野 村 眞木夫(教 授)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
学部・大学院ともに書記言語(テクスト分析)と音声言語(談話分析)の研究成果を反映した教育を展開し,教育現場での学習材分析・授業分析に資する能力を育成することを継続している。主に2010年以降,言語学にも導入され始めた「マルチモーダル(マルチモダリティ)」の考え方に基づき,文字・音声言語とそれ以外の画像情報,動的な情報等を均質的に観察の対象とする方法を取り込みながら,指導方法を改善している。現代日本語と古代日本語の文法を対比的に取りあげ,言語変化・語義変化・文法の変化等について教授している。
【観点2】教育の達成状況
大学院では,特に音声言語とテクスト分析の能力を育成しているが,レポートや修士論文中間発表,修士論文作成において,講義・演習において教授した知見や分析手法を駆使して各自の課題に取り組んでいることが明らかであり,十分な教育の成果が達成されているものと判断している。過年度の修了生は,学会誌に掲載した論文について,他学会の学界展望によって高い評価を得ている。2013年度の学部卒業生は4名であるが,3人が教員として採用され,1人が大学院進学である。それぞれ,学部卒業論文を学習材分析や授業分析,授業実践に直結させうる方向性を獲得しているので,一定以上の実践力と研究能力とを継続できるものと判断している。大学院修了生は,留学生1名だが,本国で初等教育に就いている。本学における教育研究指導の成果が十分に反映されているものと判断する。
研究指導
【観点1】学部
4年次学生4名に対しては,文章論・談話分析が主たる研究テーマであるので,具体的な研究課題を構築するために,これまでの関連領域の学術論文・著書の講読を展開し,具体的はデータに適用することで内容や言語現象の具体的な理解を深めた。特に携帯メールの分析は高い水準を示すことができた。3年次学生も文章・談話または語彙関係の関心があるので,そのためのデータ収集,と文献講読を展開し,一定の研究水準を維持させている。
【観点2】大学院
中国からの留学生であるが,日本語の現代小説の時間構造について,物語論とテクスト言語学の手法を統合した方法を確立し,これによって分析を展開した。本人は帰国後,本国の教員として就職し,そのときに具体的な教材分析の実践に有用であるよう,また臨床的に活用できるように,この方法を修得させた。
その他の教育活動
小学校,中学校の実習を観察し,日常的な,特に文章論や談話論の研究教育の成果が展開されているかを確認し,事後の指導を行った。大学院進学の1人をのぞき,3人が小学校の教員として正採用となったので,十分な指導を展開したものと判断する。
特色ある点及び今後の検討課題等
専門は日本語のテクスト言語学の理論的な研究であるが,文章と談話を具体的な研究対象としているので,学習材の分析と授業実践の活動に直接有効性をもつ方法や観点を教授することができる。昨年度に引き続き,学部レベルの教育活動においては,教育実習ならびに卒業後の学習材分析や授業分析の能力の育成を明確にしながら演習・講義科目を展開している。学習指導要領で敬語の区分が修正されていること,現代語と古典語の橋渡し,音声言語の記述・分析方法の能力の教授などをほぼ完全に教育活動において実施すべく,担当授業科目のシラバスを構築している。現代語と古典語の橋渡しは,極めて少数の取り組みである。さらに,マルチモダリティの観点を導入した講義を平成22年度から試行している。これは,大学院では明示的に実施し,学部では試行段階だが教職実践演習で導入している。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
著】(1)平成26年3月:スタイルとしての人称―現代小説の人称空間―(単著),おうふう
(2)平成25年6月:言語表現学叢書(共著),清文堂
論】(1)平成25年10月:今井文男表現学の位置―表現研究のあらたな可能性をもとめて―,表現研究,98巻,pp.2-11
発】(1)平成25年6月1日:☆今井文男表現学の位置 (表現学説を見直す),第50回表現学会全国大会シンポジウム
他】(1)個人ホームページの開設(上越教育大学)
学会活動への参加状況
(1)平成25年11月30日:日本語文法学会, (2)平成25年6月1日〜平成25年6月2日:表現学会全国大会, (3)表現学会理事, (4)表現学会編集委員, (5)北海道大学国語国文学会編集委員(北海道大学国語国文学会)
◎特色・強調点等
日本語をテクスト言語学の観点から,記述・分析している。特に,今世紀に入ってから開発されたマルチモダリティの考え方を導入し,テクストを複合的な視点から観察することを可能にしている。前者については,表現学会シンポジウムのパネラー,その論文発表をはたし,さらに日本語の人称に関する単著『スタイルとしての人称』(おうふう)を年度末に刊行した。後者については,シンポジウムで簡単な報告をしたほか,統合的な分析ソフトELANを活用して日本語の談話分析を継続している。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)平成25年8月6日:教員免許状更新講習
(2)上越市人にやさしいまちづくり推進会議
◎社会への寄与等
学会の理事・編集委員は全国レベルの活動で,学会誌の評価もたかく,また学会の性質が語学・文学・教育にわたるので,教育上の貢献度も高いと判断する。上越市の会議への参加は,委員長相当であり,地域の環境等から教育・福祉に広くわたる議論が展開されていて,総合的な貢献を果たしていると判断する。