自己点検・評価の対象期間: 平成27年 04月 01日 〜 平成28年 03月 31日
 
野村 眞木夫
(教授)
 
<教育活動>
 
 授業
 【観点1】教育方法及び成績評価面での取組
学部・大学院ともにテクスト分析と談話分析の研究成果を反映した教育を展開し,教育現場での学習材分析・授業分析に資する能力を育成することを継続している。近年言語学にも導入され始めた「マルチモーダル」の考え方に基づき,文字・音声言語とそれ以外の画像情報,動的な情報等を均質的に観察の対象とする方法を取り込みながら,指導方法を改善している。現代日本語と古代日本語の文法を対比的に取りあげ,言語変化・語義変化・文法の変化等について教授している。主に学部で,パソコンを活用するテキスト分析ツールを導入し,KWICコンコーダンサの運用とこれに基づくテキスト分析を展開させた。正規表現の運用も指示した。これは,国語教材の分析に有用と思われ,卒業論文の作成にも活用させている。
 
 【観点2】教育の達成状況
大学院では,特にマルチモダリティの観点の修得とテクスト分析の能力を育成している。演習では,多人数会話の分析を行った。これは教室でのいわゆる教室談話を分析するための基礎をなすもので,高度な分析ツールから現場で日常的に使用可能な機器の運用までを横断的にとりあげて実施した。レポートや,修士論文作成において,講義・演習において教授した知見や分析手法を駆使して各自の課題に取り組んでいることが明らかである。十分な教育の成果が達成されているものと判断している。過年度の修了生は,学会誌に掲載した論文について,他学会の学界展望によって高い評価を得ている。学部生は,パソコンによるコンコーダンサを駆使した分析能力を習得している。
 

 研究指導
 【観点1】学部
卒業論部を指導する4年次学生は,談話分析が主たる研究テーマである。具体的な研究課題を構築するために,これまでの関連領域の学術論文・著書の講読を展開し,具体的はデータに適用することで内容や言語現象の具体的な理解を深めた。大学生の日常談話をデータとし,いわゆるフィラーの分析を行って,卒業論文にまとめた。
 
 【観点2】大学院(修士課程,専門職学位課程,博士課程)
2015年度の修士論文指導学生は学部からの継続があり,絵本の言語テクストと絵画テクストとの統合的な研究を継続させた。これは,マルチモダリティの観点からの研究であり,絵本またはさし絵がどのように受け入れられるのか,また教室で扱うばあい,どのような分析手法があるのかを具体的に分析するものであり,理論的な基盤を持ちながら,現場での受容のしかたを視野にいれたものである。
 

 ◎特色ある点及び今後の検討課題等
専門は日本語のテクスト言語学の理論的な研究であるが,文章と談話を具体的な研究対象としているので,学習材の分析と授業実践の活動に直接有効性をもつ方法や観点を教授することができる。2015年度は,学部レベルの教育活動においては,教育実習ならびに卒業後の学習材分析や授業分析の能力の育成を明確にしながら演習・講義科目を展開しているが,特にパソコンと講義支援システムを活用した授業を展開している。その他,学習指導要領で敬語の区分が修正されていること,現代語と古典語の橋渡し,音声言語の記述・分析方法の能力の教授などをほぼ完全に教育活動において実施すべく,担当授業科目のシラバスを構築している。現代語と古典語の橋渡しは,極めて少数の取り組みである。さらに,マルチモダリティの観点を導入した講義を2010年度から試行している。これは,大学院では明示的に実施し,学部では試行段階だがブリッジ科目に導入している。
 
 

<研究活動>
 
 研究成果の発表状況
  論】(1)平成28年2月:『落語における詩的表現類型―落語のマルチモダリティ―』上越教育大学国語研究 第30号 pp.124-112
    (2)平成28年2月:『落語のなかの短詩型文学(続)』鼓笛 第32号 pp.2-3
    (3)平成28年3月:『日本語のテクストにおける名詞の階層と参加者の中心性』上越教育大学研究紀要第35号 pp.181-193
    (4)平成28年3月:『表現学関連分野の研究動向:文章・談話研究』表現研究 第103号 p.40
  発】(1)平成28年2月:『落語における詩的表現類型』平成27年度 上越国語同好会 第5回例会
    (2)平成28年2月:『日本語のテクストにおける名詞の階層と参加者の中心性』上越教育大学国語教育学会第70回例会
 

 学会活動への参加状況
  (1)6月6日〜7日:表現学会全国大会出席
  (2)表現学会理事 
  (3)表現学会編集委員
  (4)北海道大学国語国文学会編集委員  
 

 ◎特色・強調点等
日本語をテクスト言語学の観点から,記述・分析している。特に,今世紀に入ってから開発されたマルチモダリティの考え方を導入し,テクストを複合的な視点から観察することを可能にしている。前者については,2013年度に表現学会シンポジウムのパネラー,その論文発表をはたし,さらに日本語の人称に関する単著『スタイルとしての人称』(おうふう)を2013年度末に刊行した。後者については,2014年度に日本文体論学会の研究フォーラム(シンポジウム)で英仏独語の報告者とともに講演と議論をした。この著作および過年度のテクスト言語学に関わる著書は,今年度にあっても語学と文学の複数の研究者による単著書で言及されており,継続的に評価を得ている。
 
 
<社会との連携>
 
 社会的活動状況
  (1)上越市人にやさしいまちづくり推進会議委員
  (2)教員免許状更新講習講師