自己点検評価の対象期間:
平成28年
04月
01日
~
平成29年
03月
31日
長谷川 佑介
(講師)
<教育活動>
授業
【観点1】教育内容・方法面での取組
大学院では,前期は専門書の講読と討議を通して言語敏感期,対照分析仮説,Focus on Formなどの第二言語習得に関する知識の深化を図った。後期は受講生が持ち寄った英語教材の分析を行い,教材の特質や読みのプロセスを議論した。学部では,英文の読解をはじめとする様々な活動を通して語彙力や効率的な読みの力を育成した。英語科指導法では教授法理論の基礎を習得させるとともに,授業を英語で進める技能の向上を図った。また,全ての授業に対話的な学生主体の活動を多く盛り込んでおり,アクティブ・ラーニングの実践を行っている。いずれの授業でも評価観点や課題の構成を事前に明示し,透明性の高い評価を行った。
【観点2】学修成果の状況
学内での授業評価の結果は良好であり,また担当授業で扱った入門的内容やそこで得た知識・技能を,学生がその後の授業履修や教育実習,あるいは学位論文執筆などに活かしていることから,担当授業の教育的効果を実感している。例えば,大学院の授業で取り上げた教材分析の手法や観点は教育現場にそのまま適用可能である。また,学部の卒業生の進路は小学校教員が多いが,外国語が必修化されている昨今では,小学校教員にも英語力や英語の指導力が求められている。必修の英語で身につけさせた英語のスキルや,指導法の授業で紹介した様々な外国語教授法の理念と実践手順は,将来学生が教壇に立つときに役立つものと思われる。
研究指導
【観点1】学部
学部のゼミでは,学生の主体性や持ち味を最大限に尊重しながら,対話を通して学びを深めさせている。卒業研究のテーマ選び,英語教育に関する理論を学ぶための文献紹介,説得力のあるレポートの書き方などを幅広く指導した。また,教育実習の前後には学生ひとりひとりの目的意識を明確化させ,授業方法や児童・生徒あるいは他教員との関わり方に関する徹底的な振り返りを行わせた。教育実習生の研究授業を参観した際には,実習先の担当教員からの助言を得にくい点(例えば,活動の指示を与える際のポイントや,実習生ひとりひとりの英語発音や文法のくせなど)についても丁寧に指導を行った。
【観点2】大学院(修士課程、専門職学位課程、博士課程)
現職教員や免許取得を目指す院生を対象に,外国語のリーディングプロセスに関する基礎的な文献を紹介しながら英語教育の理論と実践について議論し,より高度な教育実践力につながることを目指した研究指導を行った。院生一人ひとりの問題意識を大切にしながら先行研究で明らかにされていない課題を命題化し,理論的背景を実際の経験と比較しながら平易な言葉で捉えさせるとともに,その課題を究明するための方法論を習得させるよう努めた。特に,学術的調査研究の手法,統計分析,英語での論文執筆などの未知の領域に臆せず挑戦することや,自らの研究上の問題点と真摯に向き合うことなどの研究過程を重視した対話型の指導を行っている。
その他の教育活動
- 教育実習においてはゼミに所属する学生への指導を中心に,近隣の実習校への挨拶訪問等を含め,実習が円滑に行われるよう努力した。実習の前後だけでなく,実習中にも困ったことや相談したいことがあれば連絡を受け付けるようにし,学生に安心感を持たせるとともに実習中の様々なリスクを低減できるように心がけた。
- 上越教育大学附属中学校および近隣校の協議会にも出席し,教育現場の実際を把握するように努めた。
- 上越看護専門学校からの依頼により医療英語の兼任講師を務めるなど,本学での教育実践や研究成果を上越地域の英語教育の向上に結びつけるための取り組みを行っている。
◎
特色ある点及び今後の検討課題等
- あらゆる授業において,学生自身が学びの成果を実感し,学んだことを他者に伝達することができるようになることを目指した取り組みを行った。例えば,修士論文指導においては,大学院生が読んだ先行研究の論文を「読んで終わり」にはさせず,要点や残された課題などを自らの経験や他の先行研究と照らし合わせて自らの言葉で易しく語れるように指導を行った。今後の目標は,学生が学んだことを実生活や臨床的な実践力の向上に活かせるよう,教育場面との結びつきにさらに意識を向けさせることである。
<研究活動>
研究成果の発表状況
論】(1)
平成29年
03月:
Context-based activation of deliberately learned new words: A pilot study.,ARELE (Annual Review of English Language Education in Japan),ARELE (Annual Review of English Language Education in Japan),28巻,
pp.145-159
(2)
平成28年
12月:
質的方法,JLTA (the Japan Language Testing Association) Journal,19巻,Suppl.号,
pp.244-247
(3)
平成28年
09月:
Does reading aloud contribute to EFL reading fluency among learners with higher/lower phonological awareness?,Bulletin of Joetsu University of Education,Bulletin of Joetsu University of Education,36巻,1号,
pp.165-172
業】(1)
平成29年
03月:
“リサイクル”を意識したリーディング授業の設計図,外国語教育メディア学会中部支部外国語教育基礎研究部会2016年度報告論集,
(2)
平成29年
01月:
リーディング指導で意識したい受容語彙・発表語彙の指導,英語教育2月号(大修館書店),
発】(1)
平成28年
12月
“リサイクル”を意識したリーディング授業の設計図,外国語教育メディア学会中部支部外国語教育基礎研究部会 第4回年次例会シンポジウム,
(2)
平成28年
09月
はじめて学ぶ効果量:基礎概念から実践まで,第20回日本言語テスト学会 全国研究大会ワークショップ,
(3)
平成28年
08月
英語語彙の学習時に読む文脈が語彙アクセスに与える影響:間接プライミング効果の観点から,第42回全国英語教育学会 埼玉研究大会,
(4)
平成28年
06月
読みのメカニズムを踏まえた英語授業,ECHO会 (上越市中学校英語教員研修会) 春季研修会,
学会活動への参加状況
(1)
平成28年
09月
17日:
~
平成28年
09月
18日:
日本言語テスト学会全国大会出席(東海大学湘南キャンパス),
(2)
平成28年
09月
01日:
~
平成28年
09月
03日:
大学英語教育学会国際大会出席(北星学園大学),
(3)
平成28年
08月
20日:
~
平成28年
08月
21日:
全国英語教育学会研究大会出席(獨協大学),
(4)
平成28年
08月
06日:
~
平成28年
08月
06日:
上越英語教育学会出席(上越教育大学),
(5)
平成28年
06月
25日:
~
平成28年
06月
26日:
中部地区英語教育学会研究大会出席(鈴鹿医療科学大学白子キャンパス),
(6)
平成28年
04月
01日:
~
平成29年
03月
31日:
中部地区英語教育学会紀要編集事務局長,
(7)
平成28年
04月
01日:
~
平成29年
03月
31日:
全国英語教育学会事務局員(広報通信部),
(8)
平成28年
04月
01日:
~
平成29年
03月
31日:
日本言語テスト学会編集委員,
(9)
平成28年
04月
01日:
~
平成29年
03月
31日:
上越英語教育学会会計,
◎特色・強調点等
- 英語教育学,特に語彙習得とリーディングの研究を行っている。従来,訳語を用いた語彙の暗記学習は効率的である一方で,将来の言語使用に必ずしも結びつかないという欠点も指摘されてきた。昨今では英語の授業は英語で進めるという原則のもとで語彙指導の在り方にも変容が求められており,国内でも研究分野の重要性が高まっている。今年度は意図的語彙学習で学んだ語彙が英文読解中に理解できる割合を検証し,語彙知識の想起には学習中に読む例文が深く関わっていることを明らかにし,その成果を査読付き全国誌にて発表した。教育実践においても,文脈から得られる豊かな心的表象を重視した語彙指導が効果的であると考えられる。
<社会との連携>
社会的活動状況
(1)
平成28年
08月
09日:
~
平成28年
08月
10日:
上越教育大学教育職員免許法認定講習 (上越教育大学)
(2)
平成28年
07月
29日:
~
平成28年
07月
29日:
上越教育大学教員免許状更新講習(上越教育大学)
◎社会への寄与等
上越教育大学教員免許状更新講習においては,英語教員向けの選択科目を分担し,特に英語語彙および英語リーディングの効果的な指導法について理論と実践の観点から講義やディスカッションを行った。例えば,英語語彙の予習を前提とした授業を行い,音読活動などを取り入れた指導を実施している英語教員は多いが,それに関わる理論的背景は必ずしも知られていない。新出語彙の学習時にどのようなプロセスが生じているのかを理論的に解説したり,音読活動の効果について受講生同士での意見交換を促したりしながら,日頃の英語授業を新たな視点で捉えなおす機会を提供することに努めた。