大 場 浩 正(教 授)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
学部1年生の「コミュニケーション英語」においては,帯活動として語彙学習,small conversation及び音読などを行い,主たる活動として,メタ認知方略指導を含むリスニング技能及びマインドマップとファストライティング指導を含むライティング技能に焦点をあてた授業を展開した。2年生に関しては,1年生と同様の帯活動の他に,映画と音楽を用いたリスニング技能に焦点をあてた授業を展開した。第1回目の授業において,受講学生の英語学習に関する意識等をアンケートにより調査すると同時に,授業全体の目的・目標,学習内容(計画),成績評価方法を詳細に説明した。また,毎回の授業では個人の活動をもとにペアやグループの活動へと発展させ,協同学習やアクティブ・ラーニングを導入することにより学習意欲を促し,また,学生に全ての活動への自己評価(振り返り)を行わせることにより個々の活動成果を確認させた。学習の成果(テスト)のみならずその過程を評価(ポートフォリオ評価)することを通して受講学生の学習意欲を高めるようにした。「中等英語科指導法(授業論)」でも同様に,個人の活動やグループの活動を中心に展開した。授業全体を3期に分け,第1期では英語の授業展開や指導案の作成の方法を学習した。受講者には,中学校の時の英語の授業を振り返ってもらい,自分自身の経験に頼る指導からの脱却を図ることを目標の一つとした。第2期では1期の内容を踏まえ,受講学生達がグループで実際に30分〜50分の授業を組み立て,模擬授業を行った。模擬授業後のディスカッション(とシェアリング)によって授業を観察する目が養えたのではないかと思う。第3期には中学校現場の教員による講義・演習を組み込み,学生の教職への動機付けを行った。教育実習や現場に出てから役に立つ英語の授業の基礎技術を獲得させることに焦点をあてた。大学院の「英語科教育第二言語習得特論」と「英語科学習方法演習」では,目的・目標,学習内容,成績評価方法を明確にし,より高度な,そして,専門的な知識を獲得できるように,学生によるプレゼンテーションとグループによるディスカッションを通して指導を行った。特に,後者では協同学習の形態を用いて協同学習の英語教育への応用を議論した。また,英語指導の際に,直接的・間接的に役に立つ背景知識の獲得と自己の英語教育に対する考え方を形成させることに焦点をあてた(特に前者)。全ての授業において,学力や知識のみならず,よい人間関係を構築できるような活動を取り入れた。
【観点2】教育の達成状況
学部の「コミュニケーション英語」では,既に大学入学以前に英語に対する得意・不得意及び好嫌いがはっきりしており,それに応じて,英語への学習意欲が,ある程度,決定しているように思われる。しかしながら,大学の英語の授業では,受験を意識することもなく,オーセンティックな英語の(自作)教材(音楽,映画,新聞等)や協同学習を用いることによって,学生の英語に対する学習意識が変わってきたようである。活動毎の自己評価(振り返り)では,「難しいが,楽しく出来た」「仲間と協力し合って解答にたどり着くことができて嬉しかった」というような,英語学習を肯定的にとらえているコメントが多かった。教科の指導の中で人間関係を構築することも目指した協同学習やアクティブ・ラーニングを積極的に取り入れた成果だと思われる。また,「中等英語科指導法(授業論)」でも,教育実習に向けて英語の授業をどのように組み立てていくか,どのように中学生と接していくかなど,学生たちは具体的な手法や心構えを学んだ。大学院の授業では,学生は授業の展開や教材の開発などの基になる理論的背景を学んだ。特に,一つ一つの活動にどのような意味があり,何を目指した活動であり,どのような考え方に基づいているのかを考え,学ばせた。従って,教授法や指導技術の基礎となる第二言語習得研究に関する理論的な背景や実験研究の成果を正確に理解させることに勤めた。また,授業づくりには,少なくても学級指導の側面と教科教育(授業展開・構成)の二つの柱が必要であり,教科を超えた授業づくりの基礎も指導した。教員になってから役に立つ内容であったと思われる。
研究指導
【観点1】学部
英語教育に関しては,教育実習における実践に役立つような基礎知識や活動を積極的に指導した。卒業論文の指導においては,理論的な側面のみならず,理論に基づく提案等を通して実践力の獲得に焦点をあてた。特に,英語学習者(中学生)のライティング能力を高めるためのパラグラフ・ライティング指導,中学校の英語授業における協同学習,中学校英語科におけるユニバーサル・デザインに基づく授業づくりについて研究指導を行った。
【観点2】大学院
大学院においては,教授法や指導技術の基礎となる第二言語習得研究に関する理論的な背景や実験研究の成果を正確に理解させることに勤めた。さらに,英語教育的なアプローチのみならず,教育学的なアプローチから英語の授業を組み立てる方法として協同学習及びカウンセリングマインドを意識した英語の授業方法も指導した。修士論文の指導においては,スーキングの指導と評価,リスニング指導,ライティング指導,文法指導,協同学習を用いたリーディング指導に関する研究指導を行った。
その他の教育活動
・ 教育実習における実践に役立つような基礎知識や活動を積極的に指導した。また,実習期間中にも指導案や教材に関する指導を行った。研究授業の参観の後には,指導 教諭とともに授業の振り返りなどを行った。
・ 男子ソフトボール部顧問
・ 上越教育大学附属中学校研究協議会・助言者(英語)
◎特色ある点及び今後の検討課題等
常に学生の英語学習への意欲を高めるための学習内容を考え,教材を自作し,指導してきた。また,英語を指導する上で何が大切かを教え,伝えてきた(英語教育学および教育学アプローチの融合について)。指導方法に関しても,これまで獲得してきた理論的背景に基づき,現場での経験を生かし,学生が分かりやすい指導を心掛けてきた。特に,協同学習やアクティブ・ラーニング型の授業を取り入れ,学習者主体の指導を心掛けた。これらの成果(根拠)は学生の授業アンケートにおいて十分反映されていると思われる。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】(1)平成26年3月:日本人英語学習者による関係節習得再考―「潜在ランク理論」を援用して―,上越教育大学研究紀要,33巻,pp.147-156
(2)平成25年11月:英語スピーキング指導における協同学習の効果について―英語学習意欲と協同的活動への認識に関して,英語授業研究学会紀要,22巻,pp.17-31
発】(1) 平成25年8月:英語プロセス・ライティングに協同学習を取り入れた効果:英語学習意欲に焦点を当てて,JACET(大学英語教育学会)国際大会
(2)平成25年8月:Calibration of National Center Test Items against the Common European Framework of Reference for Languages.,The 17th Pan-Pacific Association of Applied Linguistics
(3)平成25年8月:協同学習を取り入れた英語プロセス・ライティング指導の効果,全国英語教育学会北海道大会
(4)平成25年7月:Effects of cooperative learning on English speaking and writing tasks in Japanese university classrooms: Focusing on motivation for learning English and human-relations construction.,International Association for the Study of Cooperation in Education (IASCE)
(5)平成25年6月:協同学習を取り入れた英語授業−理論的背景とその実践例,中部地区英語教育学会富山大会
共同研究(幼,小,中,高等学校及び特別支援学校教員との共同研究を含む)の実施状況
(1)潜在ランク理論の応用によるコンピューター適応型英語熟達度診断テストの開発,代表者:杉野直樹(立命館大学)
学会活動への参加状況
(1)平成26年2月22日〜平成26年2月23日:日本協同教育学会「協同学習」ワークショップ講師(日本協同教育学会), (2)中部地区英語教育学会運営委員, (3)全国アクションリサーチ学会運営委員, (4)大学英語教育学会(JACET)関東支部研究紀要査読委員, (5)北海道英語教育学会研究紀要査読委員
 
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)平成26年2月25日:富山県立小杉高等学校出前講座講師
(2)平成25年8月9日:長岡市秋葉中学校区小中連絡協議会研修会講師
(3)平成25年7月31日:教員免許状更新講習講師(上越教育大学)
(4)英語技能検定試験2次面接委員(日本英語検定協会)
◎社会への寄与等
長岡市秋葉中学校区小中連絡協議会研修会講師として,小・中学校教員に「協同学習」について講演を行い,また,出前講座として富山県小杉高等学校にて全職員を対象に「協同学習」について講演を行った。さらに,日本協同教育学会主催の「協同学習」ワークショップ(2日間)の講師も務めた。教職免許更新講習の講師や,年間を通して附属中学校の研究協議会指導者も務めた。日本英語検定協会主催の英語技能検定試験2次面接委員を務めるなど,社会の英語教育に対するニーズに積極的に貢献した。