【自然系コース】
 

 
伊 達 文 治(教 授)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
担当する全ての授業において,学生・院生の固定的数学観から文化的数学観への変容を図る工夫を盛り込み,その実践に取り組んだ。授業の中で学生・院生の記述や発表等の活動を重視した。
【観点2】教育の達成状況
学生・院生に固定的数学観から文化的数学観への変容という大きな成果をみることができた。このことは,授業における記述や授業後のレポートなどによって確認できる。
研究指導
【観点1】学部
教育実習におけるゼミ生の研究授業は全て参観し,事後の検討をゼミ生と共に行った。
【観点2】大学院
修士論文を作成させるに当たって,課題意識を明確にさせ,実際学校に出向き,授業観察や調査を実施させ,事後の検討を重ねた。
その他の教育活動
・ 上越数学教育研究大会において指導助言を行ったり,上越市教育委員会の主催する中学校数学研修会において講演を行うなど,地域社会の教師と交流する中で互いの研修を深めた。
特色ある点及び今後の検討課題等
特色ある点は「授業」や「研究指導」に述べた通りである。今後の課題は,今回のような文化的数学観への変容を図る実践を,わが国の学校数学全体にも反映させていくことである。これから,そのための方策を探求し,実践をさらに深めていきたい。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
著】(1)平成23年4月:『高等学校 数学教育の展開』(共著) 聖文新社
論】(1)平成23年12月:『数学教育における文化的に関する研究』(単著) 日本数学教育学会誌 数学教育学論究 Vol.95,pp.5-14.
(2)平成23年11月:『和算の解義と証明幾何学の受容に関する考察』(単著) 日本数学教育学会第44回数学教育論文発表会論文集,pp.867-872.
(3)平成24年3月:『「わかりできる数学」から「考えつくる数学」への発展』(単著) 『上越数学教育研究』,第26号,pp.13-20.
(4)平成23年11月:『これからの学校数学に求められる新たな視点』(単著) 上越数学教育研究会研究大会冊子『研究と実践』,pp.2-7.
発】(1)平成23年6月:『明治初期における幾何教育に関する考察』(単) 全国数学教育学会第34回研究発表会
(2)平成23年11月:『和算の解義と証明幾何学の受容に関する考察』(単) 日本数学教育学会第44回数学教育論文発表会
学会活動への参加状況
(1)平成23年6月25日〜平成23年6月26日:全国数学教育学会第34回研究発表会出席, (2)平成23年7月31日〜平成23年8月2日:日本数学教育学会算数・数学教育研究全国大会出席, (3)平成23年11月12日〜平成23年11月13日:日本数学教育学会論文発表会出席, (4)平成24年1月21日〜平成24年1月22日:全国数学教育学会第35回研究発表会出席
◎特色・強調点等
本年度の研究において,教育基盤の見直しにとって不可欠な「数学教育における文化的価値」を考究し,文化的価値に根ざす教育実践を企画・評価する枠組みを開発して,学校数学の基盤を明確にする取組を前進させることができたと考える。今後もこの研究をさらに進めていき,その成果を学校教育にはもちろん,大学教育・大学院教育にも反映させていきたいと考えている。 
 
<社会との連携>
◎社会への寄与等
上越数学教育研究大会において指導助言を行ったり,上越市教育委員会の主催する中学校数学研修会において講演を行うなど,地域社会の教師と交流する中で互いの研修を深め,教育研究向上に寄与できたと考える。
 

 
中 川   仁(教 授)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
小学校,中学校,高校における単元との関連を明らかにし,目的を明確にすることを心がけた。板書の量とスピード,適切な演習問題を出すこと についても留意した。
【観点2】教育の達成状況
学生は意欲的に授業に取り組んでいたことが,試験結果からもわかる。
研究指導
【観点1】学部
3年生のゼミでは,三次方程式,対称多項式,判別式について,ガロア理論を学ぶ上での基礎本的なことを習得してもらうことができた。
4年生のゼミでは,テキストとして用いた整数論に関する入門書をほぼ読み終えることができ,中学校の数学教員に要求される十分な数学的素養を 身につけてもらうことができた。
【観点2】大学院
整数論に関して各自が深く学ぶことができ,中学校,高等学校の数学教員として基本的な数学的素養を身につけてもらうことができた。
 
<研究活動>
学会活動への参加状況
(1)平成23年10月1日:日本数学会秋季総合分科会出席出席, (2)平成24年3月29日:日本数学会年会出席出席
◎特色・強調点等
(1)新潟県数学教育会 会長 (2)上越数学教育研究会 会長 (3)上越地区高等学校数学教育研究会 顧問
 

 
松 本 健 吾(教 授)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
本学の学生は基礎学力が不足している。普段から学生の基礎的な学力がないという前提で,教壇に立っている。また,出席をとらないと出席率が低下することから,学生の学習は自分のためであることを理解させ,学習への自覚を持たせる必要がある。
このような人たちに教員になる資質があるか疑問であり,毎日学習する習慣が殆どない学生がもし教員になったとしても良い先生になるとは思えない。基礎学力が不足している学生に,これからどのように教育してゆけば良いのか,暗中模索の状態が続いている。
成績評価においては,定期試験の点数をそのまま評価点とすると,殆どの受講生が不合格になってしまうので,それ以外の要素も考慮し,総合的に判断するなど工夫して成績評価をおこなった。
【観点2】教育の達成状況
免P生(教育職員免許取得プログラム受講生)は高等学校の1,2年次で習う数学のみならず,中には中学校の数学も良くわかっていない人も多く,学部生同様に学習内容を理解させるために苦労をしている。
大学院入学時にすでにこのような課題を抱えているため,入学以前の学習状況の問題とも関係するが,学部生とも併せて,本学での初年次教育をどうするかという課題を投げかけているとも言える。したがって教育の達成状況を考える以前に,学生に基礎学力がないという大きな問題に直面している。
研究指導
【観点1】学部
学部生には研究を行う以前に学力レベルをあげることに終始している。
【観点2】大学院
大学院生の方も,学部生と大差がないため同様の課題を抱えている。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】(1)平成23年1月:『A class of simple C*-algebras arising from non-sofic subshifts』(単著) Ergodic Theory and Dynamical systems vol 31 pp.459-482
(2)平成23年1月:『Ergodic Properties and KMS Conditions on C*-Symbolic Dynamical Systems』(単著) Documenta Mathematica vol 16 pp.133-175
(3)平成23年1月:『C*−algebras arising from Dyck systems of topological Markov chains』(単著) Mathematica Skandinavica vol 109 pp.31-54
(4)平成23年1月:『Zeta functions and topological entropy of the markov Dyck shifts』(共著) Munster Journal of Mathematics vol 4 pp.171-183
発】(1)平成23年3月:『タイルばりの作用からできるC*−環とそのK−群公式について』(単) 日本数学会
(2)平成24年3月:『位相的マアルコフシフトの軌道同型類によるCuntz−Krieger 環の分類について』(単) 日本数学会
学会活動への参加状況
(1)平成23年9月28日〜平成23年9月30日:日本数学会出席, (2)平成24年3月22日〜平成23年3月24日:日本数学会出席
◎特色・強調点等
今回出版された学術論文は,すべて前職の横浜市立大学在職中に研究し投稿されたものであり,上越教育大に着任してから研究したものではない(数学の場合出版に時間がかかる)。
残念ながら本学に着任してからは,会議,雑用,授業,セミナー,のあまりの多さに全く研究ができなくなった。
したがって,昨年度の研究面では,自分自身の評価は0点である。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)教員免許状更新講習(上越教育大学)
(2)国大協北陸地区数学部門会議開催者(一般社団法人 国立大学協会)
 

 
斎 藤 敏 夫(准教授)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
学部1年生全員が受講することになっている「算数」では,次のようにして大人数の受講生に対応した。まず,算数が苦手な学生でも教壇に立ったときに使えるような話題を専門的な立場から毎回ひとつは提供することにより学生の学習意欲を促した,次に,ほぼ毎時間ごとに資料となる補助教材を配布・活用することで,学生が「理解する」ために必要な時間を確保することを狙った。その他,数学コースの学生に対する授業でも難易度の違いはあれど基本的には上述の2つを柱とした授業を展開した。特に「算数」の授業では改善の余地が大いにあることが判明したので,今後はこれを基盤としてより良いものにしていきたい。
【観点2】教育の達成状況
私が直接的に教育に携わった学生はまだ在学中であるため,まだ達成状況を自己点検することはできない。
研究指導
【観点1】学部
セミナーでは数学書を輪読し,順番に発表者が黒板を用いて他者へ解説を行うという形式を採用している。これにより,数学書を理解するための数学知識が養われることはもちろんのこと,その内容を第三者に伝える術をも修得できる。また,このセミナー形式では聴講者がいつでも自由に質問を投げかけることができるようにしている。発表者は質問を正確に把握し,瞬時に回答することも要求される。これらはすべて教員としては必要不可欠な資質であるので,本形式により教育実践力を養うことができる。
【観点2】大学院
セミナーでは専門書を精読し,順番に発表者が黒板を用いて他者へ解説を行うという形式を採用している。これにより,専門書を理解するための高度な数学知識が養われることはもちろんのこと,その高度な内容を第三者に伝える術をも修得できる。また,このセミナー形式では聴講者がいつでも自由に質問を投げかけることができるようにしている。発表者は質問を正確に把握し,瞬時に回答することも要求される。これらはすべて教員としては必要不可欠な資質であるので,本形式により高度な教育実践力を養うことができる
その他の教育活動
・ 教育実習における研究授業では,学生が自身の授業を第三者の視点から振り返ることができるように配慮した。
・ 具体的には,授業観察中に気付いた内容(数学的な不適切発言・板書ミス・子どもの反応等)を学生が作成した指導案に事細かく書き込み,授業終了後にそれを学生に手渡すことにした。
特色ある点及び今後の検討課題等
授業で高度な内容を扱うときに「目で見て理解」を促すために紙細工などを実際に作って披露した。これについては学生の反応も良かったので,これからも少しずつ増やしていきたい。また,学生の素朴な疑問に答える時間も十分に用意し,授業が一方的にならないように配慮した。ただし,80名を超える大人数に対する授業ではこれらがうまく機能しないことも多かったように感じている。これをいかに克服するかは今後の最重要検討課題である。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】(1)平成24年1月:『 On some classes of hyperbolic knots with the 3-sphere surgery』(共著) Topology Appl. 159
発】(1)平成24年1月:『Meridional destabilizing number and connected sums of knots』(単) The 8th East Asian School of Knots and Related Topics
学会活動への参加状況
(1)平成23年9月28日〜平成23年9月30日:日本数学会秋季総合分科会出席
◎特色・強調点等
本研究では,結び目理論および3次元多様体論の主要研究課題である「レンズ空間手術」と「Hempel距離」という,あまり深い関係がみられなかった両者を結び付けることを目指している。まだまだ完全解明には程遠いが,少なくとも互いになんらかの影響を与えていることは確認できた。これは本研究の発展性が十分に期待できることを保証する貴重な結果である。また,本研究対象でもある「結び目」は近年,DNAの位相構造に関する研究に応用されていることから,「結び目」について数学的理解を深めることが他分野へ貢献することにつながるという意味でも重要な研究といえる。
 

 
 橋   等(准教授)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
授業における受講者の人数によっては,適宜,小集団学習や討論などを取り入れている。成績評価ではテストとレポートを併用する場合もあり,多角的視座から受講者を評価することを試みている。
【観点2】教育の達成状況
卒業・修了生は全員,教職に就いた。7名の卒業・修了生のうち,正規採用が3名,常勤講師採用が4名である。
研究指導
【観点1】学部
我が国における算数・数学教育実践にはどの様な課題があるかを検討させ,学習指導要領の背景にある教育史的事実を捉えさせるとともに,我が国と諸外国の授業形態を比較文化的に考察させた上で,個々の学生の研究課題に応じた研究指導を行った。
【観点2】大学院
算数・数学教育に係る実践的な課題意識から出発させ,算数・数学教育学の専門的な研究を指導した。個々の院生の問題意識を洗練させた上で,院生の研究課題に応じて,国際的な研究の文献講読,臨床的な場である授業やインタビューを通してのデータ収集,データの解釈と考察を行わせた。
その他の教育活動
・ 教育実習に関してはゼミにおいて学生や院生の授業の事後指導を行っている。
特色ある点及び今後の検討課題等
広く学校教育に足場を置き,算数・数学教育に係る専門的な教員の育成を行っている。院生には時間の許す限り地域の算数・数学教育専門の先生方の研究会にも参加させ,実践的な視点をもたせるようにしている。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
著】(1)平成24年3月:『教科教育の理論と授業〈2〉理数編 (新教職教育講座)』(共著) 協同出版
(2)平成24年3月:『現実的な問題を解決するため考えとしてのグラフ理論』(単著) 上越教育大学(学部2年講義 「生活の中の科学」 テキスト)
論】(1)平成23年11月:『数学的知識の形成を捉えるための多角的視点とその理論的背景』(単著) 第44回数学教育論文発表会論文集,pp.969-974.
(2)平成23年3月:『学習指導要領における算数と数学の目標の変遷と資料の活用の内容について』(単著) 上越数学教育研究,27,pp.21-36.
学会活動への参加状況
(1)平成23年度:日本数学教育学会第93会全国算数・数学教育研究大会指導助言, (2)平成23年度:日本数学教育学会誌数学教育編集部幹事
 
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)上越数学教育研究会での講演(上越数学教育研究会)
(2)上越市立教育センター授業力向上研修「新学習指導要領に向けて」講師(上越市立教育センター)
(3)教員免許状更新講習(於上越)(上越教育大学)
(4)教員免許状更新講習(於長岡)(上越教育大学)
(5)Σ会での指導助言(Σ会)
(6)平成24年尚数会における指導助言(尚数会)
(7)教育実践研究査読協力者(上越教育大学学校教育実践研究センター)
 

 
宮 川   健(准教授)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
例年通り講義支援システムを利用して資料を事前配布する等,受講生が授業外での勉強に取り組みやすいように工夫した。毎年担当している授業では,受講生が課題により積極的に取り組めるように,前年度の授業内容に改良を加えた。成績評価の方法については,試験とレポートいずれの場合であっても,受講生の講義内容の習得状況をより的確に判断できるように工夫し,成績評価を行なった。
【観点2】教育の達成状況
平成23年度に卒業・修了したゼミ所属の学部生・大学院生は,正規・非正規,公立・私立,小・中・高の違いはあるものの,全員が教員として就職した。
研究指導
【観点1】学部
学部3年次においては,ゼミ生が算数・数学を専門とした教師になることを前提に,指導内容となる算数・数学について数学的側面と教育的側面の両者からより深く理解できるよう研究指導した。学部4年次においては,3年次で学習してきた内容をもとに教材を開発するなど,より実践的な指導を行なった。また,いずれの学年においても,自ら課題を見いだし自らもしくは仲間と協働して解決するといった主体性を育むことに配慮して指導した。
【観点2】大学院
大学院修士課程1,2,3年次の院生に対し研究指導を行なった。平成23年度に修士論文を提出する院生については,公立中学校の先生方にお願いし,授業等のデータを収集した。また,院生同士が,ゼミ内外で活発に意見を出し合い,協力して研究を進めることを促し,主体性・協調性を育むことに配慮した。
その他の教育活動
・ 学部・大学院(免P)ゼミ生の教育実習において,研究授業に参観(5回)するとともに適宜指導した。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】(1)平成23年5月:『フランスを起源とする数学教授学の「学」としての性格 : わが国における「学」としての数学教育研究をめざして』(単著) 日本数学教育学会誌 数学教育学論究 94, pp. 37-68
(2)平成23年7月:『フランスの高等学校数学教科書』(単著) 日本数学教育学会誌 数学教育, Vol.93, No.7, pp. 43-47
(3)平成23年11月:『フランス前期中等学校数学における証明の生態(2)〜国定カリキュラムの分析から〜』(単著) 第44回数学教育論文発表会論文集(第2巻), pp. 801-806
(4)平成23年11月:『手続きの説明の学習における伝言ゲームの可能性〜予備実験のデータ分析から〜』(共著) 第44回数学教育論文発表会論文集(第2巻), pp. 705-710
(5)平成23年11月:『フランス数学教授学の立場から見た「授業」の科学的探究』(単著) 第44回数学教育論文発表会論文集(第1巻), pp. 51-60
(6)平成24年1月:『フランスを起源とする数学教授学〜「学」としての性格〜』(単著) 全国数学教育学会誌 数学教育学研究, 18 (1), pp. 119-123
(7)平成24年1月:『Japanese "open lessons" as institutional context for developing mathematics teacher knowledge』(共著) Un panorama de la TAD, pp. 405-414
発】(1)平成23年5月:☆『フランスを起源とする数学教授学〜「学」としての性格〜』(単) 全国数学教育学会第34回研究発表会 招待講演
共同研究(幼,小,中,高等学校及び特別支援学校教員との共同研究を含む)の実施状況
(1)国際的な学習状況を改善するための,論証学習支援システムの多言語化 代表者:松岡 樂(信州大学教育学部) 科学研究費補助金(基盤B)
学会活動への参加状況
(1)平成23年11月12日〜平成23年11月13日:日本数学教育学会第44回数学教育論文発表会(上越教育大学)準備委員,出席, (2)平成23年8月21日〜平成23年8月28日:第16回数学教授学夏期講習会(フランス数学教授学研究協会)出席, (3)平成23年度:日本数学教育学会 渉外部幹事, (4)国際数学教育心理学会(PME)年会査読者, (5)日本科学教育学会 学会誌の査読
 
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)教員免許状更新講習「小学校算数」(上越教育大学)
(2)尚数会 助言者(上越地区中学校数学研究会足)
(3)学校教育実践研究センター紀要「教育実践研究」応募論文の査読(上越教育大学)
 

 
天 野 和 孝(教 授)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
教育方法については,できるだけ映像や実物標本を使用して講義した。また,実験では野外での観察実習を重視し,教育現場に出て,役立てるよう工夫した。
【観点2】教育の達成状況
授業評価はおおむね良い結果を示し,教育の目標は達成されたと考えられる。
研究指導
【観点1】学部
研究室に所属する学部生はいなかったが,地学セミナー I, IIで地学分野の学生の研究発表に対して指導や助言を行った。
【観点2】大学院
中学校の教育現場で使用できる地層・化石教材を開発するため,研究対象地域の野外調査を指導した。
特色ある点及び今後の検討課題等
高校で地学を履修していない学生が多いため,中学校〜高校理科総合Bレベルから復習し,興味を持てるよう工夫した。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】(1)平成23年5月:『Fossil Adulomya (Vesicomyidae, Bivalvia) from Japan』(共著) The Veliger, vol. 51, no. 2, p. 76-90
(2)平成23年6月:『Fossil records of extant vesicomyid species from Japan』(共著) Venus, vol. 69, nos. 3/4, p. 163-176
(3)平成23年11月:『2.75Maの寒冷化の日本海沿岸域の軟体動物群への影響:秋田県中部および北部の軟体動物群』(共著) 地質学雑誌 , vol. 117, no. 9, p. 508-522
(4)平成23年12月:『Giant fossil Acharax (Bivalvia: Solemyidae) from the Miocene of Japan』(共著) The Nautilus, vol. 125, no. 4, p. 207-212
発】(1)平成23年4月:『巨大なスエヒロキヌタレガイ属化石の産出層準』(共) 日本貝類学会平成23年度福岡大会
(2)平成23年7月:『富山県高岡市の鮮新統頭川層産貝化石群』(共) 日本古生物学会2011年年会
学会活動への参加状況
(1)平成23年度:日本古生物学会評議員, (2)平成23年4月16日〜平成23年4月17日:日本貝類学会平成23年度福岡大会出席, (3)平成23年7月1日〜平成23年7月3日:日本古生物学会2011年年会出席, (4)平成24年1月20日〜平成24年1月22日:日本古生物学会第161回例会出席
外国における研究の状況
(1)平成23年10月4日〜平成23年11月1日:ドイツ(ゲッチンゲン大学), ドイツの古生代およびアメリカ合衆国の新生代の化学合成群集の研究
(2)平成23年11月15日〜平成23年12月11日:イギリス(リーズ大学),イギリスのリーズ大学に保管されているキプロス島,南極およびスバルバード諸島の中生代の化学合成群集標本の検討
(3)平成24年1月24日〜平成24年2月28日:ニュージーランド(オークランド大学),ニュージーランド北島の新生代化学合成群集の研究
◎特色・強調点等
採択された科学研究費のテーマに沿い,サバティカル制度も利用して国内各地,ドイツ,イギリス,ニュージーランドの化学合成化石群集について検討した。その結果,シロウリガイ類の種構成と分布, 世界最大のスエヒロキヌタレガイ属化石の発見等の新知見を得た。一方,日本海の貝類群と気候変動の研究も継続して行い,275万年前の寒冷化の影響を明らかにした。それらの成果を国内学会で発表するとともに,日本古生物学会の評議員の一人として学会運営にも寄与した。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)上越市環境影響評価会議委員(上越市)
(2)糸魚川市博物館協議会委員(糸魚川市)
(3)上越市文化財調査審議会委員(上越市教育委員会)
(4)公開講座「理科野外観察指導実習F」(上越教育大学)
(5)教員免許状更新講習「理科教材」(上越教育大学)
◎社会への寄与等
全国レベルの学会である日本古生物学会の評議員 , 地方自治体の委員,公開講座,教員免許状更新講習の講師をつとめ,地域社会に貢献した。公開講座では県外からの一般市民の参加者があり,評価は高かった。
 

 
小 林 辰 至(教 授)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
理科のルーブリックに基づき,次の取り組みを行っている。学習指導要領の4区分の「生命」「地球」「エネルギー」「粒子」の内容を取り上げ,内容の理解を深めるとともに,児童の発達や興味・関心に応じた理科指導の実際と評価について講義と演習を行っている。具体的には,@野草約20種の観察とタンポポの継続観察を行う。A月の満ち欠けの継続観察を行い,月の満ち欠けが地球・太陽・月の位置関係で生じることをモデル教具の作成を通して理解する。C振り子の実験を取り上げ,仮説を立て実験・考察を行う過程を通して,仮説の立て方と振り子の等時性を理解する。D酸素の助燃性について,気体検知管を用いて確かめる実験を行う。E理科における問題解決のプロセス,科学の本質及び素朴概念等の構成主義学習論に基づく理科授業づくりや理科に特有な評価法について講義を行う。F小学校理科で用いる実験器具の操作方法の実習を行う等,小学校教員として理科指導を自信を持って行えるよう実践的指導力の育成に努めている。
【観点2】教育の達成状況
初等理科指導法の授業のFDの結果を例に挙げると,例えば「授業の方法」に関する質問項目のうち「話し方がわかりやすいか」について肯定的に回答したのは89.7%,「教え方は適切であったか」について肯定的に回答したのは88.5%であった。また,「授業の内容」に関する質問項目のうち「授業目標は明確であったか」について肯定的に回答したのは93.6%,「総合的にこの授業に満足しているか」について肯定的に回答したのは89.7%であった。以上の結果から,一定の成果をあげていると考えている。
研究指導
【観点1】学部
指導学生はいません。
【観点2】大学院
CSTとして県から派遣されている理科現職教員の修士論文の研究として,専門的な研究指導を行っている。具体的には,探究の技法として重要なプロセス・スキルズの観点から小・中学校理科教科書を分析させるとともに多変量解析を行い,観察・実験を類型化させた。さらに,類型ごとの効果的な指導方のあり方を提案的に検討させている。各類型は,探究の技法の下位項目と対応関係にあり,問題解決の能力を評価する観点として同時に示すことができる画期的な成果である。このような研究指導を受けることにより,現場復帰後は小・中学校の理科学習を小・中接続の観点から俯瞰的にとらえ,新潟県の理科指導者として,活躍することが期待される。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】(1)平成23年7月:『プロセス・スキルズの観点からみた観察・実験等の類型化―中学校理科教科書に掲載されている観察・実験等について―』(共著) 理科教育学研究,第52巻第1号,pp.107-119
(2)平成23年7月:『教員養成課程学生の自然事象への気づきを高める継続観察の効果に関する一考察』(共著) 理科教育学研究,第52巻第1号,pp.29-35
(3)平成23年11月:『理科教育における生命倫理のあり方とその意義―初等教員養成科目における「魚の解剖」の実践からの考察―』(共著) 理科教育学研究,第52巻第2号,pp.23-32
(4)平成24年3月:『プロセス・スキルズの観点からみた観察・実験等の類型化(2)―小学校理科教科書に掲載されている観察・実験等について―』(共著) 理科教育学研究,第52巻第3号,pp.179-190
(5)平成24年3月:『観察・実験を通した生命倫理教育の実践的研究―看護学科における「動物の発生(魚)」を例に―』(共著) 理科教育学研究,第52巻第3号,pp.23-31
学会活動への参加状況
(1)平成23年8月20日〜平成23年8月21日:日本理科教育学会第61回全国大会出席, (2)平成23年11月12日:日本理科教育学会北陸支部大会出席, (3)平成23年6月11日:日本科学教育学会研究会(北陸甲信越支部)出席
 
 

 
津 戸  秀(教 授)
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】(1)平成23年5月:『Auxin stimulates DWARF4 expression and brassinosteroid biosynthesis in Arabidopsis』(共著) The Plant Journal (Blackwell Publishing Ltd., The United Kingdom), vol. 66, no. 4, pp. 564-578.
(2)平成23年7月:『Rice CYP734s function as multisubstrate and multifunctional enzymes in brassinosteroid catabolism』(共著) The Plant Journal (Blackwell Publishing Ltd., The United Kingdom), vol. 67, no. 1, pp. 1-12.
(3)平成23年7月:『科学技術の進歩する方向についての生徒の認識を深める中学校における授業実践研究−振動力発電教材を取り入れたエネルギー学習を通して−』(共著) 理科教育学研究(日本理科教育学会),vol. 52, no. 1, pp. 37-46.
(4)平成24年3月:『ジグソーパズルを利用した魚の解剖学習に関する実践的研究』(共著) 日本教科教育学会誌(日本教科教育学会),vol. 34, no. 4, pp. 1-8.
(5)平成24年3月:『小学校3年理科「ゴムの力」に利用できる教材開発に関する実践研究』(共著) 教材学研究(日本教材学会),vol. 23, pp. 163-172.
◎特色・強調点等
植物生長ホルモンに関する研究を国内外の研究者と共同で継続して行っている。本年度の研究成果として,国際的に評価の確立されている外国のジャーナルに論文2編が掲載された。また,理科教育分野でも教材開発に関する実践的研究について,国内の研究者や現場の教員との共同研究を継続している。本年度の研究成果として,論文3編が国内の学会誌に掲載された。
 

 
中 村 雅 彦(教 授)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
専門分野が動物生態学のため,机上の説明だけでなく,緑の小道や弁天池・雨池など野外にでることにより,身近な生物を対象とすることで学生に動機付けを与え,内容の理解を深める工夫を行った。単に授業に出ているだけを成績評価の対象とせず,授業時間内における個人の具体的な行動達成を成績評価の対象とした。
【観点2】教育の達成状況
院生3名の修士論文の指導を行った。うち2名は教職につき,1名は一般企業に就職した。おおむね良好と考える。
研究指導
【観点1】学部
学部授業では,教科書や学習指導要領に基づき,内容を精選し,野外に出て身近な生物を対象とすることで,内容の理解を高めた。
【観点2】大学院
大学院授業では,現職院生の要望と最新の研究成果を取り組んで学習効果や内容の理解を深める工夫を行った。
その他の教育活動
・ 上越保健医療福祉専門学校の非常勤講師として生命科学を前期に担当した。
・ マダガスカル共和国のアンタナナリブ大学理学部動物学科に所属する大学院生の修士論文審査会に副査として加わり,鳥類の生態に関する修士論文の審査を行った。
特色ある点及び今後の検討課題等
上越教育大学は,自然豊かな立地条件にある。学部・大学院生の授業では,上越教育大学に生息する身近な生物を対象にすることで,受講生が学校現場で児童・生徒に即戦的な指導ができるように配慮した授業及び指導を行った。本年度は,私の授業・実習で使うフィールドガイドとして「上越教育大学の動物」を作成した。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
著】(1)平成24年3月:『フィールドガイド 上越教育大学の動物』(単著) 北越出版
論】(1)平成23年9月:『Spermiophagy in the Male Reproductive Tract of Some Passerine Birds』(共著) Zoological Science, Vol.28: 689-693
(2)平成24年3月:『Female mate choice based on territory quality in barn swallows』(共著) Journal of Ethology, Vol.30 (1): 143-150
(3)平成23年7月:『高田公園における鳥類群集−20年前との比較−』(共著) 新潟県生物教育研究会誌 第46号,1-7頁
発】(1)平成23年7月:『鳥類の共同的一妻多夫と多夫多妻:種間比較からの検討』(単) 日本進化学会
他】(1)平成24年3月:『Ecological Radiation and Social Evolution of Malagasy Endemic Vangas (Aves: Vangidae)』(ed. Masahiko Nakamura) 科研報告書
国際研究プロジェクトへの参加状況
(1)マダガスカル特産鳥類オオハシモズ類の適応放散と社会進化 代表者:中村雅彦(上越教育大学) 日本学術振興会科学研究費補助金(マダガスカル・アンタナナリブ大学との共同研究)
学会活動への参加状況
(1)平成23年度:日本鳥学会英文誌編集委員長, (2)平成23年度:日本生態学会生態学教育専門部会, (3)平成23年9月16日〜平成23年9月19日:日本鳥学会2011年大会出席
外国における研究の状況
(1)平成23年9月25日〜平成23年11月28日:マダガスカルにてマダガスカル特産鳥類オオハシモズ類の生態調査を実施
◎特色・強調点等
科学研究費補助金を受け,マダガスカル島に生息するオオハシモズ類の生態を研究している。オオハシモズ類はマダガスカル固有の鳥類で,研究例がきわめて少なく,我々の研究は生態及び進化の面から世界的に注目されている。上越教育大学のキャンパスで行ってきた研究活動の成果として「フィールドガイド 上越教育大学の動物」を執筆した。この本は,上越教育大学の教職員,学生,大学の林を利用する子どもとその指導者の先生,そして上越市民に上越教育大学の豊かな自然を知ってもらうために制作した。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)長野県文化財保護審議会委員(長野県)
(2)長野県環境影響評価技術委員会委員(長野県)
(3)新潟県上越市春日小学校親子探鳥会講師(上越市立春日小学校)
(4)上越鳥の会の代表
(5)農作物野生鳥獣被害対策アドバイザー(農林水産省)
(6)国営土地改良事業「関川二期地区」環境に係わる情報協議会委員(北陸農政局)
(7)公開講座「理科野外観察指導実習A」(上越教育大学)
(8)公開講座「理科野外観察指導実習B」(上越教育大学)
◎社会への寄与等
各種委員会の委員,アドバイザー,講師として生物,特に鳥類の保護,保全施策,生態の啓蒙に係わり,社会の教育・研究に関するニーズに貢献した。
 

 
大 場 孝 信(准教授)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
講義は試験で評価し,実験は一人一人実験をやってもらうか,発表をしてもらって評価している。
教科書は使っていないが,必要な図やデータはプリントして配っている。教育現場で使える実験と大学を卒業したといえる実験を経験できるようにしている。
特に実験では手順をチェックし,自分で体験することを重視している。このため実験で休んだ場合はレポートで置き換えることはせず,自分で実験や観察をさせることとしている。
【観点2】教育の達成状況
大学院に進学するか,教員採用試験を受けている。入学した時の思いを維持継続させている。
研究指導
【観点1】学部
毎週1回朝と夕方セミナーをおこなっている。朝は一般地質学を読み,卒論,修論を書くための基礎力をやしなっている。また,夕方のセミナーでは学術雑誌の論文紹介と実験結果の発表をおこない。内容についてゼミ生全員で問題点を検討し,お互いの見識を深めている。またお互いに意見を言うことで討論の仕方を練習している。
早稲田大学地球・環境資源理工学部と合同ゼミを年1回おこない,お互いの研究の紹介をおこなって,違う分野との研究交流をおこなっている。
【観点2】大学院
学部生と合同でセミナーをおこなっており,目的は学部と同じである。
その他の教育活動
・ 新潟工科大学での非常勤講師
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】(1)平成24年2月:『新潟県胎内市持倉産水晶の成因』(共著) 上越教育大学研究紀要 第31巻,pp.245-252
業】(1)平成24年3月:『川原と海岸の岩石図鑑(新潟県上越地域)』(単著) 新潟日報事業社
学会活動への参加状況
(1)平成23年9月10日:日本鉱物科学学会・茨城大会出席
 
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)新潟市東区小・中学校教頭合同研修会講師(新潟市東区小・中学校教頭)
(2)清里,星のふるさと館で講演
(3)いきいきわくわく科学賞審査委員(新潟県教育センター)
(4)公開講座「理科野外観察指導実習G」(火山とマグマ)
◎社会への寄与等
BSNテレビ番組のNスタ新潟のニュース番組の中で,櫛池隕石について専門家の立場から30秒ほどのコメントをおこなった。
 

 
小 川   茂(准教授)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
授業では,簡単な実験と観察をまじえながら講義を行った。特に,大学院の「生物教材研究」では,細胞学研究室所属の学生が開発してきた教材を実際に受講生に使用してもらい,教材をどの単元でどのように活用するか,考察させた。学部の一部の授業では適宜小テストを行い,知識の定着をみるとともに,その結果を授業の改善にむすびつけた。
【観点2】教育の達成状況
研究室に配属された大学院生(1名)は新潟県の公立高等学校の臨時教員として採用された。この結果が教育の効果によるものかどうかは判断できない。
研究指導
【観点1】学部
学部3年(2名)の研究指導を行った。研究テーマはそれぞれ「中学校理科における根の働きの教材化に関する研究」と「高校生物における重複受精の教材化に関する研究」である。この研究指導をとおして,理科の教員として必要な実験器具の使用法,試薬の取り扱い方,植物の栽培法,顕微鏡操作法などを習得するよう指導した。
【観点2】大学院
大学院生2名の研究指導を行った。研究テーマはそれぞれ「花粉の雄原細胞の発生に関する細胞学的研究」と「細菌類の教材化に関する研究」である。これらの研究をとおして,理科の教員として必要な実験器具の使用法,試薬の取り扱い方,などとともに研究の進め方,研究論文のまとめ方を習得するよう指導した。
その他の教育活動
・ 附属小学校と直江津南小学校における教育実習生(各1名)の教育指導をおこなった。
・ ワクワク大学デーの講義を1コマ担当した(参加生徒は10名)。
特色ある点及び今後の検討課題等
授業では専門性の高い内容だけではなく,専門の内容をどのように教育現場で活用するかを意識して講義をおこなっている。学部の実験では,中学校や高等学校で行われている実験・観察テーマを中心にとりあげ,その実験・観察において失敗しやすい点や注意点を中心に,指導をおこなっている。専門の内容を教育と結びつけて指導していることが,教育活動の特色ある点であると思われる。実践力をいかにつけるかまでは指導していない。今後の課題である。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】(1)平成23年11月:『高校生物の重複受精に関する授業への活用にむけた中性赤を用いた生体染色法による雄原細胞と精細胞の挙動の観察』(共著) 生物教育, vol. 52, no.3, pp. 84-95.
発】(1)平成23年9月:『花粉雄原細胞の“droplets-sheath”についての細胞学的検討』(共) 日本植物学会第75回大会(東京)
学会活動への参加状況
(1)平成23年9月17日〜平成23年9月19日:日本植物学会第75回大会(東京)出席
◎特色・強調点等
研究の特色は,専門性の高い研究をとおして得られた成果を教育現場にいかに活用するかにある。今年度「生物教育」に掲載された論文は,高等植物の重複受精を教える高校生物の授業において新しい実験・観察を提案しており,従来にない独創性の高い成果であると考える。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)12月:出前講座:「生体染色法による花粉管内の雄原細胞の観察」(石川県教育研究会生物部会)
(2)8月:教員免許状更新講習(上越教育大学教育免許状更新講習実施委員会)
◎社会への寄与等
今年度は,教員免許状更新講習と出前講座をおこなった。出前講座では石川県の高校生と引率教員を対象に花粉の発芽についての講義,実験・観察,質疑・応答をおこなった。この講座により,わずかではあるが,大学と高校の授業の連携に寄与できたのではないかと考える。
 

 
定 本 嘉 郎(准教授)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
小・中・高の教員となっても観察・実験で活躍できるよう物理学に関する実験教材を使った授業を行った。
成績評価はシラバスに記載の通りである。
【観点2】教育の達成状況
大部分の学生の理解は向上している。
研究指導
【観点1】学部
それぞれの学部学生が強い興味を抱いている次の物理教材の開発と授業実践に関する指導を行った。
1)電圧・電流の理解を促す研究。
2)MIF誤概念を解消するための研究。
【観点2】大学院
それぞれの大学院生が強い興味を抱いている次の物理教材の開発と授業実践に関する指導を行った。
1)作用反作用教材に関する研究。
2)光教材に関する研究
3)磁気教材に関する研究。
4)圧力教材に関する研究。
その他の教育活動
・ 教育実習の研究授業において,当研究室所属の大学院生1名の指導を行った。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】(1)平成23年6月:『中学校における作用反作用の体験型授業実践』(共著) 物理教育, Vol. 59, No2, pp. 96-100
(2)平成23年7月:『Electrostatic Probes for Studying Transport Properties in Tokamak Plasmas』(共著) Contrib. Plasma Phys.,Vol.51, No. 6, pp. 567-573
(3)平成23年9月:『力の誤概念を解消する教材の開発と指導方法の改善』(共著) 物理教育, Vol.59, No.3, pp. 181-186
(4)平成24年3月:『「運動中の物体にはたらく力」の認識に関する実態調査−MIF素朴概念が高学年ほど増加していくことについて−』(共著) 科学教育研究, Vol.36, No. 1, pp. 53-60
業】(1)平成23年9月:『小学校の先生をめざす学生のための理科』(共著) 概算要求による特別プロジェクト「初等教育教員養成課程における科学的リテラシーの育成―感性と科学的素養に満ちた教員の養成―」の成果物
(2)平成23年5月:『極小磁場による球状プラズマの高周波加熱II』(共著) 平成22年度スペースプラズマ研究会論文集,CD-ROM
他】(1)平成23年4月:『真空館/各種真空管の展示,HPで紹介,冊子「真空館」の配布』 常時,図書館1階に展示。HPで紹介。
共同研究(幼,小,中,高等学校及び特別支援学校教員との共同研究を含む)の実施状況
(1)球状プラズマの高ベータ化とイオン加速の基礎研究 代表者:定本 嘉郎(上越教育大学) 
(2)レンズを通る光の道筋と像に関する教材開発と授業実践 代表者:定本 嘉郎(上越教育大学) 
(3)作用反作用に関する教材開発と授業実践 代表者: 定本 嘉郎(上越教育大学) 
(4)MIF素朴概念をなくす教材の開発と授業実践 代表者:定本嘉郎(上越教育大学) 
(5)ヘリオトロンJに於ける周辺計測と高周波加熱の研究 代表者:上原和也(宇宙航空研究開発機構) 
◎特色・強調点等
当研究室では,従来から児童・生徒が理解しづらい問題を取り上げ,理解を良くするための教材の開発と実践に取り組んでいる。
 
<社会との連携>
◎社会への寄与等
新規に開発した実験教材を新潟県や長野県の公立学校で授業実践し,教育現場へフィードバックさせる活動をしている。
 

 
濤 ア 智 佳(准教授)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
高校地学を履修していない学生が多いため、画像やムービー等を活用し、関心を高めるよう工夫した。また、上越清里星のふるさと館等公共施設を活用し、将来教員となった時に役に立つスキルを身につけさせるよう心がけた。
【観点2】教育の達成状況
概ね高評価を得ており、目的は達成されたと思われる。
研究指導
【観点1】学部
卒業研究のための指導とともに,教員としても役立つようなスキルを身につけさせるよう指導している。
【観点2】大学院
修士論文のための研究指導とともに,将来の糧となる経験を持てるような機会を積極的に与えている。
その他の教育活動
・ 附属中学において教育研究協議会の指導者を務めた。
特色ある点及び今後の検討課題等
学生の自主性を重視し,自ら学び行動できる学生の育成を目指している。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】(1)平成24年2月:『13CO(J=1-0) On-the-fly Mapping of the Giant HII Region NGC 604: Variation in Molecular Gas Density and Temperature due to Sequential Star Formation』(共著) Publications of the Astronomical Society of Japan, Vol.64, No.1, Article No.3
(2)平成23年12月:『NRO M33 All-Disk Survey of Giant Molecular Clouds (NRO MAGiC). I. H I to H2 Transition』(共著) Publications of the Astronomical Society of Japan, Vol.63, No.6, pp.1171-1179
(3)平成23年10月:『Temperature Variations of Cold Dust in the Triangulum Galaxy M 33』(共著) Publications of the Astronomical Society of Japan, Vol.63, No.5, pp.1139-1150
(4)平成23年8月:『Giant Molecular Clouds in the Spiral Arm of IC 342』(共著) The Astrophysical Journal, Volume 737, Issue 1, article id. 40
他】(1)平成23年12月:『報道発表/「隣」の銀河の星の材料、全貌の把握に成功』 キャンパスイノベーションセンター東京
学会活動への参加状況
(1)平成23年度:日本天文学会内地留学奨学金選考委員会
国内外の学術賞の受賞状況
(1)平成24年3月:日本天文学会欧文研究報告論文賞受賞(日本天文学会)『Nobeyama CO Atlas of Nearby Spiral Galaxies: Distribution of Molecular Gas in Barred and Nonbarred Spiral Galaxies』
◎特色・強調点等
銀河における星間物質と星の形成をテーマに観測的研究を行っている。特に今年度は、これまで数年にわたって行ってきたさんかく座銀河 M33の星間物質に関する研究が完成し、論文出版とともに報道発表も行った。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)公開講座「理科野外観察指導実習 I」
(2)上越市企業振興審議会委員
(3)新潟県環境審議会委員
◎社会への寄与等
地方自治体の委員や公開講座の講師をつとめ,地域社会に貢献した。
 

 
長谷川 敦 司(准教授)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
物理学の専門的な授業においては,導入部の演示実験を充実させるため,製作した斜面の模型やガリレオのレプリカを使うことにより,学生の興味を引き出すようにした。また,対話式の授業を試みて,学生が自分の頭で考える時間を多く取ることにより,覚える物理から考える物理への意識転換を図っている。
【観点2】教育の達成状況
成果としては,高校まで物理を履修している学生の理解は高まったようであるが,履修していない学生の理解度が不十分であった。配布したテキストにおける自習についても効果が不明のため、今後、改善する必要がある。
研究指導
【観点1】学部
学部3年生への指導は,基本的な物理の習得を中心に行った。具体的には,卒業研究のテーマに関連する電磁気学,光学のゼミに加え,光学実験の基礎についての指導を行った。これに加え,物理学の基礎として力学のゼミなども行った。
【観点2】大学院
論理的な思考過程の訓練も兼ねて,先端の研究を行わせている。課題の設定は行ったが,その後の実験の進め方については,学生の考えなども取り入れながら進めている。分光法などの専門的な実験の指導については,基礎から指導した。
特色ある点及び今後の検討課題等
専門的な知識の習得よりも,論理的な思考方法の訓練を行うように授業を行っている。演示実験を工夫することにより,学生に興味を持たせ,授業内容も小中学校で必要となる事項に絞って行っている。問題点としては,高校までの物理の知識により理解度に差が出ている点である。(試験の結果より)この点を改善し,文系出身者でも理解ができるような授業にしていく必要がある。
 
<研究活動>
学会活動への参加状況
(1)平成23年9月21日〜平成23年9月23日:日本物理学会秋季大会出席
◎特色・強調点等
平成22年度から新規で研究を立ち上げている。ナノ粒子の分光については,光学系のくみ上げが終了し,分光ができるようになった。また,生物の先生と共同して,草本類の道管液の流速の計測を分光を用いて行う研究を立ち上げた。この研究については,科研費に申請し,平成24年度から3年間の計画で採択された。
 

 
稲 田 結 美(講 師)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
受講生の多い授業については,体験活動や思考・表現する機会などを十分に取り入れ,受講生が受身的に聞くだけの講義とならないよう留意した。受講生の少ない授業についても,受講生が自ら思考し,活動できる場面を可能な限り設定し,受講生同士で意見交換できる時間を十分に確保した。成績評価については,毎回の授業における学生の取組状況を把握するために,十分に記述できるワークシートを用意し提出させて,学生の取組状況の評価及び次回の授業の改善へとつなげた。また,授業内容を正しく理解したかを探るためのレポート課題も複数回用意した。
【観点2】教育の達成状況
ワークシート及びレポートの記述から,受講生が講義内容について思考し,活動にも積極的に取り組んでいた様子がうかがえた。FDの授業評価も良好であった。
研究指導
【観点1】学部
実際の小・中学校の理科授業の参観を勧めたり,理科教育に関する先行研究や国際・国内大規模調査等を幅広く調べさせたりして,学生が児童・生徒の理科学習における問題点に気づき,解決すべき課題として自らの研究へと展開できるよう指導した。
【観点2】大学院
教育研究を行うにあたり重要となる先行研究の調査方法や学習者の認知的・情意的変容の調査方法に限らず,研究計画の立て方,資料の入手方法,調査依頼のやり方など,多岐に渡りゼミを通じて指導した。院生が自立して研究を遂行できるようになることを目指した。
その他の教育活動
・ 教育実習の研究授業において学生の指導を行った。
・ 教員採用試験直前講座(理科実験)の講師を担当した。
特色ある点及び今後の検討課題等
理科を専門としない学生でも小学校教員になれば理科を教えることになるため,理科実験に対する苦手意識を克服できるように,取り扱いの簡単な実験器具の操作から全員に体験させ,少し難しい観察・実験まで体験できる機会を多く取り入れるようにした。今後は,理科を専門とする学生に対して,より高度な理科指導力を育成することを目指し,学習者の関心・意欲を高め,理解を促すことのできる問題解決的な理科実験を学生自らが計画する場面を授業に導入したい。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
著】(1)平成24年3月:『新教職教育講座第6巻 教科教育の理論と授業U 理数編』(共著) 協同出版
論】(1)平成23年9月:『女子の物理学習に対する意識向上のための人体アプローチ』(単著) 物理教育,第59巻,第3号,165-170頁
(2)平成24年3月:『プロセス・スキルズの観点からみた観察・実験等の類型化(2)−小学校理科教科書に掲載されている観察・実験等について−』(共著) 理科教育学研究,Vol.52,No.3,179-190頁
発】(1)平成23年8月:『理科学習に対する女子の意識を改善する具体的方策―中学校「電流」単元に焦点をあてて―』(共) 日本理科教育学会第61回全国大会
(2)平成23年8月:『小・中学校理科教育における生命倫理の変遷とその意義』(共) 日本科学教育学会第35回年会
(3)平成23年11月:『初等教育教員養成課程学生の観察・実験に対する意識と課題―教職科目に導入した「観察・実験」講座の実践から―』(共) 平成23年度 日本理科教育学会北陸支部大会
学会活動への参加状況
(1)平成23年度:日本理科教育学会教育課程委員会委員, (2)平成23年6月11日:平成23年度第5回日本科学教育学会研究会出席, (3)平成23年8月20日〜平成23年8月21日:日本理科教育学会第61回全国大会出席, (4)平成23年11月12日:平成23年度日本理科教育学会北陸支部大会出席
◎特色・強調点等
「女子の理科学習促進」に関する研究を進めており,具体的な指導法及び教材を提案し,実際に中学校の理科授業において実践を通して評価する段階に到達した。研究成果を学会で発表したところ,多くの研究者に関心を寄せてもらうことができ,今後さらに注目される研究テーマであると期待される。加えて,小・中学校の教員に対して,この研究テーマを解説する機会にも恵まれ,多くの教員から賛同を得られ,共通の問題意識を持っていることを確認することができた。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)教科・領域別一斉研修会 中学校理科(上越市立教育センター)
(2)新潟県小学校教育研究会指定研究事業 理科研究大会(妙高市立新井小学校)
(3)第47回上越市児童生徒科学研究発表会(上越市立教育センター)
(4)第50回教職員理科研究発表会(上越科学技術教育研究会)
(5)平成23年度教員免許状更新講習「理科教材」(上越教育大学)
◎社会への寄与等
上越地域の小学校の研究会において授業を参観し,「言葉と体験を一体化させる理科・生活科の創造」というテーマで地域の多くの先生方と意見交換することができた。また,夏の自由研究(科学研究)の審査員や,教員の研修会等での講師をさせていただき,上越地域の先生方の理科教育への関心の高さを実感した。さらに,自身の研究テーマについても意見をいただき,今後実践的な研究に向けての協力をお願いすることができた。
 

 
下 村 博 志(講 師)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
授業ではプリントを用意するほか,資料の投影や必要に応じて実験の様子を投影した動画も活用した。
FDのほか,独自にアンケートを取るなどの方法で授業方法と内容の改善に努めている。
評価方法はシラバスに記載するほか,授業でも説明し適切な方法で実施した。
【観点2】教育の達成状況
本年度は修了者なし。臨時採用されていた修了者が教員採用試験合格(石川県小学校,臨時採用1年目),私立高校教員に採用されたことによる大学院中退者が1名生じた。
研究指導
【観点1】学部
学部生なし
【観点2】大学院
理科においては,「臨床的な実践力」の要素として,「教育内容の理解」や「実験実施能力」に含まれる。授業や研究指導において豊富に実験を取り入れることで,専門知識と実験能力を備えた理科教員の養成に努めている。また研究テーマとして学校現場での活用を目標とするものとし,学生の教育現場に対する理解がすすみ,教育に貢献できるように指導している。
その他の教育活動
・ ゼミ生の教育実習において,研究授業への出席,指導,実習受け入れ校への挨拶等を行った。
・ 附属小学校の研究会に参加した。
特色ある点及び今後の検討課題等
昨年度は大学院授業「化学教材研究」を初担当した。授業の実施場所を研究室とし,文献資料とインターネットを利用できる環境とすることで議論を深めることができた。教材の課題を見いだした後は,実験室で「魚類の体内でのタンパク質の消化」に関する実験を実施しレポートにまとめる活動を行った。
「物質化学実験」,「化学実験」の授業の他,学生への研究指導で実験を豊富に取り入れ,実験実施能力を備えた理科教員の養成に努めている。
学部学生積算分のなかに,配分指数として実験系授業への予算的な配慮があるようだが,そもそも絶対的な金額が足りない。実験系と非実験系を原則区別しない,という本学の予算配分の基本方針のもと,実験実施のコストをどうするかも近年の大きな課題の一つとなっている。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
発】(1)平成23年9月「炎色反応をデジタルカメラで計測する河川水および雨水中のNaの簡易分析法」(共)日本分析化学会年回発表
学会活動への参加状況
(1)9月 日本分析化学会関東支部新潟地区部会研究発表会出席, (2)日本分析化学会関東支部新潟地区部会幹事(地区部会ニュース編集)
 
<社会との連携>
◎社会への寄与等
教員採用試験問題の研究を行った。
 

 
谷   友 和(講 師)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
多くの学生が将来,教員を目指していることを踏まえて,小中高の教員として必要な知識をつけてもらえるように,授業の中で基礎学習事項の確認や,要点の整理を行うことを心がけている。また,生物の観察力を養ってもらうべく,野外観察や野菜の観察などを通じて生の生物材料に触れる機会を多くするよう心がけている。
成績評価に関しては,レポートまたはテストに出席点を加味しているが,講義の中で説明したことをベースに学生自らが考察して答えを導出するような問題や課題を課すことにより,理科における考える力を身につけてもらいたいと思っている。また,過度に厳しい評価を与えないように配慮している。
【観点2】教育の達成状況
着任してから未だ4年しか経過しておらず,自分の研究室からようやく卒業生が2人輩出できた状況である。2011年度に卒業した学生は教員採用試験には合格しなかったものの,小・中学校の講師の職を見つけることができ,現在,仕事に励んでいる。
卒業者は,理科の卒業研究を続ける中で理科研究に興味を持ち,その後も理科への興味を絶やさずに正採用の教職を目指していることから,卒業研究や研究室単位でのセミナーの指導方法が粗悪であったとは考えていない。今後は,指導教官として学生が教採試験に合格できるようなサポートを行っていきたいと考えている。
研究指導
【観点1】学部
卒業研究のテーマを選択する際に,学生の興味や関心に合わせて決めるようにしている。研究上,野外調査や植物の栽培を行うことがメインとなるが,それらの作業・調査方法について,なるべく学生本人に思考錯誤をさせることにより,実践的な問題解決能力を身につけてもらいたいと考えている。また,研究内容に関わらず,野外調査のついでに身の回りの植物を覚えてもらい,野外観察指導の実践力を高めてもらう取り組みをしている。
【観点2】大学院
基本的に学部学生の指導に準じているが,大学院生はすでに卒業研究を経験していることを踏まえて,研究における学生の自主性をより尊重するようにしている。具体的には,調査地の選定や,調査方法の確立,調査の研究計画などを自分で立案してもらい,それに対して教員がアドバイスをすることを心がけている。また,自分の研究に関する英語の文献講読を通じて,科学の国際性や過去から現在にかけての連続性について意識してもらうようにしている。免許プログラムの学生においては,研究が過度な負担にならないように配慮している。
特色ある点及び今後の検討課題等
植物の種数は日本全国で6,500種を越えている。そのため,植物名を覚えることがネックとなり,植物観察に苦手意識を持つ事例がよく見られる。しかし,校舎の周りや裏山の植物を覚えることはそれほど難しいことではない。小中学校においても理科の単元で植物観察の単元があり,教員を目指す学生にはぜひ,2,30種類の植物名を知っておいて欲しいと思っている。そのため,教室の授業だけでなく,野外での植物観察にも重点をおいた授業を行っている。今後は,教育現場で必要な野外観察の知識を精査し,授業の中でそれをうまく伝授していくことを課題としたい。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】(1)平成24年1月:『Long-term, short-interval measurements of the frequency distributions of the photosynthetically active photon flux density and net assimilation rate of leaves in a cool-temperate forest』(共著) Agricultural and Forest Meteorology, 152巻,1〜10頁
発】(1)平成24年3月:『Compensatory reproductive responses in a monocarpic perennial herb Cardiocrinum cordatum var. glehnii (Liliaceae)』(共) 5th International Congress of EAFES(East Asian Federation of Ecological Societies)
学会活動への参加状況
(1)平成24年3月17日〜平成24年3月21日:第59回日本生態学会・大津大会出席
◎特色・強調点等
北日本の多雪地域に生育する林床植物の生態について研究を行っている。特に,北日本において個体サイズが大型化している草本植物の成長メカニズムを興味の対象としている。積雪量の多い上越地域は研究の適所である。
発表した論文は林床の光環境を詳細に測定し,光環境の短期的変動と,それに対する植物の光合成応答を調べたものであり,日本海沿岸地域の植生帯の成立機構の解明に寄与するものと考えられる。日本海型の気候は独特の森林生態系を育み,その森林生態系は里山林を通じて人里に森の恵みをもたらすと共に,森から河川への水や栄養塩の供給などを通じて,日本海沿岸地域の文化や生活に影響を及ぼしてきたと考えられる。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)第29回上越の理科を語る会における講演「北国の林床植物の生き方を探る」(上越の理科を語る会)
(2)平成23年度上越教育大学公開講座「理科野外観察指導実習J(自然の見方)」講師(上越教育大学)
◎社会への寄与等
上越の理科を語る会における講演を通じて,上越地域の理科教員の先生方に自分の研究内容を発表する機会を頂くことができ,質疑応答やその後の議論を通じて,地域の自然史の共通理解を図ることができたと考えている。上越教育大学公開講座の講師を務めることにより,地域植生の構成や特徴,植物生態学的な思考等について参加された市民の方,および現職教員に概説することができた。解説内容や解説手法に未熟な点は多々あったが,講座の内容については一定の理解をしていただけたと認識している。