白 岩 広 行(講 師)
 
<教育活動>
研究指導
【観点1】学部
4年次の指導生は1人で,教員志望ではなく,公務員ないし民間での地元就職を目指していた。また,郷土の文化に関心があるとのことだったため,伝統的な言語文化として方言の調査研究に関する指導をおこなった。具体的には,家族内の身近な人たちの自然な談話を録音・文字化し,その分析をもって卒業論文を完成させた。これまでに指摘されていなかった標準語の混交のありかたなどを解明することができ,指導生本人の経験としても,また,学術上の成果としても,実りある指導ができたと感じる。 2〜3年次の学生には,自身の卒業論文執筆にむけて,興味のある分野の先行研究を整理し,自身の研究の焦点をしぼるよう指導を進めている。
【観点2】大学院
指導生は1人(修士1年)で,日本語教育に関心のある留学生であったため,自身が日本語を学ぶうえで気がかりになった言語事項を対象に研究を進めるように指導した。具体的には,「俺,僕,私,あたし,うち」などの自称詞(1人称代名詞)を日本語母語話者がどのように使い分けているかに焦点をしぼり,実践的な使用の基準を解明するために,より日常会話に近いドラマの台詞の分析を進めるように指導をおこなった。該当の学生は2014年度に修士論文を執筆の予定だが,順調に研究を進めることができたと考える。
その他の教育活動
・ 2013年度上越教育大学附属中学校研究指導者(国語)
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
著】(1)平成26年3月:教科内容構成「国語」(共著),上越教育大学
(2)平成26年2月:ブラジル日系社会談話資料 ―福島県出身者たちの語り―(単著),上越教育大学大学院学校教育研究科 言語系コース 白岩広行研究室
学会活動への参加状況
(1)平成25年11月30日〜平成25年12月1日:日本語文法学会(早稲田大学), (2)平成25年10月26日〜平成25年10月27日:日本語学会2013年度秋季大会(静岡大学), (3)平成25年10月24日〜平成25年10月25日:日本方言研究会第97回研究発表会(静岡大学), (4)平成25年6月15日:上越教育大学国語教育学会第65回例会(上越教育大学), (5)平成25年6月1日〜平成25年6月2日:日本語学会2013年度春季大会(大阪大学), (6)平成25年5月30日〜平成25年5月31日:日本方言研究会第96回研究発表会(大阪樟蔭女子大学)
◎特色・強調点等
2013年度は,これまで収集してきたブラジル日系社会における日本語の談話資料の整備をおこなった。ブラジル日系社会において,日本各地の方言やポルトガル語が接触し,それらの混交した独特のことばが話されていることは知られているが,生の会話を談話資料として刊行したものは,まだ多くはない。そのようななか,言語資料としても,移民社会を知るための文化的資料としても価値を持つものとして,約4時間分の談話を整備し,談話資料として刊行したことは,言語研究・移民研究の各方面にとって十分な貢献になったと自負している。
 
<社会との連携>
◎社会への寄与等
教育大学に着任して初めての年度であったため,自身の研究分野の知識をどのように教育現場で生かせるのかについて考える機会を意識的に設けるようにした。その一環として,附属中学校の研究指導者を受け持ったり,同じく附属中学校の「わくわく大学デー」の講師として授業をおこなったりした。また,「上越市立小学校・中学校等への学校訪問」に参加し,市内の各小中学校の先生がたと交流を深める機会を作った。
そのほか,研究成果として編集した『ブラジル日系社会談話資料 ―福島県出身者たちの語り―』を福島県内の公立図書館に寄付したことも,成果の発信という点で社会貢献につながったと考える。