第一章 組織の運営状況に関する自己点検・評価
 
2 平成26年度の大学運営
 
平成26年度は,第2期中期目標期間の5年目に当たり,「今後の国立大学の機能強化に向けての考え方」を踏まえ,以下の事項について,学長のリーダシップの下,特に重点的に取り組んだ。
 
一つ目に,教育現場のニーズや社会の動向を考慮した大学院改革として,教育委員会との意見交換等を通じて集めた教育現場のニーズや,社会の動向を考慮し,平成28年度から以下のような大学院改革を実施することを決定した。
・教職大学院:管理職を目指す年齢層の現職派遣教員等が修学しやすいようにするための条件整備として,「1年制プログラム(短期履修プログラム)」を導入することとした。
・修士課程:現代的教育課題に対応できるようコースを新設するとともに,学校現場での実習など実践的な内容の授業科目を増やすこととした。
・教職大学院の入学定員を50人から60人に拡充する一方,修士課程の入学定員を250人から240人に縮小することとした。
 
二つ目に,カリキュラム改革として,学士課程に「教科内容構成に関する科目」の授業を新設し,試行的に自由科目として8科目を開講した。この科目の授業担当教員に対して,アンケート・聴き取り調査を実施し,シラバスの記述や学生による授業評価アンケート結果も踏まえ,その実施状況を分析した。これにより,実施上の課題等が整理されたことから,平成27年度からは選択科目に変更し,新たに3科目を加え計11科目を開設することとするとともに,同科目の授業に使用するテキストを刊行した。(平成27年度開講科目:国語,英語,社会,算数・数学,理科,音楽,図画工作,体育・保健体育,技術,家庭,道徳)
 また,修士課程において,平成28年度から「教職実践インターンシップ」に関する科目2科目を選択科目として新設することとした。この科目は,教員として求められる学校現場等における「課題解決力」を培うことを到達目標としており,学校現場において主体的に学校教育活動に参画するインターンシップと事前事後の指導・省察,活動終了後の「教職実践インターンシップ報告書」の作成・発表を通じて,実践した内容を研究的に振り返る形式で実施する。
 
三つ目に,都道府県等教育委員会と連携した課題解決の取組等として,「現代的教育課題の解決に向けた取組」及び「地域社会や学校現場のニーズに対応した取組」を実施した。
現代的教育課題の解決に向けた取組としては,@新潟県及び新潟市教育委員会との連携による「広い視野と経営感覚をもつミドルリーダーの育成」をねらいとした研修会,A新潟,富山,長野の各県を会場とした現代的教育課題をテーマとした教員研修講座,B地元の上越市教育委員会等との連携による学校教職員や教員を目指す人のための研修会(会場:本学 学校教育実践研究センター)等が挙げられる。
地域社会や学校現場のニーズに対応した取組としては,@教職大学院での「学校支援プロジェクト」(平成26年度:申込み延べ59校,実施延べ42校),A新潟県立教育センターとの連携によるICT教育に関するリーダー養成研修,Bコア・サイエンス・ティーチャー(CST)養成事業,C上越地域の各教育委員会の学校現場のニーズに合わせた教員研修,D新潟県立教育センターと連携による「新潟県教育実践研究リポジトリ」の構築・公開等が挙げられる。
 
四つ目に,大学教員の実践的指導力の育成強化のため,「大学教員学校現場研修」制度を策定し,平成27年4月から,大学教員の新規採用者及び希望者を対象に実施することとした。この研修は,大学教員が附属学校等の活動に参加し学校現場の現状への理解を深めること,本学での教員養成への理解を深めるとともに教員養成に関わっているという意識を高めることをねらいとして行われる。研修内容は,受講者の経験状況に応じたものとなっており,プログラム一例としては,本学の教員養成に関する体系的な基本知識や今日的な課題等に関する講義,附属学校の研究会への参加,附属中学校での特別授業の講師担当,出前講座・公開講座等の開設,学習支援に関するボランティアの実施等がある。
 
五つ目に,ガバナンス体制の強化のため,非常勤理事の後任を常勤理事として任命した。これは非常勤理事が担当していた「同窓会・後援会」,「大学基金」に関する事項について,卒業生・修了生との連携を推進し,幅広く寄附を募って本学の財政基盤の強化につなげる重要性が高まっていることから,非常勤理事のポストを常勤化したものである。
また,平成27年4月から副学長を4人から5人に増員することを決定した。これは,「教育関係」,「研究・評価関係」,「学生関係」等の各事項について,副学長の業務量が増加していたことから,副学長を1名増員して担当の割り振りを見直し,大学改革の取組を推進していくための体制を強化することとしたものである。
さらに,学校現場のニーズに即した教員研修,教員養成を推進していく上で,教育委員会との連携体制の強化が一層重要となっていることから,平成27年4月から地方教育行政経験者を特任教授として採用し,「教育委員会連携」担当の学長特別補佐に任命することとした。
 
六つ目に,グローバル化への取組に関して,「国際交流推進センター」を設置し,国際的な学生交流と学術交流を推進するとともに,国際的視野を持った教員養成に取り組んだ。センターの運営においては,「平成26年度国際交流等重点施策」として,@学習意欲の高い留学生の確保,A外国人児童生徒への修学支援による地域貢献,B留学生と日本人学生の相互交流の活性化,C留学生と地域社会との相互交流の活性化,の4点を定め,各種の取組を行った。
また,学士課程において平成27年度入学者から必修科目「小学校英語指導法」を新設することとしたほか,「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」の説明会を2回開催し,海外への第1期派遣留学生に大学院生1人が採用された。
 
七つ目に,年俸制の導入を平成27年度から実施することとした。本学の年俸制は、明確な目標設定、教育研究等業績の適切な評価及び評価結果を給与へ反映することにより、教員の労働意欲の向上を図ることを目的としており、国際交流推進センター教員及び若手教員(助教)に適用する。なお、年俸制を希望し学長が認めた教授、准教授、講師又は助教にも適用する。
 
八つ目に,「国立大学法人上越教育大学教育諮問会議の設置」に関して,本学の教員養成の質の向上と研修機能の強化に資することを目的として,「国立大学法人上越教育大学教育諮問会議」を新たに設置した。この諮問会議は,地元及び近県の教育委員会の幹部職員や公立の連携協力校の長,大学運営・文部科学行政等に精通した有識者,総勢11名の構成員で,学部や大学院のカリキュラムの検証,養成する人材像,現職教員の再教育の在り方などについて答申することとしている。