4.「フレンドシップ事業」による体験的な学び

「ボランティア体験」の実際,成果・課題

 「ボランティア体験」は,2年次「実践的人間理解科目」中の選択(1単位)として,平成12年度から位置付け,平成19年度には1年次以上の選択としました。
 学生が市教育委員会や社会教育施設の主催事業に参画し,子どもと触れ合って活動を展開します。つまり,社会教育活動の主催者側と,参加する子どもとの間に入り,両方を支援する役割を担うのです。

履修・派遣に当たって

    (1) 4月中旬
  • フレンドシップ事業企画運営協議会(ボランティア体験の受け入れ機関と大学とで事業全般について協議する。)
  • ボランティア体験履修希望者ガイダンス及び受け入れ機関による説明会(受け入れ機関はチラシを配ったり,プレゼンテーションを行ったりして,熱心に学生を勧誘する。)
    (2) 4月下旬
  • ボランティア体験履修申込締切
  • 受け入れ機関別,主催事業別学生名簿の作成
    (3) 5月上旬
  • ボランティア体験履修者への全体指導
  • 受け入れ機関別の打合せ(学生名簿の配布,学生連絡網の作成など。)

 この後,事業ごとに事前研修や直前打合せを行って当日を迎えます。
 近年のボランティア体験履修希望者ガイダンスで,学生に対して強調するのは,次の3点です。

(1) 申し込んだからには,最後まで参画すること。体調管理も含め,責任感と自覚をもって参画する。
(2) あれもこれも参画するのでなく,一つの事業に継続して取り組むこと。繰り返し参画する学生,いくつもの事業に参画する学生が増えているが,マンネリズムに陥ってはいけない。
(3) スピーチ,話が上手になること。子どもと接する場合と,年配の人と接する場合とでは,それなりの話し方が要求される。学内という限られた空間でなく,現実の活動場面での語りや報告ができるようになってほしい。

履修者討論会の開催

 1月,大方の「ボランティア体験」が終了した時点で,討論会を開催します。互いの体験を語り合い,「ボランティア体験」のよさや学びを自覚するとともに,今後の学生生活の目標の幾つかを明確にすることがねらいです。
 以下,そのときの記録を紹介します。

<長期間のかかわりで子どものよさに気付く>

 宿泊を伴い,長期間にわたって子どもと接することにより,学生は試行錯誤しながら,接し方を見直し,子どものよさや実態に合わせた支援の在り方に目を向けるようになっています。

司会(2年):期間が長ければ長いほど気付きが多く,試行錯誤することができる。そういった意味で継続して子どもとかかわることはいいですね。
A子(2年):私も同じで「通学キャンプ」に参画して,毎日一緒に生活して活動することで,日々子どもの変化を見ることができました。しかし,子どもとどのように接して,どこまで声を出していいのか,すごく悩んで,子どもに学んでほしいから,学びを得させるためにはどうしたらいいのか,試行錯誤でした。
始めは自分から言わないと気付かなかったんですが,例えばご飯を食べるときも挨拶なしで食べていて,その都度私は「ご飯食べる前にどうするんだっけ?」と声掛けをしました。そうしていくうちに自分たちでできるようになればいいなと思って,小さなことから声掛けをしていったのです。自主性が7日目あたりから出てきて,最終日にはすべて自分たちでできるようになりました。

<教師としての能力や資質に気付く>

 学生は,子どもの「叱り方」や「全体の把握」などを大事な資質や能力として挙げています。

B男(2年):僕は,3年生の先輩から子どもの叱り方を教えてもらいました。自分は子どもを叱ったことがなくて,先輩は子どもが悪いことをしたら,どなるくらいに強く叱りました。お風呂でのことなんですが,そこに呼び出して,本当に強く言っていました。それが初日で,それ以降子どもたちは叱られることをしなくなりました。あと,「自然の家」の職員さんから,優しさだけではなく,全体を把握しなさいと言われました。どうしたらそうなれるか考えて,ねらいなどすべてを把握することが大切だと感じました。

<大学や受け入れ機関への要望>

     「討論会」では,学生から幾つか提言が出されます。学生は,地区の子どもを集めて自主的に活動を行う「学びクラブ」や,自然や文化と体ごとかかわる「体験学習」を既に経験しています。そうした経験を積極的に活用したいと,次のような願いが出されました。
  • 事業について,準備企画段階からもっとかかわりたい。そうすると,また別な学びができると思う。「学びクラブ」は自分たちで企画を立てているので,その力を伸ばしたい。
  • 行きたい「ボランティア」がたくさんあるけれども,授業を欠席しなければならない場合があり,あきらめざるを得なかった。欠席扱いではなく,別な課題を提示するなどの配慮をしてほしい。

履修記録簿の提出

 1月末,大方の「ボランティア体験」とともに「討論会」も終了した時点で,学生は「履修記録簿」を提出します。教育実習と同様に,1日ごとに学びを記録し,「討論会」での意見も採り入れ,最後に1年間を振り返って総合反省をまとめるのです。

<子どもと接してよさや可能性に気付く>

C子(2年):「はねうまサイクリングキャンプ」を通して私が学んだことの第一は,子どもの可能性は無限大だということだ。佐渡1周のコースは起伏が非常に激しく,大学生である私にとっても大変過酷なものだった。私は,子どもが完走できるか不安であったし,自分に子どものサポートができるかも不安だった。
  しかし,そんな不安をはね除けて子どもは元気に走り抜けていたし,遅れそうな仲間には励ましや応援の声をかけていた。私が子どもに助けられていたと言っても過言ではない。そして,地域の方に出会うと自発的に大きな声で挨拶をするようになり,私たちが指示しなくても子ども同士で考え,話し合い,動けるようになっていった。そんな子どもたちの成長を,無限の可能性を目の当たりにし,限界を想定していた自分が恥ずかしくなり,嬉しくもあった。

<子どもとの接し方を試行錯誤して成長する>

D子(2年):今回のボランティアの中でも,つい時間がないとやってあげることもあったが,2日続いた「わんぱくラリー」では,前日の反省を生かして,次の日に子ども自身にやらせてみたことがよかったと思う。地図の見方はまだ分かりにくいようだが,「この道はこれだけ枝分かれしてるから,地図ではどこだろう?」と言うと,すぐ分かってくれた。その子に合わせて判断してヒントを出せたことは,よかったと思う。
 この2日間ずっと子どもと接していたので,性格など把握することができた。どのように接することがよいのか分かった。しかし,子どもを静かにさせたり,寝かせたりすることの難しさを実感し,3年生の教育実習で,どううまく対応するかが課題であると感じた。

<様々な子どもとかかわり課題を自覚する>

E子(2年):小学1年生を対象とした「エンジェルクラブ」は,毎月1回開催され,活動の形態は「学びクラブ」と似ています。「学びクラブ」では,ほかの学生と協力して子どもと接していました。「エンジェルクラブ」では,1人で4〜5人の子どもと接しなければいけなかったので,最初のうちはいろいろ戸惑うことが多かったです。
 例えば,何でも自分一人でやりたがる子どもへの声かけでした。活動が終わって,片づけの時間,全部自分一人でやろうとしている子どもがいました。積極性があるのはとてもよいことだと思いましたが,このままでは班の子どもたちが何もできないと思い,「さっき○○ちゃん,これ片付けてくれたから,次は△△ちゃん,これ片付けてきてくれる?」というように,子どもたちが分担して片付けをしてくれるような声かけをするようにしてきました。しかし,まだまだ子どもへのかかわりについて学び足りない面が多くあると思います。