自己点検評価の対象期間: 平成28年 04月 01日 ~ 平成29年 03月 31日

渡部 洋一郎 (教授)
<教育活動>
授業
  【観点1】教育内容・方法面での取組
 2016年度は、小・中学校における国語の教科書教材のうち、「額縁構造」と呼ばれる一連の教材群を取り上げ、その効果的な指導法についての検討を行った。このジャンルに含まれる教材には、「わらぐつの中の神様」や「少年の日の思い出」など、安定した定番教材と目されるものも多く含まれており、教材を効果的に読み解く視点の開発は実際の小・中学生にとって大きな意味を持つと思われる。 
 授業では、特にアクティブ・ラーニングにも力点を置き、上記の効果的な読解を視点を用いて、「額縁構造」を持つ、他の教材にその方法を応用した場合に、どのようなわかりやすさが生まれるのか等、実際に受講生が主体的に授業構成とその展開に取り組み、演習形式で成果を発表した。 

  【観点2】学修成果の状況
 学部4年生のゼミ生3名は、いずれも出身県および他県の教員採用試験に合格することができ(栃木県小学校教諭1名・新潟県小学校教諭1名・山形県小学校教諭1名・愛知県小学校教諭1名)、うち1名は複数県の教員採用試験に合格した。また、大学院2年のゼミ生は修士論文の成果を国語科教育の学会において発表することができた。 
 以上の点から,学部の教員採用試験においても,大学院修士課程の研究成果の発表についても成果を挙げることが出来たと思われる。 

研究指導
  【観点1】学部
 教育に関わる臨床的な実践力をつけるために,例年同様,次の2点に重点を置いた。まず,1点目は卒業研究のテーマに必ず実践的な課題を選び,それを実際の授業の中に位置付けて展開してみせることである。具体的には,教材読解のための理論的な枠組みの構築とそれに基づく分析を通して,どのような単元構成を組むことができるかを授業の細案として提示すること。また,それを実施したときに従来の国語の授業とはどのような点で異なり,それが学習者にいかなる新しい視点をもたらすのかを明示することである。さらに,2点目として,規定の授業時数の中で,上記のような取り組みが十二分に展開可能であるかを相互に検証しあうことである。こうした観点から,4年次ゼミ学生3名の論文テーマを次のようにした。「文学教材における挿絵が与える読み手への影響」「小学校における系統的意見文指導のあり方に関する研究」「小学校の物語教材におけるクライマックス場面の落差に関する研究」。これらの論文は,卒論口述試験の折にもコースの教員からいずれも高い評価を得ることができ,以上のような点に鑑みて,標記の課題は十二分に達成できたものと考える。 

  【観点2】大学院(修士課程、専門職学位課程、博士課程)
 2016年度は、修士課程3名の院生指導(うち現職派遣1名・休職による現職研修1名)を行った。修士課程1年生は,説明文教材を対象にしたPISA型読解力を育成するための効果的な比べ読みを研究のテーマとし,実際の教材文に基づく授業展開のあり方を模索した。また、修士課程2年生は、物語教材を対象にした特殊構造を持つ作品解釈をどのように学習者のテクスト理解に結びつけるかを研究の主題とし、修士論文の研究を行った成果を学会誌論文の採択という形で表すことができ,国語科教育の学会においても高く評価された。 

その他の教育活動

特色ある点及び今後の検討課題等


<研究活動>
研究成果の発表状況
論】(1)  平成29年 03月: 論理的思考力と比較・分類する読みの力,教科内容構成特論「国語」, pp.1-4
(2)  平成29年 03月: 「根拠」と「理由」は何が異なるのかー「根拠・理由・主張」の三点セットの問題点,教科内容構成特論「国語」, pp.9-14
(3)  平成29年 03月: 前提条件や主張の適用範囲を担保するToulminの論証モデル,教科内容構成特論「国語」, pp.5-8
発】(1)  平成28年 08月 05日: ☆文学教材の読みと学習者,上越国語教育連絡協議会夏季研究大会,
他】(1)  平成28年 08月 02日: ~ 平成28年 08月 02日: 中学校国語科における学習指導の実際と課題(上越教育大学)
(2)  平成28年 08月 01日: ~ 平成28年 08月 01日: 小学校における文学教材解釈の実際(上越教育大学)
共同研究(幼、小、中、高等学校及び特別支援学校教員との共同研究を含む)の実施状況
(1)随筆教材の読解視点と授業構築,代表者:渡部洋一郎,(上越教育大学)

学会活動への参加状況
(1)  平成29年 02月 11日: ~ 平成29年 02月 11日: 上越教育大学国語教育学会第72回例会出席,
(2)  平成28年 10月 15日: ~ 平成28年 10月 16日: 全国大学国語教育学会第131回東京大会出席,
(3)  平成28年 08月 07日: ~ 平成28年 08月 07日: 第60回日本読書学会年次大会司会,
(4)  平成28年 07月 31日: ~ 平成28年 08月 01日: 日本国語教育学会第79回国語教育全国大会出席,
(5)  平成28年 07月 02日: ~ 平成28年 07月 02日: 上越教育大学国語教育学会第71回例会出席,
(6)  平成28年 05月 28日: ~ 平成28年 05月 29日: 全国大学国語教育学会第130回新潟大会出席,
(7)  平成28年 04月 01日: ~ 平成29年 03月 31日: 日本読書学会理事(日本読書学会)
(8)  平成28年 04月 01日: ~ 平成29年 03月 31日: 日本読書学会編集委員(日本読書学会)
(9)  平成28年 04月 01日: ~ 平成29年 03月 31日: 早稲田大学国語教育学会役員(早稲田大学国語教育学会)
(10)  平成28年 04月 01日: ~ 平成29年 03月 31日: 日本国語教育学会理事(日本国語教育学会)
(11)  平成28年 04月 01日: ~ 平成29年 03月 31日: 日本国語教育学会新潟県支部長(日本国語教育学会)
国内外の学術賞の受賞状況
(1)  平成28年 08月: 読書科学研究奨励賞(日本読書学会),

◎特色・強調点等

<社会との連携>
社会的活動状況
(1)  平成28年 12月 01日: ~ 平成29年 01月 31日: 長岡看護福祉専門学校入学試験委員(長岡看護福祉専門学校)
(2)  平成28年 11月 07日: ~ 平成28年 11月 07日: 糸魚川市糸魚川小学校校内研究会講師(糸魚川市立糸魚川小学校)
(3)  平成28年 06月 07日: ~ 平成28年 06月 07日: 糸魚川市学校教育研究会小学校部会講師(糸魚川市教育委員会)
(4)  平成28年 04月 01日: ~ 平成28年 07月 31日: 長岡看護福祉専門学校講師「論理学」(長岡看護福祉専門学校)
◎社会への寄与等
活動全般を通して,特筆すべき点としては,富山大学において集中講義を担当する講師として継続的な担当を今後も求められていることに加え,長岡市にある医療福祉系の専門学校においても入学試験委員会に関する業務を実施していること,同専門学校において「論理学」の講義を担当していることなどが挙げられる。加えて,上越市内の看護専門学校においても「日本文化論」を担当し,入試業務を兼坦することにもなった。また,教育実習に関しても例年同様の丁寧な取り組みを行うことが出来た。この点については,今後とも継続して行い,こうした活動を通じてより実践的な力を担当の学生に身につけてもらうようにしたいと思う。さらに,附属中学校との共同研究は今後も継続して行い,これからは,こうした取り組みで出された成果を,学部生や大学院生にどのような形で還元していくことができるのかも課題の一つとして考えたいと思う。