稲 田 結 美(講 師)
 
<教育活動>
授  業
【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
受講生が50名を超える人数の授業においては,教員側からの解説の時間が多くなり,受講生は受け身的に聞くだけの授業になりがちであるため,受講生が能動的に授業に参加できるような体験活動や深く思考できるような課題を多く取り入れるように配慮した。また,毎時ワークシートを用意し,それを授業終了時に回収し,受講生の理解状況を確認したうえで,次の授業の計画を立てた。さらに,受講生が学習のふり返りをできるように,ワークシートには所々コメントをつけ受講生に返却した。一方,受講生の少ない授業においては,これらに加え,受講生が協同的に学べるように,意見交換や討論の時間を設けるようにした。授業の評価については,毎時配布するワークシートに加え,レポート課題も与え,授業内容の理解度を確認するだけでなく,受講生にフィードバックするように心がけた。
【観点2】教育の達成状況
卒業生が小学校において自信をもって理科を教えることができるように,理科の内容および指導方法の両面から授業で繰り返し指導してきた。特に,研究指導学生の2名は卒業後,公立小学校の正規教員となり,現在,積極的に理科指導にあたっているため,授業の効果は高かったと考えている。
研究指導
【観点1】学部
現在の理科教育の課題を知るために,小・中学校の理科授業の参観を勧めたり,国内外の理科関連の学力調査の結果を調べさせたりした。また,毎週のセミナーにおいて,研究室のメンバー全員で十分な時間をかけて各自の研究テーマについて議論し,研究の方向性を自ら考えていくように促した。
【観点2】大学院
教育研究を行うにあたり必要となる先行研究の収集方法や,理科授業の参観の視点,学習者の認知面・情意面の評価方法,研究計画の立て方などを院生の必要に応じて指導した。また,研究が停滞しないように,毎週のセミナーを通して,研究の進捗状況と短期的な研究計画について報告させた。さらに,学部生・院生を交えて研究に関する議論を十分に行い,研究の方向性を常に検討させた。
その他の教育活動
・ 上越教育大学附属小学校2013年研究会 研究協力者
・ 教員採用試験直前講座(理科実験)講師
・ 教育実習の研究授業における学生指導
特色ある点及び今後の検討課題等
附属小学校の研究会に向け,事前に授業者と打合せをし,研究会当日には授業の参観後にセッションにおいて,理科の授業開発についてコメントをした。授業者の年間授業計画はよく練られていたため,改善すべき点をあまり見出せなかったため,次年度以降は別観点からも授業分析を行いたい。
教員採用試験において理科実験の実技試験が課される学生に対して,実験の基礎的な操作を確認する講座を実施した。実験器具の操作方法をまとめたプリントを作成し,個人で器具の操作ができるように十分な器具数を準備した。この講座の以前に,初等理科指導法の授業でも学生の実験技能を高めるための取組を実施しているため,この講座では一から技能を習得するというよりも,操作方法を再確認する程度で済んでいる点で評価できると考えている。
教育実習の研究授業では,その時間の学習目標と子どもたちの学習状況を詳細に観察し,実習生に必ずフィードバックし,指導改善について具体的に考えさせるようにしている。今後は,より高度な理科指導力を育成することを目指し,学習者の理解を促す問題解決的な理科実験を実習生が自ら計画できるような助言を行いたい。
 
<研究活動>
研究成果の発表状況
著】(1)平成25年8月:理科の教育 平成25年8月号(共著),東洋館出版社
論】(1)平成25年11月:小・中学校の理科教科書に掲載されている観察・実験等の類型化とその探究的特徴―プロセス・スキルズを精選・統合して開発した「探究の技能」に基づいて―,理科教育学研究,54巻,2号,pp.225-247
(2)平成25年11月:理科学習に対する女子の意識と態度の改善に関する実践的研究 : 中学校理科「電流」単元を事例として,日本理科教育学会理科教育学研究,54巻,2号,pp.149-159
(3)平成25年7月:「動物の体のつくりと働き」に関する総合的な理解に影響を及ぼす諸要因の因果モデル ―直接経験的及び間接経験的な観察・実験を起点として―,理科教育学研究,54巻,1号,pp.71-81
発】(1)平成26年3月1日:アメリカの小学校理科教科書における実験活動の特徴―モデルの取り扱いに着目して―,日本科学教育学会研究会
(2)平成26年3月1日:アメリカの小学校理科教科書における「数学的な活動」の特徴,日本科学教育学会研究会
(3)平成26年3月1日:欧米の科学教育における教師用指導資料の特徴―実験計画場面を中心に―,日本科学教育学会研究会
(4)平成26年3月1日:理科教育における動機づけ研究の動向と課題,日本科学教育学会研究会
(5)平成25年11月16日:A03 中学校理科の力学内容における体感を重視した活動,日本理科教育学会北陸支部大会発表要旨集
(6)平成25年11月16日:A04 中学校理科におけるイオン学習の問題点 : 戦前戦後の内容の変遷と質問紙調査から,日本理科教育学会北陸支部大会発表要旨集
(7)平成25年8月10日:11D-201 教員養成課程学生における理科に関する意識と経験の男女差(教員養成,一般研究発表(口頭発表)),日本理科教育学会全国大会要項
(8)平成25年8月10日:10K-304 小学校理科の探究の技能育成に関する研究 : 変数をとらえる視点を高めるものづくり学習の実践を通して(授業研究・学習指導,一般研究発表(口頭発表)),日本理科教育学会全国大会要項
(9)平成25年8月10日:10K-202 変数への気づきの高まりが問題解決の能力に及ぼす効果 : 条件制御を伴う実験の指導と評価を通して(授業研究・学習指導,一般研究発表(口頭発表)),日本理科教育学会全国大会要項
(10)平成25年8月10日:10G-104 質量保存に関する教員養成課程学生の認識の実態 : 溶解時の質量保存を中心として(化学教材・教育法,一般研究発表(口頭発表)),日本理科教育学会全国大会要項
(11)平成25年6月29日:小学校理科のものづくりにおける評価に関する一考察 ―「探究の技能」育成の観点から―,日本科学教育学会研究会
(12)平成25年6月29日:小学校理科教科書に掲載された観察・実験等の問いの類型化とその探究的特徴,日本科学教育学会研究会
(13)平成25年6月29日:中学校理科教科書に掲載された観察・実験等の問いの類型化とその探究的特徴,日本科学教育学会研究会
(14)平成25年6月29日:小学校理科における観察・実験の評価に関する一考察 ―「探究の技能」育成の観点から―,日本科学教育学会研究会
共同研究(幼,小,中,高等学校及び特別支援学校教員との共同研究を含む)の実施状況
(1)未来を生きる探究能力と科学力を備えた市民を育成する科学教育カリキュラムの開発,代表者:中山迅(宮崎大学)
学会活動への参加状況
(1)平成25年11月16日:平成25年度日本理科教育学会北陸支部大会, (2)平成25年11月9日:日本理科教育学会第52回関東支部大会, (3)平成25年9月6日〜平成25年9月8日:日本科学教育学会第37回年会, (4)平成25年8月10日〜平成25年8月11日:日本理科教育学会第63回全国大会, (5)平成25年6月29日:平成24年度第6回日本科学教育学会研究会
◎特色・強調点等
科学技術分野における女性の活躍促進という現代的課題を解決するために求められる「女子の理科学習促進」に関する研究を継続して行っている。2013年度は特に教師教育・教員養成において女子の理科学習を促進するための方策の開発を目指し,その基礎となるデータ収集を行い,学会等で発表し一定の評価を受けた。
 
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)平成25年11月12日:第52回教職員理科研究発表会(上越科学技術教育研究会)
(2)平成25年10月21日:女子の理科学習の問題点と改善の視点(福井理科教育研究会)
(3)平成25年9月25日:第49回上越市児童生徒科学研究発表会(上越市教育委員会)
◎社会への寄与等
理科教師への研修会における講師や,児童生徒の科学研究発表会の審査員などを務め,現在求められている科学教育のあり方を伝えるように努力した。また,福井県の理科教育研究会から女子の理科学習の問題点とその改善方法に関する講演を依頼され,この研究へのニーズが高まっており,教育現場に広く伝達していくことの重要性を改めて実感した。