森 口 佑 介(准教授)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
学部の講義では,学生の興味を喚起し,持続させる工夫をした。具体的には,子どものビデオを用い,授業のスライドで視覚的に注意を喚起した。例えば,発達心理学の講義において,乳幼児の様子をビデオを用いて観察させたり,用いるスライドを学生に対して見やすくするなどの工夫をしたりした。また,学生に意見を尋ねたり,リアクションペーパーを導入して学生の意見を取り入れるなどして,一方的な講義ではなく,相互交流を重視した。これにより,発達心理学に対する興味・意欲は高まったと考えている。
大学院の講義では,特にやりとりに留意した。一方的な情報の伝達にならないように,学生同士に議論をさせるなどした。例えば,現職派遣教員の話を聞くことで現場の実態を授業の中にいれ,現職以外の大学院の意見を聞くことで新鮮な意見を授業に入れた。
成績評価では,最初の授業で明確に評価基準を説明し,その基準に従って成績をつけた。具体的には,出席やレポート,授業中の発言やアンケートの結果などを含めて総合的に成績を判断した。
【観点2】教育の達成状況
ゼミ所属の学生や講義を受講した学生には,子どもに関する基礎的な知識を伝達することはもちろんのこと,子どもや他者へのコミュニケーションの方法や,論理的な思考方法などを育成するように努めた。ゼミ指導の学生は教員や研究者を志望しており,本ゼミおよび本コースにおける学生指導や研究指導の所属科目群の学生の取り組みは成功したと考えている。
研究指導
【観点1】学部
授業の中で,子どもたちがいかに自分の世界をもっているかを伝え,それを踏まえた上でどのようなコミュニケーションをとるべきか,また,子どもたちの能力や性格をいかに認識するべきかについての基礎的な知識や方法を指導した。また,臨床的な実践力の基礎となる論理的思考能力や批判的精神を専門的な授業を通じて指導した。
【観点2】大学院
今年度は教員志望の大学院生と研究者志望の大学院生を指導したが,前者では,学校教育に必要な臨床的な実践力である子どもの心を推測する力に加えて,子どもに関する理論的な見識や思考を指導した。また,後者については,上記の臨床的な実践力に加えて,発達理論,批判的な思考力を要請した。両者ともに,研究指導の中で,分析力,創造性などの,現場にも必要であり,研究者にも必要な,基礎的な力も養成した。
その他の教育活動
本年は中京大学大学院において発達心理学の集中講義を受け持った。教職志望の多い本学学生とは異なり,中京大学においては心理職を目指す学生や研究者を目指す学生が在籍しており,本学よりも理論的な内容を講義した。また,一方的な伝達に加えて,学生たちの研究発表もしてもらい,議論を重視した。
特色ある点及び今後の検討課題等
基礎的な発達理論や脳機能の発達など,本学学生よりもより理論的な内容の授業を実施した点に特色がある。今後の検討課題は,基礎と臨床現場,実践現場の関連をより意識した内容の授業を展開することである。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
著】(1)平成26年3月:おさなごころを科学する:進化する幼児観(単著),新曜社
(2)平成25年9月:ロボットを通して探る子どもの心:ディベロップメンタル・サイバネティクスの挑戦(共著),ミネルヴァ書房
論】(1)平成26年:The early development of executive function and its relation to social interaction: a brief review.,Frontiers in psychology,5巻,pp.388
発】(1)平成26年3月22日:ぬいぐるみ遊びは実行機能を訓練する,日本発達心理学会第25回大会
(2)平成26年3月21日:計算論・構成論は発達心理学に何をもたらすか,日本発達心理学会第25回大会
(3)平成26年3月21日:幼児における気質と実行機能、脳活動の関連,日本発達心理学会第25回大会
(4)平成25年9月20日:気質を学ぶものから,第77回日本心理学会シンポジウム
(5)平成25年9月3日:Parental Behaviour and Children’s Creation of Imaginary Companions: A Longitudinal Study,Parental Behaviour and Children’s Creation of Imaginary Companions: A Longitudinal Study,The 16th European Conference on Developmental Psychology
(6)平成25年9月3日:Focus on Infants' Face and Mind: the Relation between Adults' Visual Attention and Parenting Behaviours,Focus on Infants' Face and Mind: the Relation between Adults' Visual Attention and Parenting Behaviours,The 16th European Conference on Developmental Psychology
(7)平成25年7月7日:☆実行機能の初期発達とその脳内機構,第14回認知神経リハビリテーション学会「学習への羅針盤U」
(8)平成25年6月9日:☆赤ちゃんの心を探る,日本心理学会公開シンポジウム「高校生のための心理学講座シリーズ」
(9)平成25年4月18日:Children’s perception of agency in interaction with an imaginary agent.,Children’s perception of agency in interaction with an imaginary agent.,Biennial meeting of the Society for Research in Child Development,Biennial meeting of the Society for Research in Child Development
国際研究プロジェクトへの参加状況
(1)国際心理学会議プログラム委員 代表者:松沢哲郎(京都大学)
学会活動への参加状況
(1)平成26年3月20日〜平成26年3月22日:日本発達心理学会, (2)平成25年9月20日〜平成25年9月22日:日本心理学会, (3)平成25年9月3日〜平成25年9月7日:ヨーロッパ発達心理学会, (4)平成25年7月6日〜 平成25年7月7日:認知神経リハビリテーション学会, (5)平成25年4月18日〜平成25年4月20日:Society for Research in Child Development, (6)平成25年9月1日〜平成26年8月31日:国際学術雑誌Frontiers in Psychology誌の編集(Frontiers)
◎特色・強調点等
本年度は,セルフコントロールの発達に心理学的・神経科学的研究と,幼児期における空想能力の発達を論文や学会などで発表した。 1) セルフコントロールは,就学時の国語や算数の成績を予測するなど,児童の学習成績に重要な影響を及ぼすことが示されている。しかしながら,セルフコントロールの発達経路や脳内基盤等は,未だ明らかになっていないことが多い。私は,非侵襲的方法で幼児の脳活動を計測することで,抑制機能発達の脳内基盤を調べ,教育実践に応用する手段を検討している。 2)空想能力は,幼児にとって重要なものであり,学業はもちろん,社会性の発達の基盤になるものである。私は,空想能力の発達を,視線計測や脳活動の計測によって調べ,子どもたちの社会性の発達にいかに寄与するかを検討している。
 
<社会との連携>
◎社会への寄与等
Frontiers in Psychology誌は,オープンアクセスの国際学術雑誌であり,研究者はもちろん,教育関係者や一般の方も読むことができる。今回,この学術誌で,近年の教育現場でも重視されている実行機能という概念についての特集号を国外の研究者らとともに発起し,その代表として編集業務に携わった。これは,子どもの理解を深め,支援につながるという意味で重要な社会貢献になった。