法」観を身につけることができた。さらに,実践的な英文法指導能力を身につけ,パワーポイントによる教材を開発した。「英語学演習」の授業では談話における結束性に関する実践的な教材開発を行うことができた。
研究指導
【観点1】学部
 学部では従来の記憶中心の英文法指導の不備を指摘しながら,「英語ではなぜ同じ意味内容を伝えるのに複数の言い方が存在するのか(第3文型と第4文型,能動文と受動文)」などの「生徒のなぜに答えることができるような英文法指導」を実践し,大量の生きた英文データを与えて臨床的実践力の養成を行った。
【観点2】大学院
 修士課程では,教育現場において最新の言語理論がどのように応用できるかという観点により,「関連性理論の枠組みによる実践的コミュニケーション能力の育成」,「認知言語学による未来表現の分析と応用」等のテーマで実践研究を指導し,中学校・高校の英語教育現場におけるより高度な臨床的実践力の養成を行った。
その他の教育活動
 平成22年5月−6月,9月,初等教育実習,及び中等教育実習において学部生6名,大学院生3名の学生指導を行った。
特色ある点及び今後の検討課題等
 講義支援システムを活用し,「振り返りシート」を提出してもらい,これに対して「振り返りシートの振り返り」を作成したうえで講義支援システムにアップすることにより,学生と教員による双方向通信による授業のフォローアップを行った。さらに,教師による「振り返りシートの振り返り」を次の授業の冒頭で振り返ることにより,学習項目を一層深く理解することが可能となった。「コミュニケーション英語CII」では「英語」をツールとして用い,情報の収集・発信を行い,グループワークを通じてコラボレーション能力を伸ばし,プレゼンテーション能力を伸ばすという目標達成のため「Virtual Travel 2010」を企画し,英文ホームページを利用して仮想旅行を計画・実施し,パワーポイントを用いて発表することにより,教科書訳読式の授業からの脱却を試みた。「コミュニケーション英語BII」では,教室で使う英語表現140を学習し,実践的な英語表現の習得を行った。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】(1)平成23年2月:『Exhaustive Implicature of Ga-clefts in Japanese』(単著) Tsukuba English Linguistics, Vol. 29, 296-302
学会活動への参加状況
(1)7月 上越英語教育学会の企画・運営(会長), (2)11月 日本プラグマティックス学会出席(理事,評議員,編集委員), (3)11月 日本英語学会出席(評議員), (4)12月 日本語用論学会出席, (5)International Journal of Pragmaticsの編集
◎特色・強調点等
 平成21〜23年 科学研究費補助金 基盤研究(C)の支援を受け,分裂文の総記的含意について研究を進めている。これまで意味論,あるいは語用論の枠組みで個別に論じられてきた分裂文の総記的含意に関して,これを関連性理論,及び認知言語学から分析を試みるもので,これまでに例を見ない新しい取り組みであると言える。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)上越市教育センター運営委員会(委員長), (2)8月:出前講座「情報構造の話」講師(新潟県立柏崎高等学校), (3)11月:出前講座「ハートで感じる英語の冠詞」講師(新潟県立柏崎高等学校), (4)社会福祉法人 御幸会(評議会・理事会)
 

平 野 絹 枝(教 授)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
 最近の研究成果を取り込んだ形で,効果的な英文読解方略を指導し,異なった読解問題形式にふれさせて学生の多様な読解能力を引き出すことを心がけた。音読,黙読を練習させ,英文の読解力向上のほかに,コミュニケーション能力の育成に努めた。動機付けにCD,DVDを使用した。大学院では,ESL/EFL及び応用言語学の理論と指導,多角的な視点にもとづいた教材分析の理論研究と実際に焦点をあてた。理解の確認のチェックのため,小テストを行い,グループやペア・ワークで,問題点を討議させ,諸理論をわかりやすく解説することに腐心した。
 成績評価に関しては,出席,日常点,課題,試験結果にもとづいて総合的に評価した。
 学生のなかには,学外の学会発表を行って英語教育指導の改善や研究の発展に貢献した。
【観点2】教育の達成状況
 学生のなかには,学外の学会発表を行って英語教育指導の改善や研究の発展に貢献した。
研究指導
【観点1】学部
 第2言語習得理論,読解理論,方略,テスティングに関する文献の指導,データの収集,分析法,論文の構成,展開,考察の仕方について,丁寧な研究指導を行うよう心がけた。
【観点2】大学院
 第2言語習得理論,読解理論,方略,テスティングに関する文献の指導,データの収集,分析法,論文の構成,展開,考察の仕方について,国内外の文献を通して日本語と英語の丁寧な研究指導を行うよう心がけた。
その他の教育活動
・平成22年4月〜23年3月:新潟大学(学部)非常勤講師として「共通英語」「基礎英語」を担当した。
・教育実習の研究授業など,授業のコメント・改善点を指導した。
特色ある点及び今後の検討課題等
 最近の英語教育学の理論を取り入れ,英語の理解と産出のバランスを様々な,一斉指導,ペア,グループワーク活動のなかで考慮し,学生が自主的に,また相互的に,英語力の向上や専門知識の獲得をめざせるように腐心した。今後,限られた授業時間内で個に対応した指導をどのようにしたらよいかが検討課題である。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】(1)平成23年3月:『The effects of phonological representation on Japanese sixth-grade students’ recognition of English words』(共著) 教育実践学論集 第12号,pp. 157-168 
(2)平成23年2月:『本学会紀要における研究 (1991 年 ― 2010 年) のレビューと展望』(単著) 中部地区英語教育学会紀要40号,pp.100-107
発】(1)平成22年8月:『小学生の英語語彙学習における音韻表象の役割―小学3年生に焦点をあてて』(共) 全国英語教育学会大阪大会
(2)平成22年6月:『本学会紀要における研究 (1991 年 ― 2010 年) のレビューと展望』(単) 中部地区英語教育学会金沢大会 シンポジウムパネリスト
共同研究(幼,小,中,高等学校及び特別支援学校教員との共同研究を含む)の実施状況
(1)英語語彙認識の音声情報の役割 代表者:堀田誠(山梨大学附属小学校)
学会活動への参加状況
(1)平成22年度:中部地区英語教育学会運営委員, (2)平成22年度:全国英語教育学会紀要副編集委員長, (3)平成22年度:全国英語教育学会紀要(ARELE)査読委員, (4)平成22年度:小学校英語教育学会査読委員, (5)平成22年度:大学英語教育学会役員, (6)平成22年度:大学英語教育学会紀要査読委員, (7)平成22年度:中部地区英語教育学会紀要編集・投稿ワーキンググル−プ, (8)6月25日〜27日:第40回中部地区英語教育学会石川大会出席, (9)8月6日〜8日:第36回全国英語教育学会大阪研究大会出席, (10)12月13日〜15日:立教大学英語教育公開講演会出席
◎特色・強調点等
 読解テストの妥当性の検証があまりなされていないリコールテストに関する研究で,目標言語学習経験年数,性差,読解力,学力,の諸要因がリコールテストのパフォーマンスとその妥当性に及ぼす影響や方略との関係について継続的な研究を行っているが,これまでの先行研究では例が極めて少なく,テスト作成,評価,読解教材開発,読解指導の改善,に貢献する点で,興味深い示唆があり,独創的であるといえる。
 
<社会との連携>
◎社会への寄与等
 学会の運営・論文査読・紀要編集を通して英語教育学研究発展・運営の社会貢献,日本人学習者の英語スピーチ向上に努めた。
 

北 條 } 子(教 授)
 
<教育活動>
その他の教育活動
・平成22年度上越教育大学附属小学校研究会研究協力者
・上越教育大学附属小学校外国語活動出張授業
・上越教育大学附属幼稚園外国語活動出張授業
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】(1)平成23年3月:『ポートフォリオを活用した反省的実践家としての小学校英語教員養成プログラムの設計と試行』(単著) 第30巻 上越教育大学研究紀要
(2)平成23年3月:『小学校英語活動における文字指導の試み』(共著) 第21集 上越教育大学学校教育実践研究センター 教育実践研究
発】(1)平成22年7月:『小学校英語活動におけるCreative Dramaticsを利用したドラマ的活動の効果に関する研究』(共) 小学校英語教育学会全国大会第10回北海道大会
(2)平成22年9月:『ポートフォリオを活用した反省的実践家としての小学校英語教員養成プログラムの効果』(単) 日本教育工学会
 
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)スーパーティーチャー・スーパーバイザー事業(上越市教育委員会)
 

前 川 利 広(教 授)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
 教育方法では学部1,2年のコミュニケーション英語において,上教大学生として到達してもらいたい英語基礎力として,辞書を使いながらでも英字新聞記事がよめることを目標に,毎回教材を作成し使用した。学部2,3年の英語免許授業である英語文化圏文学とアメリカ現代小説,および大学院の文学の授業では,他国立大学英文科の授業と若干異なる内容を指導した。つまり,(1)英米の文学の導入として短編小説あるいは長編の一部を使って文学の基礎的素養を身につけ,教員として中・高で物語世界の案内ができること(2)英語教員として身につけなければならない英語読解力のうち,高校の文法知識を確固としたものにし,その知識に基づいて文の構造が説明でき,和訳ができるようになることを到達目標とした。
【観点2】教育の達成状況
 (1)英字新聞が読めるようになることは,軽薄な会話用応答文を記憶するよりはるかに本当の英語力に近づく。15回の授業ではまだ易しい英文記事になれる程度だが,先々英字新聞から情報を得,教壇で英語と異文化を指導するときには最高の効果を生む。私が指導した学生は,英文記事に若干慣れることができ,初めから英字新聞に対してあきらめの気持ちを持たない。昨今の日本の英語教育はハンバーガーショップでの買い方のようなものを教えてコミュニケーションと言っているが,そのため,日本の英語力はアジアで最下位に近い位置まで下がってしまった。(2)次に英米文学の授業について。言葉・文章はたんに字面でメッセージを綴って伝えるだけでない。言葉の裏に意味があり,行間に意味が隠されていることも理解しなければならない。私の授業はそこを目指しており,私の授業を受けたものは文法から離れないで意味を読み取ること,辞書を綿密に読むことで正しく深く読み取ること(学生のアンケートより),そして行間を読むことの重要性を学んだ。国語教育でも小学校低学年から詩と小説が教科書に掲載されているのは,書かれてあることの理解だけが言語教育の目標ではないことを意図している。英語教育も同様のことが言える。
研究指導
【観点1】学部
 学部4年生は4人在籍したが,どの学生も英文の長編小説を読み上げ,長文の論文を仕上げた。研究指導はテーマ設定から始め,全体の構想を立ち上げたのちに文献を探して読み,自分の意見との食い違いを発見してさらに調べることを促し,細部を練り上げたのち結論までに至る過程で,何度もその過程を報告させ,完成に至らしめた。もっとも優れたものは主人公がさまざまな体験を通して,人間,社会,人とのつながりなどを理解してゆく過程を,発達心理学の文献を渉猟することで明確に人間的成長として描き出している。これは教師として現場に立ち,生徒を相手にするとき,直接的に役に立つ文学作品の読み方である。他の3人もそれぞれに努力して完成させ,新潟県小学校教員二人,長野県小学校教員一人,長野県高校教員英語一人と,全員が就職できた。
【観点2】大学院
 ゼミでの指導にかかわる大学院生で2011年3月終了の者はいなかった。
その他の教育活動
 私は自分のゼミ生の教育実習は必ず見に行く。弱点を改善する手立てをし,一方,長所の発展を促す。小学校・中学校とみていくと,学生の適性が那辺にあるのかがわかる。そこを鼓舞することで,教員採用試験の合格率が高まる。採用試験のためにはPPでの指導に加えて,私のゼミ生については私が模擬授業・面接指導・小論文の指導をする。
特色ある点及び今後の検討課題等
 教師として必要な知性と教養は,まず文字を通して書物から入ってくる。次に話し言葉によって,実際に生徒の立場であった時に見聞きしたこと,他の人間あるいはマスコミ報道から耳に入れたことが入ってくる。このうち私は特に前者の手段によって教養としての学問を吸収できるよう,学生に指導している。教育とは,化学肥料を与えることではなく,堆肥を仕込んでやることである。化学肥料は土壌を荒らすが,堆肥は本当の肥やしになる。そして堆肥を与えたうえで,実際に教室で有効な方法を指導している。教科専門と教科教育のブリッジを意識して教育している。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】(1)平成23年2月:『Raymond Carvers Art of fiction and Gordon Lishs Excision』(単著) 上越教育大学紀要 第30巻 201-6
 
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)7月:出前授業講師「映画と小説を通してみたアメリカ文化」(福島県立磐城桜ヶ丘高校), (2)4月〜3月:出前授業開設「文学作品を使った英語授業」
◎社会への寄与等
 出前授業の要請は他からもあるが,日程・時間等でやりくりがつかなかった。
 

石 濱 博 之(准教授)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
 学部「コミュニケーション英語」の授業では,平易な英文(旅行記)の概要の読みに努めながら,音読中心(オーバーラッピングやシャドウイングの技法,ポピュラー音楽の活用)の授業をした。事前に授業に取り組みやすいように予習プリントを示した。学部の小学校英語に関しては,具体的な指導案を書けて,その授業ができるような授業にした。大学院では,小学校英語の理論の理論に基づく具体的な授業実践の場面を取り入れた。理論に基づく模擬授業をできるよう応用した。
 学部では,章ごとに小テストを実施して,内容の定着の確認をした。授業内容に基づく評価に取り入れた。できる限り,簡単な英語で表現できるような評価を実施した。大学院では,小学校英語の理論に基づく模擬授業を実施し,よい点や改善点を具体的に提示した。
【観点2】教育の達成状況
 学部では,各個人が易しい英語を使って,自己表現してみる方法を身につけたであろう。
 大学院では,基本的な小学校英語に関する知識(理論)ばかりでなく,具体的な事例から実践的な指導方法を身につけたであろう。
研究指導
【観点1】学部
 学部4年生の研究指導では,できるだけ多くのゼミの時間(個人ゼミ)の時間を設定した。その研究指導では,研究設定,データ収集,論文の書き方まで丁寧に指導した。関係している小学校に,その調査の内容を理解していただくために直接ゼミ生といっしょに依頼し,データ収集する際は,その授業(小学校)の中で補助をした。最終的に学生個人が関心ある論文を仕上げて行くように努めた。学部3年の指導では,小学校英語教育に関する基本的な文献を読ませ,テーマに関して興味関心を持たせた。研究テーマを設定できるように努めた。
【観点2】大学院
 大学院免許プログラム3年生に関しては,最終年であるために決定したテーマに沿いながら修士論文作成のための指導をした。実践的な研究を目指していたために,公立小学校に依頼して,授業実践(週1回の授業を4回)をしてデータの収集をさせた。データ収集のための小学校の授業では,ゼミ生が授業をする際,補助として授業に関わった。1人であったために,きめ細かな研究指導ができたと自負している。学生も主体的にテーマを決定し,それに基づいて論文を作成したので,この研究論文が今後の教育実践につながったとしている。
その他の教育活動
・私立大学での非常勤講師
 愛知淑徳大学文学部,集中講義「早期英語T」,平成22年8月18日,19日,20日,21日,23日の5日間,受講生20名,文学部で小学校英語に関する授業だったので好評であった。
・ゼミ生の教育実習については,事前に指導案(特に,英語活動,中学校英語)の内容について具体的な提案をしたり,あるいは基本的な文献を提示した。授業観察した後に,指導技術等で成長している点を具体的に述べながら,更によくなるために改善点を具体的に示した。プロの教員になるための人材に育てようとした。
・学生クラブ「チルドレン」顧問
特色ある点及び今後の検討課題等
 教育活動の内容に関して,各の学生が将来の教員になるために,常に基本的な内容を提示することに努めた。教育実践をするための「理論」と「実践」の融合をはかった。その点で,ある学生には基本的な事項は伝わったと思う。ゼミ生が教育実習でも,適切な助言を具体的に示すことが有意義であった。今後は,例えば,ゼミ生が自信を持って指導できるように,「理論」と「実践」の具体例を,教育機器で提示するとよいと思う。そのような点で私の指導の方法を検討することが必要である。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
業】(1)平成23年3月:『複式3学級における楽しい全校英語活動(外国語活動)の取り組みの実践事例−平成18年度からの継続した英語活動の内容とその成果と課題について−』(共著) 研究プロジェクト研究成果報告書
(2)平成23年3月:『糸魚川市立上早川小学校の外国語活動指導案集(平成20/21年度指導案集)』(単著) 上越教育大学プロジェクト成果報告書
発】(1)平成22年8月:『複式3学級における楽しい全校英語活動の取り組みの一つの実践事例−平成18年度から継続した英語活動の内容とその成果と課題について−』(単) 第36回全国英語教育学会大阪研究大会
(2)平成22年12月:『小学校外国語活動における話題に関連するマザーグースの分類とその授業実践』(単) マザーグース学会第11回全国大会
他】(1)平成22年8月:『新聞記事/教員研修の様子が写真と共に掲載されている』 三條新聞
学会活動への参加状況
(1)7月17日〜7月19日小学校英語教育学会札幌大会参加, (2)6月26日〜6月27日中部地区英語教育学会金沢大会参加, (3)小学校英語教育学会会計監査
◎特色・強調点等
・新潟県における複数の小規模小学校と関わり,外国語活動(英語活動)の指導方法から評価まで検討している。
・外国語活動の必修化されるに伴い,小学校教員の教員研修のあり方を検討している。短期的で効果的な教員研修のあり方について検討している。
・小学校の教員が外国語活動の授業展開を円滑にできるように,指導助言をしながら枠組みの固定化を提唱し,その枠組みで実践的研究を実施している。
・音声面(「聞くこと」と「話すこと」)の観点から,外国語活動(英語活動)の効果を検討している。また,外国語活動が児童の情意面にどのような影響を与えているか,継続して研究をしている。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)5月〜3月:新潟県立高田商業高等学校学校評議員会評議員, (2)ステップワールド英語スクールスピーチコンテスト校内予選大会審査委員長, (3)上越市立宮嶋小学校・清里小学校英語活動教員研修会講師, (4)9月〜10月:糸魚川市立東小学校 授業観察と指導助言, (5)6月〜1月:糸魚川市立今井小学校の授業観察と教員研修会講師, (6)5月〜7月:上越市立牧小学校の授業実践と教員研修会指導助言者, (7)糸魚川市立西海小学校校内授業研究協議会講師, (8)4月〜3月:糸魚川市立上早川小学校外国語活動授業実践と教員指導, (9)6月〜2月:上越市立宮嶋小学校外国語活動授業実践, (10)出前講座「小学校外国語活動の授業づくりと教員の指導力向上」講師(柏崎市立二田小学校), (11)出前講座「外国語活動研修会」講師(三条市立旭小学校), (12)出前講座「外国語活動研修会」講師(上越市立戸野目小学校), (13)出前講座「小学校英語の授業展開と教員の指導力向上」講師(十日町市立馬場小学校), (14)糸魚川市教育研究会英語・外国語活動部教員研修会講師, (15)公開講座「『小学校外国語活動』進め方入門」講師, (16)上越市立上早川小学校応援団団員(英語活動含む)
◎社会への寄与等
 平成22年度も,新潟県の市町村の地域で,具体的に学級担任とのティームティーチングで授業実演をした。実演の授業の後,その授業の背景となる理論を参加者に講義形式で伝えた。次にワークショップ形式で課題を体験する活動を実施した。教員や校長先生,指導主事等から,教育現場に近い形で実演授業が実施されているので,「利用しやすい」と評価が高い。実際に授業の実演は,実際にやってみようとする気持ちにさせている。「だれでもできる」「楽しい」「役立つ」というキーワードが示されている講義では実践に基づく理論であり,その理論を各の小学校で汎化できると言われている。口コミで教員研修の依頼がある点が地域に寄与している。
 

大 場 浩 正(准教授)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
 学部の「コミュニケーション英語」(1・2年生)においては,語彙及びリスニング,リーディング,ライティングの3技能に焦点をあてた授業を展開した。第1回目の授業において,受講学生の英語学習に関する意識等をアンケートにより調査(学生の実態調査)すると同時に,授業全体の目的・目標,学習内容(計画),成績評価方法を詳細に説明した。また,毎回の授業では個人の活動をもとにペアやグループの活動へと発展させ,協同学習により動機付けを促し,学生に全ての活動への自己評価(振り返り)を行わせることにより個々の活動成果を確認させた。学習の成果のみならずその過程を評価(ポートフォリオ評価)することを通して受講学生の学習意欲を高めるようにした。「中等英語科指導法(授業論)」でも同様に,個人の活動やグループの活動を中心に展開した。授業全体を3期に分け,1期では英語の授業展開や指導案の作成の方法を解説し,2期では1期の内容を踏まえ,受講学生達が実際に1時間の授業を組み立て,模擬授業を行った。模擬授業後のディスカッションによって授業を観察する目が養えたのではないかと思う。3期には中学校現場の教員による講義を組み込み,学生の教職への動機付けを行った。教育実習や現場に出てから役に立つ英語の授業の理念と基礎技術を獲得させることに焦点をあてた。大学院の「英語科教育学習方法演習」と「英語科教育第二言語習得特論」では,目的・目標,学習内容,成績評価方法を明確にし,より高度な,そして,専門的な知識を獲得できるように,学生によるプレゼンテーションとグループによるディスカッションを通して指導を行った(特に前者の授業)。また,英語指導の際に,直接的・間接的に役に立つ背景知識の獲得と自己の英語教育に対する考え方を形成させることに焦点をあてた(特に後者の授業)。
【観点2】教育の達成状況
 学部1年生は,既に大学入学以前に英語に対する得意・不得意がはっきりしており,それに応じて,英語への学習意欲が,ある程度,決定しているように思われる。しかしながら,大学の英語の授業では,受験を意識することもなく,オーセンティックな英語の自作教材(歌や映画等)を用いることによって,学生の英語に対する意識が変わってきたようである。活動毎の自己評価(振り返り)では,「難しいが,楽しく出来た」「仲間と協力し合って解答にたどり着くことができて嬉しかった」というような,英語学習を肯定的にとらえているコメントが多かった。「中等英語科指導法(授業論)」でも,教育実習に向けて英語の授業をどのように組み立てていくか,どのように中学生と接していくかなど,学生たちは具体的な手法や心構えを学んだ。大学院の授業では,学生は授業の展開や教材の開発などの基になる理論的背景を学んだ。特に,一つ一つの活動にどのような意味があり,何を目指した活動であり,どのような考え方に基づいているのかを考え,学ばせた。従って,教授法や指導技術の基礎となる第二言語習得研究に関する理論的な背景や実験研究の成果を正確に理解させることに勤めた。このように,指導の目的は十分に達成された。
研究指導
【観点1】学部
 3年次学生においては,英語教育や第二言語習得に関する国内外の専門誌に掲載された論文や専門書の講読を通した専門的知識の獲得(文献研究)を目指した指導を行った。後半においては大学院生のゼミにも参加させ,より高度な知識及び思考する能力の獲得を目指した。4年次学生には,3年次に身につけた知識に基づく実証的な研究(実験研究)を通して英語教育に関する洞察力や臨床的な実践力を深めさせ,卒業論文を完成させるための指導を行った。
【観点2】大学院
 1年次学生(及び免P1年次・2年次学生)においては,英語教育や第二言語習得に関するより高度な専門的な知識,および臨床的な実践力を修得させるために,国内外の専門誌に掲載された(英語による)論文および専門書の内容を報告させ(文献研究),それに基づいて議論等を行い,設定した研究課題への取り組みを通して修士論文の方向をより確実なものにするための指導を行なった。2年次学生においては,調査・実験の方法,データの分析方法,結果とまとめと考察の方法を指導することにより,修士論文の完成を目指した指導を行った。
その他の教育活動
 教育実習における実践に役立つような基礎知識や活動を積極的に指導した。また,実習期間中にも指導案や教材に関する指導を行った。研究授業の参観の後には,指導教諭とともに授業の振り返りなどを行った。また,本学附属中学校(研究主題:自立して学ぶ生徒を育てる教育課程の研究開発)の指導を行った。
特色ある点及び今後の検討課題等
 学部では,英語を専攻していない学生の指導において,将来,(主に)小学校の教員として子供たちに英語を教える機会もあることを踏まえ,英語に対して肯定的な態度が育つように心がけた。また,英語教育に関する専門の授業では,最低限,教育実習における実践に役立つような基礎知識や活動を積極的に指導した。卒業論文の指導においては,理論的な側面にのみならず,理論に基づく提案等を通して実践力の獲得に焦点をあてた。大学院においては,教授法や指導技術の基礎となる第二言語習得研究に関する理論的な背景や実験研究の成果を正確に理解させることに勤めた。さらに,英語教育的なアプローチのみならず,教育学的なアプローチから英語の授業を組み立てる方法として協同学習及びカウンセリングマインドを意識した英語の授業方法も指導した。
 学内における各教科指導法・教職実践演習ルーブリック等作成に携わった。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】(1)平成22年8月:『A “rank vs. cluster” conflict: or, is it just an artifact?』(共著) Proceedings of the 15th Pan-Pacific Association of Applied Linguistics, pp. 418-425.
(2)平成22年12月:『Developing the CAN-DO system based on the NCUEE test results: An application of the Neural Test Theory』(共著) Proceedings of the Fourth CLS International Conference (CLaSIC 2010), pp. 756-765.
(3)平成22年12月:『The effect of cooperative learning on speaking of Japanese EFL learners』(単著) Proceedings of the Fourth CLS International Conference (CLaSIC 2010), pp. 659-666.
業】(1)平成22年4月:『英語スピーキング能力の伸長を目指したインタラクション活動における協同学習の有効性』(単著) 『協同と教育』(日本協同教育学会)第6号,pp. 92-94.
(2)平成22年5月:『項目応答理論を援用した英語学習者の文法能力発達過程解明とその方法論の研究』(共著) 平成19年度−平成21年度科学研究費補助金(基盤研究(B))研究成果報告書(代表:山川健一)
発】(1)平成22年8月:『A “rank vs. cluster” conflict: or, is it just an artifact?』(共著) The 15th Conference of Pan-Pacific Association of Applied Linguistics (代表:杉野直樹)
(2)平成22年12月:『Developing the CAN-DO system based on the NCUEE test results: An application of the Neural Test Theory』(共著) The Fourth CLS International Conference (CLaSIC 2010)(代表:杉野直樹)
(3)平成22年12月:『The effect of cooperative learning on speaking of Japanese EFL learners』(単著) The Fourth CLS International Conference (CLaSIC 2010)
共同研究(幼,小,中,高等学校及び特別支援学校教員との共同研究を含む)の実施状況
(1)教科専門と教科教育を架橋する教育研究領域に関する調査研究 代表機関:上越教育大学 文部科学省先導的大学改革推進受託事業
学会活動への参加状況
(1)平成22年度:北海道英語教育学会・運営委員・紀要編集委員, (2)平成22年度:中部地区英語教育学会・紀要編集委員, (3)平成22年度:日本第二言語習得学会・紀要論文査読, (4)平成22年度:上越英語教育学会・役員, (5)8月17日〜18日:The 15th Conference of Pan-Pacific Association of Applied Linguistics, (6)9月4日〜5日:日本協同教育学会第7回大会, (7)9月7日〜8日:大学英語教育学会, (8)12月2日〜4日:The 4th CLS International Conference (CLaSIC 2010), (9)12月17日〜18日:日本第二言語習得研究会
◎特色・強調点等
 日本人英語学習者の英語能力を伸ばすためにアウトプット仮説における「気づき」と「理解」及び協同学習の手法を取り入れた指導方法の開発およびその実証的な研究を行っている。日本において本格的に英語の指導に協同学習の手法を取り入れた例は少なく,先駆的な研究として成果を出していく(科学研究費補助金:挑戦的萌芽研究に採択)。また,協同学習を行うための技法を獲得するために教育カウンセラー養成講座(及び構成的グループエンカウンター講座)にも参加し研鑽を積んだ。さらに,共同研究の第二言語の文法能力の発達における新しいテスト方法やデータ分析方法の開発(科学研究費補助金:基盤研究Bに採択)に関しても,その研究成果を国際学会で発表し,論文の形でまとめた。これまでにない分析方法による包括的な研究という点で優れたものである。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)上越市英語教員授業力向上研修会講師, (2)9月〜10月:本学公開講座「英語指導と協同学習」講師
◎社会への寄与等
 毎年,上越教育委員会からの依頼で授業力向上研修(中学校英語)の講師を務めている。また,英語教育に関する学会において運営委員や紀要編集委員(査読委員を含む)を務めている。さらに,英語教育(英語指導)に関する公開講座の講師を務め,20人ほど(高校英語教師,中学英語教師,社会人)が参加した。
 

野 地 美 幸(准教授)
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】(1)平成22年12月:『日本人英語学習者のN-N複合語の獲得について』(共著) 上越英語研究、第11号
発】(1)平成22年6月:『日本語児による目的語位置に「だけ」を含む否定文の解釈』(単) 日本言語学会
学会活動への参加状況
(1)6月19日〜20日 日本言語学会出席, (2)上越英語教育学会大会運営
在外研究の状況
(1)9月1日〜12月31日:ハワイ大学(アメリカ)で客員研究者としてL2日本語の多重主格構文・主格目的語構文の獲得について研究を行った
 

ブラウン・アイヴァン・バーナード(特任講師)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
 学部新入生の大部分は,中・高等学校で学習した英語の知識を実際のコミュニケーションに使う機会が不足しており,自発的な会話ができない。
 まず基本フレーズを復習,活用方法を練習し,学生が自分の経験や意見をペア及びグループ内で発表した。そして学生は,成績評価の対象となる発表に向け,好きな話題を選びプレゼンテーションの準備をした。
将来,中学校で英語を教えたいと考えている学部二年生以上の学生の中で,まだ自分の英会話力に自信のない学生向けに,英語コミュニケーション(会話)の選択科目で,集中的な会話活動を行った。まず,学生が毎回同じ友達グループで同じ様な会話にならないよう,学生同士の会話グループ・メンバーを3週間ごとに変えたり,更に,会話を録音し,分析し,感想文や上達目標についてレポートを書かせたりした。
大学院の現代英語特論では,院生は英語で学校教育,社会言語学及び世界英語の多様性といった話題について私が書いた英語の文章を読み,ペアー及びグループ・ディスカションを通してその話題に関する知識を増やした。後半では,ディベート・プロジェクトを行った。学理的な英語を練習する機会が多く,非常に活発で刺激的な授業になった。
 現代英語演習では,大学院生がアカデミック・ライティング力の上達を目標とし,授業活動,自習や小論を積極的に,一所懸命に取り組んだため,非常に活発で刺激的な授業になった。プロセス・ライティング・アプローチを通し,院生は内容深く正式な小論を書くことが出来た。最後に学生の達成感のために,院生が書いた英語小論文を集め,雑誌を作って学級で配った。
【観点2】教育の達成状況
 学部生:多数の学生が英語コミュニケーション力に深く役に立つ英会話活動及び英語プレゼンテーション活動の経験をし,英語コミュニケーションというプロセスの意味をより深く理解し,どうやって実際の英語コミュニケーションの力を強化するかを効果的に考えるようになった。
 大学院生:英語ライティング,プレゼンテーション及びディスカションの過程で学生の英作文の質が全体的に上達し,質の高い論理的な英語で,興味深い見解を伝えられるようになった。
研究指導
【観点1】学部
 4年生の卒業論文に関する研究資料(英語版のアンケートなど)と卒業論文の英語要約文を指導した。
【観点2】大学院
 研究資料及び教育実習資料,卒業論文の英語の内容を確認し,適切な英文表現を細かく指導した。
その他の教育活動
・海外教育(特別)研究A(オーストラリアのウェストミンスター校)での教育交流会・教育実習の参加学生を対象に,クラスルーム・イングリッシュ及びホームステイ・イングリッシュの授業を行った。学生の教育実習のための授業内容を指導し,学生が準備した授業内容の英語を校正し,学生の発音参考のためにモデルスピーチを録音し与えた。その教育実習の授業のリハーサルに参加し,英語での説明及び資料にフィードバックをした。その教育実習は非常に効果的であった。
・附属小学校研究会の外国語活動との協力
・附属中学校研究会の英語の授業
特色ある点及び今後の検討課題等
 日本の学生は人前で自分の意見を発表したり他の人の意見に対して自分の意見を述べるという経験が乏しいため,これから教員になろうという学生の将来を踏まえ,なるべく発表の機会を与えた。今後は,学部生もより積極的に英会話できるよう,クラスルーム・イングリッシュ及びコミュニケーション方略をさらに細かく指導する予定である。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】(1)平成23年2月:『Exposure to Representations of Cultures in English Syllabus Content and its Motivational Influence on University EFL Students in Japan』(単著) 上越教育大学研究紀要 第30巻 (153-165頁)
発】(1)平成22年5月:『I Bring this House to Order! - Debates and Sociolinguistics for Graduate English Majors』(単) 東北アジア言語教育学会(NEAR)2010
(2)平成22年11月:『The Effects of Teaching Conversational Strategies』(単) 全国語学教育学会  第36回年次国際大会教材展示会
学会活動への参加状況
(1)平成22年7月3日:上越英語教育学会第15回大会出席
◎特色・強調点等
 Newsletterの巻頭エッセイ:Ivan Brown (2010年12月):「Senses and Reminiscences」「上越教育学会通信」第4巻(pp.1-3)「Brown 先生の巻頭エッセイを読み,詩的な美しさ,優美さを感じたのは私だけではないと思います。Brown 先生ご自身の幼少期からの外国語との接点を,流れるような文体と選び抜いた語彙で描写してくださった今回のエッセイを最後まで一気に読んでしまいました。」
(編集委員:飯島博之先生)
 2010年3月,イギリス・ロンドン大学で出席した多言語で育った児童に関する学会の報告Newsletter:Ivan Brown (2010年):「Bringing Up Bilingual and Multilingual Children」「バイリンガル通信」第19巻1号(pp.4-6)東京:全国語学教育学会
 中学校における英語教育に関する研究・実践発表に出席した。
 平成22年10月〜平成23年2月:協同出版受託研究の担当教員 担当者:佐藤芳徳副学長 英語の試験問題についての研究を行った。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)平成22年度糸魚川市立中学校の大学訪問との協力