第一章組織の運営状況に関する自己点検・評価｜上越教育大学年次報告書（第28集：平成24年度版）

保健管理センター（以下，「センター」という）は，本学における保健管理に関する専門的業務を行い，もって学生及び教職員の心身の健康の保持及び増進を図ることを目的としている。常勤の教員２名（うち１名学校医兼任），看護師１名，非常勤として検査技師１名，学外カウンセラー２名，学校医２名（眼科，耳鼻咽喉科各１名）で組織されている。運営についてはセンター運営委員会の議を経て，所長が管理・運営を行っている。

運営・活動は例年と同様に定期・特別健康診断，内科・外科的な応急措置，身体・精神保健相談，禁煙相談および健康診断証明書の発行を中心に行った。平成24年度の特筆すべき活動として，昨年度より開始したキャンパス内敷地全面禁煙の実施に伴い投薬による積極的禁煙支援を一週間から三週間と期間を延長した。今年度より学生及び職員の血液一般・血液生化学検査を外注にした。昨年と同様健康診断実施を知らせるのぼり旗を学内に設置し受診率向上を図ったことがあげられる。

学生の定期健康診断は学生自身が健康調査票を記載し，身長，体重，血圧の測定，尿検査，視力検査，胸部エックス線撮影検査（上越地域総合健康管理センターの検診車による）を実施した。学生の定期健康診断の受診率は96.2％（学部生98.2％，院生94.2％）で，前年より僅かに減少した。また聴打診などによる内科健診を学部及び大学院の新入生を対象に実施した。更に眼科及び耳鼻咽喉科のスクリーニング健診を実施し，有所見者及び希望者については，眼科及び耳鼻咽喉科の各学校医により精密健診を実施した。精神保健に関しては，新入生に対しＵＰＩ（University Personality Inventory：大学生精神健康調査）調査を行い，所見の多かった学生について呼び出し，面接相談を行った。

教養基礎科目の体育実技科目として，学部１年次学生に水泳，並びにスノースポーツを課しているが，当該実習中及び課外活動中の健康管理の観点から，特別健康診断として学部１年次学生全員に心電図検査を実施し，事故の発生防止に努力している。また，学部３年次学生全員に対し生活習慣病予防の保健教育・保健指導を兼ねて，心電図検査，血液生化学（GOT・GPT・LDH・γ-GTP・血液脂質・尿酸・BUN・クレアチニン・NA・K・CI・eGFR・血糖・HbA1C）及び末梢血液検査を実施した。今年度より血液の検査を外注としたため，検査項目が昨年より９項目増加し，有所見者には今まで以上に精密な再検査等事後措置及び保健指導を行った。更に今年度も教員免許取得プログラム受講の大学院１年次生に心電図検査を実施した。

職員の健康診断は，全職員を対象に身長・体重・血圧の測定，視力・聴力・尿検査，胸部エックス線撮影検査を実施し，受診対象年齢者及び希望者を対象に血液検査・心電図検査・便潜血反応検査を実施した。センターにおける健康診断受診者は教育系職員112人，事務系職員123人の計235人（63％）で，前年度と変わりない。人間ドック受診者は85人で30.6％と昨年と比べ増加している。職員についても血液検査は外注とした。

当センターの利用については，職員の勤務時間内において常に対応できるようにしている。身長，体重，血圧，体温測定等は，いつでも計測できる。精神保健相談は相談者の希望を聞き，基本的には予約制とし，月・水・金の学外カウンセラーに引き継いでいる。緊急を要する場合には，精神科医と連携するなど，迅速な対応に努めている。本年度の利用者総数は延べ926人（学生808人，教職員118人）で，前年度より増加している。

本年度は学内アドバイザー２名，学外カウンセラー２名，内科医１名，精神科医１名による精神相談体制とした。総相談件数は延べ365件で，前年度（328件）より増加していた。その要因としては，昨年同様に，新入生に行うＵＰＩ調査を今年度も大学院生に重点をおいて拾い上げ，早期に不適応状態（行動）に陥りやすい学生を発見し，相談を継続したことなどが考えられた。

平成24年度についても，従来のインフルエンザ対策にもどり罹患した場合等の報告を義務づけし，対応を掲示等で学生に示した。学生からは21名の報告があり昨年より増加した。今年も10月３日学園祭前に所長が「越秋祭のインフルエンザ等感染症対策について」の講演を行った。

今年度も定期健康診断時に全学生を対象に喫煙に関するアンケート調査を行い，学生の喫煙実態把握に努めた。更に昨年度から実施されたキャンパス内全面禁煙とともに始めた積極的禁煙支援の投薬を，一週間から三週間に延長し禁煙支援希望者の増加に繋げた。健康促進月間（11月５日～11月20日）においても禁煙相談を実施し，併せて健康相談も開催した。

健康保持増進を目的として，所長が４月20日に学部新入生合宿研修で「快適な学生生活を送るための健康管理について」，６月26日に新任職員研修で「健康管理について」と題して，健康管理について講演を行った。また，平成24年度健康保持増進講演会（10月31日）において，「歩くからこそ，人間は健康でいられる」と題して池川茂樹講師による講演を行った。

今年度も入学生に対して入学前に事前に抗体検査を実施し，抗体陰性・低抗体価者にはワクチン接種を受けていただき，再検査でも同様の場合には再度ワクチンの接種を受けることを必須とした。感染が心配される水痘，風疹，おたふく風邪についても抗体検査とワクチン接種について勧奨の形をとった。今後も感染症対策と確実な教育実習対策として，入学時に感染症罹患歴や予防接種歴を確実に把握することや学生全員の感染症についての認識を高めることが今後の検討課題である。

不適応状態（行動）にある学生に対してはサポート協働体制が確立し，早期に対応することができるようになったが，さらなる学内周知（特に新任教職員への周知）が課題である。更に，教育支援課から情報を得ながら休学希望者あるいは復学希望者に対する相談を継続したい。

今年度も全学生を対象とする喫煙アンケートを実施し，学生の喫煙率が把握できたことは有意義であった。学部生全体の喫煙率は前年度より低下したが，院生の喫煙率は前年度より僅かに上がっていた。これは主に大学院新入生の喫煙率が高いことが原因と考えられ，今後大学院新入生に対する敷地内全面禁煙のさらなる周知が課題である。今年度は前年度に比較し禁煙支援希望者が大幅に増加し，卒煙者もみられた点は良かったが，隠れ喫煙者による吸殻が研究棟のベランダなどで発見されることから，今後もさらなる禁煙支援の充実が求められる。

委員長はセンター所長が務め，委員としてセンター教員１名，学生委員会委員長１名，各専攻から選出された教授又は准教授の計３名，学長が指名した教授又は准教授１名，総務部長１名及び学務部長１名の合計９名で構成されている。

学内禁煙推進にからみ禁煙支援の状況と，学生の精神保健相談の増加に伴い臨床心理士の増員について重点的に協議した。フィジカル面での健康保持推進のために学部生に行っている特別健診について学部３年次に実施した結果の報告をした。例年の検討課題である大麻などの薬物乱用に関する啓発活動については，パンフレットを新入生へ配布している。