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学長メッセージ

「伸びゆく上越教育大学」への挑戦(その6)


若井 彌一 学長
 
 前回(その5)は,(1)平成21年7月30日開催の「オープンキャンパス」で訴えたこと,(2)確かな専門職的力量を磨く継続的努力を,という2つの小見出しを付けて,学生の皆さんに期待することを述べてみました。
 (2)の後半の部分では,1966年10月5日にユネスコにおける「教員の地位に関する特別政府間会議」で採択された「教員の地位に関する勧告」の第6項を紹介しました。参考までに,この日本語訳に対応する英文(勧告の原文)を掲げておきます。格調が高い文章表現であり,これから教職を目指す人々にも,ぜひ勉強の記念に心に刻んでほしいと願うものです。

6.Teaching should be regarded as a profession:it is a form of public service which requires of teachers expert knowledge and specialized skills, acquired and maintained through rigorous and continuing study:it calls also for a sense of personal and corporate responsibility for the education and welfare of the pupils in their charge.

◆上越教育大学憲章が掲げていること
 さて,今回は,本学の憲章(正式名称=上越教育大学憲章)が掲げていることについて述べ,学生の皆さんの日々の心得と実践(行動)に生かしていく参考に供したいと思います。
 上越教育大学の憲章は,平成21年3月19日制定となっておりますが,比較的長期に及んだ制定の過程では,学内外の先生方にお骨折りをいただきました。
 是非,知っておいてほしいのは,憲章の書き出しの一文の趣旨です。「上越教育大学は,人類の福祉及び文化と学術の発展に貢献する大学の普遍的使命を自覚し,教員の養成と再教育を担い教育に関する先端的な研究を進める大学として更に飛躍するため,ここに上越教育大学憲章を定めます。」
 この一文は,本学が二つの使命を同時に果たすことを宣言しています。一つは,大学として果たすべき普遍的使命です。もう一つは,本学が,教員養成及び現職教員の再教育を担い,教育に関する先端的研究,換言すれば,時代の最も重要な課題となっている緊要な事項の研究を先導的または開拓的に進める大学であるという個別的使命です。この一文は,二つの使命達成の関連性を強く意識して憲章が制定されたものであることを明示したものです。
 この一文に続き,教員養成に関する最も根本的な事項が具体的な4つの柱の説明に先行して宣言されています。即ち,(ア)教育者としての「使命感」・「人間愛」・「創造力」を備えた教員の養成を目指すこと,また(イ)「地域に根ざした教員養成」の実現に努めること,の二つです。
 続いて,4つの大きな柱として,(1)「教育の目標」,(2)「研究の目標」,(3)「社会への貢献」,(4)「大学運営の基本」が掲げられています。(1)~(4)の順番は,大学としての取り組みの優先順番を示すものではなく,これら4つの柱は,常に全体的な観点から目配りをしながら具体的な取り組みをしていかなくてはならないものであります。
 是非,一読してみて下さい。大学のHP(ホームページ)上でアクセスして読むことができます。抽象的な表現の文章でありますので,好みにもよりますが,なかなか頭に残らない(残りにくい)かも知れません。しかしこれは,本学の憲章だけでなく,多くの大学憲章にも共通していることを知っておいてください。抽象的な文章表現ではあっても,何度も読み返しているうちに,「なかなか理想の高い,いい憲章じゃないか!」と思っていただけるものと願っております。

◆焦ることなく,可能な努力を継続しよう
 ところで,世の中には,世間をあっと言わせるような偉業を成し遂げる人が,分野を問わず,時々出てきますね。そして,多くの人々から注目され,その分野の人々全体が何となく,「自分たちはそんなに注目されるような事柄(職業)に従事または携わっていたのか!」と自分のやっていることに誇りを感じたりもするのです。
 幸いなことに,誰であれ,他人に感動を与え得る可能性を秘めている存在であります。そうは言うものの,ある程度の数の人々に感動を与えるようなことは一朝一夕の思いつきと実践だけでは出来ません。偉業は例外なく小さな努力の継続の結果または経過の産物です。例えば今やアメリカのメジャーリーグで活躍している2人の代表的な日本人選手と言えば,アメリカの一般市民の多くの人々が,間違いなく「イチロー」と「マツイ」と答えるでしょう。しかし特に「イチロー」の場合,2001年の時点で,果たして何人のアメリカ人が,この人物に大きな関心を持っていたことでしょうか。それが,今や,アメリカの大リーグ選手達の中でも,最も注目度の高い選手の一人になっているのです。そして,今後は数々の記録を達成した人物として,大リーグ史における「伝説上の人物」になっていく可能性が高いと予想されます。
 繰り返しますが,スポーツ選手だけが,このような偉大な存在になれるのではないのです。教育というプロフェッション(専門職)も,多分にその可能性を秘めており,努力のしがいの大きな職業の一つであります。人類は,その歴史的発展期の過程を通して,他の人に感謝したり,感動したり,学んだりする知恵を身に付けました。学校教育は,その知恵を,楽しく,意欲をもって身に付けていくことを可能にする大きな国家的,社会的営みであります。そのような世界に入って活躍しようとしている若者を,我々上教大の教職員は諸手を挙げて歓迎いたします。そして一人ひとりの学生の可能性に細心の配慮をしながら,全力で皆さんを鍛え,支えていきます。


「伸びゆく上越教育大学」への挑戦(その1)
「伸びゆく上越教育大学」への挑戦(その2)
「伸びゆく上越教育大学」への挑戦(その3)
「伸びゆく上越教育大学」への挑戦(その4)
「伸びゆく上越教育大学」への挑戦(その5)