6 附属施設等
(6)心理教育相談室
@ 心理教育相談室
ア 設置の趣旨(目的)及び組織
上越教育大学心理教育相談室(以下「相談室」)は,心理臨床に関わる相談に対する社会的要請に応じるとともに,本学の大学院生等の心理臨床に関わる相談活動に関する知識,態度,技能等を習得させるための指導を行うことによって,心理臨床における実践的な教育及びその研究の推進に寄与することを目的として平成12年12月に開所した。
相談件数の増加等に伴い,平成19年2月に心理教育相談室の移転(旧,人文低層棟261uから,新たに職員研修センター棟を改築し353uへ引越)を行った。さらに,平成22年3月には,職員研修センターを廃止して,施設の拡張整備(50uを増設し,延べ403u)が行われた。
また,財団法人日本臨床心理士資格認定協会からの相談の有料化についての意見を踏まえ,相談活動区分の再設定と区分毎の料金を定め,平成19年4月から運用している。なお,それ以前からの継続ケースに適用されていた経過措置は平成22年3月をもって終わり,平成22年4月から完全有料化した。
相談室の活動方針は,@)心理臨床に関わる相談に関すること,A)心理臨床及びその周辺領域に関わる学術調査・研究及びその成果の発表と刊行に関すること,B)臨床心理学の実践的活動とそれに基づく理論の体系化に関すること,C)大学院学校教育研究科学校教育専攻臨床心理学コースの臨床心理実習の指導に関すること,D)学校及び地域社会などへのコンサルテーションに関することの5項目を中心とした業務を円滑に進めることである。
相談室の組織は,相談室長及び相談員5人の計6人で構成されている。なお,相談員は,臨床心理士の資格を有する臨床心理学コースの担当教員をもって充てることとしている。
イ 運営・活動の状況
  平成26年度の運営・活動については,以下のとおり実施した。
 @) 心理臨床に関わる相談に関すること
平成26年4月〜平成27年3月までの相談室の利用状況は次の通りである。まず,新規相談の受理件数は30件であった。学齢・年齢等の区分による件数は,就学前児童1件,小学生7件,中学生6件,高校生0件,成人16件であった。
相談延べ件数は828件であり,内訳は問題を有している本人に対して行われる継続的な面接である「臨床心理面接」(382件)が最も多く,次いで,保護者等を対象として行う「心理教育相談面接」(268件),幼児や児童を対象として行われる継続的な面接である「遊戯面接」(144件)などである。
相談件数は平成13年の開所以来増加の一途をたどっていた。なお,平成22年の面接実施件数1,376件から平成23年度は1,425件と増加したが,平成24年度は1,280件,平成25年度は1,128件,平成26年度は828件と減少した(各年とも1月〜12月の統計に基づく延べ相談件数)。しかし,新規相談の受理件数は前年よりも増加しており,地域からの相談のニーズが減少してきているとはいえない。むしろ, 継続相談の間隔が広くなった(隔週や月に1回程度の相談)ケースが増えていることが原因と考えられる。したがって,年間のケース数は従来どおりであり,6人の相談員は,各ケースの相談と,臨床心理実習に参加している学生の指導を同時に行っており,負担度はかなり高くなっている。多様な地域のニーズに対応するためには,スタッフや相談施設の充実が必要となることは言をまたない。
 A) 心理臨床及びその周辺領域に関わる学術調査及びその成果の発表と刊行に関すること
平成27年3月に,相談室の紀要(「上越教育大学心理教育相談研究」第14巻第1号)を刊行し,相談室スタッフを中心とした執筆者が5編の研究論文を掲載した。また,相談室の概要,平成26年度修士論文題目一覧及び論文概要を掲載した。相談室の紀要は,今後も相談室の研究成果を公表するとともに,上越地域を中心とした専門機関や施設等との研究交流や連携を深めるための情報誌としても期待される。
 B) 大学院学校教育研究科学校教育専攻臨床心理学コースの臨床心理実習の指導に関すること
平成26年度は,当コースの相談研修生37人(修士1年20人,修士2年17人)に対する臨床実習指導を行った。実習の中心は,相談室における臨床心理基礎実習で,学生は「相談研修生」として登録した後に,模擬面接実習,相談場面の観察・陪席,ケースカンファレンスを経て,相談室に来所するケースに対して,スーパーバイザーである教授陣の指導のもと,相談業務を行ってきた。また,精神科単科の病院や,私設相談室等での実習も行った。以上のように,当コースの学生は,2年間に,臨床心理基礎実習及び臨床心理実習を中心とした「実務実習」を課され,これらに費やす時間は,2年間を通してほぼ恒常的に受講するもので莫大になる。したがって,責任を持って臨床指導する実質6人の教授陣が担う,教育研究指導も莫大なものとなっている。さらに,修士論文の作成が必修となっており,学生は,2年間にわたりほぼ毎週課せられている臨床心理実習を行いながら臨床心理学研究を進めなければならず,学生及び指導教員にかかる負担が増大していることも事実である。今後,この点を補完するための教育指導体制が必要となる。
 C) 学校及び地域社会などへの支援業務
相談室のスタッフは,新潟県教育委員会から委嘱されるスクールカウンセラー業務を始めとして,地域市町村教育委員会や教育センター等が主催する教員研修会講師を担当しており,地域における心理臨床へのニーズの高まりを反映している。今後,相談室を核として,地域の専門職や,教育相談業務等の経験を有する教職員との連携を密にして,「非常勤相談員」なる制度による専門的社会資源の有効活用をめざした計画の策定が急務となろう。
また,平成19年7月2日から上越市と心理教育相談室利用に関する覚書を取り交わし,上越市職員のメンタルヘルス相談に応じてきたが,新潟県市町村職員共済組合との協議により,平成23年4月1日付けで同組合と覚書を取り交わし,上越市職員に限らず,上越地域の市町村共済組合員及びその家族のメンタルヘルス相談に応じることとなった。
ウ 優れた点及び今後の検討課題等
  本相談室では,本学大学院臨床心理学コースの約40人の学生への臨床実習として,その役割を果たしているが,さらに地域の心理臨床に関わる専門的相談施設として多くの外来の相談者を受け入れてきている。また,財団法人日本臨床心理士資格認定協会からの相談室運営の助言も受け,外来相談者から相談料を課しているが,これらは本学運営資金として生かされている。
A 心理教育相談室運営委員会
 ア 設置の趣旨(目的)及び組織
 @) 組織設置の趣旨(目的)
心理教育相談室運営委員会は,相談室の運営,臨床心理士及びその他の心理臨床の資格取得に必要な臨床心理実習及び相談室における研究成果の報告に関する事項等を審議する。
 A) 組織の構成及び構成員等
平成26年度心理教育相談室運営委員会構成員は,相談室長,相談室相談員5人,保健管理センター所長,特別支援教育実践研究センター長の8人で構成されている。
また,本委員会の下に,相談研修生の研修認定の実施,臨床心理士の大学院指定制申請及び相談室に関する事項等について対応するため,相談室運営専門部会が置かれ,月1回開催している。
なお,相談室運営専門部会の構成員については,相談室長,相談室相談員の5人で構成されている。
 イ 運営・活動の状況
 @) 委員会等の開催状況
平成26年度においては,心理教育相談室運営委員会を3回開催した。
 A) 審議された主な事項
主として「相談室の運営」及び「相談研修生の利用及び種別変更」等について審議した。
 B) 重点的に取り組んだ課題や改善事項及び前年度の検討課題への取組状況等
日本臨床心理士資格認定協会認定による第1種指定大学院として,臨床心理学コース在籍の大学院生等37人の臨床実習を行い,また地域の心理臨床に関わる専門機関として延べ828件の相談を受けてきた。
現在のところ,これらの業務は6人の教員スタッフと非常勤事務補佐員が担っているが,スーパーバイザーとして活動する教員は実質5人(相談員6人のうち1人は平成27年3月31日で退職した)であり,授業,研究活動,数々の本務を始め,地域への支援も行っており,業務が過剰となっている。
また,平成19年度末の相談室移転及び平成21年度末の施設拡張により,これまで以上に充実した相談業務が可能となった一方で,担当する教職員の人数が限られているため十分な機能を果たしきれていない状況もある。今後,大学院生の臨床実習指導を担当する教員と,外来の相談業務を担当する職員の配置が急務である。