安 藤 知 子(准教授)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
大学院授業は,講義と小グループでの意見交換,全体協議とを適宜織り交ぜることで,多様な受講者のニーズに応じ,主体的関与の機会を提供するように工夫し,より深い熟考が促されるように配慮した。学部授業は,毎回必ず受講者自身が発信する機会を取り入れ,双方向のやりとりを経て自身の学びの内容を整理集約できるように授業記録を活用した。また,受講者のレディネスに配慮し,取り組みやすい教材の選定やディスカッションのテーマを提示するなど,参加意欲を高める工夫を行った。扱ったテーマ,内容はいずれも実践場面に即した思考力・判断力を鍛えるものである。成績評価については,昨年度に引き続き出席やレポート提出,議論への積極的参加や,様々な作業での発言内容等も全て加味して得点化し,一覧できる成績評価シートを作成し,活用した。
【観点2】教育の達成状況
各講義の目標はほぼ達成できた。学部,大学院ともに比較的良好に受講者の積極的,主体的な学習活動を促すことができた。特に,学部「現代教師論」では,具体的な実践場面をテーマとする自由なディスカッションの時間を確保し,切実な学校現場の課題を“自分事”として捉え,具体的実践方策へとつなげて思考する省察力を高めることができた。また,指導学生の進学状況は,免許プログラム生を含む修士修了生3名,学部卒業生3名のうち,4名が正規採用,2名が臨時採用で教職へ就いている。
研究指導
【観点1】学部
3名の卒業論文執筆を中心として指導を行った。それぞれにインターンシップ,授業観察調査,質問紙調査を実施するための調査実施手続きを指導するとともに,得られたデータを多面的,客観的に吟味し,自らの問いに対する答えを導き出す過程を重視した。特に,論文としての体裁を整えることよりも,学生自身の内面での学びが質的に表現されることを尊重して執筆を支援した。
【観点2】大学院
経験的で漠然とした問題関心を,理論的に捉え,そこでの関心に答えを導き出すための分析方法の学習と思考訓練に重点をおいて指導を行った。特に,先行研究を丁寧に読解しつつ自らの主張を組み立てる作業について,多様な関心を持つ院生間での議論が活かされるよう配慮した。また,実際に学会発表や論文執筆に取りかかる学年の学生に対しては,データ収集手続きの公正性や分析手続きの厳密さ等に対しても特に配慮しつつ研究活動への支援を行った。
特色ある点及び今後の検討課題等
学部,大学院ともに,授業の内容にあわせて多様な学習手法を活用し,受講者の主体的学習を促す工夫を継続して行っている。課題内容に対して主体的に思考し,積極的に発信し,他者の考えに耳を傾けて更に熟考する姿勢を養成することで,省察的実践家の基礎を身につけるよう促している点が,特色ある点である。また,成績評価に対する説明資料を丁寧に作成し,学生からの問い合わせに対応できるようにしている。今後は,受講者が多い授業での,レディネスやニーズの多様性に応じたディスカッションの活用方法や,講義の進め方をさらに検討し,工夫することが課題である。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】(1)平成26年:個別学校の特色ある教育活動に対する教員の主体的・積極的意味付与に関する考察,教育経営研究,20号,pp.4-13
(2)平成25年6月:「組織」の活力を引き出すコミュニケーション,教職研修,41巻,10号,pp.38-39
(3)<学校力>向上を規定する組織の内的メカニズムに関する基礎的研究(報告書)
業】(1)平成25年6月:「年休・病休・特別休暇」「指導が不適切な教員」「教員評価と人事考課制度」「教員研修制度」「教職員のメンタルヘルス」(単著),実践教育法規,pp.104-113
(2)平成25年4月:「担任の孤立・抱え込み」「学級王国」への対応(単著),教務主任の仕事術2:こんな時どうする?課題対応マニュアル,pp.108-111
学会活動への参加状況
(1) 平成25年9月:日本教師教育学会, (2)平成25年8月3日〜平成25年8月4日:日本学校教育学会, (3)平成25年6月7日〜平成25年6月8日:日本教育経営学会
◎特色・強調点等
科研費研究が最終年度であったため,学校経営改革の事例校のうち東京都内の1校に焦点付けて継続的な参与観察を実施した。ここから,教職員間での学びの在り方を中心に,学校の特色ある取り組みへの個々の教員の関与の実態を分析考察し,報告書にまとめた。前年度に実施していた複数校の事例調査結果も踏まえて,研究から得られた知見として,@個々の教員の自己役割認知が積極的関与や取り組みに対する積極的意味付与に影響していること,A学校全体の取り組みの可視性が重要であること,B教員間でやりとりされる情報量が影響すること,C学校組織としては,共通して可視化や情報量の流通を促進するための「装置」や「環境」があることなどを指摘した。これらの組織要因を整理して示した点に独自性があり,多くの学校でこれらの要因を指標とした取り組みが可能となる点に意義を見出すことができる。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)上越市立高志小学校学校運営協議会委員(上越市立高志小学校)
(2)上越市立牧小学校学校運営協議会委員(上越市立牧小学校)
(3)平成25年12月26日:新潟県教職12年経験者研修講師(新潟県立教育センター)
(4)平成25年11月14日:上越地区中学校・高等学校校長会研修会講師(上越地区中学校・高等学校校長会)
(5)平成25年8月26日〜平成25年8月29日:新潟県教員評価・評価者研修(新潟県立教育センター)
(6)平成25年8月5日:新潟県学校事務職員研究協議会研究大会講師(新潟県学校事務職員研究協議会)
(7)平成25年8月:上越市教育委員会自己点検・評価委員(上越市教育委員会)
(8)新潟県社会教育委員(新潟県教育庁生涯学習課)
(9)上越カリキュラム開発研究委員会委員(上越市教育委員会)
(10)公孫会「英雄の会」記念講演会(公孫会)
◎社会への寄与等
学校組織マネジメント,ミドルリーダーの役割論,学校評価等,学校経営学に関する専門知識を活用して,上越カリキュラム開発研究推進委員会委員,新潟県社会教育委員,上越市内小学校学校評議員などの活動を行い,また,10年経験者研修や公開講座の講師等を継続して務めた。その他に,新たに新潟県内の校長,指導主事らの教員評価実施者への評価者研修の講師を新たに担当した。学校教育,社会教育ともに多様な外部諸機関との組織的連携が課題となっている今日,教育実践を組織的に捉え,経営的発想をもって行動化していくことが重要となっており,この点での理論的整理に際して寄与した。