雑食風読書ノート(その17)



石井英真. (2015). 今求められる学力と学びとは:コンピテンシー・ベースのカリキュラムの光と影. 日本標準.
「クラスメートとともにさまざまな文化的活動に参加し、そこで言葉の力を育て、他者との関係性を構築していく中で、結果として衝動性が弱まり、考えて行動 できるようになる。そうした回り道にも見える営みに対する社会の寛容性が試されているように思います。コンピテンシーの育成は、その構成要素自体を直接訓 練するのではなく、豊かな学習活動を通して結果として育むべきという本書で繰り返し指摘してきた主張は、こうした問題意識に基づいています。」(p. 76)

「経済的合理性や効率性といった規範が、あらゆる領域に当てはめられる中で、『無駄』をいかに切り詰めるかに人々の努力は集中しがちです。しかし、『無 駄』を惜しむばかりに『手間』を惜しんでいては人は育ちません。[中略] 現代を生きる子どもたちと大人たちに真に求められるのは、見た目のわかりやすさの陰で見落とされがちな見えないものの価値にも光を当てられる、想像力や思 慮深さではないでしょうか。」(p. 76)

・・・次の指導要領改訂に向けて、大人の側も衝動的に反応するのではなく、是非長期的なものを見据えてやってもらいたいもの。

山脇由貴子. (2006). 教室の悪魔:見えない「いじめ」を解決するために. ポプラ社.
「いまの子どものいじめのパタンを 見ていると、大人社会をモデルにしているとしか思えないものがたくさんある。子ども達は、あらゆるメディアや通信ツールを使って、大人たちの負の側面を驚 くべき速さで吸収し、濃縮し、持ち前の柔軟さで残酷な『いじめ』の手段を開発し続けている。」(p. 4)


伊賀泰代. (2012). 採用基準. ダイヤモンド社.

「[救命ボートの比喩を用いて]もしかしたら乗客の一部は助からないかもしれません。それでも『一人でも助からないならいっそ全員で死のう』ではな く、『犠牲者は出るかもしれないが、一人でも多くを助けよう』と考えるのがリーダーです。『一人でも犠牲者を出したらリーダー失格だ!』と糾弾する人は、 同じボートに乗っていない人であり、自分がボートの漕ぎ手になったことのない人です。このことが理解できない限り、日本において、リーダーシップの真の意 味が理解されることはないでしょう。」(p. 110)

・・・ところがテレビなどを中心に、糾弾をするだけの人の声だけが大きいんだ、これがまた・・・


小川 泰. (2002). かたち探検隊. 岩波書店.
「何事によらず、頭の中にイメージが描け自由にもてあそべるということが、『わかる』ということだ。たとえば、立体的なものを別の方向からどう見えるか判 断できるようになれば、初めての土地にいて、自分の居場所や向きを地図の上で判断するのは、さほど困難ではなくなる。幾何学的な訓練(とくに立体的な)を お勧めする。」(p. 63)

・・・異様な興奮を自覚的に鎮めるべきとの提言はまさにその通りと思われる。必要以上に興奮し、またやってはいけないほどに冷めるのが、わが国の一番の問題かもしれない。



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