4.「フレンドシップ事業」による体験的な学び

「体験学習」の概要・実際

体験学習とは?

 本学は大学の授業としては異例とも言える「体験学習」を,平成12年度より1年次の人間教育学関連科目の中の実践的人間理解科目に必修科目として位置付けています。その理由は,入学してくる学生たちの成育過程における生活・自然体験の乏しさや,座学中心の学習歴を補完し,教職を目指す上で経験知と学習知との統合の大切さを自覚させることにありました。2単位という範囲では表層的体験しかできないのは当然ですが,たとえ限られた体験であっても,教職を目指す上で自らの経験幅を拡大することの必要性を実感させることに重きをおき,次のような基本コンセプトの上で継続しています。

<体験学習のねらい>
 学校教育における教科教育や生活科,総合的な学習の時間,特別活動等における教育活動の創造の基盤となる基礎的体験学習である。自ら体を通して学び,幅広い経験や技能,逞しい実践力が教職を目指す上で必要であることを自覚し,これからの大学生活における学習生活のあり方を考える。

 この授業の年度末には,共通評価規準に基づく各コースの成績の取りまとめと報告,次年度の各コースのプログラムや担当者の確認,大学バスの利用申請等を行い,新年度に入るや関係教員が協力して新入生ガイダンス,学生の履修希望コース調査とコース割り振り,名簿作成等を行って展開しています。運営費用は授業費が中心ですが,一部,フレンドシップ事業費からも補助をする形が取られています。学生たちは,各コースの年間の詳細なプログラムを見て興味あるコースを選択しますが,自らの苦手な部分の克服や個性の伸長を意図して選択している学生が多いです。
 授業は原則通年不定期とし,本学が授業を位置付けていない水曜の午後に展開するコースや前期・後期に集中して実施しているコースもあります。2単位ではありますが実習扱いであることから,30コマでプログラムが作られています。

<各コースの概要>

【体験学習A−生活・総合何でも体験】
○前期,土曜集中9回,水曜午後1回,並びに夏休み1泊2日
○担当教員:3名(学校教育総合研究センター1,芸術系美術1,幼児教育1)
○概要:畑での栽培基礎体験,身近な草花と草遊び体験,巨大シャボン玉とレク指導体験,巨大モニュメントの製作,附属小学校体育祭まるごと体験,炭焼き体験,市内小学校PTCへの参加体験,雑魚捕り体験,サバイバルキャンプ体験等の各種体験活動。学校教育における生活科,総合的な学習の時間,特別活動の理解とその基礎的技能を習得する。逞しい実践力の育成と豊かな経験の提供とを内容とする。

【体験学習B−自然体験】−動植物との触れ合いを中心に−
○通年,水曜数回,他は土曜集中
○担当教員:4名(自然系理科4)
○概要:森の動植物,水田や河川の生き物の観察・採集・飼育,生き物との触れ合いを通して,自然と人とのかかわりを学ぶ。

【体験学習C−科学の広場】
○前期,平日のみで,5/7,7/16〜7/25に集中
○担当教員:4名(自然系理科4)
○概要:身近なもの(生活や遊びに関連したもの)から科学の題材を取り出して体験的に学習する。各自教材・教具を製作し,それを用いた実験実習を行うことにより,児童を対象とした学びクラブ(学生の自主活動)を指導できる基礎的な力を身に付ける。

【体験学習D−スポーツ行事主催体験】
○通年,主に平日の午後
○担当教員:1名(生活健康系体育1)一部プログラムを体験学習Aと共同で実施
○概要:スポーツ行事の企画・運営の体験を通して,子ども理解を深める。子どもの観察,運動意欲調査,種目の選定,行事案内の作成と配布,事前準備,安全対策,リハーサル,当日運営,片づけ,感想収集等。

【体験学習E−陶芸で遊ぶ+α】
○後期,平日
○担当教員:1名(芸術系美術1)
○概要:従来のように単に器を作るという考え方に縛られない陶芸を楽しむ。また,小学校での造形活動の企画・運営を行う。このような活動を通して,作ることが人間や教育にどのようにかかわるのかを考えてみる。

【体験学習F−ひいて・たいて・まいて・つける】
○通年,平日,並びに土曜集中
○担当教員:4名(生活・健康系家庭科4)
○概要:生活にかかわる材料,文化,及び環境を総合的に理解する能力を身に付けることを目指す。今年はインドの食・衣を体験する。具体的にはカリー料理及びインディカ米を調理し,インドの衣服の着用体験をする。また,調理の際に用いた発泡スチロ−ルの容器を溶かして接着剤を作成するなど,材料のリサイクル活用についても学ぶ。なお,体験の前提として,調理や食べ物を扱う実習や薬品を用いる実験等における安全管理等についても学ぶ。

【体験学習G−化石・宝石採集体験】
○通年,平日2回,土曜5回
○担当教員:2名(自然系理科2)
○概要:新生代,古生代の化石採集,ヒスイ採集,火山灰中の鉱物採集,大地をテーマに化石や宝石から長大な地質時代を想像する活動を体験する。

【体験学習H−君の音楽を探そう】
○通年,平日,主として水曜3,4限
○担当教員:7名(芸術系音楽7)
○概要:音楽コース7名の教員による授業。受講者全員で合唱,ハンドベルなどを体験した後,歌,ピアノ,管楽器,作曲など興味ある分野を選んで個人指導を受けることができる。

【体験学習I−文化を発掘する】
○通年,平日数回,並びに土曜日集中
○担当教員:2名(学習臨床2)
○概要:遺跡の見学や発掘現場の体験をし,春日山の埋蔵文化センターで出土品の整理を行う。地域の小・中学生を迎えて,生涯学習のフレンドシップ事業をサポートする。

【体験活動J−国際交流体験−韓国教員大学学生との交流−】
○夏休み集中,水曜日午後など準備のため数回
○担当教員:1名(学校教育総合研究センター1)
○概要:今夏(8月中旬−下旬),韓国教員大学の学生15名が本学を訪問する。歓迎セレモニーや日韓交流セミナーの設営・参加,日々の交流などに参加する。「学びクラブ(学生の自主活動)」への参加が望ましい。

 学生にとって正にこれまで体験したことのない新たな世界に入って,体験を通して学びを深めていく場となっています。体験学習に対する学生評価は高く,その自由記述には「他大学にない本学独自の特色ある科目だと思う。」「もっと多くの経験をしたい,2年次にも位置付けて欲しい。」等の記述が例年多く見られます。特に物作りやハードな自然体験において評価は高く,充実感や達成感が伴う故の傾向と推定されます。
 継続されてきている要因は,これにかかわる教員のほとんどが体験学習に臨む学生たちの取組への熱意と喜びを感じ取っているからです。よく「現代の若者は」と言われますが,学生達は極めて挑戦心や逞しさを内在させています。それを引き出す機会を与えられてこなかっただけです。学生達は「山の学校に赴任したら,ぜひ,子ども達と取り組みたい」と体験を通して夢を広げています。