6 附属施設等
 
(6)特別支援教育実践研究センター
@ 特別支援教育実践研究センター
ア 設置の趣旨(目的)及び組織
特別支援教育実践研究センターは,「特別支援教育における実践的な教育及びその研究の推進を図るとともに,特別支援教育諸学校教員の研修を行うこと」を設置目的にしており,臨床(教育臨床,教育相談),研究,研修(指導者研修,教材・教具の開発)の3部門5領域の機能を有する。
平成23年度から特別支援教育コースに所属する教員はすべて特別支援教育実践研究センター兼務教員となり,一体となって事業を推進することになった。構成員は大庭重治(教授:センター長),我妻敏博(教授),河合 康(教授:1月1日昇任),齋藤一雄(教授),土谷良巳(教授),笠原芳隆(准教授),葉石光一(准教授),藤井和子(准教授),村中智彦(講師),八島 猛(講師),小林優子(助教)である。
イ 運営・活動の状況
臨床活動では,地域の障害のある子どもの教育診断,発達援助,日常生活の指導・援助について,保護者や学校等の担当者などを対象に,面接相談や各種検査,継続指導,経過観察を行った。この教育相談活動においては,センター教員の指導のもとに,特別支援教育コースの大学院生を含めたチームにより,発達,心理,知覚・認知,運動,コミュニケーション・言語,視覚,聴覚などの検査から総合的な教育診断を行い,診断結果に基づいて障害のある子どもの早期発見と療育指導などを行った。また,障害のある子どもに関わる人々の環境の調整,地域の医療・相談・教育機関への紹介やケースワークも実施した。
教育活動では,特別支援教育コースの授業「教育臨床実習」及び「応用教育臨床実習」(視覚障害,聴覚障害,知的障害,肢体不自由,病弱,重複障害,言語障害,発達障害の8障害に関して行う)を前述の臨床活動と関連づけて多くの部分を本センターで実施し,週あたり合計28コマの授業を行った。この教育臨床実習では,本センターに来所する障害のある子どもの検査・教育的診断,教育プログラムの作成,指導,評価について実習することにより,障害のある子どもの検査・教育的診断法,指導法,評価法に関する原理と技術を指導している。また,個別の臨床の都度,カンファレンスを実施し,VTR記録等を用いた臨床実践場面の分析やコンピュータによるデータの処理・管理,言語援助機器や視覚教材,コンピュータを用いた指導法についても取り組んでいる。また,研修室において,特別支援教育研究法,情緒障害教育総論,重複障害教育総論,言語障害教育総論等の講義を実施した。また,大学院の授業科目である「実践場面分析演習:特別支援教育」では,地域の特別支援学校の協力の下,児童・生徒の実態把握や授業の実施,授業分析等を行うが,VTR記録等を用いた臨床実践場面の分析やコンピュータによるデータの処理に活用した。その他,授業科目「障害児心理・生理検査法」において,本センターにある教材や検査用具,施設設備を活用し,多様な検査法や心理学実験を実施した。
研究活動では,センター兼務教員が行っている研究プロジェクトが,科学研究費採択事業3件,学内研究プロジェクト5件であり,その他に障害のある子どもの教育実践に関する総合的な研究成果について,上越教育大学特別支援教育実践研究センター紀要第18巻において発表した(平成24年3月刊行)。また,本巻に掲載された論文の電子ファイルを本センターホームページおよび上越教育大学リポジトリに公開した。
研修活動では,特別支援教育において指導的立場にある現職教員,実践者,研究者,福祉関係施設の指導者を講師として招きセンターセミナーを実施した。センターセミナーは,地域の特別支援教育関係者への専門的知識や内外の最新情報の普及・啓発による地域貢献的役割の他に,特別支援教育コース大学院生に対し,大学院のカリキュラムを超えた幅広い知識や情報の獲得を目的としている。平成23年度は,第81回及び第82回センターセミナーを開催し,第81回は関西学院大学松見淳子教授を講師に招き「学校教育におけるエビデンスに基づいた学習支援―臨床心理学におけるサイエンティスト・プラクティショナー・モデルの観点から―」(平成23年10月29日(土):参加者87名),第82回は駒澤大学桐原宏行教授を講師に招き「障害者に対する就労支援の意義と課題」(平成23年12月18日(日):参加者83名)であった。又,本センターを会場として新潟県認定講習・教員免許状更新講習等を開催した。
地域支援・連携活動では,センター兼務教員が行った地域貢献事業(大学プロジェクト)が2件あり,その他に新潟県内各特別支援学校評議員,新潟県特別支援学校教職員研修会講師等の活動,及び外部機関に対しセンターが所有する検査用具の貸出を随時行った。
ウ 優れた点及び今後の検討課題等
当センターで行っている臨床活動は教育活動とも密接に関わっており,これにより特別支援教育コースの大学院生の実践的指導力を培うことに直結している。具体的には教育相談のため来所する障害児・者の指導原理,技術を教員の指導のもとで習得することができる。また,研究活動においては教育相談によって得られた成果を国内外に発表している。
研修活動や地域支援・連携活動では,新潟県内における特別支援教育の専門機関として最新の知見を提供する役割を果たしている。今後は先述した諸活動をさらに発展させ,近隣の教育・行政・福祉等関連機関との連携を推進していくことが課題である。
A 特別支援教育実践研究センター運営委員会
ア 設置の趣旨(目的)及び組織
@) 組織設置の趣旨(目的)
特別支援教育実践研究センター運営委員会では,(1)特別支援教育実践研究センターの運営に関する事項,(2)特別支援教育における教育実践の在り方の研究及び具体的指導技術の開発に関する事項,(3)特別支援教育における教育実践の企画及び運営に関する事項,(4)学生の実践指導に関する事項,(5)その他特別支援教育実践研究センター長が必要と認めた事項を審議する。
A) 組織の構成及び構成員等
平成23年度特別支援教育実践研究センター運営委員会構成員は,センター兼務教員11名並びに心理教育相談室の教授1名,学務部長である。
イ 運営・活動の状況
@) 委員会等の開催状況
例年,特別支援教育実践研究センター運営委員会を年2回開催している。今年度は第1回同運営委員会を平成23年5月18日(水),第2回同運営委員会を平成23年12月21日(水)に開催した。
A) 審議された主な事項
第1回同運営委員会では,平成22年度事業報告,同決算報告,平成23年度事業計画,同予算計画,平成23年度紀要編集委員の選出および編集幹事の委嘱について協議した。また,第2回同運営委員会では平成24年度予算要求,センター規則改正,センター運営委員会規程改正について協議し,平成23・24年度施設等に関する改善・改修およびセンターセミナーについて報告があった。
B) 重点的に取り組んだ課題や改善事項及び前年度の検討課題への取組状況等
前年度より検討されていた特別支援教育実践研究センターと地域の関係諸機関との協働的課題解決システムの構築や大学のセンター的機能を確立するための将来構想の策定について重点的に取り組み,平成25年度概算要求特別経費(プロジェクト分)について学内要求書を提出するとともに,新規計画事業の一部については平成24年度の学内配分予算案にも盛り込んだ。また,臨床・教育・研究・研修活動の拡充に必要な施設・設備の改善についても取り組んだ。